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女性にフォーカスしたラインアップを展開する
SoftBank Summer Collection 2008
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


 6月3日、ソフトバンクは「SoftBank Summer Collection 2008」と題し、2008年夏モデル10機種を発表した。2007年秋冬モデルの「プレミアム」、2008年春モデルの「フルラインアップ」と、わかりやすいキーワードを掲げてきた同社だが、今回は「Fun Summer」と題し、女性にフォーカスした端末をラインアップするとともに、他社サービスに追随する新サービスを発表している。発表会の詳しい内容は、本誌の発表会レポート記事を参照していただくとして、ここでは筆者が発表会で試用した端末の印象や全体の方向性などについて見てみよう。



 日本のケータイ市場において、女性ユーザーの存在は非常に重要な役割を果たしてきている。iモードが登場する以前、メールという文字コミュニケーションを花開かせたのは女子高生たちが夢中になったPメール(現在のウィルコム、当時のDDIポケットが提供)であり、その後に登場したNTTドコモのメール端末「ポケットボード」もメールの普及に大きく貢献した。そして、iモードメールが登場し、ソフトバンクの前身でもあるJ-フォンは「写メール」という世界に拡がるメール文化を生み出している。

 今回、ソフトバンクは2008年夏モデルとして、女性にフォーカスした機種を中心に構成した全10機種を発表した。同時に発表された雑誌とのコラボレーションモデルとディズニー・モバイルの新機種を合わせると、全部で12機種が夏モデルとして、投入されることになる。発表会での説明によれば、敢えて「女性にフォーカスして……」と謳っているのは、ソフトバンクのユーザー層を分析すると、他社に比べ、女性ユーザーへのアピールが弱いことが見えてきたからだという。今年の春商戦で展開した「ホワイト学割」は学生ユーザーへの訴求が弱いことから始められたキャンペーンだったが、今回は端末ラインアップを充実させることで、自らが今ひとつ弱いと分析する女性ユーザーへ訴求をしようというわけだ。


824SHを手にする孫氏

824SHを手にする孫氏
 その女性ユーザーに対するソフトバンクの回答のひとつが「防水」だ。ケータイの防水機能と言えば、auのカシオ計算機製端末が古くから知られているが、最近ではNTTドコモ向けにソニー・エリクソンや富士通が端末を開発し、au向けではカシオ計算機と三洋電機が供給してきた実績がある。ソフトバンクでは防水機能を持つ端末がなかったが、今年の春モデルではじめて東芝が「822T」を開発し、2月から販売が開始されている。そして、今回の夏モデルではシャープとパナソニックがそれぞれ防水モデルを開発し、ラインアップに加えられることになった。ちなみに、シャープとパナソニックは他事業者にも端末を供給しているが、防水モデルは両社にとって初の開発ということになる。発表会では女性ユーザーが防水機能を求める理由として、バスタイムでのメールやコンテンツ閲覧が多いことが紹介されたが、そのほかにも洗濯や洗い物、炊事など、水回りでの仕事が多い主婦ユーザーにも防水機能の人気が高いことが知られている。今回発表されたシャープ製「824SH」とパナソニック製「823P」はいずれもワンセグを搭載しており、昨年来、auでも人気の高かった防水ワンセグというジャンルにアプローチすることになる。

 防水以外では、女性が持ちやすいデザイン性の高い端末を6機種、ラインアップしている。女性にフォーカスしたということで、男性ユーザーは考えられていないかというと、そうでもなく、ハイエンドモデルではAQUOSケータイ 923SHやVIERAケータイ 921Pがラインアップされており、女性にフォーカスしたとされるモデルにもユニセックス的なカラーバリエーションが用意されている。

 メーカーやシリーズ別で見てみると、メーカーとしてはシャープがディズニー・モバイル向けを含めて4機種、パナソニックとNECが3機種ずつ、東芝が2機種となっている。シリーズとしては、ハイエンドに位置付けられる9xxシリーズがシャープとパナソニックから1機種ずつで、残りはすべて8xxシリーズとなっている。スペックだけに注目すると、8xxシリーズは各メーカーが双子モデル(兄弟モデル)を供給する形となっているが、デザイン的にはそれぞれにハッキリとした個性が打ち出されており、従来モデルとは違った印象を受けるラインアップだ。


