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「ALL FOR MNP~すべてはMNPのために」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


 2006年のケータイ市場は、すべての事柄がMNPに通じていた一年だったと言えるだろう。今年も残すところ、あとわずかだが、話題になったトピックを取り上げながら、2006年を振り返ってみよう。


すべての道がMNPに通じていた2006年

2006年はMNPの年だった
 年々、各社の競争が激しさを増す日本のケータイ業界。しかし、ここ数年は今年、つまり、2006年を目標にすべての事柄が突き進んできたと言っても過言ではない。それは言うまでもなく、今年10月24日に携帯電話の番号ポータビリティ制度「MNP(Mobile Number Portablity)」が開始されたからだ。端末にしろ、サービスにしろ、コンテンツにしろ、事業者の買収にしろ、すべての道はMNPに通じていたことを意味する。言わば、2006年は各社の集大成的な一年だったとも言えるわけだ。

 とは言うものの、そんな中にも業界としての新しいトレンドや動きもいくつか見受けられた。ここでは2006年のトピックを振り返りながら、2007年以降の流れを探ってみることにしよう。


おサイフケータイを巡る主導権争い

モバイルSuica
 2004年夏に開始され、徐々に拡がりを見せてきたおサイフケータイだが、具体的な活用としては、ビットワレットの電子マネー「Edy」が圧倒的な主流だった。しかし、今年に入り、JR東日本の「モバイルSuica」のサービスが始まり、いよいよ交通系サービスでの利用もスタートした。モバイルSuicaは基本的に首都圏と一部のエリアのみで提供されているため、全国的にはまだ存在感が薄いという声もあるが、来春には私鉄やバスで非接触ICカードを利用したサービス「PASMO(パスモ)」のサービスが開始され、モバイルSuicaとの相互乗り入れも可能になるため、一気に拡がりを見せそうな気配だ。

 今年のおサイフケータイを巡る動きで、もうひとつ忘れてはならないのがクレジットカードだ。NTTドコモはクレジットカードプラットフォーム「iD」を利用した自社ブランドクレジットカード「DCMX」をスタートさせ、auの端末には国内のクレジットカード最大手のJCBなどが提供する「QUICPay」を標準搭載。UFJニコスはSmartplusを展開し、VISAカードも同技術を利用した「VISA TOUCH」の提供を開始している。今年9月に筆者が記事を書いたときは、本当に対応店舗を探さなければ、おサイフケータイのクレジットカードサービスを利用できないレベルだったが、12月にはたまたま入った店舗にもリーダーライターが設置されていて、利用することができた。ユーザーの気持ちとしては、まだ「おサイフケータイでクレジットカード」に抵抗感があるだろうが、少なくとも利用できるインフラストラクチャは着実に拡がっているという印象だ。

 おサイフケータイもサービス開始から2年以上が経過したが、各陣営の動きを見てもわかるように、来年以降は「おサイフケータイで何ができるか」ということより、「その企業が提供するサービスが利用しやすいか、どんなメリットがあるか」が重要になりそうだ。対決の構図も複雑化し、電子マネーでの「Edy vs. モバイルSuica」という構図もあれば、「電子マネー vs. クレジットカード」、あるいはクレジットカードの方式別の競争もある。さらには、「ビックカメラSuicaカード」のように、家電量販店のサービスも巻き込んだ競争が展開され、おサイフケータイの主導権を巡る争いは激化しそうだ。


ワンセグ

 今年、提供が開始されたサービスとして、もっとも重要かつ話題性があったものと言えば、やはり、ワンセグをおいて、他にないだろう。今年4月に正式サービスが開始され、12月にはいよいよ全国に展開されたが、瞬く間に「ワンセグ」という言葉も浸透した印象だ。ただ、対応機種については昨年のW33SA以降、W41H、P901iTV、905SH、W33SA II、W43H、W43SA、911SH、W44Sと、リニューアルのセカンドモデルを含め、9機種しか登場していない。NTTドコモがすでに発表し、来年早々に発売を予定しているSH903iTV、P903iTV、D903iTVを加えてもようやく10機種を超える程度だ。今年はMNPの影響で、発表される機種が多かったというのもあるが、100機種以上の内の1割程度というのは、意外に少ない。

