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バランスの良さで完成度を高めた「D503i」
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フリップ式デザインを継承
NTTドコモの主要端末メーカーの中でも安定した人気を獲得しているのが三菱電機製のムーバDシリーズ。iアプリに対応した503iシリーズ第5弾として登場した「D503i」はおなじみのフリップ式デザインを継承し、従来からのファン層の期待に着実に応えようとする一方、かな漢字変換にジャストシステムの「ATOK Pocket」を採用するなど、新しい試みも見られる。筆者も機種変更で端末を入手することができたので、早速、レポートをお送りしよう。
折りたたみ式に対するアンチテーゼ
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NTTドコモ『デジタル・ムーバD503i HYPER』。サイズ:46(W)×129(H)×17(D)mm(フリップを閉じた状態)、81g。メタリックルージュ(写真)、ブルーグラファイト、ライトニングホワイトの3色をラインアップ。
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最近のケータイのデザイントレンドと言えば、もちろん「折りたたみ式」だ。iモードをはじめとするコンテンツ閲覧機能やメール送受新機能が搭載されるようになって以来、折りたたみ式デザインの人気は高く、他の携帯電話事業者の端末も見渡すと、十数機種を超える折りたたみ式デザインのケータイが販売されている。
折りたたみ式デザインのメリットとしては大画面液晶ディスプレイ、折りたたみ時のコンパクトさ、ボタンの誤動作防止などが挙げられるが、折りたたみ式以外のデザインを採用したケータイにもメリットや個性がある。たとえば、ストレート式と折りたたみ式の中間的な位置に存在するフリップ式デザインは、双方のメリットを持ち合わせており、フリップを閉じておけば、ボタンの誤動作も防ぐことができ、フリップを閉じることによる終話などの設定も可能だ。右も左も折りたたみ式全盛となった今、そのアンチテーゼとしてフリップ式を選ぶユーザーも多いようだ。
このフリップ式を最も古くから採用し、得意としているのがムーバDシリーズを開発する三菱電機だ。iモード登場以前はスマートなデザインが女性を中心に人気を得ていたが、iモードの登場以降は全体的な動作が今ひとつ緩慢であるといった不満点なども指摘され、今ひとつ人気が奮わない状態が続いている。
今回発売されたD503iは、従来モデル同様、フリップ式デザインを採用している。しかし、同じ三菱電機がJ-フォン向けに発売する予定の「J-D04」ではフリップ式デザインを取りやめるなど、フリップ式に対するメーカーとしての迷いもあるように感じられる。
また、今回のD503iでは日本語入力のかな漢字変換として、PCでも高い支持を得ているATOKを携帯電話向けにデザインした「ATOK Pocket」を採用している。携帯電話の日本語入力は発展途上中の分野だが、メール機能の使い勝手などを考慮すれば、こうしたアプローチは非常に注目できるものだ。
iアプリに対応した503iシリーズの第5弾として登場したD503iは、どのように完成度が高められたのか、先行する他の503iシリーズに比べ、どのようなアドバンテージを持っているのかなどを中心にその実力を探ってみよう。
503iシリーズでは最高解像度の液晶を採用
細かいスペックなどについては、NTTドコモや三菱電機の製品情報ページ、すでに掲載している「ケータイ新製品SHOW CASE」などを参考にしていただくとして、ここでは実機を触った印象を中心に紹介する。
ボディについては、最初にも触れた通り、従来モデルと同じフリップ式デザインを採用している。ボディそのものの大きさはストレート式のF503iなどよりも背が低く、厚さもP503iと同じ17mmに収められ、コンパクトにまとめられている。フリップは閉じた状態でボタンの誤動作を防ぐだけでなく、フリップを閉じることによる終話、開いたときに特定の電話番号を表示する機能なども用意されている。後者の機能は自宅や会社など、特定の相手に頻繁に発信するときに便利だ。
背面には内蔵スピーカーとともにiモードのロゴがあしらわれているが、メール着信時や通話中などにロゴが光るイルミネーション機能も備えており、設定内容に応じて、イルミネーションの色を変更することも可能だ。
液晶ディスプレイは132×161ドット表示が可能なTFDカラー液晶を採用し、最大4096色まで表示することができる。実測値は30×37mmで、503iシリーズではP503iと並ぶ小ささだが、解像度しては最大であり、視認性も良好だ。画像形式は通常のiモード端末と同じで、N503iなどでサポートされているJPEG形式には対応しない。
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背面に備えられた内蔵スピーカーとiモードロゴ。ロゴが光るイルミネーション機能も搭載。
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液晶ディスプレイはTFDカラー液晶を採用。サイズこそ大きくないが、解像度の高さは503iシリーズでトップ。
