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P-in Comp@ctにも対応した「カラーブラウザボード」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


カラー液晶を搭載したブラウザボード新モデル

 NTTドコモからカラー液晶ディスプレイを搭載したメール端末「カラーブラウザボード」が発売された。カラー液晶を搭載したメール端末は、各社から登場しているが、最も標準的なスタイルを貫きつつ、P-in Comp@ctにも対応するなど、新しい方向性も模索した注目の製品だ。早速、実機を入手することができたので、レポートをお送りしよう。


一息ついた感のあるメール端末市場だが……

 NTTドコモ『カラーブラウザボード』。サイズ:166(W)×30(H)×110(D)mm、約320g(リチウムイオン充電池装着時)。
 メール端末という言葉が定着し始めたのは、やはり、NTTドコモの初代「ポケットボード」だろう。当初は10円メールしか利用できなかったメール端末だが、インターネットメールへの対応、Webブラウザやカメラ機能の搭載など、さまざまな機能を追加することにより、少しずつ進化を遂げている。しかし、昨年末からの家電量販店などの動きを見ていると、相次いで発売されたPDAに注目が集まる一方、メール端末の人気は一段落した感がある。ただ、画面が狭く、文字が入力しにくい携帯電話がイヤになり、使いやすさに重点をおいたメール端末を購入するビギナーが新たに増えているのも事実だ。そういった意味において、ポケットボードに代わる「メール端末の新定番」の登場が期待される。

 今回、NTTドコモから発売された「カラーブラウザボード」は、その新定番の筆頭格に挙げられそうな製品だ。名前から想像すると、NTTドコモが販売していた「ブラウザボード」をカラー化したものと受け取られそうだが、カラーブラウザボードはまったく別製品だ。ブラウザボードはシャープの「コミュニケーションパル」をベースにした製品で、内部的には同社のザウルスとほぼ同じ構成になっている。これに対し、今回発売された「カラーブラウザボード」は、ポケットボードを開発したシチズン時計が開発と製造を担当しており、「初代ポケットボード」「ポケットボード ピュア」「ポケットボードパレ」の流れに属する製品だ。一連のポケットボードシリーズで培われた「使いやすさ」に対するこだわりがどのように活かされているのかが非常に気になるところだ。


幅広い通信環境に対応

 ボディサイズはやや大きめ。特に厚さが気になる。液晶ディスプレイがバックライトを装備しているためだ。
 基本スペックなどについては、NTTドコモの製品情報のページなどを参照していただくとして、ここでは筆者が実機を触った印象を中心に紹介しよう。

 まず、ボディだが、メール端末としてはやや大柄な部類に入る。過去に見てきたメール端末の中で最も大柄だったauの「ウェブパレット」、J-フォンの「Sky Photo Pad」よりも一回り大きい。ちょっとした手帳サイズに近いという印象だ。ただ、この大きさには後述する理由があるため、そのトレードオフと考えれば、我慢できる範囲だ。


 底面には携帯電話やPHSを接続するためのケーブルが格納できる。ただし、ケーブル類はいずれも別売。
 本体底面には携帯電話やPHSを接続するためのケーブルの格納場所が用意されている。携帯電話接続ケーブルやPHS接続ケーブルは、本体に付属しておらず、必要に応じて、別途購入しなければならない。ちなみに、ケーブルを接続しないときのために、本体側コネクタ部分を塞ぐキャップが標準で提供されている。背面側にはリチウムイオン充電池を内蔵するためのボックスが備えられている。

 本体右側面にはACアダプタを接続するためのコネクタ、ワンタッチでメールの送受信が可能な「ワンタッチメールボタン」、メールの状態などを知らせるLED、本体前面のキーボード下にはP-in Comp@ctを挿すためのCFカードスロットが備えられる。CFカードスロットは形状がCF Type2と同じだが、本体側がサポートする機器が限定されているため、P-in Comp@ct専用スロットということになる。P-in Comp@ctを前面に装備したとき、アンテナが邪魔になるように感じられるが、アンテナが中央に来るようにCFスロットの位置が調整されているため、思ったほどは気にならない。


