5月27日、NTTドコモは906i/706iシリーズ全19機種を発表した。昨年秋に発表された905i/705iシリーズ23機種のラインアップを早くも一新する内容だ。発表会の詳細な内容は、すでにレポートが掲載されているので、そちらを参照していただきたいが、ここでは筆者が発表会で試用した端末の印象も含め、発表会の印象を紹介しよう。
■ 「All You Need is Love」に乗せて
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3つのアンサーを紹介
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今年4月、新ドコモ宣言とともに、新しいコーポレートブランドを発表したNTTドコモ。5月からはビートルズの「All You Need is Love(愛こそはすべて)」のカバー曲にのせて、新しいテレビCMが開始され、7月からはいよいよ本格的に新ロゴを使った展開が始まる予定だ。
今回発表された906i/706iシリーズ全19機種は、この新しいNTTドコモを象徴する新ラインアップということになる。昨年秋に発表された905i/705iシリーズも圧巻の内容だったが、今回はそのラインアップを事実上、一新する内容となっている。NTTドコモでは新コーポレートブランドの広告展開などで、「ドコモのあなたに、Answerを。」というキャッチコピーを採用しているが、今回の906i/706iシリーズはユーザーから寄せられたニーズに対する最初の「Answer」になるという。ひとつめのAnswerは「オールラウンド動画ケータイ」の906iシリーズ、2つめは「個性派スリム」の706iシリーズ、そして、3つめは多彩な動画サービスとコンテンツで構成する「ケータイ動画」と位置付けている。
発表された全19機種の内容を見てみると、シリーズ別では906iシリーズが8機種、706iシリーズが11機種で構成されている。906iシリーズがALL INのハイエンドモデルであるという位置付けは変わらないが、706iシリーズは普及モデル的な位置付けから個性とスリムをキーワードにしたラインアップ展開に変更しようとしている。詳しくは後述するが、これは705iシリーズの売れ行きなども少なからず影響しているようだ。
また、706iシリーズ11機種に含まれる形になるが、新たに706ieシリーズという新シリーズを作り、今回は4モデルをラインアップに加えている。706ieシリーズの「e」は、幅広い世代を意味する「everyone」、見やすさや聞きやすさ、使いやすさを意味する「with ease」、ユーザーに楽しく使ってもらうための「enjoy」から取ったもので、「誰にでも使いやすいケータイ」をコンセプトに開発されているという。
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706iシリーズ
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一方、906iシリーズについては、既報の通り、三菱電機が撤退したこともあり、従来よりもモデル数が減っている。ただ、906iシリーズを開発するメーカーの内、シャープとNECは複数のモデルを供給しており、特にNECはN906i、N906iμ、N906iLの3機種供給を実現している。各機種とも機能的には905iシリーズをベースにしており、全機種がHSDPA方式によるFOMAハイスピード対応である点などは共通だが、新たに8機種中7機種がWindows Media Video対応、5機種がFlash Video対応など、動画サービスへの対応を強化している。国際ローミングについては全機種が3G+GSM対応だが、GPSについてはSH906iTVのみが非対応となっている。
ボディデザインでは、三菱電機の撤退により、スライド式端末の供給が少なくなることが危惧されたが、今回はシャープがSH706iとSH706iwの2機種を開発し、ラインアップをカバーする形となっている。その他のボディデザインでは折りたたみ、二軸回転式、ストレートがラインアップされ、薄型のμモデルも906iシリーズと706iシリーズで1機種ずつが供給される。全体的に見て、906iシリーズは905iシリーズのデザインを踏襲、もしくは進化させた印象のものが多いのに対し、706iシリーズは新たなボディデザインを採用したモデルが多いように見受けられる。
発表会の会場では、タッチ&トライコーナーが用意され、短時間ながら、実機を試すことができた。ここではいつものようにファーストインプレッションを紹介するが、機種数がかなり多く、なかにはごくわずかな時間しか触ることができなかった機種もあるため、十分な情報をお伝えできないことをお断りしておきたい。各機種の内容については本誌のレポート記事でも詳しく解説されているので、そちらをご参照いただきたい。また、906iシリーズは6月から順次、販売が開始される予定だが、発表会で試用した端末は開発中のものであり、店頭で販売される端末では仕様が変更されていることもあるので、その点もご理解いただきたい。
