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CEATEC JAPAN 2008から見えてくる「明日のケータイ」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 9月30日~10月4日まで、千葉県・幕張メッセで開催されている最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2008」。7月に開催されるWIRELESS JAPANなどと並び、ケータイ業界にとって、もっとも注目度の高いイベントのひとつだ。すでに、本誌レポート記事が公開されているが、今回は筆者が会場で見かけた各社の動向などについて、紹介しよう。


秋冬モデルではない新端末

斜め向かいに並ぶNTTドコモとKDDIのブース。このゾーンは特に来場者が多い

斜め向かいに並ぶNTTドコモとKDDIのブース。このゾーンは特に来場者が多い
 今年も恒例の展示会「CEATEC JAPAN」が千葉県・幕張メッセで開催されている。「エレクトロニクスショー」や「データショウ」、「コミュニケーション東京」など、個別に開催されていたいくつもの展示会が統合され、現在の「CEATEC JAPAN」という名称になって、9年目を迎える。気が付いてみれば、国内で開催される展示会としては、7月に開催されるWIRELESS JAPANと並び、数少ないIT及び通信関連を扱うイベントとして定着している。扱われる製品群は、AV機器や通信機器、パソコン、部品など、多岐に渡っており、今後の業界の動向を占う意味でも非常に重要なイベントでもある。

 ただ、ケータイ業界から見た場合、例年、秋冬商戦向けのモデルが11月以降に発売されるため、ちょうど夏モデルと秋冬モデルの端境期に当たってしまい、新端末や新サービスをいち早く見ることができるというタイミングではない。今年も例外ではなく、9月に発表されたいくつかの新製品を見ることができたが、当然のことながら、秋冬商戦向けのモデルはどこにも存在しなかった。あるメーカーの担当者が「Audio&Visual製品の秋冬商戦向けの新製品がこの時期に発表されるので、しかたがない」と諦め気味に話していたが、ケータイ業界にとっては、ちょっと残念なタイミングの展示会と言えるかもしれない。

 とは言うものの、キャリアとしてはNTTドコモとKDDI、端末メーカーではシャープ、パナソニック、NEC、東芝、富士通、京セラなどが出展しており、それぞれに将来を見据えた新しい技術やソリューションなどを数多く出品していた。ナビタイムやマイクロソフトといったケータイ業界との関わりが深い企業をはじめ、部品メーカーの展示など、見方によっては非常に興味深く、内容の濃い展示会とも言える。詳しい展示内容については、すでに本誌記者の記事が数多く掲載されているので、そちらを参照していただきたいが、ここでは筆者がCEATEC JAPAN 2008で気になった展示をピックアップして、紹介しよう。


NTTドコモが出品した「セパレートケータイ」。基本的なサイズは折りたたみデザインの端末に近い

NTTドコモが出品した「セパレートケータイ」。基本的なサイズは折りたたみデザインの端末に近い
 今回のCEATEC JAPAN 2008の会場の中で、もっとも来場者の高い注目を集めたとも言えるのがNTTドコモのブースだ。同社は今年5月に発表された906i/706iシリーズがすべて発売されたため、目立った新製品はなかったが、参考出品のコンセプトモデルの展示は行列ができるほど、人気を集めていた。

 まず、ブース内でもっとも注目を集めていたのが「セパレートケータイ」だ。折りたたみデザインの端末をベースにしたもので、ディスプレイ部とボタン部を必要に応じて、切り離したり、つないだりできるという富士通製のコンセプト端末だ。両ユニットの間はBluetoothで接続されており、物理的には内蔵された磁石で接続される。たとえば、端末を耳元に当て、通話をしているとき、メールを見たり、アドレス帳を参照しようとすると、通話を中断し、端末を耳元から離さなければならないが、ディスプレイ部が分離することで、容易に端末に保存された情報などを参照できるというわけだ。また、物理的に接続する方向を変更することにより、それに連動して、ボタン配列をテンキー配列からQWERTY配列に切り替えるモデルも出品されていた。富士通ブースにはセパレートケータイのコンセプトを活かした他のモデルも展示されていたが、かなり自由なレイアウトが考えられているようだ。

