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3社の発表から見る2007年夏モデルの傾向
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


出揃った3社の2007年夏モデル

 5月22日にauとソフトバンクから合計27機種が発表され、4月23日のNTTドコモの904iシリーズの発表と合わせ、いよいよ3社の2007年夏モデルが出揃った。この後、ティザー広告を開始しているウィルコムの端末が登場すると予想されているが、いわゆる「携帯電話」としての3社は今回発表されたモデルを中心に、今年の後半戦を戦うことになる。今回の発表から見えてくる3社の2007年夏モデルの傾向を見てみよう。


反撃を狙うNTTドコモ

「ドコモの反撃」とアピールした夏野氏

「ドコモの反撃」とアピールした夏野氏
 「反撃してもいいですか?」のコピーとともに、「DoCoMo2.0」のキャンペーンを展開し始めたNTTドコモ。他社よりも早く4月23日に904iシリーズ5機種を発表し、5月25日からN904iとSH904iの販売も開始され、6月1日にはF904iが登場する。

 発表会のレポートでも触れたことだが、NTTドコモの904iシリーズは本来、903iSシリーズとして開発されていたものを「2in1」や「うた・ホーダイ」など、新サービスへの対応が型番を更新するのに相応しいと判断したため、904iシリーズの名称が与えられている。反撃の狼煙を上げようとしている割に、他社に比べ、発表された新機種が5機種と少ないが、NTTドコモの端末販売は一つ前のモデルなども併売されるため、当面は少し安価になった903iシリーズと903iX/iTVシリーズ、703iシリーズなどが加わった状態で販売されると見られ、店頭での端末のバリエーションは決して少なくない。発表会でも夏野氏が「この5機種で終わりというわけではない」「ソニー・エリクソン製端末は、単に今日の発表に含まれていないだけ」「70Xシリーズも控えている」と述べており、今後、さらにラインアップが拡大する可能性は十分にある。


904iシリーズ
904iシリーズ

 ただ、発表された904iシリーズの各機種については、FOMAハイスピード対応&ワイドVGA液晶搭載の「N904i」、ワンセグ対応のヨコモーションケータイ「F904i」、静電パッドのTOUCH CRUISERを搭載した「SH904i」が目立っているものの、全体的なインパクトは903iシリーズ発表のときに比べれば、それほど力強さは感じない。特に、現時点でユーザーのニーズが高いと言われるワンセグとFOMAハイスピードについて、各1機種ずつしか追加されなかったのは、少し残念な点だ。


ドコモの新サービス「2in1」は今後の活用事例に期待

ドコモの新サービス「2in1」は今後の活用事例に期待
 一方、2in1については、サービス開始初日の25日に若干のトラブルがあったものの、とりあえず、サービスをスタートすることができている。詳細な使い勝手については別途、レビューで紹介する予定だが、2in1は発表会当時に聞かされていた「月額945円で、新たな契約を1回線を追加する」というより、「月額945円で、追加の電話番号とメールアドレスを取得できる」というのが実態で、マルチナンバーに追加メールアドレスサービスが付加されたような印象に近い。ちなみに、発表会では明らかにされていなかったが、iモードを契約するユーザーが2in1を申し込むと、「電話帳お預かりサービス」が自動契約になる。月額使用料については、セット割引となるため、実質的な負担はないが、当初はアナウンスされていなかった情報なので、少し注意が必要だ。

 実際の利用シーンについては、記者発表でも紹介されていたように、2つめの電話番号やメールアドレスを公開用として利用したり、プライベート用と仕事用で使い分けるときなどに適している。請求書についても手数料が掛かるものの、AナンバーとBナンバーで分割送付ができるため、個人用のケータイを業務に使い、業務利用分を会社に請求しているようなユーザーはうまく活用できそうだ。サービスが開始されたばかりだが、今後、少しずつ具体的な活用事例が提案されてくることが期待される。


 また、NTTドコモの2007年夏モデルに関する動きで、もうひとつ気になるのは、905iシリーズの存在だ。903iシリーズ、904iシリーズと来れば、次は905iシリーズということになるのだが、通常、こうした次期モデルについては、あまり情報が明らかにされることはない。しかし、今回は904iシリーズ発表後に行なわれた決算発表の席において、中村社長自ら「GPS、GSM、おサイフケータイ、ワンセグといったものをすべて載せたものを905iシリーズで実現できるだろう」とコメントするなど、次期モデルへの期待を持たせている。この他にも同社関係者による講演やセミナー、会見などでも頻繁に905iシリーズに関するコメントが飛び出している。そのため、ユーザーとしては904iシリーズが店頭に並び始めたものの、「そんなに変わりそうなら……」と買い控えてしまいそうな雰囲気だ。

