NTTドコモは17日、茨城県ひたちなか市共催のもと、笠松運動公園にて大規模災害に備えた「NTTドコモグループ総合防災訓練」を行った。
■ 茨城県沖を震源とする地震を想定した総合防災訓練
2002年から数えて7年目(6回目)となる今回の訓練は、午前8時に茨城県沖を震源とするマグニチュード6.8の海溝型地震により、ひたちなか・水戸地域を中心に甚大な被害が発生、ひたちなか市の基地局が停電し、交換局の伝送路が故障により寸断されたという想定で行われた。災害による悪路で一般車両が被災地に入れないため、ヘリコプターや陸上自衛隊の車両で物資を運搬するとともに、東北、関東地方各地から緊急車両が集結し、臨時の無線基地局を開設、停電した基地局を復旧させるというシナリオだ。笠松運動公園を被災地に見立て、 NTTドコモ本社(千代田区)の災害対策本部、品川のネットワークオペレーションセンターの3箇所を連携させての訓練となった。
NTTグループにおける災害訓練では、すでに陸上自衛隊が参加しているが、NTTドコモグループの訓練としては、今回が初めての参加となる。これは2008年3月、NTTドコモと陸上自衛隊東部方面隊との間で「災害時相互協力協定」が締結されたことによるもの。協定により、災害発生時は自衛隊が機材の運搬に協力し、NTTドコモからは現地の隊員に携帯電話の貸し出しなどが行われるという。
NTTドコモ 茨城支店 支店長 市川正明氏が主催者を代表して挨拶し、続いて茨城県知事 橋本昌氏によるメッセージ読み上げられ、訓練が開始された。
訓練では、白バイらに先導されて、合計10台の移動基地局や移動電源車が被災地に見立てたエリアに移動した。この移動基地局や移動電源車は、群馬支店に配備されている衛星エントランス搭載の移動基地局を含め、埼玉支店、栃木支店、千葉支店、多磨支店、東北支社、神奈川支店、山梨支店、茨城支店の各支店に配備されているもの。
被災地に見立てたエリアでは、通信ラインの復旧作業が手際よく行われ、民間のヘリコプターによるマルチチャージャーならびに衛生携帯電話の輸送、自衛隊車両による発動発電機の運搬、大型ビジョンを用いた報道形式の中継や、災害対策に関する説明、茨城県生活環境部 消防防災係長 生源寺貴之氏による、茨城県で想定されている災害についての説明などが行われた。通信ライフライン復旧後は、NTTドコモ 取締役常務執行役員 二木治成氏が挨拶した。
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災害対策室長の伊藤氏
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茨城支店の市川氏
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ドコモの二木氏
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被災地とされた会場
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災害対策の取組み
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信頼性向上対策
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火災防護対策
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通信の信頼性向上に用いられる設備
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サービスの早期復旧
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サービスの早期復旧に向けた災害復旧用移動車両
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重要通信の確保(災害時優先電話)
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重要通信の確保(災害時優先電話)
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■ 災害対策で大切な3つの柱
訓練開始前に報道陣向けに行われた説明会では、ドコモの災害対策室長の伊藤正憲氏がNTTドコモの災害対策についての取り組みや、新潟県中越沖地震等への対応、災害時の情報伝達や取り組みについて説明した。
災害対策については「ネットワークの信頼性向上対策」「サービスの早期復旧」「重要通信の確保」の3点を大きな柱に対応していくと語り、大規模災害にも耐えうるネットワーク構成になっていること、移動基地局車や移動電源車などの緊急車両を全国に配備していること、早期復旧に向けた組織や協力体制を設け、緊急連絡手段が確保されているなど、さまざまな対策を講じていると解説した。
茨城支店の市川氏は「2004年の新潟県中越沖地震、2007年の能登半島地震、三重県中部地震、新潟県中越沖地震、本年の岩手・宮城内陸地震、岩手県沿岸北部地震においても、重要通信の確保はもとより、メールによる安否確認や一斉同報配信の重要性が改めて認識された」と語り、実際に発生した災害への対応から学んだ部分が大きいことを強調。「茨城で実施するのは初めて。ぜひこの機会にNTTドコモの防災の取り組みをご覧いただきたい」とした。
また、茨城県知事 橋本昌氏は「県としても非常に心強く感じている。通信手段の確保は、災害情報の収集・伝達、被災者の救出活動など、さまざまな応急対策に必要不可欠。通信事業者の果たす役割は大きい。県としても安心して暮らせる茨城作りを目指したい」とメッセージを寄せた。
訓練途中で大型ビジョンに登場した茨城県生活環境部 消防防災係長 生源寺貴之氏は、茨城県における地震対策について解説。茨城県の災害の特徴として「多数の死傷者を伴う災害が少ない」としながら、「地震の発生率は高い」と指摘。今年はすでに震度4以上の地震が8回発生していると述べ、大地震に備えて日頃から備えておくことや初動対応の重要性を説いた。
このほか、終了の挨拶を行ったNTTドコモの二木治成氏は、災害対策三原則として、改めて「ネットワークの信頼性向上対策」「サービスの早期復旧」「重要通信の確保」の重要性を強調した。7月1日にNTTドコモグループが1社化されたことや「災害時相互協力協定」についても言及し、「連携強化が図れるのではないか」と期待を寄せるとともに、「安心、安全をより深めたい」と語った。