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ボタン配列はD209iを継承し、最上段左上にメールボタンを装備。
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ボタン類は基本的に従来モデルのデザインを継承しているが、イージーセレクターの中央ボタンやフリップを開いた最上段の左上にメールボタンなどはD209iと同じタイプを採用している。目新しいところではフリップ上に装備された横長のボタンが目につく。左側がiモードボタン、右側がiアプリボタンだが、iモードボタンの長押しで公式サイトへの接続、iアプリボタンの長押しで設定したiアプリの自動起動ができる。文字の入力などをしないのであれば、基本的にフリップを閉じた状態でiモードサイトを閲覧することが可能だ。
音質の良い着信メロディ
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フリップ前面にはiモードボタンとiアプリボタンの機能が割り当てられた横長のボタンを装備。iアプリ側の長押しで一発起動も設定できる。
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従来のD502iなどで今ひとつと指摘されていた本体の動作だが、D503iではかなり改善され、メニュー操作などの動作もスムーズになっている。ただ、iアプリの動作についてはP503iほどではないものの、あまり高速ではない。実用上はそれほど不満はないが、ゲームなどのiアプリを目的としているのであれば、実際に動作状況を確認することをおすすめしたい。
D503iで新たに採用された機能として注目されるのは、かな漢字入力の「ATOK Pocket」だ。PCでは十分すぎるほどの実績があり、最近ではPDAなどにも標準で搭載されるなど、PC以外での採用例が増えている。SO503iやC406Sに採用されている「POBox」のように、テンキーの押す回数が減るわけではないが、誤変換などは確実に少なくなっており、メールなどの長文を入力するときの修正も少ない。ただ、携帯電話に実装されている関係上、メモリ容量に制約があるため、必ずしもPCと同レベルで変換できるわけではないが、従来の環境に比べれば、確実に進歩していると言えそうだ。
文字入力については、D209iをレポートしたときにも紹介したように、メールアドレスやインターネット上のサイトのURLを入力するときによく利用する「http://」「.co.jp」「.ne.jp」「www」といった文字列を簡単に入力するための機能がないようだ。せっかく、ATOK Pocketを採用したのであれば、こうした部分についても改善して欲しいところだ。
着信メロディについては、他の503iシリーズ同様、16和音対応となっているが、特筆に値するのがその音質の良さだ。背面のスピーカーの質なのか、オーディオ機器メーカーとしてのこだわりなのかはわからないが、確実に他の503iシリーズよりも着信メロディがきれいに聞こえる。ただ、D209iでサポートされたフリップを開くときなどの効果音機能は省かれている。
この他には、D209iやD502iでサポートされていた同報メールが最大10人にまで拡張され、メール送信の宛先をまとめて登録する機能などもサポートされており、メール周りの機能が充実している。全体的には従来モデルの機能を拡張したものが多いが、使い勝手は確実に改善されており、買い換えのユーザーにも魅力が感じられる端末としてまとめられている。
意外な機能とバランスの良さがウリ
最後に、いつものように「買い」の診断をしてみよう。冒頭でも触れたように、iモード登場以降、Dシリーズは今ひとつ奮わないと言われていたが、今回のD503iは全体的なバランスとまとまりを重視したようで、意外に完成度は高い。派手な機能こそないが、ユーザーが必要とする機能を着実にサポートしている。
まず、すでにD502iなどの従来モデルのユーザーについては、他の503iシリーズに目移りがするかもしれないが、継続性を重視するのであれば、D503iは「買い」だろう。基本的な使い勝手を変えることなく、全体の使いやすさを向上させており、従来モデルで感じられた細かい不満もいくつか改善されているからだ。特に、全体の動作速度については満足できるレベルに達しており、D502iなどとは別のものという印象が得られるはずだ。
一方、従来モデルで他機種を利用していたユーザーだが、Dシリーズ特有の使い勝手を受け入れることができ、メール周りの機能を重視するのであれば、購入対象として十分検討できるレベルだ。メール機能についてはN503iやSO503iに定評があるが、実は従来モデルからDシリーズもメール機能は充実しており、3機種ともレベル的にはほぼ同等と見て差し支えない。また、iアプリなどを重視するのであれば、動作速度に定評のあるSO503iなどと見比べてみるのもいいだろう。
今回のD503iで、503iシリーズもすでに5機種をレビューしたことになるが、筆者個人としては「今度のDって、実は意外にいいかも……」というのが偽らざる感想だ。前述のURL入力などの細かい不満点や強烈な個性には欠けるが、全体的なバランスの良さとまとまり具合いについては現時点での503iシリーズのトップクラスだ。目先の派手さよりも実用性を重視するユーザーなら要チェックの存在だろう。
(法林岳之)
2001/04/04 00:00
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