 さらに、今回の発表に限らず、最近のNTTドコモの端末販売については、他社に比べても割高な印象が強い。機種や販売店などによって差はあるが、最新の904iシリーズや903iシリーズは安くても2万円台、高ければ、4万円弱という値段が付けられているのに対し、auはほとんどの機種を1~2万円(新規契約の場合)で購入できてしまう。NTTドコモで安価に端末を購入するには旧機種に目を向けるしかないが、auは数カ月単位で新機種が入れ替わるため、比較的新しい機種を安価に購入しやすい。すでに2007年春商戦向けモデルはかなり値段が下がっており、買いやすくなっている。販売方法が異なるため、一概に比較できないが、こうした「買いやすさ」の差も今後の市場に影響を与えそうな印象だ。


ワンセグ対応端末が豊富なauのラインアップ

 MNP開始以降、auは他社からのMNP転入が続くなど、好調ぶりが伝えられているが、やはり、端末のラインアップの豊富さや価格の手ごろさ、ユーザーが興味を持てるサービスなどがうまくバランスしながら、ユーザーに浸透してきたという印象だ。

 今回、auは2007年夏商戦向けモデルとして、主要3社中、もっとも多い15機種を一気に発表した。15機種中、1機種は2006年秋冬モデルのセカンドモデルとなるため、まったくの新規端末と言えるのは14機種という見方もできる。また、最近はバリエーションが少なくなりつつあるが、15機種中、3機種はCDMA 1X対応端末となっている。CDMA 1X対応端末はどちらかと言えば、ライトユーザー向けという印象だが、その一方で2008年3月のツーカーのサービス停止に伴い、ユーザーの移行を促すためにも必要と言われている。CDMA 1X対応端末ではA5514SA以来、久しぶりにGLOBAL PASSPORT対応端末も発表されたが、これも頻繁に国際ローミング対象国と行き来するユーザーには一定のニーズがあると言われており、新機種の登場が期待されていたようだ。



ワンセグに防水、スリムなどの要素を加えた

ワンセグに防水、スリムなどの要素を加えた
 端末のバリエーションという点では、やはり、ワンセグ対応端末の多さが目につく。発表会のプレゼンテーションでも紹介されていたが、過去に販売されたモデルも含め、主要3社の内でもっともワンセグ対応端末が多く、今後はカメラのような標準機能に育てていこうとしている姿勢がハッキリとうかがえる。しかもただ単にワンセグを搭載するだけでなく、防水化やスリム化などの機能面での差別化を図ったり、ボディデザインも折りたたみや二軸回転式、スライド式など、バリエーションを揃えることで、ユーザーが選びやすいラインアップを揃えている。

 ワンセグ対応端末以外では、「EXILIMケータイ W53CA」や「ウォークマンケータイ W52S」が注目される。ウォークマンケータイは昨年に引き続いて発表された後継モデルだが、EXILIMケータイは国内最高峰を目指したカメラ付きケータイだ。auのカメラ付きケータイをリードしてきたCAシリーズならではのアプローチだが、コンパクトデジタルカメラのトレンドである広角レンズを採用している点も注目される。ただ、現状では5Mピクセルで撮影した画像はメールに添付できないなど、最高峰のスペックを活かす術が限られているのが気になるところだ。同様に、昨年のW47TおよびDRAPE以降、CDMA2000 1xEV-DO Rev.A対応端末が登場しなかったことも残念な点だ。


「ライフスタイルの提案」を掲げた高橋氏

「ライフスタイルの提案」を掲げた高橋氏
 サービス面ではStandaloneGPSを利用した「災害時ナビ」や「EZガイドマップ」、FeliCa 2.0チップを利用した「Touch Message」などが提供されるが、あまり大がかりな新サービスはない。どちらの新サービスも十分に実用性のある魅力的なサービスではあるのだが、従来のLISMOなどのような派手なサービスではない。

 その理由のひとつは発表会のレポートでも触れた「単に新たなサービス・機能を搭載するだけでなく、ライフスタイルを提案したい」という原点に立ち返る姿勢があるが、もうひとつの事情として、現在、採用されているクアルコムのチップセット「MSM6550」で実現できることが限界に近づいてきたことも見え隠れする。

 たとえば、現在、NTTドコモやソフトバンクの端末では、マルチタスク動作が可能なモデルが多いが、auのWIN端末の場合、メールのバックグラウンド受信やLISMOのBGM再生など、基本的な並行動作はできるものの、全般的にマルチタスク的な動作は制限されている。通常の利用であれば、それほど不満は感じないかもしれないが、ワンセグを見ながらのメール作成やコンテンツ閲覧といった操作ができないなど、他事業者の端末と比べ、機能的に一歩譲る面が出てきてしまっているのも事実だ。こうした制限がなくなり、さらに高機能で新しいサービスなどが登場するには、次期モデル以降での搭載が噂されているクアルコムの新しいチップセット「MSM7500」の登場を待つしかなさそうだ。