ダブルナンバーと着デコの提供を開始

電話をかける時にテキストや画像を送れる「着デコ」

電話をかける時にテキストや画像を送れる「着デコ」

1台で2つの電話番号、メールアドレスを利用できる「ダブルナンバー」

1台で2つの電話番号、メールアドレスを利用できる「ダブルナンバー」
 今回、ソフトバンクは2008年夏モデルの発表に合わせ、新サービスの提供と絵文字のリニューアル、Yahoo!ケータイトップページの刷新を発表している。

 まず、NTTドコモが提供する2in1サービスの対抗として、新たに「ダブルナンバー」というサービスが提供される。1台の端末に2つの電話番号とメールアドレスを登録できるというサービスだが、後発ということもあり、2つめのメールアドレスのメールを端末内で利用できるようにするなど(ドコモの2in1では2つめのメールはWebメール)、2in1を上回る機能を実現している。契約についても法人と個人、同一名義個人、同一名義法人を組み合わせられるようにしており、1つめと2つめの契約を入れ替えられるようにするなど、柔軟な契約対応が可能だ。今のところ、対応機種がAQUOSケータイ 923SHに限られるが、法人契約で会社からソフトバンク端末を供給されたユーザーなども個人の回線契約を1つの端末に統合できるため、今後の展開に期待ができそうなサービスだ。

 また、着デコはNTTドコモが提供する着もじに対抗するサービスで、音声通話で発信するときに相手の端末にメッセージがあらかじめ送信できるというものだ。着もじはその名の通り、文字しか送信できなかったが、着デコでは画像やメロディなども送信することが可能だ。イメージとしては、相手の着信環境を事前にジャックするような感じで利用できる。文字だけでは今ひとつ利用シーンが見えてこなかったが、画像やメロディが送信できるようになることで、誕生日などのおめでとうコールをはじめ、ビジネスシーンでの挨拶付きの電話など、いろいろな利用シーンが見えてくる印象だ。記憶があいまいで申し訳ないが、確か発信時のメッセージ送信サービスは中国などで提供され、かなりの人気サービスに成長したと聞いた記憶がある。こちらも対応機種がAQUOSケータイ 923SHに限られるが、日本でもユーザーから支持されるかどうかが非常に気になるサービスだ。

 絵文字のリニューアルとYahoo!ケータイのサイト更新も細かい部分ではあるが、ユーザーの利用環境を考えたものであり、ソフトバンクのサービス全体を着実に進化させようとしている印象だ。


ハイエンドからミッドレンジまでの10機種をラインアップ

 さて、ここからはいつものように、発表会後のタッチ&トライで試用した印象を踏まえながら、各機種を紹介しよう。ただし、タッチ&トライの時間は限られていたため、必ずしも十分な使用感をお伝えできない点はご理解いただきたい。同時に、今回試用した端末はいずれも開発中のモデルであるため、出荷時には仕様や印象が異なっている可能性があることもお断りしておく。各機種の詳しい情報については、ぜひ本誌のレポート記事を合わせて、参照して欲しい。


AQUOSケータイ 923SH(シャープ)
 ソフトバンク向けとしては5代目となるAQUOSケータイ。従来のSHシリーズではサポートされていなかったGPS機能をサポートし、地図ボタンでの地図表示を可能にするほか、インターネットとの連携を重視し、Wikipediaを参照できる辞書機能が搭載されている。従来の920SHに比べ、わずかに大きくなったが、サイクロイド機構を採用していることをあまり感じさせないレベルにまとめられている。カメラやワンセグの録画・再生などの機能も充実しており、まさに「最強のAQUOSケータイ」を実現した印象だ。


