■ もうひとつの503iシリーズ第1弾
1月26日に販売が開始されたNTTドコモの503iシリーズ。従来のiモード端末と同じように、富士通製端末「F503i」が一番乗りを果たしたが、同着となったのがパナソニック(松下通信工業)製「P503i」だ。NTTドコモの端末としては、常に高い評価を受けてきた同社製品だが、503iシリーズではどのような方向性を打ち出してきたのだろうか。筆者もF503iと同時に機種変更で入手したので、早速レポートをお送りしよう。
■ P502iを手堅く進化させた「P503i」
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NTTドコモ『デジタル・ムーバP503i HYPER』。サイズ:45(W)×128(H)×17(D)mm、74g。サイバーレッド(写真)、クオーツシルバー、ジェムブラックをラインナップ(地域によって発売されない色もある)。
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NTTドコモ向けに端末を供給する主要4メーカーの中でもパナソニック製端末は、常に高い評価を受けてきたことで知られる。このことは以前、このコラムで「P209i」や「P209iS」のレビューを掲載したときにも紹介した。
昨年のiモード端末の市場を見てみると、一昨年12月に登場したF502iでカラー化が始まり、5月には初の海外ブランドとなるノキア製「NM502i」が登場。6月にはスーパードッチーモのシャープ製「SH821i」と209iシリーズ。8月にはパナソニック初の折りたたみ式「P209iS」、9月にはiモード端末の最終兵器とも言えるNEC製「N502it」が発売された。なかでも8~9月以降はP209iSとN502itの売れ行きが大変好調で、ショップによっては「この2機種しか売れないんですよ」という声も聞かれたほどだ。
その一方、パナソニック製iモード端末の主力機である「P502i」は、2000年2月という早い時期に投入されたため、モノクロ液晶ディスプレイというスペックがアダとなり、昨年末のボーナス商戦では安売り端末のひとつとして扱われることになってしまった。ライバルとも言えるNEC製「N502i」がカラー液晶モデルの「N502it」に事実上のリニューアルでバトンタッチしたのに対し、パナソニックは「P209iS」で対抗しようとしたわけだ。
今回発売されたP503iは、F503iと並び、503iシリーズ第1弾端末のひとつとなった。思い返せば、初代iモード端末の501iシリーズでは最後発だったパナソニックが503iシリーズでは同着ながらも一番乗りを果たしたわけで、各社の厳しい端末開発競争を勝ち抜き、追い上げてきたのはさすがパナソニックという見方もできる。
503iシリーズでは新たにiアプリという機能が搭載されたことは先週のレビューでもお伝えしたが、P503iはP502iから基本的なデザインや機能面を受け継ぎながら、手堅く進化させたというのが第一印象だ。iアプリを楽しむためのケータイと評価されている「F503i」に対し、P503iはどんな個性で対抗しようとしているのだろうか。
■ 見事すぎるサイバーレッド
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背面にはメモボタンを装備。伝言や音声メモの再生、設定などが可能。
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基本スペックなどについては、すでに掲載されている「ケータイ新製品SHOW CASE」、NTTドコモ及び松下通信工業の製品情報のページなどを参照していただきたい。筆者が実機を試用した印象を中心に紹介しよう。
まず、ボディはストレート型を採用しており、サイズ的にもP502iとほとんど変わらない。ただ、重量はカラー液晶搭載に伴い、5g増えている(と言ってもわずか5g)。デザインのテイストもP502iとほとんど変わらず、電源を切って、液晶ディスプレイを見えない状態にすれば、「これってP502iの新色なんだ」と言ってもわからないくらいだ。
しかし、カラーリングについては、過去のパナソニック端末同様、インパクトのあるボディカラーをラインナップしている。クオーツシルバーは標準的だが、サイバーレッド、ジェムブラックは独特の雰囲気を持っており、なかでもサイバーレッドは他のケータイにはない味を出している。ただ、ここまで仕上げが良くなると、逆に落としたり、ストラップで傷が付いたときのショックも倍増しそうな気がする……。この点はもう少し使ってみて、様子を見るしかなさそうだ。
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ボタンのレイアウトはP502iを踏襲。iワープボタンなどが一部なくなっている。 |
液晶ディスプレイは256色表示が可能なバックライト式カラー液晶を採用。iモード端末の中でも最も明るく、視認性も良い。 |
ボタンデザインもP502i同様、中央にスティック型のコマンドナビゲーションボタン、その左右の上にソフトキーというデザインになっており、基本的なレイアウトはP502iと変わらない。ただ、P502iではテンキー左下にレイアウトされていた「iワープ」ボタンがなくなっており、後述するメニュー内に移動している。背面にはメモボタンとスピーカーがあり、メモボタンを押すと伝言メモや音声メモの再生、長押しでは伝言メモの設定ができる。本体上部の左右にはIrMC 1.1準拠の赤外線通信ポート、中央に光センサーが備えられている。光センサーは周囲の明るさでボタン照明をON/OFFするためのものだ。
液晶ディスプレイは256色表示が可能なバックライト式カラー液晶ディスプレイを採用している。先週紹介したF503iとは照明方式が違うため、一概には比較しにくいが、P503iの液晶ディスプレイは非常に明るく、発色も良い。N502itやP209iSと比較しても一段違うレベルの仕上りだ。サイズ的には実測値で28.5×38mmとなっており、F503iやN502itなどよりも一回り小さく、縦方向が少し短い。ただ、実際に使ってみると「狭い」という印象はほとんど感じられない。
