第481回:iC通信とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


マークを合わせてデータを送受信

 「iC通信」とは、NTTドコモのおサイフケータイに搭載されている機能で、携帯電話同士をかざすだけでアドレス帳や写真などのデータをお互いにやり取りできます。FOMA 903i/703iシリーズ以降、多くの機種で利用できます。

 NTTドコモだけではなく、auの「Touch Message」も同様の機能ですし、ソフトバンクやウィルコムのおサイフケータイでも同じような機能が用意されています。これは、FeliCaチップのAd-hoc通信機能を使用した機能です。公式にはサポートされていませんが、キャリアの垣根を超えてデータを互いにやりとりできるものもあります。

 「iC通信」を使ってデータを送信する場合は、送りたいデータのサブメニューからiC通信の「送信」を選択した上で、相手のケータイとFeliCaプラットフォームマーク部分を重ね合わせます。

 受信側は、とくに操作することなく、送信しようとする携帯電話とFeliCaプラットフォームマークを重ね合わせるとデータを受信しますので、受信完了後、保存操作を行います。送受信できるデータの種類は、アドレス帳やメール、スケジュール、テキストメモ、静止画、動画、PDF、トルカなどです。

 携帯電話には、赤外線通信などの機能を使ってアドレス帳データや静止画などの交換が可能ですが、iC通信のメリットは、そのスピードと手軽さです。

 携帯電話の赤外線通信の場合、光を使ってやりとりする関係上、送信部受光部をしっかり近づけて通信をしなければならないうえ、一部機種では高速なやり取りができるものはありますが、速度は115kbps程度のスピードでの通信が一般的です。一方、iC通信の場合、微弱な電波を使ってデータをやり取りするのでFeliCaプラットフォームマークを合わせるのは、赤外線と比べると大まかな位置でよく、最大424kbpsで通信できます。

アドホック通信を利用

 モバイルFeliCaのアドホック(Ad-hoc)通信は、モバイルFeliCa OS Version 2.0以降が対応している、三者間通信機能の拡張機能です。

 モバイルFeliCa OS Version 2.0以降を搭載したモバイルFeliCaでは、さまざまな機能やメモリ容量が追加になったうえに、通信速度も従来の212kbpsから424kbpsに向上しました。

 三者間通信とは、FeliCaリーダーライターから信号を端末内のFeliCaチップに送り、それをトリガーに端末内のアプリケーションを起動する実行する機能のことです。ちなみに「三者間通信」の三者とは「リーダーライター」「FeliCaチップ」「端末」のことを指しています。

 三者間通信対応の携帯電話向けサービスとしては、たとえば、トルカのような電子クーポンサービスが挙げられます。

 「トルカ」は、メールやFeliCaなどを使って、携帯電話で電子クーポンで取得するNTTドコモのサービスです。たとえば飲食店のレジにFeliCaリーダーライターが設置されており、携帯電話をかざすと、次回以降の来店時に割引、といったクーポンをおサイフケータイで受信できるようになっています。これは、リーダーライターによって、携帯電話内のFeliCaチップ、携帯電話内のトルカ対応アプリケーションを起動し、携帯電話内のメモリに割引クーポンのトルカデータを格納させています。

 iC通信では、アドホック通信モードで、送信側となった携帯電話内のFeliCaチップが、三者間通信でのリーダーライターの代わりとなり、まず受信側の携帯電話のFeliCaチップに信号を送ります。送信データは、受け取るかどうか確認してから受信側端末に登録されます。

 

(大和 哲)

2010/8/24 12:21