ハイスペックで仕様を揃え始めたソフトバンク

スタイリッシュをアピールした孫氏

スタイリッシュをアピールした孫氏
 ソフトバンクは2007年夏商戦向けモデルとして、auの15機種次ぐ、12機種を発表した。この内、1機種は2007年春商戦向けモデルの派生モデルなので、実質的には11機種ということになる。

 発表会では孫正義社長が「スタイリッシュ」という言葉をくり返し使い、デザイン面でのアピールをしていたが、それに言葉に見合うだけのデザイン性を重視したモデルがラインアップされている。ボディデザインのバリエーションは若干、偏りがあるものの、折りたたみ式とスライド式を中心に、二軸回転式やサイクロイドもラインアップされており、選択肢は多い。Windows Mobile 6を搭載したスマートフォンもX01HTやW-ZERO3などで採用されている引き出し式のフルキーボードを装備した端末だけでなく、海外などで人気を集めているフルキーボードを装備したストレートデザインのX02HTをラインアップに加えるなど、ユーザーが期待する端末を揃えつつあるように見える。




 サービス面については、パソコン版Yahoo!動画との連携が発表され、早速、サービスも開始されたが、それ以外にはあまり目立ったものはない。

 ただ、HSDPAによる3Gハイスピード対応端末が一気に8機種も追加され、ネットワークに関わる部分については先手を打ってきた印象が強い。同じW-CDMA方式を採用するNTTドコモは、HSDPA対応端末が最新のN904iを含め、5機種(内1機種はデータ通信カード)しかないことを考えると、ソフトバンクの3Gハイスピード対応端末8機種投入がいかに多いのかがよくわかるだろう。こうした取り組みをしてきたのは、メーカーの端末開発がうまく進捗していることも関係するだろうが、「新スーパーボーナス」というソフトバンク独特の販売方法がに背景にあると推測される。

 ご存知のように、新スーパーボーナスは端末の代金を24回、もしくは12回の分割で支払い、端末の価格に応じて、月々の基本使用料から相当額が継続して割り引かれるという販売方法だ。そのため、新スーパーボーナスで購入した場合、ユーザーは基本的に2年、もしくは1年、同じ端末を使い続けることになる。こうした状況において、3Gハイスピードのエリアが拡大したり、新しい利便性の高いサービスが登場したとき、ユーザーの持つ端末が非対応のものばかりではせっかくのサービスも使われない可能性が高く、逆に新スーパーボーナスという販売方法への不満や批判が高まることが懸念される(現状でも不満の声はあるが……)。

 そこで、ネットワークの整備はまだまだ途上中だが、端末についてはいち早く3Gハイスピード対応端末をラインアップに多く投入し、エリアが充実する数年以内にユーザーの利用環境も整えておきたいという考えのようだ。ソフトバンク3Gの場合、特に端末側で3Gハイスピード対応のエリアか、通常のソフトバンク3Gのエリアかを判別する方法が提供されていないため、実際の利用シーンでは3Gハイスピードをあまり意識することはないが、先を見越した端末購入をするのであれば、やはり、3Gハイスピード対応は外せないところだろう。ちなみに、発表会の質疑応答で孫社長は「他社のように、特定のシリーズやある時期以降に販売されたモデルが特定のサービスに対応するといった端末のラインアップ展開は考えていない」といった主旨の回答をしており、サービス提供と端末スペックを必要以上に連動させないことを考えているようだ。

 いずれにせよ、今後のソフトバンクの展開を左右するのは、やはり、スーパーボーナスという販売方法だろう。実質的に2年、もしくは1年の縛りを掛けられるため、それを見越した付き合い方が必要になる。それは単純に端末のスペックだけでなく、ボディデザインやボディカラー、サポート体制なども含め、トータルバランスの優れた端末を選ぶ必要があると言えそうだ。


2007年夏モデルは何が買い?

 各社から発表された2007年モデルの傾向をまとめてみたが、全体的な見渡してみると、「三社三様」の展開と事情が少し見え隠れしている。各社ともMNPの開始以降、新たなる展開を模索しているところだが、各社の事情があり、正直なところを書いてしまうと、まだ模索の域を出ていないという印象すらあった。端末のスペックで、新たな取り組みと言えるのは、一部機種で採用された28mm広角レンズくらいで、それ以外は基本的に現状の発展形のものが多い。一見、これはケータイの機能が行き詰まったように受け取られてしまいそうだが、逆に現時点での機能が熟成されてきており、次の進化への下準備が着々と進んでいるという見方もできるだろう。

 また、今回は触れていないが、ソフトバンクでは新たに2機種のスマートフォンが発表され、auもスマートフォン開発の意向を表明している。ウィルコムのWindows Mobile 6搭載端末も発表が間近であり、今後、スマートフォン市場での各社の競争が激しくなる前触れと言えるのかもしれない。



URL
  NTTドコモ
  http://www.nttdocomo.co.jp/
  au
  http://www.au.kddi.com/
  ソフトバンクモバイル
  http://mb.softbank.jp/mb/

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(法林岳之)
2007/05/31 12:27

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