 実際の商品化については、ユニット間の物理的な接続をどうするか(磁石では心許ない)など、課題が多く残されているが、用途に応じて、複数のユニットを切り離したり、組み合わせたりするという手法はユニークであり、実際の利用シーンにもマッチしているため、何らかの形で次なる進化形を見てみたいコンセプトモデルと言えそうだ。


ディスプレイ部とボタン部の長辺を合わせて接続すると、キーはQWERTY配列のフルキーが表示される 富士通ブースには同じコンセプトモデルのバリエーションが展示されている
ディスプレイ部とボタン部の長辺を合わせて接続すると、キーはQWERTY配列のフルキーが表示される 富士通ブースには同じコンセプトモデルのバリエーションが展示されている

暗室内でデモが行われていたプロジェクターケータイ。映像コンテンツを楽しみたいときに便利そうな機能だ

暗室内でデモが行われていたプロジェクターケータイ。映像コンテンツを楽しみたいときに便利そうな機能だ
 セパレートケータイと並び、もうひとつ人気を集めていたのが「プロジェクターケータイ」だ。こちらは端末のボタン部側に小型のプロジェクターを内蔵したもので、端末の画面に表示されている情報をスクリーンに映し出せるものだ。端末に表示された情報を外部に出力する機能としては、すでにイヤホンマイク端子などを利用したAV出力機能が一部の端末に搭載されているが、AV入力端子を持つテレビやディスプレイが必要になる。これに対し、プロジェクターケータイであれば、本物のプロジェクターと同じように、ちょっとした壁などがあれば、映し出せるというわけだ。理想としては、今回のコンセプトモデルのように、一体化されている形が望ましいのだろうが、バッテリーなどを考慮すれば、むしろ、こちらこそがセパレートタイプであった方がいいという見方もできる。今回の反響ぶりを見ると、意外に周辺機器として、早い時期に登場することになるのかもしれない。余談になるが、部品ゾーンのシチズンブースではシチズンファインテックミヨタが開発した「T-LCOSマイクロディスプレイ」を利用したケータイ内蔵型のプロジェクターのデモも行われていた。


 3つめは「CEATEC JAPAN 2008」開催直前の9月24日に発表された「インテリジェントキー搭載ケータイ」だ。日産自動車、NTTドコモ、シャープの共同開発によるもので、日産車に採用されているインテリジェントキーの機能をケータイに取り込んだものだ。日産車に乗っている人ならご存知だろうが、日産車の多くではキーレスエントリーが採用されており、インテリジェントキーでドアロックの開閉ができるほか、インテリジェントキーを持ってクルマに乗り込めば、キーをさし込まなくてもエンジンが掛けられる。この機能をそっくりそのまま、取り込んだものが今回公開されている。今回の公開された端末はSH906iをベースにしているが、アンテナの干渉があるため、GPS機能を外すことで実現できているという。電源のON/OFFでの対応については、ちょうどFeliCaに近い印象で、端末の電池が完全に放電してしまうと、インテリジェントキーの機能は使えなくなってしまう。その他にもいくつか課題が残されているが、常に身近に持ち歩くケータイらしい機能と言えるだろう。


「高鮮鋭・高画質 映像拡大技術」は実機にQVGAサイズのムービーを表示。VGA並みとはいかないが、未処理のQVGAサイズよりは高画質に見える

「高鮮鋭・高画質 映像拡大技術」は実機にQVGAサイズのムービーを表示。VGA並みとはいかないが、未処理のQVGAサイズよりは高画質に見える
 NTTドコモの展示で、もうひとつ気になったのが「高鮮鋭・高画質 映像拡大技術」だ。低解像度の映像を高解像度のディスプレイに表示しても歪みやちらつき、ぼやけなどを抑えられるというもので、デジタル画像処理や手ブレ補正、顔検出などの技術で知られるモルフォとの共同開発による技術だ。たとえば、現在のワンセグはQVGAサイズで放送されているが、端末のディスプレイはVGAサイズが増えており、拡大表示をすると、どうしてもぼけた感じの映像になってしまう。これを少しでも高画質な表示にしようという技術だ。こうした取り組みは、ケータイだけでなく、液晶テレビなどのAudio&Visual製品でも行われており、今回のCEATEC JAPANでも東芝が同社の液晶テレビ「REGZA」に搭載された『超解像技術』として、デモを行っていた。ワンセグについては、30fps化や映像出力の最適化などが注目されてきたが、今後はこうした解像度を補完するような技術が家庭用テレビから取り込まれ、話題になるのかもしれない。