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中継される災害対策本部の様子
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到着報告を行う各復旧班
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白バイに先導されて移動する支援車両。全国で移動基地局は52台、移動電源車は65台が各地に配備されている
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群馬支店の衛星エントランス搭載移動基地局
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支援車両の役割を説明する伊藤氏
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配置についた各復旧班
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配置についたことを本部に報告
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NTTドコモ現地災害対策本部
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NTTドコモの訓練に初めて登場した陸自の車両。発動発電機を積んでいる
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発動発電機を運ぶ陸自の隊員
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復旧班が発動発電機を基地局に接続
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移動基地局のアンテナを伸ばすスタッフ
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素早くアンテナが用意された
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衛星エントランス。国内では1台のみ。現在は群馬支店に配備。防災計画次第で配備場所が都度変わるという
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マルチチャージャーと衛星携帯電話を輸送中の民間ヘリコプター
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物資を素早く積み替える
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物資到着を本部に報告
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作業完了を本部に報告
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■ 今後は基地局とアンテナ間の無線化が課題
訓練終了後、災害対策室長の伊藤氏は「段取り通りのすばやい訓練ができた。災害発生時の迅速な設置訓練もさることながら、実は現場における各支店間の交流にも役立っている。すばやい対応には、まず現場でのコミュニケーションや和が大事」とコメントした。
さらに、今後強化したい点については、「基地局とアンテナ間の伝送路の無線化」とした。今回の訓練では、基地局とアンテナをつなぐ光ケーブルが切断されたと仮定されており、移動基地局車を派遣するなどの対応を行ったが、光ケーブルが切断されても無線に切替えて対応できるようにすることで、災害に強いインフラづくりを目指す構えだ。対応については、優先度の高いエリアから随時行っていくとした。
会場では展示コーナーも設けられ、災害時に役立つ通信機器やサービスが紹介された。
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基地局に見立てて用意されたオブジェ
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展示スペースではエリアメールを紹介
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動画が中継できる「Smart-telecaster Nowテレビ」
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H.264とFOMA網を用いて映像を高画質で送信できる映像伝送装置「mmEye-DX」
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デュプレスター
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携帯電話診断サービス
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マルチチャージャー
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衛星電話「ワイドスター・デュオ」
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3Gと無線LANを内蔵した通信機能付きヘルメット「Uメット」。先端のカメラを使い、リアルタイムに動画が送信できる
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Uメットのひさしの裏側
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陸自が運んだ発動発電機
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■ URL
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
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(すずまり)
2008/10/17 22:08
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