THE PREMIUM WATERPROOF 824SH(シャープ)
 昨年発売された双子モデル820SH/821SHをベースに、防水機能を搭載した「THE PREMIUM WATERPROOF」と名付けられたモデルだ。形状としては820SH/821SH、あるいは春モデルの823SHの流れをくむデザインだが、カメラがオートフォーカス対応の320万画素になり、ダイヤルボタンのイルミネーションを追加するなど、機能やスペック面でも大きく改良されたモデルだ。ボタンの形状も812SHで採用されたアークリッジキーを少しスリムにしたものが採用されており、かなり押しやすくなった印象だ。


Tropical 823P(パナソニック)
 パナソニックとしては初の取り組みとなる防水ワンセグケータイだ。透明感のあるボディカラーのみでデザインされたボディは、Pシリーズでおなじみのワンプッシュオープン機構が採用されており、ディスプレイも3.0インチとハイエンドモデルに匹敵するサイズのものを搭載する。824SHに比べると、若干、厚みが増えるが、ウェーブタイルキーの操作感も非常に良く、ボディの周囲も曲線で構成され、持ちやすくなっている。


PANTONE SLIDE 825SH(シャープ)
 昨年、発売され、20色展開が話題となったPANTONEケータイだが、スライド式ボディを採用した後継モデルが登場した。今回は全8色が展開される。ハードウェアとしては、昨年登場した913SHに相当する機能を、同時に発表されていた816SHに相当するサイズのスライド式ボディに収めた感じだ。モーションコントロールセンサーでワンセグ視聴画面の縦横を自動切り替えにするなど、機能的にも充実したモデルだ。


821N(NEC)
 昨年1月に発表された706N以来、ソフトバンクでは1年半ぶりに登場したNEC製端末。やや男性的な820Nに対し、821Nはトップパネルに花柄などのかわいいグラフィックを施したデザインを採用する。ソフトバンクの端末は多くのモデルが決定ボタンでメニュー画面が表示されるが、NTTドコモの端末はNEC製をはじめ、大半がMENUボタンを押して、メニュー画面を表示する仕様となっている。821NはNTTドコモのユーザーが乗り換えることを考慮し、敢えて、MENUボタンを残し、そこからメニュー画面を表示できるようにしている。トップパネルに内蔵されたマイシグナルもNTTドコモ向けのNシリーズと同様で、ユーザー自身が作成できるカスタマイズツールも提供する予定だ。ボタンは各行の間隔が付けられており、小さいながらも押しやすく作られている印象だ。


MIRROR II 824P(パナソニック)
 昨年の冬モデルとして登場したMIRROR 820Pの後継に位置付けられるモデル。従来のMIRRORはトップパネルに偏光ミラーパネルを採用していたが、今回はカッティングミラーパネルと呼ばれるカットの入ったミラーパネルを装着している。基本的なスペックは防水機能を持つ823Pと同等で、ワンセグなども搭載されている。ボタンも各キーが独立したものを採用しており、入力もしやすい印象だ。少し大人の女性を意識したモデルと言えるだろう。


824T(東芝)
 トップパネルに立体印刷と呼ばれる特殊な印刷によって、クロスラインのデザインを施した端末だ。今回発表された女性向けモデルの中でも821Nと並んで、はっきりと女性向けを強く感じさせるデザインの端末だ。基本的なスペックは男性向けを狙った823Tと同じで、従来の814T/815Tなどに比べ、Bluetoothや3Gハイスピード、国際ローミング、ワンセグなどが新たに対応している。ボタンはフレームレスキーだが、各ボタンの中央をわずかに盛り上げたドームキーを採用しており、ボタンサイズも比較的、大きめのため、操作しやすい印象だ。


820N(NEC)
 821Nと基本的なスペックが共通のモデルだが、11.7mmと一段を薄く仕上げられている。ステンレス素材を採用したボディは、独特のグラフィック加工が施され、指紋が付きにくい仕上がり。背面には7×17個のLEDによるマイシグナルが装備されている。カスタマイズが可能であることなども821Nと共通仕様となっている。821Nが女性向けであるのに対し、820Nは男女ともに持てるデザインの端末だ。ボタンの押しやすさは標準的であるものの、見た目同様、全体的にフラットに仕上げられているため、最初はやや位置に戸惑う印象も残る。


