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イー・モバイル千本氏、携帯事業に向けて熱のこもったスピーチ
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イー・アクセスの代表取締役会長兼CEO、イー・モバイルの代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏
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「ブロードバンド時代はいずれモバイルにも来る。そう思ってイー・モバイルを設立した」。INTERNET Watchの創刊10周年を記念したシンポジウムにおいて、イー・アクセスの代表取締役会長兼CEOで、イー・モバイルの代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏が語った。
昨年11月、イー・モバイルは、ソフトバンク傘下のBBモバイルや、アイピーモバイルらとともに、携帯電話事業への新規参入が認められた。「2006年ケータイ大競争時代の幕開け」と題した今回の講演はまず、同氏の経歴紹介からスタートした。日本電信電話公社(現NTT)の技術者だった千本氏は、1984年に第二電電(DDI)の設立に参画、DDIはその後KDDIに成長する。
それから国内外の大学で教授や研究員を務めた同氏は、1999年にADSL事業を展開するイー・アクセスを創業。現在では、ニフティなど約30社のインターネットサービスプロバイダー(ISP)に回線のホールセールを行なう、ブロードバンドサービスの一翼を担う存在となっている。
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イー・アクセスの会社概要
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イー・アクセスは固定から携帯ブロードバンドへ
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2005年1月、イー・モバイルは、モバイルでのブロードバンドサービスを展開しようとに設立された。W-CDMA方式でサービス提供する予定で、高速なデータ通信が売り物のモバイルサービスが展開されると見られる。
千本氏は、かねてより合計1,000億円の出資を受けると語っており、イー・アクセスが約450億円を出資したほか、放送事業者ではTBSが約100億円、米Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)や吉本興業グループが約325億円を出資、現時点で約878億円の資金を調達したと語った。また、これに加えて約2,000億円のデッドファイナンス(借入金)も用意するとしており、合計で3,000億円規模の資本を元に事業展開するとした。
しかし、こうした資金をイー・モバイルのようなベンチャーが獲得するのは大変珍しいことだという。同氏は、「かつてDDIや、NTTドコモなどを作ることにたずさわったが、世界の移動体事業は巨大な企業が作っている。ベライゾンワイヤレスはベライゾンが本体であるように、NTTドコモにはNTTがいる。常に大企業の裏書きの下、子会社として移動体事業は設立された」と説明。ベンチャーが資金を調達するために、オープンな環境が重要とした同氏は、イー・モバイルでは、千本氏を含む社内取締役3人のほかに、欧州、米国、アジア圏など国内外から7人の社外取締役を設置しているという。
また、ライブドアの騒動を臭わせて「今問題を起こしているような、日本の会計制度の矛盾をつくような会社ではなく、日本で世界からアクセプトされるような、世界の機関投資家が出資してくれるような会社を作っていきたい。社外取締役が多いのも透明性を確保するため。専制政治はある時点では効果的かもしれないが、長期的に見れば民主的な方が効率的だ」とした。
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携帯市場は、8.5兆円市場を3社で独占
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資本状況
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■ 最低でも数Mbpsの環境を保証
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イー・モバイルの事業戦略
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MVNO方式で、固定通信のようにホールセールも積極的に行なうという
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「事業戦略としては高速データ通信に注力していきたい」と語った千本氏は、自身が元々作った会社であるウィルコム(旧DDIポケット)のヘビーユーザーだと語り、「数MB程度のファイルを受信しようとするとスタックしてしまい、次のメールにいかない。これは非常にフラストレーションがたまる。日本のビジネスマンは、家庭でも数十Mbpsのデータ通信ができるのに、モバイルだと数十kbpsの世界。我々が来年サービスを開始する際には最低でも数Mbpsの環境を保証したい」とした。
同社では、3.5Gとも言われる下り十数Mbpsが実現できるHSDPA方式を「メインの1つとして提供する」という。ただし、スタート時よりHSDPAとなるかについては明言を避けた。
同社の戦略では、高速データ通信とともに、「既存携帯電話事業者が提供していない、高付加価値のアプリケーションサービスを提供する」としている。しかし、ライバル他社との兼ね合いもあるため、今回の講演では具体的な手の内を見せることはなかった。同氏はこの中で、「インテルは次の戦略で、パソコンから明らかにモバイルにシフトしている。WiMAXを牽引しているのはインテルだ。これらとの連携を図って進めている」と話した。
このほか、FMC(Fixed Mobile Convergence)サービスについても言及し、「放送などと連携したシームレス化を図る」とした。TBSが出資した要因も放送とFMCなどとの連携にあるという。
■ W-CDMAの先にWiMAX
講演の中で千本氏は、イー・モバイルが展開するW-CDMAサービスの先に、標準化が進められているWiMAXがあるとした。ただし、「WiMAXが世界の大きな潮流になるのはこれから2年後」とも語っており、「3Gのブロードバンド事業者がどのように融合していくかが最大のポイント。WiMAXだけで全国津々浦々をカバーするというのは、我々通信のプロからすれば現実的ではない話だ」とした。
また、「WiMAXは、今日本でも世界でも現実には存在していない。日本の一部の事業者がWiMAXを展開していると言っているが、あれは実際はWiFiだ。ITUでも標準化が終わっていないし、日本ではWiMAXの周波数帯さえも定められていない。日本の今のWiMAX議論はまだまだ嘘のWiMAXだ」とした。
このほか、講演終わりの質疑応答でHSDPAについて問われると、「HSDPAは我々のメインになる。ウィルコムの100kbpsオーダーから、おそらく今年から来年にかけてモバイルの環境は数Mbpsのオーダーになっていく。ただ、ドコモのW-CDMAは世界標準とはずれている。僕はドコモが日本の携帯電話事業をつぶしたと思っている。かつては日本の携帯電話は世界一だったが、今は海外では日本メーカーの携帯電話を置いていない。日本のケータイが国際性を失ったのはPDCのせいだ。今回も世界のW-CDMAとはずれているため、NECやパナソニックが外に出て行けない。NECやパナソニックは、ネガティブスパイラルに入ってしまった。我々が携帯事業をやることで、標準化したオープンなものを提供して、ネガティブスパイラル打破していきたい。これは、既存の事業者やメーカーではなかなかできないのではないか」と携帯事業に対して熱のこもったスピーチを行なった。
■ URL
イー・モバイル
http://www.emobile.jp/
イー・アクセス
http://www.eaccess.net/
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(津田 啓夢)
2006/01/31 17:10
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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