楽器との融合を目指したau design project

 実用性を考えたコンセプトモデルでアピールするNTTドコモに対し、おなじみのau design projectを積極的にアピールするのがKDDIのブースだ。今回は「オンガク スル ケータイ/ケータイ スル ガッキ」をテーマに掲げたコンセプトモデルを6つ出品している。


au design projectのコンセプトモデルとして出品された「voyage」。背面(?)側にソーラーパネルを装備する。衛星のようなデザインがカッコいい

au design projectのコンセプトモデルとして出品された「voyage」。背面(?)側にソーラーパネルを装備する。衛星のようなデザインがカッコいい
 ドコモブースのセパレートケータイやプロジェクターケータイに負けず劣らずの人気ぶりで、多くの来場者が展示コーナーに詰めかけていた。個々のモデルについては、本誌のレポート記事に譲るが、個人的にはソーラーパネルを装備した「gem」「voyage」「SOUP」に興味をひかれた。ケータイにとって、バッテリーは永遠のテーマであり、どんなに消費電力を抑えても次々と用途が搭載され、利用時間が増えてしまうため、どうしてもバッテリー残量が気になってしまう。今回のCEATEC JAPANでも東芝が既存のリチウムイオン電池と燃料電池(DMFC)を組み合わせたハイブリッド電池を出品していたが、環境に優しいとされるソーラーパネルも既存の電池パックと組み合わせられる可能性があるだろう。

 KDDIのブース内で、もうひとつ注目したいのが先月25日に発表された「au BOX」だ。au BOXはPCを持たないユーザーでも気軽にLISMOを利用できることを狙ったセットトップボックスで、11月から月額315円でレンタルが開始される予定だ。発表会に続き、今回も実際に稼働する製品を使い、ブース内でデモが行われているが、こちらも来場者の関心が高く、リモコンで操作感を確かめるだけでなく、接続や使い方、利用できる機能などを熱心にたずねるユーザーを見かけた。ケータイのサービスに関連する製品というと、今までは端末が中心で、過去にはPDAやメール端末なども登場し、人気を集めたことがあったが、au BOXはブロードバンド・インターネットが普及し、幅広いユーザー層の人々が利用するようになってきた現在だからこそ、登場してきた製品だ。さすがに、薄型テレビで対応が増えてきたアクトビラなどのIP-TVサービスには及ばないが、そういったテレビを購入しなくても手軽に同様のサービス(あるいはそれに近いレベルのサービス)を利用できるのは、ユーザー層によって、十分、魅力的なものと言えるだろう。


2Dの映像も3D表示に自動変換できるという3D液晶。ワンセグやユーザーが撮影した映像も3D化されるのはかなり面白そうだ

2Dの映像も3D表示に自動変換できるという3D液晶。ワンセグやユーザーが撮影した映像も3D化されるのはかなり面白そうだ
 また、技術的なところでは、WVGAサイズの表示が可能な3.1インチの有機ELディスプレイと3D液晶ディスプレイも注目される。auはワンセグやLISMO Videoなどの映像コンテンツをきれいに再生できるようにするため、昨年来、積極的に有機ELディスプレイを搭載した端末を投入してきたが、解像度がワイドQVGAサイズだったため、PCサイトビューアー(フルブラウザ)やPCドキュメントビューアーなどの用途には不利で、ハイエンド指向の強いユーザーからは不満が聞かれていた。今回の有機ELはWVGAサイズの表示を可能にしたものであり、今までの不満にも応えられるものだ。

 一方の3D液晶ディスプレイは非常にユニークなもので、レンダリングエンジンを組み込むことにより、2Dで入力された映像信号も3D映像に自動変換し、ワンセグやユーザーが撮影した動画、静止画なども3Dで表示できるという。3D表示が可能な液晶パネルは他のブースでもいくつか見かけたが、3D専用映像を用意する必要がなく、メガネなどの特殊なデバイスを使わなくても3D映像を楽しめるということを考えると、KDDIブースに出品されていた3D液晶がもっともケータイに近い存在と言えるのかもしれない。ちなみに、いずれのディスプレイも製品への搭載がいつになるのかは明らかにされていないが、意外に早い時期に製品化されるのかもしれない。


