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「N503i」はiモード史上最強を超えられたか?
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


名機「N502it」の後継モデル

 1月に発売されたF503iとP503iに続き、待望の折りたたみモデル「N503i」が発売された。502i世代では圧倒的な強さを誇り、昨年9月に登場した「N502it」はiモード史上最強モデルと持てはやされた。N503iではどこまで従来モデルを超えているかが気になるところだ。筆者も機種変更で端末を購入したので、早速、レポートをお送りしよう。


早朝からの行列、再び……

 NTTドコモ『デジタル・ムーバ N503i HYPER』。サイズ:48(W)×93(H)×22(D)mm(折りたたみ時)、98g。ラベンダー(写真)、エアリー、インディゴの3色をラインナップ。
 現在の携帯電話のデザイン的なトレンドと言えば、やはり、折りたたみ式をおいて他にない。今さら説明するまでもないが、このトレンドを生み出し、定着させたのはNECであり、NTTドコモ向けに開発されたN501i/N502i/N502it/N209iという一連のラインナップだ。なかでも昨年秋に発売されたN502itは、折りたたみ式ボディと大画面カラー液晶が支持され、圧倒的なシェアを獲得している。N502it登場以前はどちらかと言えば、女性を中心にウケていた『折りたたみのN』だが、N502itでは支持層を着実に広げ、男性ユーザーが持つシーンもかなり見かけるようになってきた。おそらくiモード端末としては、最も販売台数が多い端末の1台と言えるだろう。

 その後継モデルとして登場したのが今回紹介する「N503i」だ。NTTドコモは今年1月にiアプリ対応のF503iやP503iが発売したが、筆者の周りでも「とりあえずN待ち」「N503iを見てから」という声が数多く聞かれ、N503iに対する期待感はかなり高かった。昨年末から発売が噂されていたが、先週半ばに発表されて以来、N503iの話題が一気に増えており、早くも従来モデルを超えるヒット作になりそうなほどの反響だ。N502itのときのレポートでは発売日の朝、ショップに行列ができた話を紹介したが、今回も早朝からドコモショップなどを中心に数十人の行列ができ、土曜日の内に品切れになってしまうショップもあったという。P209iSや他社の携帯電話でも折りたたみモデルがいくつか登場しているが、iモード端末においては「折りたたみのN」の神通力健在のようだ。

 今回発売されたN503iは、F503iやP503i同様、iアプリに対応していることが特長だが、その他にも液晶ディスプレイなど、随所に改良点が見られ、かなり期待感の持てる端末となっている。名機N502itをどれだけ上回っているのか、先行するライバル機にどのようなアドバンテージを持っているのかなど、気になる点は数多くあるが、N502itとの差を踏まえながら見てみよう。


4096色表示が可能なTFDカラー液晶ディスプレイを搭載

 液晶ディスプレイ側には光るiモードロゴやIrMC準拠の赤外線通信ポートなどを装備。
 細かいスペックなどについては、いつものように、NTTドコモやNECの製品情報、本日掲載の「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは実機を触った印象を中心に紹介しよう。

 まず、折りたたみ式のボディだが、基本的なデザインコンセプトに大きな違いはなく、サイズもN502itと変わっていない。細かい点では、バッテリー部分の角が丸くなっていたり、液晶ディスプレイ側の背面にラインやエンブレム、IrMC準拠の赤外線通信ポートが装備された点などに違いが見られる。重量は後述する液晶ディスプレイの変更などがあるにも関わらず、約7gの軽量化を果たし、100gを切っている。折りたたみ式としては最軽量の部類に入るだろう。


 卓上ホルダにセットするときは閉じた状態のアンテナ側から入れて、蝶つがい側を上から押し込む。慣れれば、気にならないのだが、あの「ガッチン」という音は……。
 ちなみに、筆者が軽量化の一因と見ているのが、ボディ材質の違いだ。一見、従来モデルと同じプラスチックを採用しているように見えるが、触ったときの質感が微妙に異なり、ボディの厚さが違うように感じられる。塗装の違いもあるが、液晶ディスプレイの背面側やボタン部分を軽く押してみると、N502itが比較的しっかりしているのに対し、N503iは妙にペコペコしている。こんなところまで気にするユーザーはあまりいないのかもしれないが、落下などの事故が起きた場合のダメージはN503iの方が大きくなる可能性もありそうだ。しばらくの間、取り扱いには注意した方がいいかもしれない。余談になるが、N503iでは卓上ホルダへの固定方法がN502itから変更されており、上から少し力を加えて、カッチンという音が鳴るとこまで押し込むようになっている。この操作をするとき、妙な場所に力を加えると、壊れてしまいそうな気もする。