823T(東芝)
 824Tとの双子モデルだ。823Tが立体印刷で独特のテイストを実現しているのに対し、824Tは人工皮革(クラリーノ)によるファブリックなテイストのテクスチャーを貼り付けており、大人向けの質感の高い端末に仕上げられている。ボディカラーごとにテクスチャーの種類も異なっている。一見、キーの形状も824Tと同じように見えるが、こちらはカマボコ型のキーを採用し、ボディカラーごとにキートップのプリントも変えるなど、少し趣が異なる。発表会で「ちょい不良(ワル)オヤジ向け」と紹介されたが、男女とも少し落ち着いた雰囲気を求めるユーザーを意識した端末だ。


921P(Panasonic)
 今年の春モデルで、NTTドコモのP905iにそっくりな920Pを発表したことで話題となったが、今回もNTTドコモのP906iとほぼ同じデザインを採用したモデルを発売する。従来の920Pと比較して、ハードウェアでは液晶ディスプレイが3.1インチになり、ワンセグのアンテナを内蔵し、Wオープンのヒンジを小径化した点などが異なる。ワンセグのアンテナについてはダイバーシティ方式を採用し、高い感度を実現する。ワンセグ視聴時に15fpsの映像を補完し、30fpsのなめらかな再生が可能なモバイルWスピードにも対応するなど、ハイエンドモデルらしい仕上りだ。


「Fun Summer」が体感できる2008年夏モデル

 「女性にモテたいソフトバンク」。孫社長は発表会のプレゼンテーションで、今回のラインアップを紹介しながら、こんな言葉で少しおどけて見せたが、女性にフォーカスしたモデルを前面に打ち出したラインアップ展開という手法は、今までのケータイ業界にはあまりなかったものだ。しかし、実際に内容を見ると、前述のようにユニセックスなカラーバリエーションも豊富に用意されており、女性ユーザーの目を惹きつけつつ、男性ユーザーにもカッコ良くケータイを持って欲しいという思いが込められているように受け取ることができた。

 春モデルの紹介のときにも触れたが、ソフトバンクは月額980円のホワイトプランやホワイト家族24による家族間通話定額など、わかりやすいキーワードを掲げ、着実にユーザーに浸透を図ってきた。それと同時に、ユーザーが取っつきやすい演出をすることで、ユーザーの獲得に成功してきている。

 今回の2008年夏モデルは、春モデルとして登場した「インターネットマシン 922SH」のように強烈な個性を持つ端末こそないものの、フラッグシップとなるAQUOSケータイ 923SH、ライバルとなるVIERAケータイ 921Pを筆頭に、防水モデルや質感を重視したオトナ向けのモデルなど、上手にラインアップを構成してきた印象だ。ソフトバンクとして、今まであまり積極的に取り組んでいるように見えなかったサービス面についても着デコやダブルナンバーという形で、ユーザーのニーズに応えようとしている。

 発表会の翌日、アップルの「iPhone」という強力なモデルを年内に販売することも明らかにされたが、今夏の段階で、その魅力にも負けないくらい充実したラインアップとサービスを取り揃えたという印象だ。ただ、ユーザーによっては、iPhoneをどうするのかをよく考えたうえで、夏モデルの購入を検討しなければならないかもしれない。もっともそれは贅沢な悩みとも言えるわけだが……。

 今回発表されたラインアップは、早ければ、今月下旬から順に販売が開始される予定だ。本誌ではすでに掲載されている発表会レポートに加え、今後は開発メーカーのインタビューなども順次、公開される予定だ。それらをじっくりと参照しながら、「Fun Summer」を体感できる1台を選んで欲しい。



URL
  ソフトバンクモバイル
  http://www.softbank.jp/
  2008夏モデル プレスリリース
  http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2008/20080603_06/

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(法林岳之)
2008/06/05 14:15

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