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906iシリーズ
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■ オールラウンド動画ケータイ「906iシリーズ」
昨年秋に発表された905iシリーズでは、全機種がVGAクラスの液晶を搭載し、FOMAハイスピードに対応するなど、かなり充実したスペックを実現していた。今回の906iシリーズはその方向性をさらに推し進めた印象で、一段と完成度の高いモデルをラインアップしている。しかし、その一方で、従来モデルとの差異が一部の機能やソフトウェアに限定され、あまり大きな機能向上につながっていないように受け取られてしまう端末もある。
・F906i(富士通)
従来モデルに引き続き、液晶ディスプレイを左右にスイングさせることができるヨコモーションスタイルを継承し、指紋センサーをはじめとするセキュリティ機能も一段と充実させたモデルだ。
もっとも特徴的なのは、ダイヤルキーの下に装備された「サーチキー」とこれに連動する「クイック検索」機能だろう。端末を利用中、サーチキーを押すだけで、すぐにクイック検索ウィンドウが表示され、iモードやフルブラウザ、地図などの検索ができる。メールや電話帳の検索メニューも用意されているが、メールの全文検索などには対応しておらず、基本的に対象は差出人や電話番号の検索のみに限定されている。
ハードウェアでは3軸の加速度センサー搭載が新しいところだが、同じ富士通製端末のらくらくホンプレミアムでひと足先に搭載されており、それを受け継いだ形となっており、歩数計やタップ操作などはこれを活かしたものとなっている。キーバックライトのバリエーションなどは、通常利用のユーザーにとっても楽しい機能のひとつと言えそうだ。
セキュリティ面の強化ポイントとして、プライバシーモードの利用を隠す「ステルス認証」、プライバシーモード対象者からの音声着信も隠すことができる「サイレント着信モード」が搭載されている。「さすが」としか言いようがないほどの充実ぶりだが(笑)、逆にここまでプライバシーモードの強化が強調されると、「Fシリーズを持っていること=怪しい」と誤解されてしまうリスクがあると言えるかもしれない。
・N906i(NEC)
基本的なボディデザインはN905iを継承しながら、インパクトのあるボディカラーと今までにないトップパネルの処理で、デザイン的な個性を打ち出したモデルだ。
機能面では「デスクトップインフォ」が注目される。従来のN905iでは待受画面から直接、iモード検索を呼び出すことができるクイック検索が搭載されていたが、デスクトップインフォではカレンダーやスケジュール、メール、iチャネルなどの内容を待受画面にダイジェスト的に並べ、簡単に各機能を呼び出せるようにしている。表示する項目はカスタマイズすることも可能で、待受画面をパソコンのデスクトップ画面と同じように、広く活用しようという取り組みだ。
・SH906i(シャープ)
従来から二軸回転式と折りたたみを交互に開発してきたSHシリーズだが、今回はSH905iに引き続き、二軸回転式を採用した。ただ、二軸回転ヒンジの構造は独特で、通常の開閉時はヒンジ部分が背面側にせり出すような形になっている。
今回発表された906iシリーズの中では、N906iLなどと並んで、会場でももっとも注目度が高かった端末だ。その要因となっているのが直感タッチパネルと光TOUCH CRUISERだろう。直感タッチパネルはフルブラウザやワンセグ視聴時などに画面をタッチして、操作できるもので、操作感もかなり良好だ。光TOUCH CRUISERは方向キー部分に埋め込まれた光学式センサーにより、なぞるように方向キー操作ができるもので、ちょうど光学式マウスを裏返したような構造になっている。若干の慣れは必要だが、従来のTOUCH CRUISERと違い、方向キーと一体化されているため、随分と操作はしやすくなっている。特に、ブラウザでスクロール操作をするときなどは便利だ。
また、90Xiシリーズではパナソニック製以外ではじめてBluetoothを搭載したが、HIDもサポートしており、Bluetooth対応キーボードも接続可能になる。アイ・オー・データ機器からSH906iの利用に適したBluetoothキーボードが発売される予定だ。実際に、Bluetoothキーボードを常に持ち歩くかどうかは微妙だが、ユーザーの工夫次第で、便利な使い方もできそうな環境と言えそうだ。
さらに、カメラが広角29mm対応になったことも注目できる点だろう。ケータイのカメラは風景なども撮るが、ブログで食事の写真を撮るケースもあり、意外に近距離の撮影に対するニーズも高い。ユーザーの使い方次第だが、高画素化よりも広角対応の有効と言えるかもしれない。
・P906i(パナソニック)
従来に引き続き、Wオープンスタイルを採用した端末だが、P905iに比べ、Wオープンのヒンジ部分がかなりスリムになり、通常のワンプッシュオープンを採用してきた従来のPシリーズとまったく遜色のないサイズにまとめられている。P905iで不評だったサイズ感がかなり解消された印象だ。