回収された端末をリサイクルするための分解作業のデモが行われていた。普段は見ることができない作業だが、実況中継的な説明で興味深く見ることができた

回収された端末をリサイクルするための分解作業のデモが行われていた。普段は見ることができない作業だが、実況中継的な説明で興味深く見ることができた
 また、少し変わった展示としては、ユーザーから回収された端末をリサイクルする際の分解作業のデモンストレーションも行われていた。普段、端末の分解作業などは見ることができないが、分解する手順や作業内容などの説明も交えながらのデモで、なかなか興味深い内容だった。端末のリサイクル率が低下していることもあり、こうしたデモが公開されることになったようだ。


ケータイは連携するツールへ

 秋冬商戦向けのモデルはないものの、将来を見据えた各社の端末や新サービス、新技術が出品された「CEATEC JAPAN 2008」。しかし、各社の出展内容を見ていて、もうひとつ気づいたことがあるので、最後に触れておこう。

 現在まで、「CEATEC JAPAN」のような展示会において、ケータイに関する展示と言えば、端末やサービスが主役であり、見かける場所も各キャリアや各メーカー、各サービスプロバイダのブースが中心だった。

 しかし、今回のCEATEC JAPANでは端末やサービスだけではなく、「ケータイを使って、○○をする」「ケータイに□□を組み合わせて使う」といった『ケータイと他の機器を連動させる』展示が増えている。つまり、必ずしも端末だけが主役ではなく、他の製品と並び、連携する出品が増えてきたわけだ。ややもすると、「もうケータイに載せる機能がなくなったからでは?」と解釈されそうだが、実はこうしたケータイと連携するデモを行っているのがテレビやレコーダーといったAudio&Visual製品、カーナビなどを扱う家電メーカーやAV機器メーカーに多いのだ。これはケータイが1人1台に近い状態にまで普及し、同時に個人にとって、もっとも身近なデジタルデバイスであることが意識され、通信回線やBluetooth、技術など、連携するための環境が整ってきたことで、それらを活かした使い道が実現しやすくなってきたことを表わしている。


パイオニアブースでは薄型テレビ、カーナビ、携帯電話を連携させるデモムービーを上映していた

パイオニアブースでは薄型テレビ、カーナビ、携帯電話を連携させるデモムービーを上映していた
 具体的な例を挙げると、Audio&Visual製品やカーナビを手掛けるパイオニアのブースでは、シャープ製端末を使い、カーナビと情報をやり取りしながらドライブプランを立て、ドライブの様子をカメラ付きケータイで撮影し、帰宅後にみんなでブログにまとめるといった使い方のデモムービーを流していた。ちょっとベタな使い道という印象もあるが、カーナビやテレビなどの機器をひとつのハブにしながら、ドライブに同行する各個人の持つ情報(レストランや施設など)やコンテンツ(写真やムービー)などを共有し、ドライブというイベントをスマートかつスムーズに楽しめるようにしている。

 同じクルマというジャンルで言えば、NTTドコモ、日産、シャープのインテリジェントキー搭載ケータイなどもケータイとクルマという異なるジャンルの製品の連携によって、生まれてきた使い道だ。

 ケータイは端末のデザインやスペックが気になるところだが、そういった外見の部分だけでなく、ケータイと他の機器を連携させることで、今まで以上に快適だったり、楽しかったり、便利だったりすることを各社が提案しようとしている印象だ。今回の「CEATEC JAPAN 2008」に出品されたものはその多くが参考出品のレベルだが、そう遠くない時期に私たちの生活を便利に豊かに楽しくする製品やサービスとして、登場してくることを期待したい。

 筆者が気になる展示を中心に、駆け足で紹介することになってしまったが、「CEATEC JAPAN 2008」は今週末の10月4日まで開催されているので、もし、時間が許すのであれば、ぜひ会場に足を運び、各社のブースで新しい技術や動向に触れてみて欲しい。



URL
  CEATEC JAPAN 2008
  http://www.ceatec.com/

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(法林岳之)
2008/10/03 14:27

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