第432回:PND とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「PND」とは、持ち運びできる簡易タイプのポータブルナビゲーションシステムで、安価な簡易カーナビとして世界中でよく売られています。車や自転車などに取り付けて、地図を表示しながら、音声で道案内を行わせるなど簡易的カーナビとして使うことができます。

 名称のPNDは、個人向けナビゲーション機器を意味する英語「Personal Navigation Device」とされますが、持ち運び可能なナビゲーションデバイス「Portable Navigation Device」の略称と説明されることもあります。

 一般的なPNDの形は、6インチ以下の液晶パネルとコンピュータ、地図データを格納したSDカードなどを組み合わせ、車のフロントガラスやダッシュボードに設置できる小型機器になっています。

 電源は内蔵バッテリー、またはシガーソケットからの供給となっているなど、コンパクトなボディサイズとあわせて、持ち運んで、車に取り付けて簡単に使えるようになっています。海外では自動車のフロントガラスにPNDを取り付けられるところもあるようですが、日本国内では道路交通法により、フロントガラスにPNDを取り付けることはできません。

 日本国内では、「PND」という名称ではなく、SDカードを使っていることから「SDカーナビ」などという名前で売られていることもよくあります。

 据付型カーナビがジャイロや車速センサーを組み合わせて使うのが一般的であるのに対し、PNDは主に内蔵センサーのみで測位などを行っており精度は据付型よりも低くなっています。しかし、内蔵GPSアンテナの感度向上や、GPSだけでなく加速度センサー、地磁気センサーなどを組み合わせることで、最近は十分実用的な精度が確保できる製品も出てきました。

 国内の自動車でよく利用される据付型のカーナビと比べれば、PNDは非常に廉価です。海外の治安の悪いエリアでは、高価なカーコンポ類は盗難されやすいという事情があったり、性能がイマイチでも安価な製品が人気という事情もあって、廉価で取り外せるPNDがよく使われています。

 2005年ごろから欧州を中心にこのタイプの機械が普及するようになってきました。一方、同時期の日本では据付型カーナビが、すでに多くの車で利用されており、普及率が3割を超えている頃です。2005年、欧米日中での出荷台数はPND、据付型カーナビどちらも600万台ほどでしたが、2008年になると、据付型が1000万台程度の出荷であるのに対し、PNDは欧米や中国を中心に年間3500万台あまりが出荷され、急激に普及しました。日本でも前述のように「SDカーナビ」などという名前で、徐々に支持を集め、最近では出荷台数も増加しつつあります。

PNDと携帯電話の融合で、テレマティクス的な機能向上も

クラリオンのPND。WiMAXモジュールを内蔵することで通信経由で情報を取得する

 携帯電話では、特にスマートフォンなどを中心に、PNDど同等の画面サイズのものや、GPS機能を搭載していたり、GPSユニットを外付けできるものがあったりすることもあり、PND代わりにスマートフォン向けのカーナビソフトやサービスが提供されていることもあります。

 たとえば、ゼンリン・データコムはWindows Mobile用アプリ「いつもNAVI(PND)」というソフトを販売しています。これは、microSDカードにナビソフトと地図データを組み込んだもので、音声ガイドだけでなく、交差点や高速道路のインターチェンジ、ジャンクションでは方面看板や3D表示を行うなど、カーナビシステム並の分かりやすい案内表示で目的地までドライバーをナビゲーションすることができます。また、iPhoneをカーナビとして利用できる「全力案内!ナビ」といったアプリも登場しています。

 逆にPNDが携帯電話を取り込もうという動きもあります。据付型のカーナビ、たとえばトヨタのG-BOOK、日産自動車のカーウイングスなどでは、カーナビと携帯電話を繋いで通信し、さまざまなサービスを利用できるいわゆる「テレマティクス」サービスを始めていますが、同様にPNDでもITや通信機能とリンクして、さらに高度なナビゲーションを実現しようとしています。

 たとえば、2009年7月に行われた展示会「WIRELESS JAPAN 2009」では、UQコミュニケーションズのブースで、クラリオン製PNDのデモが披露されていました。

 「MiND」と呼ばれるこの機械では、WiMAX通信モジュールを搭載して、無線ブロードバンドインターネット接続を行い、その通信機能を利用して、簡易ナビから、GoogleMapsによる店舗情報の検索などを行う機能が利用可能となっていました。現在はSDカードなどの差し替えで行っている地図の更新などを、将来的には通信経由で行うことも検討されています。



(大和 哲)

2009/8/4 11:00