P905iでは横方向に開いた状態がワンセグの視聴に適していることがアピールされていたが、今回は横方向のメニュー画面も用意され、横画面をさらに活用できるようにしている。ワンセグについては、P905iTVで採用されていた30fps再生ができるモバイルWスピードが搭載されている。のぞき見防止のため、液晶ディスプレイのコントラストを三段階で一時的に落とすことができるビューブラインドが搭載されているが、ディスプレイに表示されているコンテンツにFlashが含まれているときなどは正しく動作しないケースが見受けられた。
・SO906i(ソニー・エリクソン)
SO903iTV以来、2機種目となるBRAVIAケータイだ。SO903iTVは直線的なデザインで、ボディサイズもやや大きい印象だったが、今回はコンパクトにまとめられ、手の大きくない女性ユーザーにも持ちやすく仕上げられている。外見ではトップパネルの周囲に内蔵されたU字イルミネーションが印象的だ。
機能面ではワンセグをはじめとするAV機能を直感的に操作できるメディアランチャー、端末の向きに合わせて、写真を回転させられるなどの機能を持つモーションセンサーが面白いところだ。ワンセグについては、視聴可能なチャンネルをサムネイル表示する12ch表示という機能も搭載される。
他の906iシリーズの端末のような強い個性はないが、全体的にソツなくまとまっており、コンパクトで持ちやすいボディサイズとも相まって、意外に幅広いユーザーに受け入れられる端末と言えるかもしれない。
・N906iμ(NEC)
N905iμに引き続き、薄さ12.9mmを実現したスリム端末だ。外見のデザインは基本的に共通だが、ワンセグを搭載し、カメラを200万画素から320万画素に変更しながら、ほぼ同サイズにまとめているのは見事と言えるだろう。ソフトウェア面ではN906iと共通のデスクトップインフォ、フォト文字クリエイターなどが搭載されており、全体的な使い勝手を向上させている。
N906iとのすみ分けが難しいところだが、スマイルフェイスシャッターやニューロポインターなどを重視するのならN906i、スリムさを狙うならN906iμという判断になりそうだ。また、「STNY by Smantha Thavasa」とのコラボレーションモデルも外装パーツをオリジナルのものにするなど、差別化を図っている。ただ、通常モデルのボディカラーもCoral Goldのように、かなり華やかなものがラインアップされているので、敢えてブランドコラボレーションを選ばないユーザーにも支持されそうな印象だ。
・N906iL(NEC)
N905iとN906iをベースに、IEEE802.11a/b/gの無線LAN機能を搭載した端末だ。従来のN902iLなどと違い、一般向けにも販売され、NTTドコモが新たに提供する「ホームU」サービスに対応する。ちなみに、あくまでも筆者の推測に過ぎないが、通常スタイルのケータイとして、IEEE802.11aの無線LAN機能を搭載したのは、おそらく世界初ではないだろうか。
ホームUについては、別途、試す機会があれば、レポートしたいが、実質的なしくみはNTTドコモが提供する050IP電話サービスということになる。家庭内などに設置された無線LANアクセスポイントからブロードバンド回線を経由して、NTTドコモのホームUサービスのサーバー(SIPサーバー)に登録することで、家庭内では無線LAN経由、それ以外のエリアではFOMA網を経由して、iモードなどを利用できるサービスということになる。ただし、ホームUのサービスを利用するには、ブロードバンド回線がマルチセッション対応である必要があるため、実質的にはNTT東日本/NTT西日本のフレッツ・サービスのみで利用できるということになりそうだ。
N906iLには従来のN902iLなどと同じように、SIP情報を登録するためのメニューが用意されており、ホームUを利用する際はそこに必要な情報を登録する。実際にはNTTドコモが提供するmopera Uのかんたん設定などで提供されているように、FOMA網経由で設定サイトにアクセスし、必要な情報をダウンロードしてきて、ほぼ自動的に設定するという形になるという。
また、N906iLのSIP情報の設定については、特に制限を掛けていないため、IP電話サービスを提供する他の事業者が必要な設備を用意し、ユーザーに情報を提供すれば、N906iLでNTTドコモ以外のIP電話サービスを利用できるようになる可能性があるとのことだ。ただ、SIPの仕様は設備ごとに少しずつ異なるため、どのIP電話サービスでも利用できるとは限らないようだ。NTT東日本/NTT西日本が提供する「ひかり電話」でも利用できるようになれば、いよいよ本格的なFMCサービスということになるのだが……。
・SH906iTV(シャープ)
905iシリーズに引き続き、NTTドコモ向けでは3代目となるAQUOSケータイだ。ボディデザインはおなじみのサイクロイドスタイルだが、方向キー部分はSH906iと同じように、光TOUCH CRUISERが搭載されている。ワンセグについては、ステレオイヤホン利用時に限られるが、Virtual 5.1ch対応DOLBY MOBILEでサウンドを楽しむことができ、映像についても15fpsのワンセグ画像を補完し、30fpsで再生する機能が搭載されている。