■アイコン表示でわかりやすくなったメニュー
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メインメニューではiワープが左上、iアプリが右上にレイアウトされている。コマンドナビゲーションボタンは斜め方向に入らないため、2段階の操作が必要。 |
P503iがP502iやP209iSと大きく違うのは、メニュー周りだ。従来のモデルでは待受画面で上下左右の4方向にアイコンを配し、それぞれの機能を呼び出していたが、P503iでは画面を9分割し、それぞれに機能を割り当てている。ただし、斜め方向にあるアイコンを選択するには、コマンドナビゲーションボタンを[左][上]というように、2段階の操作をしなければならない。一見、左斜め上に入りそうな気がするのだが、コマンドナビゲーションボタンの動作は4方向と奥方向のみだ。メインメニューからアイコンを選んだ先のメニューも一部アイコン化されており、初心者にも操作しやすい。
メールの機能は基本的に他機種と変わりないが、D502iに搭載され、その後、N502itなどにも搭載された「同報メール」がP503iでも最大8件までサポートされている。細かいところでは、引用符の設定ができたり、一覧表示をタイトルと差出人名のどちらで表示するかなどの設定もできる。縦横表示ができるのは従来モデルと同様だ。
iアプリについては、最大7件まで登録が可能だ。先週、503iシリーズは登録できるiアプリが10本という条件の話を紹介したが、P503iでは出荷時に「Dance Dance Revolution」「テトリス」「モグラー」という3本のゲームがインストールされており、これらを合わせて10本という計算になるようだ。しかし、この3本のゲームについてはiアプリとは別の管理となっているため、ダウンロードしたiアプリは7本しか登録できない。503iシリーズ最大のセールスポイントであるiアプリがわずか7本しか登録できないというのはかなりツラい。いらなくなったiアプリをこまめに消すか、あまりiアプリを重要視しないユーザー向けということだろう。ただ、プリインストールされた3本のゲームはいずれも完成度が高く、なかでも「Dance Dance Revolution」はなかなか見事な出来映えと言えそうだ。いずれ、本誌執筆陣でD.D.R.に最もうるさい平地レイちゃんに感想を聞いてみたい(彼女は以前、D.D.R.攻略本の制作に関わった強者だそうな)。
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IrMC 1.1準拠の赤外線ポートを使えば、スケジュールや電話帳のデータを転送可能。 |
転送したデータはP503iのスケジュール画面などで確認することができる。 |
赤外線通信については、P502iやD502iでもサポートされていたが、P503iではIrMC 1.1対応となった。IrMC(Infrared Mobile Communications)は携帯電話やPDAなどの間で、電話帳やカレンダーなどのデータをやり取りできるようにした規格だ。具体的な例としては、Palm OS搭載PDAなどとのデータ交換が可能になる。ただ、IrMC対応のすべての機器とデータ交換ができるわけではなく、アプリケーションによってはできなかったり、部分的なデータしか交換できないといったケースもある。試しにPalm IIIcとデータをやり取りしてみたところ、データの送受信は問題ないが、文字数の制限により、スケジュールの内容が一部しか受信できなかった。こうした制約の部分さえ理解していれば、モバイルユーザーには応用性の高い機能と言えそうだ。
■ 完成度は高く、デザインもいいが……
F503iとともに、503iシリーズ第1弾となったパナソニック製のP503i。はたして、「買い」と言えるのだろうか。
機能的な完成度やデザイン面については、さすがパナソニックと言いたくなるレベルでまとめられている。特に、サイバーレッドのボディは今までのケータイと一線を画す存在感で、すでにサイバーレッドのみが売り切れているショップもあることなどから、人気が出ることは間違いなさそうだ。
ただ、503iシリーズとして見た場合、最大のセールスポイントであるiアプリが7本しか登録できないのは厳しい。基本的な機能構成をP502iから受け継いでいるが、裏を返せば、目新しさがないののも事実だ。IrMC 1.1対応の赤外線ポートもモバイルユーザーには便利だが、NM502iのようなデータ通信ができるわけではなく、利用範囲は限定される。
これらのことを総合すると、P503iをおすすめできるのは、従来からパナソニック製を愛用してきたユーザー、iアプリを重視しないユーザー、手堅い選択をしたい人、スタイリッシュなデザインのケータイが欲しい人ということになる。当然のことながら、F503iやP503i以外の503iシリーズはこれから1~2カ月以内に登場すると見られており、目新しさを狙うなら、それらを見てからでも遅くはないだろう。
過去のレビューを読み返してみると、どうも筆者はパナソニック製端末に厳しいという気もするのだが、NTTドコモのムーバシリーズをリードしてきたパナソニック製だからこそ、もっと高レベルでインパクトがある機種を期待したいという気持ちの表われだ。「パナソニックだからこそ、コレができた」という機種が登場することを期待したい。
■URL
・P503iニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew0118a.html
・P503i商品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/i/lineup/p503i/p503i.html
・P503i商品情報(松下通信工業)
http://www.mci.panasonic.co.jp/pcd/p503i/
(法林岳之)
2001/02/05 00:00
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