 N503i(左)とN502itを開いたところ。画面サイズはN503iの方が大きそうに見えるが、実測値はほとんど変わらない。  N503i(左)とN502itとを閉じたところ。非常によく似ているが、蝶つがいの部分も微妙に高さなどが異なる。

 液晶ディスプレイはTFD液晶を採用。画質、発色ともに、STN液晶とは格段の差がある。画面下に並んでいるのが「コンパクトデスクトップ」のアイコン。
 次に、液晶ディスプレイだが、N503iではiモード端末としてはじめて4096色表示が可能なTFD液晶を採用している。N502itをはじめ、多くの携帯電話ではSTN液晶などが採用されているが、ノートPCなどでは視野角が広く、応答速度の速いTFT液晶が採用されている。TFT液晶は「Thin Film Transistor」の略で、画面を構成する各ドットをトランジスターで制御している。これに対し、N503iで採用されたTFD液晶は「Thin Film Diode」の略で、トランジスターの代わりにダイオードを利用している。TFT液晶は性能的に優れていると言われているが、コスト的に高い上、消費電力も大きいため、携帯電話には今のところ、J-フォンのJ-SH05(シャープ製)にしか採用されていない。TFD液晶はTFT液晶とほぼ変わらない品質を保ちながら、消費電力を押さえることができ、回路的にもシンプルになるため、コストダウンができるというメリットを持つ。


 ボタン類はわずかなデザイン変更のみ。方向キーの操作性はわずかに改善された感じだ。
 N503iの画質や明るさなどの面については、従来モデルのSTN液晶よりも明らかに鮮明であり、反応速度も申し分ない。表示エリアのサイズも実測値で従来モデルとほぼ同等の30.5×40.5mm(N502itは31×41mm)となっており、ダイヤルボタンの[5]の長押しでバックライトをON/OFFできる仕様も受け継がれている。ただ、TFDを制御する回路を内蔵する関係なのか、液晶ディスプレイが本体の中心よりも少し右にオフセットされている。慣れてしまえば気にならないのだろうが、最初は少々違和感を覚える。

 ボタン類はiモードボタンやMenuボタン、決定ボタンのデザインが変更された程度で、あまり大きな変更はない。方向ボタンも中央の凹んだ部分が大きくなっている。ただ、従来モデルで指摘していた方向ボタンと決定ボタンの間隔はあまり広くなっていない。爪の長い女性は上方向を入力するときに、間違って決定ボタンを押してしまわないように注意した方がいいだろう。メールボタン長押しによる新着メール問い合わせなどの機能はそのまま受け継がれている。


コンパクトデスクトップは便利

 iアプリはダウンロード後に、起動できるように設定を変更する必要がある。
 機能面については、やはり、iアプリ対応がひとつのポイントになる。ただ、iアプリの登録件数は5~10件となっており、P503i同様、少ない。5~10件という表記はiアプリの容量そのものが異なるためで、最大10件という解釈になる。iアプリの動作は比較的軽快で、ゲームなどの操作感も問題ない。編集部内で確認したところでは、F503iと同等か、それ以上という判断に落ち着いた。ちなみに、NECではiモード公式メニュー内の「みんなNランド」でゲームなどのiアプリを提供している。

 iアプリ以外の機能面では、コンパクトデスクトップがなかなか便利だ。コンパクトデスクトップとは、デスクトップ(待受画面)によく見るサイトのURLやメールアドレスをアイコンとして最大4件まで貼ることができる機能のことで、PCのショートカット(Mac OSのエイリアス)に近い感覚のものだ。デスクトップに貼ったURLやメールアドレスは決定キーを押すと選択できるようになり、選択しているアイコンのタイトル名が表示される。同様の機能として、P502iなどで採用されている「iワープ」があるが、タイトルが表示される分、こちらの方が便利と言えそうだ。コンパクトデスクトップはアイコンで待受画面をすべて隠さないようにするため、最大4件にしているのかもしれないが、実は意外に便利なので、もう一段分の8件でも良かったのではないだろうか。