また、音声通話に関連する機能として、SH705i IIでも採用されていた「トリプルくっきりトーク&スロートーク」が搭載されている。スロートークは少し上の年齢層のユーザーにもうれしい機能だが、トリプルくっきりトークは騒がしい場所での通話にも効果を発揮するため、幅広い年齢層のユーザーにメリットがある機能だ。
ディスプレイのタッチ操作などを除けば、3G+GSMの国際ローミングにも対応するなど、SH906iとの機能差はほとんどないが、SH906iTVはGPSに対応していないので、その点は選択時に考慮する必要がありそうだ。
■ 個性派スリム「706iシリーズ」
オールラウンド動画ケータイと位置付けられた906iシリーズに対し、「個性派スリム」と銘打たれたのが706iシリーズだ。NTTドコモは昨年秋に引き続き、90Xiシリーズと70Xiシリーズをいっしょに発表したわけだが、昨年秋と今回では両シリーズの扱いが若干、異なる。今回はプレゼンテーションの資料なども含め、70Xiシリーズを先に紹介し、商品ラインアップのイメージをよりハッキリさせようとしているのだ。
こうした演出が生まれてきた背景には、今年の春商戦に登場した705iシリーズが苦戦したことが関係しているようだ。というのも昨年秋から新販売方式がスタートし、NTTドコモでも割賦販売による購入ができるようになったが、905iシリーズと705iシリーズでは分割払いの月額が数百円しか違わないため、ユーザーから見て、機能的に取りこぼしが少ないように見受けられる905iシリーズを買う傾向が強くなり、705iシリーズは販売がまったく奮わないという事態に陥ってしまった。70Xiシリーズは元々、普及モデルをベースに個性派路線を推し進めてきたわけだが、割賦販売の導入により、ユーザーの間に「2年間は同じ端末を利用しなければいけない」という精神的な呪縛(分割払いの期間が2年になるだけで、実際にはそういった制限はない)が生まれたため、個性よりも機能や対応サービスの多さが重視され、705iシリーズの存在が一段と薄くなってしまったわけだ。確定的なことは言えないが、おそらく今回、706iシリーズの位置付けをよりハッキリさせようとした背景には、こうした705iシリーズの不振が大きく影響しているものと推察される。
さて、こうした動きを受け、登場してきた706iシリーズだが、開発のスケジュールの関係もあり、今回も705iシリーズと同じように、機能を超えるほどの個性を発揮できている機種は少ない。ただ、新しい取り組みとして、706ieシリーズをラインアップに加えている。706ieシリーズは前述のように、「誰にでも使いやすいケータイ」をコンセプトに開発されているわけだが、こうしたシリーズが生まれてきた背景には、「ある程度の機能は必要だが、使いやすさを重視したい」というユーザーが増えてきたことが関係している。なかでも顕著なのが40代、50代のユーザーを中心に見られる「使いやすいケータイは欲しいが、らくらくホンは持ちたくない」という声だ。らくらくホンそのものは非常に素晴らしい端末なのだが、40代、50代ユーザーは商品を見る眼が肥え、持ち物に対するこだわりもあるため、あまりにもシニア向けのイメージが強いらくらくホンは持ちたくないと考えるわけだ。
さて、本来なら、ここで各機種のインプレッションをお伝えしたいのだが、発表会の会場でも試用した時間が非常に短く、十分な印象をつかむことができていないため、今回は敢えて、各機種に一言ずつコメントを付けるという形で、ご紹介したい。十分な情報をお伝えできないことはたいへん申し訳ないが、ぜひ本誌の発表会レポート記事を参照していただきたい。
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L706ie
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N706i
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・L706ie(LG電子)
基本スペックはL705iとほぼ共通。ドーム形状のキーも押しやすい。706ieシリーズでは唯一の3G+GSM対応というのもセールスポイントのひとつだ。
・N706ie(NEC)
N705iと同クラスの大型サブディスプレイを搭載。NEC初のワンタッチオープンで開けやすいが、シートキーのボタンは押下感がややカタい印象。Nシリーズお得意の省電力とスタミナバッテリーで、ロングライフを実現した点も評価できる。
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P706ie
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SH706ie
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・P706ie(パナソニック)
P705iの仕様を受け継いでいるが、新しいレシーバーを搭載し、通話の音量などを改善。[マルチ/文字]キーの長押しで文字サイズを変更できる。キーピッチも広く、メール重視のユーザーにもおすすめできる。
