スタパ齋藤のコレに凝りました「コレ凝り!」
ポケットウォッチが好き
2017年11月1日 09:45
実用品としてのポケットウォッチ
時刻を知るならスマートフォンを見ればいいじゃない~ということで、腕時計など時計を使う人が減っている現在ですが、筆者はポケットウォッチが好きで、時々使っております。いわゆる「懐中時計」ですね。20代の頃から使い始めました。
これらポケットウォッチのほとんどは、実用品として使っています。便利なんですよ、ポケットウォッチ。また、筆者の場合、高校卒業以降は腕時計をあまりしない生活で、腕時計をするということに違和感があるんです。とくに夏の時期は汗でバンドが気持ち悪いですし……。というわけで、腕時計はある程度以上の必要性がないと使いません。
さておき、ポケットウォッチがどう便利なのか? 腕時計の場合、手首あたりに視線をやれば時間がわかって便利です。一方、ポケットウォッチは「ポケットなどから取り出して視線をやる」必要があるので、動作として腕時計より一手間かかるというイメージです。
ですが、ポケットウォッチはいろいろな箇所に吊せるので、意外と好都合。ポケットウォッチには、上部にチェーンや紐をかけるリング状の金具(ボウ)がありますので、これを使って吊したりできます。吊さずとも、単に机上に置いてもいい雰囲気。
それと、シンプルなポケットウォッチだと、チェーンや紐を換えるだけでフォーマルな服装にも合わせられて便利です。冠婚葬祭のときの時計に関するマナーってややこしいですが、ポケットウォッチなら内ポケットに忍ばせられるので時計マナー問題も簡単にクリアできちゃいます。
てな感じで、利便性&魅力たっぷりだけど多くの人はスルーしているポケットウォッチ。実用品としてかなりイイんだけどな~、でもやっぱり全然流行ってないっぽいな~、とか思いつつ、手持ちのポケットウォッチをいくつかご紹介します。
シンプル・単機能なポケットウォッチ
筆者がいちばん「飽きずに使い続けているポケットウォッチ」は、低機能というか単機能で、見た目がシンプルなもの。2種類ありますが、どちらも長く使っていて、現在はたぶん生産完了品です。後継機種があるかもしれませんが、詳細は調べられませんでした。って、なんか古い高級懐中時計みたいな雰囲気になっていますが、1万円以下で購入した日本製のクォーツ時計です。
どちらも視認性が良い小さめ薄めのポケットウォッチで、時針分針秒針だけで、時計として必要最小限の機能しかありません。ですが、扱いが容易で、ミョーに精度も高く、実用的。どちらも安かった時計なので、雑に扱いがちなんですが、全然壊れないし傷なんかもできません。
ポケットウォッチって、携帯時は文字通りポケットに入れていたり、バッグに入れていたりするので、トータルで見ると「やさしく扱われている」のかもしれません。だから壊れたり傷ついたりしていないのかも。まあ、よく見ると細かな傷やスレがあったりはしますが。
余談ですが、実用品としてポケットウォッチを買うなら、フタ付き(ハンターケース・タイプ)ではないほうがいいと思います。フタ付きはレトロな雰囲気が良いですが、単純にフタを開かないと時間がわからないので、ちょっと不便。まあ、不便を含めてポケットウォッチを楽しむなら問題ありませんが。
それと、フタの蝶番やロック機構は故障しやすい部分でもあります。蝶番やロック機構部分に汚れがたまりやすいとか、ロック機構部から汚れが入り込みやすいというマイナス要素も。とりわけ、機械式のポケットウォッチの場合、ロック機構の隙間から内部にホコリが侵入してメカニズム故障の原因になることがあるそうです。
高精度で視認性の高い鉄道時計
ポケットウォッチのなかで、とりわけ視認性が高く精度も高いと言われているのが、いわゆる「鉄道時計」です。鉄道に関わる人のためにつくられたポケットウォッチなので、視認性と時刻の正確さが備わっているとのこと。日本製だとセイコーの「SVBR003 鉄道時計」(公式ページ)がよく知られていて、実際に各鉄道会社に納入されているもの同じものだそうです。
これらのポケットウォッチ、見やすくてイイです。正確さは……今時のクォーツ時計はどれもかなり高精度なので、まあそれらと並んで十分な精度という感じ。「こ、ここまで高精度とは!」みたいな経験はしておりません。これらもシンプルで扱いやすいです。
ただ、大きめで少し重め。ポケットがちょっと膨らむポケットウォッチなんでした。とくにセイコーのほうは大きいです。結果、たまには使うけど、仕様頻度はあーんまり高くないという存在に。
最も無難、電波ソーラー懐中時計
ポケットウォッチはあまり人気がないのか、高性能とか多機能といったものは数えるほどしかありません。機械式のポケットウォッチとなると全く話が違ってはきますが、クォーツのものだと機能についての選択肢が少ないのが現状です。
そんななかで、今時的に最も無難というか安心というか、多くの人が「それなら使ってもいいかな」と思いそうなのが、シチズンのソーラー充電式の電波時計のポケットウォッチ版。シチズンREGNOシリーズ、ソーラーテック電波時計の「KL7-914-11」と「KL7-922-31」です。
