ケータイ用語の基礎知識

第883回:Android 9 Pie とは

 スマートフォン向けのソフトウェアプラットフォームである「Android」の最新バージョンは、2018年11月現在、「Android 9 Pie」です。

 グーグルのスマートフォン「Pixel 3/3 XL」などに搭載されているほか一部の機種でも、「Android 9 Pie」へのバージョンアップが提供され始めています。

 Androidはこれまでバージョンによって、「Jelly Bean」や「Marshmallow」など、お菓子に由来するコードネームが用いられてきました。を付けられて来ました。Androidでは「それは"Pie"となっています。

ユーザーの生活へ最適化

 「Android 9 Pie」が、これまでのバージョンと違うところは、自律的に端末が学習する機能が多く作り込まれていることでしょう。

 前バージョンにあたり「Android 8.1 Oreo」にもニューラルネットワークAPIが用意されましたが、Android 9 Pieでは自身がニューラルネットワークを初めとした機械学習を内部で広く応用している方向を打ち出しています。

 ユーザーにとって、もっともわかりやすい機能は「アダプティブバッテリー(バッテリー最適化)」と「アダプティブブライトネス(画面の明るさ最適化)」でしょうか。ユーザーが利用するアプリやサービスの頻度、環境などを学習して、バッテリー消費やディスプレイの明るさを自動的に調整してくれるのです。

 アプリに関しては、実行前にキャッシュしておきアクションを早める「App Actions」(アプアクション)という機能もあります。これは、ユーザーがアプリをどのように使うのか、その順番や状況をAndroid側が推察し、次の一歩を手助けしてくれるというわけです。たとえば仕事後にイヤホンを繋げば、音楽のプレイリストを表示したり、家族への電話を案内したりしてくれます。

 Android 8.1 Oreo で提供されたニューラルネットワークAPIの内容も強化されています。追加された機能は、要素ごとの算術演算、それに配列演算です。

AI以外の部分も強化

 いわゆるAI以外でも、Android 9 Pieではさまざまな改良が施されています。

 開発者向け情報でも大きく取り上げられているのは、Wi-Fi RTTによる屋内位置測位です。

 Android端末で3カ所以上のRTT対応Wi-Fiアクセスポイントの距離が判定できれば、マルチラテレーションアルゴリズムを使用して、その端末の場所を推定できるというものです。

 1~2m程度の精度で特定できると見られます。GPSのような衛星を使った現在地測位ができない屋内や地下街、ブレがちな高層ビル街での効果が期待できそうです。

 アプリケーション側で、ディスプレイのノッチ(切り欠き)に対応できるようになりました。

 カメラ機能では、複数のカメラデバイスをOSとして正式にサポートしています。2つ以上のカメラのストリームに同時アクセスできます。デュアルフロントまたはデュアルバックカメラが搭載されている端末では、シームレスなズーム、ぼかし、立体視など、単一のカメラでは実現できない画期的な機能を実現できます。APIを使うと、論理カメラストリームや、2つ以上のカメラを自動的に切り替える融合カメラストリームを呼び出すこともできます。USB接続のカメラ(UVC)も利用できます。

 このほかIEEE 802.11mc WiFi プロトコルがプラットフォームでサポートされています。これは、Wi-Fi Round-Trip-Time(RTT)とも呼ばれ、アプリから屋内位置測定を使えるようにするものです。

 Android 9 では、デフォルトでハイダイナミックレンジ(HDR)VP9 Profile 2 が組み込まれておりYouTube や Play Movies などのソースから(HDR 対応端末であれば)そのままHDR ムービーを表示できます。
 画像フォーマットとしてはHEIF画像に新たに対応しました。HEIF画像はiOS搭載機器がデフォルトで使用しているのでご存じの方も多いでしょう。

 他にもマナーモードの改善(通知ランプや、ステータスバーも表示しないマナーモードを設定できる)、GIF・WebPアニメーションの表示、など数多くの改良がAndroid 9 Pieには施されています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)