・SH706ie(シャープ)
SH705i IIをベースにした後継モデル。トリプルくっきりトーク&スロートークで通話重視のユーザーにもおすすめ。
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F706i
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P706iμ
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・F706i(富士通)
NTTドコモとしては初の防水ワンセグモデル。トップパネルのイルミネーションも多彩。ママさんユーザーをはじめ、女性ユーザーに幅広く支持されそうなモデルだ。
・P706iμ(パナソニック)
P705iμの後継モデル。ステンレスボディなどは基本的に共通だが、同じ薄さボディにワンセグの搭載を実現。ただ、シートキーはややカタい印象。
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SH706iw
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N706i
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・SH706iw(シャープ)
NTTドコモとしては初の取り組みとなるウェルネスケータイ。赤外線を利用した脈拍センサーを背面に搭載。今回はモックアップのみを展示。オムロンヘルスケアの体組成計から赤外線通信でデータを受け取り、端末内のアプリで健康管理に活用可能。
・N706i(NEC)
N705iからサブディスプレイをなくし、N705iμなどで好評を得たLEDによる「My Signal」を搭載。ユーザー自身でMy Signalのデータをカスタマイズすることも可能。Francfrancとのコラボレーションモデルもラインアップ。
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NM706i
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SH706i
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SO706i
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・NM706i(ノキア)
NM705iをベースに、デザインを変更したモデル。海外では「NOKIA 6124 Classic」として販売されている。今回発表されたラインアップでは唯一のストレートタイプ。
・SH706i(シャープ)
NTTドコモ向けとしては、シャープ初のスライド式を採用したモデル。方向キーなどをダイヤルボタン側に装備したフルスライドタイプだが、ディスプレイ下に光TOUCH CRUISERを搭載。2つ方向キーが存在することにやや戸惑う印象。4方向ののぞき見防止を可能にした新ベールビュー液晶を採用。
・SO706i(ソニー・エリクソン)
本体のトップパネル側に装着可能な「Style-Upパネル」を採用するモデル。基本仕様はN706iと共通だが、少しボディをラウンドさせ、持ちやすくさせている。
■ 906i/706iシリーズは愛を込めた「Answer」なのか?
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6月オープンのドコモの動画ポータル
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今回の発表では、906i/706iシリーズに加え、3つめのAnswerとして、「ドコモ動画」と銘打った動画サービスの展開を発表している。動画と言っても単にコンテンツをダウンロードしてみるだけでなく、メールなどで利用できる「デコメアニメ」、ブルーレイディスクレコーダーとの連携、ワンセグ、カメラで撮影した動画のアップロードなど、広い範囲で動画を楽しむことを積極的にアピールしようとしている。
もう少し具体的に見てみると、906i/706iシリーズを合わせ、19機種中10機種がWindows Media Video対応、6機種がFlash Video対応となり、デコメアニメについても11機種が対応する。内容的にはかなり充実した印象なのだが、実は肝心なことがアナウンスされていない。それは料金プランについてだ。
発表会の質疑応答でも触れられたことだが、NTTドコモはパケット通信料の定額制サービスとして、「パケ・ホーダイ」と「パケ・ホーダイフル」を提供している。パケ・ホーダイはiモードやメールなど、端末のみで利用するパケット通信を月額4,095円で使い放題にするというものだ。パケ・ホーダイフルはフルブラウザの利用も含んで、月額5,985円で使い放題になる。