 また、ワンセグというと、ケータイ向けのデジタル放送と考えられがちだが、パソコン向けのUSB接続ワンセグチューナーが品切れを起こすほどのヒットを記録し、カーナビでも地上デジタル放送とワンセグの自動切り替えを持つ製品が続々と登場している。

 こうした状況もあり、来年は早い段階からワンセグ搭載端末が続々と登場することになると言われている。今年前半まではワンセグ対応端末の開発に技術を必要としたが、ソリューションが開発され、ノウハウも蓄積されたことで、開発しやすい環境が整いつつあるという。今年はワンセグか否かが選択の基準だったが、来年はどのワンセグがきれいか、便利か、使いやすいかといった次元で比較されることになるだろう。


音楽再生

LISMO
ナップスター

 ワンセグと並び、ケータイが『メディア化』するという点で、見逃せないのが音楽ケータイだ。ケータイでの音楽再生については、数年前から搭載されてきた機能だが、今年はauが統一環境として「LISMO(au LISTEN MOBILE SERVICE)」を提供したほか、NTTドコモも傘下のタワーレコードとナップスタージャパンによる定額制の音楽配信サービス「napster」に対応した端末を投入するなど、事業者主導で音楽サービスを積極的に利用してもらおうとする動きが見られた。端末も10時間以上の音楽連続再生を可能にしたり、ステレオイヤホンやリモコン付きイヤホンマイクを同梱するなど、使いやすい環境を整えている。容量については、メモリカードの制限があるため、実質的には1GBクラスが中心になるが、それでも専用音楽プレーヤーとは違った手軽な音楽プレーヤーとしての利用が浸透しつつある。

 来年以降はW44Sとau Music Port Ver.3.0で実現されたように、ミュージッククリップなどを含めた音楽エンターテインメントに拡がることが期待される。napster対応についても現状ではパソコンが必須だが、ケータイのみ、あるいは他のAV機器などを利用した連携などが登場してくる可能性もありそうだ。特に、HSDPAによる高速通信を活かすサービスとして、ケータイのみによるnapsterからのダウンロードは、現実味があるのではないかと見ている。


海外メーカーの台頭

注目を集める「M702iS」
 以前から言われていることだが、日本のケータイ市場は特殊な環境にあるため、閉鎖的で海外メーカーが入りにくいとされている。しかし、今年は本格的に海外メーカーが日本への展開を図った年でもある。過去にも端末が供給されていたことがあるため、必ずしも初参入ではないが、昨年以前に比べれば、海外メーカーの台頭はしっかりと見えてきている。

 日本市場への展開で、従来からもっとも積極的なのは、やはりノキアだろう。旧ボーダフォン向けに続き、NTTドコモ向けにNM850iGの供給を開始し、12月には自社ブランドの端末として、E61の販売も開始した。各事業者のサービスに対応したキャリアブランドの端末が主流の日本において、自社ブランドの端末は厳しいと言われるが、逆にキャリアがあまり積極的ではないスマートフォンを投入することで、一定のユーザー層をつかもうという構えだ。

 また、NTTドコモに端末を供給するLG電子もコンパクトな国際ローミング対応端末という位置付けをキープしており、通常利用の端末としてだけでなく、国際ローミング利用時のための2台目端末としても好評を得ている。最新モデルのSIMPURE L1は従来モデルよりもスリムになり、デザイン的にもグッと洗練されたことで、今後が期待できそうだ。同じ韓国勢でもソフトバンクに端末を供給するサムスンは、ソフトバンクが個性を発揮しようとしているスリム路線をリードしている。市場の反応はまずまずだが、端末の供給先がソフトバンクに限られているため、今後、どれだけシェアを拡大できるのかが注目される。