シチズンの「ソーラーテック電波」シリーズですが、標準電波を受信して自動で時刻や日付を合わせ、太陽光などの光で充電するポケットウォッチです。光発電でフル充電後は、光を当てなくても2年間動作可能。パーペチュアル・カレンダー機能を搭載し、2100年2月28日まで、うるう年などの月末のカレンダー修正が一切不要です。見た目はレトロですが、中身は先端的。ポケットウォッチとしての視認性も良好です。
ただ、電波ソーラーであるからか、ちょっと厚めで微妙に重め。厚みは10.4mmあり、質量は65g。十分慣れられる範囲ですが、もっと薄くて軽いポケットウォッチがあるので、ちょっと悩ましい部分かもしれません。まあでも、電波ソーラーでポケットウォッチとなると、現在のところこの製品しか選択肢はないと思います。
月の満ち欠けがわかるポケットウォッチ
月を見上げるのが好き! というわけでもないのですが、文字盤に月齢や月の満ち欠けが表示されるポケットウォッチに惹かれてしまいます。いわゆる「ムーンフェイズ」の表示機能。クォーツ式のポケットウォッチで、ムーンフェイズ対応となると選択肢が狭くなりがちですが、いくつかあります。機械式のムーンフェイズ対応ポケットウォッチのほうが選択肢が豊富だと思いますが、値段がガーンと上がったりします。
ムーンフェイズがあると、一目で月齢がだいたいわかり、見える月のカタチもわかります。まあ現在はスマートフォンに「今日の月の満ち欠けを見せて」とか言えば該当するウェブサイトで月齢から月の様子まで見られますけど、なんか文字盤上に毎日徐々に変わっていく月のグラフィックがあると楽しげなので、ミョーに惹かれてしまいます。
見て聴いて楽しい、機械式ポケットウォッチ
以前に時計修理マニアの友人からいただいた機械式のポケットウォッチがあります。WALTHAM(ウォルサム)という米国最古の時計ブランドのもので、ポケットウォッチづくりで有名です。ものとしてもかな~り古い、いわばアンティークの懐中時計です。
これはゼンマイ動力の手巻き式時計。いただいた後には使っていたんですが、風防(文字盤前面の透明のカバー)が外れやすくなってしまい、触るとすぐ外れるほどになり、そのまま死蔵していました。
ですが、最近になってその友人に修理方法を訊いたら「紫外線硬化樹脂がいいですよ」とのこと。早速それで風防を固定してみたら、あっさり修理完了。またこのWALTHAMを使い始めました。いや、使い始めたというより、鑑賞し始めたという感じかも。
風防を修理するまで「古い懐中時計なんだな」くらいの興味しかなかったんですが、風防を修理して「これ普通に持ち歩いて使えるなあ」と思うと、この時計に強い興味が沸いてきました。WALTHAMの時計はシリアル番号から製造年がだいたいわかるそうで、調べてみましたら、1920年代後半につくられた時計のようです。
うっわ~コレ、100年前の時計? ていうか100年前でもこういう繊細なメカニズムがつくられていて、製品として流通していたんだ~! びっくり!
その後もこのWALTHAMを眺めたり音を聴いたりしていました。そうしているうちに、「ところでこういう時計はどういうしくみで動いているんだろう?」と思ってアレコレ調べて、機械式時計の基本的なしくみを何となく把握。筆者がいつも眺めて楽しんでいる部品の名が「ガンギ車」や「アンクル」であることがわかりました。
そして、それらの部品をよりしっかり見たい! という欲望も生まれちゃいまして、調べたり悩んだりして、結局買ったのがEPOS(エポス)の「EPOS POCKET WATCH 2166SK」(公式ページ)でした。
キャリバー(ムーブメント)はスイスETA社のUnitas 6497。ポケットウォッチ用としてよく使われるキャリバーで、わりと歴史がありつつ現在まで受け継がれている「安定したキャリバー」だそうです。個人的には「ムーブメント自体が大きくてメカニズムを観察しやすく、音も大きくて聴き応えがある」という点で、このUnitas 6497が好きになりました。
ちなみに精度ですが、毎日十数秒~数十秒くらいずれます(置き方や巻き方により異なる)。朝起きて、この時計を巻いて、時間を合わせて、みたいな習慣ができていて、精度的には十分実用範囲内だと感じています。
この時計を買って「ちょっと失敗した」と感じたのは、裏側のフタ。「フタの開閉機構を楽しめるし(向かって左側の脚を押すと開きます)、背面保護にもなるし、なかなかイイ」と思って選んだんですが、フタが60度くらいまでしか開かないので、背面からの観察がしにくいのがやや残念です。背面からの撮影も行いにくい。「EPOS POCKET WATCH 2003SK」(公式ページ)あたりのフタ無しタイプにしておけば良かったかな~と思います。
でもまあ、購入後毎日巻いて鑑賞して音を聴いて楽しめています。そして何度も「しかしまあ、よくこんなに精巧なメカニズムをつくるもんだなあ。人間って凄いなぁ」と思います。
そう思うと同時に、機械式時計のノウハウが蓄積されたその上に生まれたクォーツ式時計も、これまた凄いなあと思ったりするのでした。なんか、アナログ回路があり、それを基礎としてデジタル回路がある、みたいな感じと似てるかも。フィルム式カメラからデジタルカメラ、内燃機関のクルマから電気自動車、そんなのにも通じるような気がします。人がつくりだしたテクノロジーの結晶に触れられることは、感慨深いです。