第488回:OPhone とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「OPhone」とは、中国の携帯電話事業者であるチャイナ・モバイル(中国移動通信集団公司)が推進するスマートフォンプラットフォームです。

 2010年現在、中国国内では、OPhoneを採用したスマートフォンが販売されています。製造元としては、レノボ(聯想)、dopod(多普達)、Hisense(海信)といった中国本土メーカーのほか、HTC、DELL、LGといった外資系メーカーのものもあります。

 なお、中国国内における同様のスマートフォンプラットフォームとしては、チャイナ・ユニコム(中国聯通)の「UPhone」などもあります。こちらも、Androidベースのスマートフォンプラットフォームです。

Androidベースで中国向けに特化したプラットフォーム

 OPhoneは、(GPRSベースの製品も存在しますが)基本的には中国独自の3G携帯通信規格である「TD-SCDMA」に準拠したスマートフォンを開発できることを目的として提供されているプラットフォームです。

 構成としては、GoogleのAndroidをベースとし、中国の清華大学系ベンチャー企業BORQSによる拡張が加えられています。そのため、中国向けにOPhoneを販売しているメーカーも、中国国外では、ほぼ同じ製品をAndroidスマートフォンとして販売している場合が多くあります。

 OPhoneのユーザーインターフェイスやアプリケーションは、大幅にカスタマイズされています。標準のメニュー画面は、iPhoneによく似たデザインの「Tidy Home」が表示されるようになっています。

 OPhoneのバージョンには、2010年10月現在で「1.0/1.5/2.0」が存在していますが、1.0と1.5は、Android 1.0と1.5をそれぞれベースにしているにも関わらず、Androidでは2.Xで対応した、マルチタッチ操作が可能となっています。

 OPhoneのAPIはAndroidに準拠しており、Android用のアプリケーションは基本的に動作しますが、OPhone専用の拡張APIも用意されており、OPhone専用のアプリを作ることも可能です。OPhone独自の拡張機能としては、携帯電話内にある住所録といったデータのローカルサーチ、テレビ電話、メッセージングサービスの「飛信」、中国規格のデジタルテレビ(CMMB)受信機能などがあります。このうち「飛信」とは、SMSの仕組みを利用したメッセンジャーです。携帯電話とはSMSで、パソコンやPDAとは飛信クライアントソフトを使ってメッセージのやり取りができる、中国では人気のサービスです。

 また、OPhoneは、ウィジェットの仕組みとしてAndroidウィジェットではなく、JILを採用していることも特徴の1つです。「JIL」は、ソフトバンク、ベライゾン・ワイヤレス、ボーダフォングループなどが立ち上げた携帯電話用ウィジェットプラットフォームです(ただし、JILの活動は、今年7月、他社が立ち上げた「WAC」と合流しています)。チャイナモバイルのフィーチャーフォンもこのタイプのウィジェットを採用しています。中国製のウィジェットも多く公開されており、OPhoneでも、同じチャイナ・モバイルのケータイで使えていた資産を継承しているわけです。

 そのため、OPhoneにはAndroidのDaliと一般的に携帯電話に使われているJ2MEの両方のJava仮想マシン(VM)が搭載されています。

OPhoneは、プラットフォームとしてはAndroidを採用し、独自の拡張とJILウィジェット互換機能も

 OPhoneでは、GmailやAndroid MarketといったGoogleのサービスにアクセスするアプリケーションは削除されています。その代わりに、「139メール」や「Mobile Market」といったチャイナ・モバイル独自のサービスへのアイコンが標準で登録されています。これは中国ユーザー向けのローカライズという側面もさることながら、Googleの各種サービスは、政治的な事情から中国国内からはアクセスできなくなることも多く、ユーザーに使用を薦めるのが難しい、といった事情もあるようです。

 



(大和 哲)

2010/10/12 12:10