 本体前面にはP-in Comp@ctが装着可能。アンテナを立てた状態でも本体中央にあるので、それほど邪魔にならない。  本体右側面にはワンタッチメールキーを備える。P-in Comp@ctを装着しておけば、カバンの中でも受信が可能。

 キーボードは標準的なQWERTY配列。メール端末としては豪華なパンタグラフ式を採用。ノートPC並みのタイピング環境は素晴らしい。
 キーボードは標準的なQWERTY配列を採用し、14mmのキーピッチを確保している。キートップも横長の13mmと大きめだ。ただ、キーピッチを確保するために、一部の記号キーは最上段、PCのファンクションキーの位置に移動している。[後退/削除]キーや[戻る]キーの位置は標準的なので、PCのキーボードに使い慣れた人でも問題ない。ボディ横も少し削られた形状になっているため、ボディを左右から挟むように持つ打ち方(HP 200LX以来、親しまれた方法)もやりやすくなっている。


 本体起動時のメニュー画面。大きなアイコンで表示されているのでわかりやすい。カーソルキーで各機能を選択する。
 液晶ディスプレイはSTNカラー液晶を採用し、バックライトも装備する。解像度は320×240ドットで、最大256色表示が可能だ。本体サイズが大きく厚くなった理由は、ひとつがキーピッチの確保、もうひとつが液晶ディスプレイのバックライトが搭載されたためだ。

 通信環境への対応は非常に幅広い。NTTドコモのデジタル携帯電話(800MHz/1.5GHz)による回線交換、DoPaによる9.6kbpsおよび28.8kpbsパケット通信、PHSのPIAFS 2.0対応64/32kbpsに対応し、ドッチーモやP-in Comp@ctの利用も可能だ。メール端末でこれだけの環境に対応できるのは十分すぎると言えるだろう。


横縮小表示も可能なWebブラウザ

 WebブラウザはNetFront Ver.2.5を採用。Compact HTMLにも対応しているので、iモードの勝手サイトも閲覧できる。公式サイトは見ることができない。
 一方、機能面はどうだろうか。Webブラウザはアクセスが開発したNetFront Version 2.5を採用し、GIF、JPEG、PNGなどを表示することが可能だ。GIF、JPEG、PNGについては、画面メモを取り、壁紙に設定することもできる。Cookieや128bit SSLにも対応しているため、オンラインショッピングやカスタマイズしたWebサイトへのアクセスにも利用できる。また、カタログなどには記載されていないが、カラーブラウザボードに搭載されているNetFrontは、iモードのCompct HTMLにも対応しており、[accesskey]タグなどもサポートされている。先々週紹介したエクシーレII同様、iモードのいわゆる勝手サイト閲覧にも便利というわけだ。

w
通常表示 縮小表示
 Webブラウザは横方向の縮小表示が可能。パソコン向けページを見るときに便利だ。

 今までのメール端末にはなかった機能として注目されるのが「mailto」への対応だ。Webページで「mailto」タグが書き込まれたところがあるが、多くのメール端末では「mailto」に続くメールアドレスをメモし、回線を切ってからメールを作成しなければなかなかった。カラーブラウザボードでは「mailto」タグの書き込まれた リンクをクリックすると、メールの作成画面が呼び出され、メールの作成が可能だ。ただし、回線との接続はいったん切断される。この他にも、横方向の表示を圧縮して表示する機能やブックマークの登録・編集・削除(最大64件)などの機能も搭載されている。ただし、リンクの選択はキーボードを利用するため、タッチペンを利用する他のメール端末に比べると、操作感は今ひとつだ。

メールの作成画面
 メールの作成画面は最大全角24文字×10行の表示が可能。視認性もなかなか良好で使いやすい。

 メールはインターネットメールの利用が可能で、メール作成画面の本文エリアは最大全角24文字×10行の表示が可能だ。添付メールやCc/Bccにも対応し、最大20人までの同報メールが可能だ。受信したメールの転送や保護、アドレス帳への登録、署名の自動挿入、サイズによる受信メールの制限、引用などの機能も用意されている。moperaネットサーフィンから接続し、他のプロバイダのメールボックスを参照するときのための「送信前POP認証」もサポートしている。メール作成画面でのコピー&ペースト、フェイスマークの呼び出しなどのショートカットキーも使うことが可能で、メール機能の操作感はなかなか良好だ。

