第482回:au Wi-Fi WINカードとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


au Wi-Fi WINカード

 auのサービスである「Wi-Fi WIN」は、auの携帯電話で、携帯電話の電話ではなく、自宅のブロードバンド回線に繋がる無線LANルーターや、街中の公衆無線LANスポットを経由して、高速なインターネット通信を利用できるというものです。

 対応機種として、これまでに「AQUOS SHOT SH008」「AQUOS SHOT SH006」「BRAVIA Phone S004」「REGZA Phone T004」「biblio」が登場していますが、このうち「BRAVIA Phone S004」「REGZA Phone T004」の2機種では、「au Wi-Fi WINカード」が別途必要となります。

 今回紹介する「au Wi-Fi WINカード」は、microSDメモリカードと同サイズの、携帯電話向け無線LANインターフェイスカードです。

 ミツミ電機製のこのカードは、Atheros Communications製の無線LANチップを搭載し、IEEE 802.11b/gに準拠しており、最大54Mbpsで通信できます。

 実際のデータ転送速度は、無線LANの電波状況などにより変化しますが、携帯電話の回線を利用したパケット通信と比較するとかなり高速と言えるでしょう。

microSDIOカード型の無線LAN

 au Wi-Fi WINカードは、いわゆるmicroSDIOカードの一種です。「microSDIO」とは、microSDサイズのSDIOカードです。SDカードにはメモリカードのほかに、「SDIO」とよばれるタイプのカードがあります。SDIOの“IO”とは、「Input/Output」(インプット、アウトプット)のことで、“外部との入出力”を意味します。SDIOは、メモリとして情報を記録するのではなく、その代わりに周辺機器やネットワークとのデータをやり取りできるのカードです。

 現在では、SDIO対応製品として、無線LANやBluetooth、GPS、デジタルテレビチューナー、指紋認証デバイスなどさまざまな機器が登場しています。

 一方、microSDカードでもSDカードやminiSDカードと同じく、メモリカードのほかにSDIOカードを設計できる規格になっています。

 SDIOの仕様は、「SDIO Card Specification」として、SDメモリーカード同様に、SDカードアソシエーション(SDA)が定めています。2010年現在のSDIOのバージョンは「SDIO Card Specification ver2.0」で、2007年に策定されたものです。

 SDIOカードはSDメモリカード同様の大きさ、電圧などの物理規格を持ち、物理的にはSDカードスロットにそのまま挿入することが可能です。

 また、SPIモード・1ビットデータ転送モード・4ビット転送モードといったSDメモリカードと同様のモード切替なども定められており、SDメモリカード関連の設計をしたことのある技術者であれば、SDIOに対応したIOを設計するのも比較的、楽と言えます。ただし、SDIOには、メモリにはない操作、たとえば通信の初期化などの処理が必要です。メモリカードと同様のファームウェアで操作できるわけではありません。

 物理的には利用できる大きさでも、ホスト側、つまり携帯電話本体がSDIOに対応できるように作られていないと、SDIOカードが利用できません。

 au Wi-Fi WINカードの場合も、携帯電話本体がこのカードに対応した機能を搭載していなければいけません。現時点では「S004」「T004」のみで利用可能で、microSDスロットを搭載している他の機種では利用できません。

 



(大和 哲)

2010/8/31 12:13