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KDDI代表取締役社長の小野寺正氏
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KDDIは、2005年度上期(2005年4月1日~9月30日)の中間連結決算を発表した。連結営業収益は、前年同期比0.2%減の約1兆4,688億円でほぼ横ばい。営業利益は2.6%増の約1,667億円、経常利益は5.5%増の約1,649億円で、当期の純利益は30.3%増の約1,014億円。昨年譲渡したPHS事業の影響をほぼ吸収したという。
■ au事業は増収増益、解約率も過去最低に
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中間決算(連結)業績
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au事業は連結収益の3/4を占め、営業収益は対前年同期比10.4%増の約1兆1,178億円、営業利益も29%増の約1,852億円、当期純利益約1,113億円の増収増益。累計契約数は2,070万4,000件となり、9月末時点の累計シェアは23.2%、上期を通じた純増数はトップ(54.5%)を獲得した。また、CDMA 1X WIN端末についても9月末で555万契約と好調に推移しており、パケット定額オプションの契約者率は82%となっている。
さらに、第2四半期には解約率も過去最低の1.21%まで減少した。KDDI代表取締役社長の小野寺正氏は、解約率の低下について「今後、ナンバーポータビリティが始まるまではさらに下がるのではないか」と語った。第2四半期のトータルARPUは、7,190円で前年同期比1.5%ダウンとなったが、データ通信ARPUは9.2%上昇している。このほか9月28日には、着うたフルの累計ダウンロード数が2,000万曲を突破した。
小野寺氏は、好調なau事業には現状で大きな懸念材料はないとしたが、下期の課題として、着うたフルやナビゲーションサービスといったauサービスと定額料金サービスを合わせて訴求することや、ナンバーポータビリティに向けて家族割サービスを強化し、幅広い年代層からの顧客獲得を目指すこと、電池パックの交換サービスといったリテンション施策などを挙げた。
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au事業の業績
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純増数と解約率の推移
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■ 小野寺氏、auへの乗換え優遇サービスの一時中断を謝罪
一方、10月1日付けでKDDIに合併されたツーカー事業は、前年同期比15%減の営業収益約1,013億円、営業利益約106億円となった。小野寺氏は、同社が行なっていた、ツーカーからauへの乗換え優遇サービスが18日から一時中断している件で謝罪。「想定の倍以上のユーザーが申込みを行なったため、受付体制が追いつかない。我々の予測が甘かった。同番でauに移行できることに関心がある人たちがどれぐらいいるのか正直つかめていない。現在調査しているが、なんとか早期に再開したい」と説明した。なお、投資家向けの決算発表会では、「ナンバーポータビリティの前にいい勉強になった」と語っていた。
また、ツーカーの販売代理店に関して、今後の見通しにも触れ、「現状はツーカーの新規契約も取っているし、auへの切替えも行なわれている。1次代理店はauともほぼ関連があるため、2次代理店の整理については1次代理店側での判断となる。ナンバーポータビリティの際にはおそらく受付窓口が多い方が有利なため、早急に対策を行なうつもりはない」とした。
なお、auとツーカーの契約数を合わせたKDDIの携帯電話市場でのシェアは現状27%。小野寺氏は「ツーカーを合併したことで重複していた部分を整理した。早期にシェア30%を実現したい」とコメント。同社は中期的にシェア30%超を目指す考えだ。
■ au好調も通期の連結業績予想は変更無し
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今後の課題
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固定通信事業は、営業収益が約2,862億円、営業利益は295億円の減益となった。低迷する原因は、第1四半期決算の際と同様、メタルプラスの拡販による費用増とのこと。なお、メタルプラスは販売エリアの拡大が遅れたため、9月末時点の回線数は約68万回線。下期は販売エリアを拡大し、早期開発を目指すほか、パワードコムの合併、および東京電力とのFTTH事業統合サービスに向けて準備を進めていくとしている。
なお、通期の業績予想について小野寺氏は、auは好調を維持するが、低調な固定通信事業に第4四半期にはパワードコムが加わるため、現在揚げている予想からの変更はないとした。
会見では、今後の移動通信と固定通信の融合を目指す“FMC”(Fixed Mobile Convergence)についても言及があった。小野寺氏は「ユーザーから見ると、固定も携帯もない。固定と携帯の単純な料金のバンドル化では意味がない。固定と携帯の両方を持つ強みを活かしてシームレスなサービスを展開していきたい」と述べた。KDDIでは、まず固定網でのIP化を先行して実施し、2008年3月末には固定網のIP化を完了させ、その後携帯電話もIP化した上で、統合的なFMCサービスを提供する予定だ。
なお、小野寺氏はFMCについてもう1歩踏み込んで、「1つの電話番号で携帯電話にも固定電話にも繋がることを本当にユーザーが求めているのか疑問だ。家にかかってくる電話は極端に言えば家族の誰が出てもいい電話で、携帯の場合は個人宛だ。そういう意味でのワンナンバー化には意味がない。携帯電話に出られない場合に、固定電話に転送するといった需要は十分にあると思うので、慎重に見極めていきたい。FMCの本当のキーポイントは、音声ではなくITだ。ここの統合を図れば大きなメリットになるのではないか」との認識も示した。
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固定・携帯ともにIP化
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固定・携帯の両方を持つメリットを活かしてシームレスサービスを提供
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■ 小野寺氏、プッシュトークを牽制「PTTのみの定額は問題ない」
このほか、NTTドコモが発表した新サービス「プッシュトーク」について感想を求められた同氏は、「我々も準備を進めている。サービス開始時については話せる段階ではない」とし、プッシュトークの音声定額プランについては、「PTT(Push-to-talk)サービスを定額にしただけ、PTTだけの定額料金はあまり問題ない」と語った。
さらに、ボーダフォンから発表された1ユーザーのみに限定した音声定額サービスについては、「我々もやろうと思えばできるが、1対1といえども音声定額を用意することが本当にいいのか検討している。当面提供することは考えていないが、影響が大きければ考えなければならないだろう」とした。
また、他キャリアが提供中のサービスで、auが提供していないサービスでは、従来からテレビ電話機能が上がっていたが、KDDIでは、従来通り回線交換式のテレビ電話機能を提供しない予定。ただし、小野寺氏は「IPを使ったテレビ電話は検討、開発を進めている。しかし、正直言ってテレビ電話を標準にする必要はないと考えている」とも述べた。
各キャリアの3Gサービス競争が本格化して以降、au事業は好調に推移している。小野寺氏は「大きな懸念材料はない。ボーダフォンから魅力ある端末やサービスが出始めると、我々かドコモが喰われる分かれ目になる。そうなった場合は影響を受ける可能性が大きいのではないか」との見方を示した。
■ URL
KDDI
http://www.kddi.com/
決算発表の概要
http://www.kddi.com/corporate/ir/presentation/
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(津田 啓夢)
2005/10/21 20:02
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