 オンラインサインアップなどについては、moperaクイックスタート、ドリームネットの「DreaMail-ぱけっと(どりぱ)」に対応しているが、「どりぱ」については不具合があるため、先週末から一時的に出荷が停止されている。おそらく、今後、改善されたモデルが出荷されるはずだ。

 この他には、アドレス帳や壁紙の設定できるカレンダー、単位換算などができる計算機、メールや画面メモが保存できるアルバムなどの機能も搭載されており、メールやWebページ閲覧以外にも楽しむことができる。


バレンタインデーのお返しに?

 冒頭でも触れたように、メール端末の存在意義は、やはり、ビギナー向けということになる。最近では1万円以下のメール端末も数多く販売されているが、カラーブラウザボードの現在の実勢価格は1万8000円前後だ。カラー液晶ディスプレイを搭載し、Webブラウザ機能まで搭載しているのだから、十分お買い得と言えるだろう。ただ、筆者が触った感想を素直に言わせてもらえれば、従来のポケットボードシリーズやブラウザボードのような「使いやすさに対するこだわり」が今ひとつ不足してる感が残る。

 たとえば、カラーブラウザボードは「mopera」や「どりぱ」といったNTTドコモが運営、もしくは関連しているサービスに対応しているが、接続先の設定はサービスと無関係に管理されているため、[mopera設定]からDreamNetの接続先が選べたり、[どりぱ設定]からmoperaの接続先が選べてしまう。それぞれのサービスの特性や内容を理解しているユーザーなら、間違うことも少ないだろうし、仮に間違って選んでも対処できる。しかし、カラーブラウザボードではじめてインターネットに接続するユーザーはどうだろうか。NTTドコモとして、「mopera」や「どりぱ」の利用を推奨するのであれば、この2つについてだけは別途、メニューを用意して、設定しやすくするべきだ。話は横道に逸れるが、特にmoperaについては名前こそ知っているものの、どんなことができるのかを把握しているユーザーはあまり多くなく、どうも十分に活用されていない印象が強い。サービス内容を整理するとともに、もっとユーザーにわかりやすく伝える努力が不可欠だ。そのためにも自社で販売するメール端末には、わかりやすくするためのこだわりが必要なはずだ。

 最後に、「買い」の診断をしてみよう。かなり辛口のコメントを書いてしまったが、カラーブラウザボードは製品としての素性は良く、機能的にも十分なものを備えている。気になる点があるとすれば、やや大きなボディくらいだ。

 ただ、ターゲットユーザーがビギナーであることを考慮すると、使いこなしにはある程度のガイダンスが必要になりそうだ。もし、これから携帯電話やPHSでインターネットを始めたいというユーザーがいれば、おすすめの製品のひとつであることは間違いなく、バレンタインデーのお返しにも適していそうだが、サポートをしても構わない相手に対してのお返しに使うのがベストだ。あまりサポートしたくない人へのお返しには、別の選択肢を検討した方がいいだろう(笑)。


 逆に、ある程度、慣れたユーザーのモバイル端末、iモード勝手サイトを見るための端末としては、なかなかおすすめできる。ただ、ボディがここまで大きいのであれば、もう少し資金を調達して、ザウルスやポケットPC、ハンドヘルドPCなどを選択するという方法もあるのではないだろうか。

 メール端末がPDAよりも高く評価されてきた時期はそろそろ過ぎつつある。これからメール端末が伸びるためには、初心に立ち戻り、もっと使いやすさ、わかりやすさを追求したモデルを期待したい。メール端末の市場を切り開き、リードしてきたNTTドコモとシチズン時計のコンビだからこそ、作ることができる製品があるはずだ。カラーブラウザボードはまだその領域に達していないのではないだろうか。



(法林岳之)
2001/02/27 00:00

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