 そして、この冬商戦で注目を集めているのがモトローラだ。数年前から海外で販売していたRAZRをベースにしたM702iS、国際ローミング対応のM702iGを相次いでリリースし、積極的なプロモーションを展開している。スリムなボディもさることながら、デザイン的なセンスの良さは際立っており、発売以降、好調な売れ行きを記録している。一部のカラーが入荷待ちとなっている店舗も多いという。

 こうした海外勢の参入の背景には、海外でも3Gサービスを提供する地域が増え、対応端末が増えてきたことも関係しているが、それらの端末をただ日本語化しただけではなかなか日本市場で勝ち抜けないということは、旧ボーダフォンがコンバージェンスモデルと呼ばれる海外端末との共通仕様で苦戦したことからもわかる。現時点ではまだまだ国内メーカーの方が強力だが、今後、コスト面で勝る海外メーカーがどのように付加価値を高め、日本市場を戦っていくのかが興味深いところだ。


バリエーションが増えたスマートフォン

hTc z W-ZERO3[es] BlackBerry 8707h

 海外メーカーの台頭とも関係するが、昨年のW-ZERO3やFOMA M1000以降、にわかにスマートフォンの市場が盛り上がっている。今年は昨年のW-ZERO3に続き、NTTドコモがHTC社製のhTc Z、法人向けのBlackBerry 8707h、ウィルコムがW-ZERO3の兄弟モデルとなるW-ZERO3[es]、ソフトバンクもHTC社製のX01HT、そしてノキアが自社ブランドのE61といった具合いに相次いでリリースされており、かなり選択肢も拡がっている。

 スマートフォンについては、国内で販売されている通常スタイルのケータイが高機能であるため、なかなか受け入れられてこなかったが、パソコンとの親和性や連動性、ユーザー自身でアプリケーションをインストールできる自由度などには一日の長があり、今後もビジネスコンシューマを中心にユーザー層を拡げることになりそうだ。Windows Mobile搭載端末についてもまだ数機種が登場するのではないかという推測もある。

 ただ、通常スタイルのケータイでもフルブラウザやドキュメントビューアなどがほぼ標準的に搭載されており、フルブラウザについてもNTTドコモをのぞけば、パケット通信料の定額制サービスに少し足すだけで、存分に使えるようになっている。NTTドコモも間もなく登場するF903iXやP903iXなどの発売に合わせ、フルブラウザの定額制に踏み出すのではないかという予測もあり、今後が楽しみな状況にある。


ソフトバンクによるボーダフォン買収

3月17日の会見。写真は左から、ボーダフォン日本法人の代表取締役社社長のビル・モロー氏、ソフトバンク代表取締役の孫正義氏、ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏
 今年、ケータイ業界でもっとも衝撃的なニュースと言えば、やはり、ソフトバンクによるボーダフォン買収だろう。年明け早々からニュースとして報じられていたが、3月には正式に発表され、10月からはソフトバンクのブランドでサービスが提供されている。

 ソフトバンクのボーダフォン買収については、本コラム「誰がために鐘は鳴る~ソフトバンクのボーダフォン買収~」でも取り上げたので、詳しくは触れないが、その後のソフトバンクについて、読者のみなさんはどうご覧になっただろうか。少なくとも筆者が見る限り、買収後の同社の動きは、あまり芳しいものではなかったように見受けられる。9月に始まったスーパーボーナス、MNPのタイミングで新聞などに掲載された「0円」広告騒動、ゴールドプランのわかりにくい契約条件、MNP開始の最初の週末に起きた受付中断など、とにかくいい意味でも悪い意味でも『人騒がせなキャリア』に変貌してしまったというのが素直な感想だ。

