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クアルコム、次世代通信技術やチップセットの動向を紹介

 15日、米クアルコムCOO兼半導体部門 プレジデントのサンジェイ K. ジャ博士が来日し、報道関係者向け説明会が開催された。半導体を中心とした同社の戦略が明らかにされ、次世代通信技術などへの展望が語られた。


CDMA2000の進化

クアルコムのジャ博士

クアルコムのジャ博士
 国内では、auが通信技術としてCDMA2000方式を導入し、CDMA2000 1x(サービス名はCDMA 1X)、続いてEV-DO(サービス名はCDMA 1X WIN)が利用されている。2006年冬からは、上りの通信速度を向上させたCDMA2000 1xEV-DO Rev.Aが取り入れられているが、クアルコムでは、その進化版として、下り最大14.7MbpsとなるRev.Bを開発している。今回のプレゼンテーションで披露されたロードマップでは、「Enhancements」と名付けられた通信方式がRev.Bの次に位置している。

 EV-DO Enhancemetsでは、干渉の制御などによって更なる高速化が図られており、下り最大34.4Mbps、上り最大12.4Mbpsという通信速度が実現できるという。また、CDMA2000 1xEV-DO Enhancementsの特徴として「Femtocell enhancements」も示されている。Femtocell(フェムトセル)とは、室内などに設置できるサイズの小型基地局を意味する言葉だが、ジャ博士は「今後はフェムトセル専用のベースステーションのような製品の開発を検討している。またフェムトセルとマクロセル、あるいはフェムトセルとマクロセルとピコセルというものを1つのネットワークとして認識できるような仕様の開発を進めている」と述べた。

 EV-DOはデータ通信に注力した方式だが、そのベースとなったCDMA2000 1xでも「CDMA2000 1x Enhancements」という技術があるという。こちらでは、音声通話の最大容量の向上が可能とされており、従来は1基地局あたり35回線の同時通話が可能だったが、Enhancementsでは55回線の同時通話が可能とのことで、2009年中頃にも登場する予定という。同社では、比較的低コストで、大きな効果が得られるとして、通信事業者にアピールしていく。


CDMA2000のロードマップ 導入時期のイメージ
CDMA2000のロードマップ 導入時期のイメージ

HSPA+、LTEにも注力

HSPA+にも注力

HSPA+にも注力
 一方、W-CDMAの進化系であるHSPDA/HSUPAを、さらに発展させる「HSPA+」という技術については、2008年後半にも試験が実施されるとの見通しが示された。クアルコムでは「MDM8200」というチップセットでサポートしていく考えで、オペレーターからは、ローコストかつ自然な進化として、反響があるという。

 国内の携帯電話の多くは、第3世代(3G)に位置付けられる通信技術を使っている。たとえばNTTドコモやソフトバンクモバイルが導入するHSDPAは、3Gの進化版ということで3.5Gと呼ばれることもある。3Gの次にあたる通信技術は、第4世代(4G)ということになるが、4Gはまだ標準化されておらず、世界の通信関連事業者からは4Gの1つ手前にあたる「3.9G」の技術に注目が集まっている。

 W-CDMA陣営の3.9GはLTE(Long Term Evolution)と呼ばれ、NTTドコモなどが積極的に開発を進めている。クアルコムでは、CDMA2000の進化の先に位置する通信技術として、UMB(Ultra Mobile Broadband)を開発しており、UMBはLTEの対抗馬と目されることもある。

 ジャ博士は、「次世代技術が話題だが、多くの通信事業者からすれば、現行資産を最大限に活用するのが現実的。CDMAベースの技術もできるだけ下位互換性を含めながら開発していく。LTEは2011年頃の導入とされるが、たとえば日本市場で3G導入後もPHSやPDCが長く続いたように、LTE導入後もそれ以前の通信方式がかなりの期間、続くのではないか。Rev.AやRev.Bは、CDMA2000を進化させるもので、これらの技術は(通信事業者の選択肢として)現実的ではないか」と述べた。

 LTEとUMBについては「クアルコムは、UMBの開発を主導してきたが、現在、多くのオペレーターの決定待ちという状態。UMBが成功するかどうか、待っているところだ。もちろんLTEも重要視しており、その開発も進めている。WiMAXが話題だが、LTEはその上にくると思う。LTEの開発を行ないながら、UMBの規模がどうなるか検討している。次の技術がどうなるかわからず、各事業者によって選択基準は異なるだろうが、各事業者はスペックの高い方式を選ぶだろう」と説明した。

 3.9Gの世界的な動向について、ジャ博士は「LTEについては、NTTドコモが積極的に進め、米国ではVerizon、欧州ではT-Mobileが進めているが、各国・各社の状況で決定されること。その一方で、たとえば欧州の多くの事業者では、『現状の資産を進化させて、できるだけ活かす』という意向があるのも実情」と述べた。


Snapdragonは「モバイルコンピュータ向け」

 クアルコムが開発する「Snapdragon」は、1GHzのCPU「Scorpion」や600MHzのDSP、GPS機能、無線通信機能、HDクラスの映像再生機能などを統合したチップセットだ。既にサンプル出荷は開始されているが、現時点での想定デバイスとして、ジャ博士は「ポケットサイズのモバイルコンピュータに期待している」と説明する。いわゆるUMPCのような機器がイメージされており、Snapdragonの特徴は低消費電力性能にあるという。

 パソコン向けプロセッサを多く手掛けるインテルでも、同じカテゴリーの製品に対するプロセッサを開発しているが、Snapdragonの優位性については、クアルコムCDMAテクノロジー部門SVPのルイス ピネダ氏は、「インテルはプロセッサー能力からのアプローチだが、Snapdragonは消費電力を考えたアプローチ」と説明。同氏は「Snapdragonは、消費電力を抑えながら、HDクラスの映像に対応し、3G網で通信できる。このあたりはインテルのチップよりも優れた部分ではないか」とした。

 このほか、ノートパソコン向けのソリューションとなる「Gobi」も紹介された。これは、HSDPA/HSPDAとEV-DO/EV-DO Rev.A、GSMをサポートする通信モジュール。広域の高速無線通信技術としてWiMAXが注目される中、クアルコムではGobiをパソコンメーカーに提供する考えで、実現すれば、既存の携帯電話網を活用できるノートパソコンが登場することになる。ジャ博士によれば、日本や米国、中国のように複数の通信方式が導入されている国の事業者から関心が寄せられているとのことで、「ノートパソコンメーカーからすれば、NTTドコモとKDDI、両方のネットワークが使えるということになる」とメリットをアピールした。


SnapdragonはUMPCのようなモバイル機器向けになるという HD映像の再生に対応するなどハイスペックながら、低消費電力が特徴という
SnapdragonはUMPCのようなモバイル機器向けになるという HD映像の再生に対応するなどハイスペックながら、低消費電力が特徴という

既存の通信網を活かせるノートパソコン向けソリューション「Gobi」 BREWのほかLinuxやAndroid、Windows Mobileなどもサポートしていくという
既存の通信網を活かせるノートパソコン向けソリューション「Gobi」 BREWのほかLinuxやAndroid、Windows Mobileなどもサポートしていくという


URL
  クアルコム
  http://www.qualcomm.co.jp/

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(関口 聖)
2008/05/15 18:23


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