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『ドットi』の秘めた可能性
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■ 間もなくスタートするアステルの『ドットi』
さまざまなコンテンツとメールが利用できる現在の携帯電話とPHS。各事業者が同様のサービスを提供し、「話すケータイ」から「使うケータイ」への進化は着実に進んでいる。東京通信ネットワーク(TTNet)が「東京電話アステル」のブランドで提供する『ドットi』は、他の事業者とは少し違った形で「使うケータイ」を実現しようとしている。今回は間もなくサービスが開始される『ドットi』の秘めた可能性について考えてみよう。
■ ドットiはオープンな「使うケータイ」を目指す
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アステル『AJ-51』。サイズ:129×43×16.5mm、76g。ボディカラーはソニックシルバーとアストラルブルーの2色。12月中旬発売予定。
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現在、国内でサービスが提供されている携帯電話とPHSは、コンテンツ閲覧サービスとメールがサポートされている。NTTドコモの「iモード」、au及びツーカーの「EZweb」、J-フォンの「J-スカイウェブ」、DDIポケットの「H"LINK」などがそうだ。おそらく本誌の読者もいずれかの事業者のサービスを利用しているだろう。
これらのサービスを利用するには、各事業者の設置したアクセスポイントやゲートウェイサーバーを介してインターネットに接続し、各事業者が用意したコンテンツやメールを利用したり、ユーザーが開設した対応ページなどを見ることができる。ユーザーはあまり意識をしていないが、必ず事業者が決めたルートを通らなければならない。しかし、決められたルートを通ることにより、事業者自身が提供(管理)する「公式サイト」と呼ばれる対応ページを見ることができる。
これに対し、東京電話アステルが提供するドットiは、オープンな接続環境を提供しているのが特長だ。ドットiでは東京電話アステルが設置するドットi専用アクセスポイントだけでなく、自分が普段利用しているプロバイダのPIAFS対応アクセスポイントから接続することが可能だ。接続手順もPCで利用するときと同じPPPを採用する。そのため、対応端末にはPCでインターネット接続をするときと同じような設定項目が用意されている。もちろん、新たにプロバイダ契約を結びたいユーザーのために、オンラインサインアップのメニューも用意されている。このときには、PPPとメールの設定は端末に自動設定される。
ドットiでは専用アクセスポイントから接続したとき、東京電話アステルが提供するポータルサイトを閲覧することができる。ポータルサイトではTTNetが契約した有料サイト以外に、ユーザーが作成したドットi対応ページの紹介や検索サービスなども提供される。
ドットi対応ページの記述言語は、iモードでも使用されている「Compact HTML」を含む「HTMLサブセット」を採用し、ドットi対応端末にブラウザが搭載される。HTMLサブセットとCompact HTMLの違いは、着信メロディを対応ページに貼り付けたり、画像フォーマットとしてPNG形式にも対応している点だ。位置情報についても端末からサーバーに位置情報を送信するための仕様が公開されており、これを活かしたコンテンツを作成することができる。
また、メールについては一般的なPOP3/SMTP方式がサポートされ、通常のPCと同じようにメールを読み出すことができる。ドットi対応端末側で「受信したメールをサーバから削除しない」という設定にしておけば、外出先では必要なものだけに目を通し、自宅やオフィスに戻ってからPCで受信し直すといった使い方が可能になる。
これらのことを見てもわかるように、ドットiはPCでインターネットに接続している環境と同じものをPHS端末単体で実現しているわけだ。
■ オープンな「使うケータイ」の可能性
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インプレスのiモードサイト「impress News」を表示したところ。絵文字についても一部互換性があるようだ。