 また、Menuボタンを押したときに表示される画面は、従来モデルが16個のアイコンだったのに対し、N503iでは6個のカラーの大きなアイコンに変更されている。従来モデルでは機能設定のためのアイコンが並んでいるだけという印象だが、N503iでは「メロディプレーヤー」と「イメージビューア」などの機能が追加され、機能の選択画面という印象だ。メロディプレーヤーは着信メロディの再生、イメージビューアはダウンロードした画像を見るためのツールというわけだが、これは完全に「自慢のためのユーティリティ」という印象が強い。これらのツール類では着信メロディも画像も基本的に聴いたり、見たりするだけで、再生したものを着信メロディとして設定したり、待受画面として設定することはできない。これらの機能を設定するには、メニューから「各種設定」を選び、それぞれの項目を呼び出すことになる。確かに、自分で入力したり、ダウンロードした着信メロディを再生することは多いだろうが、標準搭載されているものまで選択できるようにするのはちょっと『蛇足』のような気もするのだが……。


 見えにくいかもしれないが、着信時や通話中に背面のiモードロゴのエンブレムが青く光る。
 メニュー画面については、ユーザー自身がカスタマイズできるようになっていたり、ユーザーデータを別途、参照できるようにしているなど、従来モデルよりも使いやすくなっているのは確かだ。ちなみに、マニュアルには表記されていないが、画像ファイルはGIFに加え、JPEGの表示も可能になっている。

 この他にも液晶ディスプレイ側の背面のロゴが光ったり、側面のメモ/確認ボタンでメールの有無を確認したときに音声で「新着メールあり」としゃべらせたりするなど、楽しませる機能も充実している。


N502itを超えたように見えるが……

 液晶ディスプレイは若干、右寄りにオフセットされている。液晶左部分に回路を入れるためだろうか。
 最後に、いつもように買いの診断をしてみよう。iモード端末の中で最も人気の高いNシリーズ。大方の予想通り、今回のN503iも発売早々に人気を集めている。液晶ディスプレイにTFD液晶を採用したことや機能面の改良などにより、確実にN502itよりも完成度の高いiモード端末として仕上げられている。ただ、正直なところを言わせてもらえれば、N503iにはいくつか不満が残る。

 まず、前述のボディ材質はどうも引っかかる。筆者が気にしすぎなのかもしれないが、このペコペコ感は「最近のNらしからぬ」というのが正直な感想だ。液晶ディスプレイが右にオフセットされているのも気になる。また、新機能が追加されたとは言え、実質的に利便性が高いのはコンパクトデスクトップくらいしかなく、それ以外は基本的にN502itに搭載されていた機能のリファインや再構成が中心となっている。503iシリーズのセールスポイントであるiアプリの登録本数(メモリ容量)が少ないことも大きなマイナスポイントだ。

 今日現在、販売されているiモード端末の中で、N503iが魅力的なモデルのひとつであることは否定しないが、「どうだ! これがN503iだ!」というインパクトが弱く、iモード端末をリードしてきた「折りたたみのN」がこんなことでいいのかという気もしなくはない。「ベストセラーモデルの後継だから、冒険ができない」という側面があるにしても、折りたたみと高品質な液晶くらいしかアピールポイントがないというのはちょっと物足りない。

 これらの点を総合すると、本当にN503iをおすすめできるのは「とにかくNが好きな人」という当たり前の回答になってしまう。もし、iアプリに興味がなく、高品質な液晶を望まない(カラーであれば良しとする)のであれば、N503i発売で安くなったN502itを購入するという手も考えられるだろうし、液晶を重視するのであれば、今週末に発売されるSO503iを見てからでも遅くない。最後は実用性と楽しさ、機能のバランスということになるのだが、これまで発売されたF503i、P503i、N503iの3機種以外に、今後、SO503iなど3機種が登場すると言われており、今すぐN503iに手を出すのは少々気が引けてしまう。

 P503iのレビュー同様、やや辛口の評価になってしまったが、iモード端末をリードしてきたNだからこそ、もっと頑張って欲しいというのが偽らざる感想だ。従来モデルをベースに完成度を高めることは素晴らしいが、「何のためにNに買い換えるのか」「503i世代では何をアピールしたいのか」などがハッキリと理解できるモデルの登場を期待したい。



(法林岳之)
2001/03/07 00:00

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