これに対し、auの「ダブル定額」及び「ダブル定額ライト」、ソフトバンクの「パケットし放題」は同じパケット通信料の定額制サービスでも二段階の料金構成となっており、使わない月は料金を抑えることができる。しかもフルブラウザに利用については、同じ定額制サービスの契約のまま、上限が月額5,985円になるという仕組みになっている。しかし、NTTドコモはパケ・ホーダイとパケ・ホーダイフルのいずれかを選択して、契約しなければならない。実は、今回発表された動画サービスで、もっとも利用が多いと予測されるWindows Media VideoとFlash Videoは、いずれもフルブラウザでの利用となるため、パケ・ホーダイではなく、パケ・ホーダイフルへの加入が必要になってくる。仮に、パケット通信料定額制サービスの値下げができないにしても本格的に動画サービスを始めることを謳うのであれば、パケ・ホーダイとパケ・ホーダイフルという2つのプランを連動させるなど、料金面でユーザーをサポートするような工夫を加えるべきではないだろうか。動画サービスにはユーザーの期待も大きいが、料金プランの選択をひとつ間違えば、膨大な金額が請求されてしまう可能性があるわけで、そこをカバーするような施策を打ち出すべきだろう。
また、今回の906i/706iシリーズを見て、おそらく今ひとつ気分の良くない思いをしている読者がいるのではないだろうか。それは905i/705iシリーズを購入したユーザーのことだ。およそ半年に一度のペースで、新機種が登場してくることはケータイ業界の常であるため、自分の購入した機種が旧機種になってしまうのはしかたのないことだ。しかし、なかには新機種を見て、「どうして半年前にできなかったの?」と感じるユーザーも少なくないはずだ。特に、従来モデルとの機能的な差異があまりにも大きかったり、従来モデルの不満点がいきなり改善されていたりすると、ユーザーとしてはちょっと複雑な気分だ。筆者の個人的な見解を元に、具体例を挙げるなら、同じサイズのボディながら、ワンセグが追加された「N906iμ」と「P706iμ」などがこれに該当する。従来モデルのP905iが好調な売れ行きを記録した「P906i」も少なからず反響がありそうだ。
従来であれば、新機種が出ても旧機種のユーザーの反応は、あまり表面化しなかったかもしれないが、昨年秋に新しい販売方式がスタートし、割賦販売で購入しているユーザーが多いため、ユーザーによっては今回の発表を見て、少しショックを受けているかもしれない。その思いは割賦払いが終了する約1年半後か、あるいはもっと近い時期なのかはわからないが、次期モデル購入時のユーザー動向に少なからず影響を及ぼすことになりそうだ。たとえば、一段と機種選びが慎重になったり、最悪の場合はもうそのメーカーの端末を選ばないといった心情が生まれてくることも考えられる。
なぜ、このようなことに触れるのかというと、今回、発表されたラインアップやサービス内容に、どこか不自然な印象が残っているからだ。くり返しになるが、動画を打ち出しているわりには料金プランが手つかずだったり、個性派スリムと謳いながら、似たようなボディデザインの端末がラインアップされていたりする。N906iLのように、FMCという今後の通信業界をリードする可能性を実現できる端末がラインアップされているのに、一度に多くの機種が同時に発表されてしまったため、やや他機種に埋もれてしまった印象も残る。
多様化するユーザーのニーズに応えるため、豊富なラインアップを揃えることはたいへん重要だが、ラインアップを揃えることだけでは、NTTドコモとしてのAnswerにはならないはずだ。過去にも触れてきたことだが、ひとつひとつの端末には目指したコンセプトや狙ったターゲットがあるわけで、それらがきちんとユーザーに伝えられなければ、本当の意味のAnswerにはならない。その結果、ユーザーが再び「最大公約数的に高機能端末を選ぶ」と判断してしまったとしたら、それはユーザーにとってもNTTドコモにとってもメーカーにとっても非常に残念な話だ。厳しい言い方かもしれないが、NTTドコモには「All You Need is Love」が何を指しているのかをもう一度、問いたいくらいだ。
さて、長くなってしまったが、今回発表された機種は6月1日から順次、店頭で販売が開始される予定だ。本コラムだけでは必ずしも十分な情報をお伝えできていないのは申し訳ないが、各機種とも905i/705iシリーズよりも一段と完成度を高めており、それぞれのターゲットとするユーザーのニーズに応えられる端末に仕上がっているというのが筆者の率直な感想だ。本誌レポート記事を参照するとともに、ぜひ店頭で実機などを試してみて、自分にフィットする端末をじっくりと選んで欲しい。
■ URL
NTTドコモ 906i製品情報
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/906i/
NTTドコモ 706i製品情報
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/706i/index.html
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(法林岳之)
2008/05/28 21:11
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