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今や携帯電話やPHSを利用する上において、コンテンツサービスは欠かせないものだ。しかし、各事業者が提供する公式サイト以外に、いわゆる「勝手サイト」と呼ばれるユーザーが運営する対応ページが数多く存在する。いち早く「使うケータイ」を提供したNTTドコモのiモードには、数万単位の勝手サイトが存在すると言われており、特にコミュニケーション系の勝手サイトを中心に高い人気を得ている。かく言う筆者も自己紹介レベルのものだが、iモードやJ-スカイウェブ対応の対応ページを開設しており、インプレスもiモードの公式メニューに含まれるもの以外に、独自のiモード対応ページを運営している。
こうした勝手サイトが生まれてくる背景には、事業者の公式メニューに参加するのに一定の手続きや制約があることが挙げられる。たとえば、iモードであれば、コンテンツの企画書をNTTドコモに提出し、一定の評価を得た上で、公式メニューに参加することになる。法人であれば、こうした手続きも不可能ではないが、運営者が個人であったり、法人でもNTTドコモへのコネクションや企画力がなければ、公式メニューに参加することはなかなか難しい。しかし、こうした手続きを踏んでいない勝手サイトにも優秀なサイトは数多く存在し、ドットiではこれらも含めて積極的にサポートする考えだ。
そもそもインターネットは「オープンな世界」として進化を遂げてきた。これに対し、各事業者の公式メニューはクローズドなネットワークとして機能している。有料コンテンツなどで料金回収が発生する関係上、公式メニューは必要になるが、その半面、端末からアクセスライン、コンテンツ、ブラウザなど、すべてのサービス環境を事業者がコントロールすることになってしまう。つまり、事業者本位でコンテンツがコントロールされてしまい、オープンな発想のコンテンツが登場しにくいという側面がある。これに対し、ドットiはインターネットと同様の「オープンな世界」を認めながら、必要に応じてクローズドなネットワークも利用できるようにしており、この点が他の事業者のコンテンツサービスとは大きく異なるわけだ。
また、ドットiのもうひとつの可能性はイントラネットへの応用だ。iモードの登場以来、各社の携帯電話に対応したイントラネット向けのグループウェアが発売されている。しかし、セキュリティ面ではIDとパスワードという古典的な手法で対処するものがほとんどで、なかなか導入に踏み切れないネットワーク管理者も多いと聞く。「使うケータイ」の手軽さは認めるが、会社の大切なリソースをインターネットにIDとパスワードだけで遮断して公開するのはあまりにもリスクが大きいからだ。
しかし、ドットiを利用すれば、対応端末からインターネットを経由せず、直接イントラネットにリモートアクセスで接続し、これらのグループウェアを活用することができる。リモートアクセスサーバー側にPHS端末の発信者番号を登録しておけば、不正なアクセスも防ぐことができる。位置情報なども組み合わせれば、さらに高機能なソリューションを提供することも可能だろう。また、オフィス内でイントラネットを利用する場合もPHSの自営モード(オフィスステーションモード)を活用すれば、通話料なしでイントラネットを閲覧できるわけだ。
■ 「勝手サイト」ユーザーは要チェック
アステルグループは他の通信事業者と違い、各地域ごとに特長を出したサービスを提供してきた。全国レベルの統一感という点では他の事業者に譲るが、ドットiは東京電話アステルを提供するTTNetをはじめ、関西や中部でも12月からサービスが提供され、来年には四国や九州でもサービスが開始される予定だ。
ドットiは他の事業者のコンテンツサービスに比べると派手さに欠けるものの、「オープンであること」は大きな可能性を秘めていることは間違いない。TTNetでは実用系のコンテンツは自ら提供するとしながら、エンターテイメント性の高い「遊びのコンテンツ」はぜひともユーザーのユニークな発想を期待したいとしている。勝手サイトの運営者やユーザーにとって、こうした活躍の場が提供されることは非常にうれしいことだ。現在の携帯電話やPHSのコンテンツサービスのあり方や今後の進化を考える意味からもドットiは注目の存在と言えるだろう。
■URL
・アステルグループのホームページ
http://www.astel.ne.jp/
・ドットi対応HTML仕様
http://www.ttnet.co.jp/tokyodenwa_astel/doti/index.htm
(法林岳之)
2000/11/21 00:00
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