 確かに、旧ボーダフォンは事業展開のスピードなどに不満が多く聞かれたり、メールアドレスのドメイン変更の強行やハッピータイム騒動など、ユーザーに迷惑を掛けるようなことをいくつも起こしていた。しかし、ボーダフォンにはボーダフォンの良さがあり、同社がそれを活かして事業展開をすれば、もっとも伸びるだろうと予測していたのだが、現在までのソフトバンクを見る限り、どうもそういう方向には進んでいないようだ。

 たとえば、料金プランひとつをとっても販売店などからは「無理に他社の料金プランをコピーしたものを作らなくても現行の料金プランで十分、魅力があるのに……」といった声が聞こえてくる。ここで言う現行の料金プランとは9月までカタログに掲載されていた「バリューパック」などの料金プランのことで、カタログにもホームページにも掲載されていないものの、通常通り契約はできる。ソフトバンクとしては、他事業者よりも安いことをアピールするために、ブループランやオレンジプランを打ち出したのだろうが、それが返って混乱を招き、販売スタッフの頭を悩ませているという。

 この他にもソフトバンクに対しては、いろいろと言いたいこと(書きたいこと)があるのだが、それは別の機会に触れることにしたい。いずれにせよ、ソフトバンクにはここ数カ月の市場の流れや反応などを見直し、もう一度、ユーザーに愛され、受け入れられるサービスが何なのかを考えるべきではないだろうか。


すべてはMNPのために

 そして、今年のケータイ業界最大のトピックと言えば、やはり、MNPだ。各社ともMNPのために、新端末や新サービスを発表し、他事業者に負けない端末ラインナップとサービス内容を揃えようとした。その結果、市場には1年間で100機種以上の新モデルが投入され、提供されるサービスについても各社とも他事業者とほぼ同等か、それに近いレベルの内容のサービスが提供できる環境を整えた。

 各社の積極的な準備をした結果、事業者間の差は少なくなったが、実際のMNPでは下馬評通り、auが一人勝ちの結果を残しつつある。ただ、シェアが変動するほど、大きな動きにはなっていない。これはMNPを利用するうえで、メールアドレスが変わるなどの制限があること、日本のユーザーが保守的であることなどが理由として挙げられるが、多くのユーザーがすでに1~2年間の年間割引サービスを契約していることも関係している。年間割引サービスは機種変更などのタイミングで契約することが多いため、11~12月、2~3月、6~7月あたりに更新のタイミングが来るユーザーが多いと推察される。つまり、MNPを利用したユーザーの移動の波は、まだまだこの先も続くということだ。

 また、MNPの手続きについては、ソフトバンクに続き、auもわずかな時間ながら、受け付け停止を起こしてしまった。今後、春の新入学・新社会人シーズンともなれば、再びMNPを利用するユーザーが増えることが予想されるため、各社ともしっかりと体制を整えて、MNPを着実に処理して欲しいところだ。


「ALL FOR MNP」は第2ラウンドへ

 以上、駆け足だが、2006年のトピックをピックアップし、解説してみた。ここでは紹介しきれなかった話題もあるが、その他の話題が隠れてしまうほど、2006年の日本のケータイ業界は「MNPに始まり、MNPに終わる」一年だった。数年前から「たいへんなことになる」とは言われていたが、いざ、フタを開けてみれば、多少の混乱はあったものの、無事にMNP制度は動き出したという印象だ。

 しかし、動き出したから、MNPがおしまいというわけではない。MNP商戦は春の新入学・新社会人シーズンを迎え、いよいよ第2ラウンドに突入する。おそらく春商戦向けにもさらに新しい端末やサービスが投入されることになるだろう。我々ユーザーは新端末や新サービスの内容をじっくり調べ、本当に役立つ便利なサービスを選びたい。



URL
  MNPについて(総務省)
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/mnp/
  NTTドコモ
  http://www.nttdocomo.co.jp/
  au
  http://www.au.kddi.com/
  ソフトバンクモバイル
  http://mb.softbank.jp/mb/
  ウィルコム
  http://www.willcom-inc.com/


(法林岳之)
2006/12/26 13:56

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