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CEATEC JAPAN 2006で見る「次なるケータイへのヒント」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


 10月3日~7日にかけて千葉県の幕張メッセで開催されている電子機器の総合展示会「CEATEC JAPAN 2006」。ケータイ業界最大のイベントと言われるMNPを10月24日に控え、各社の動きが気になるところだ。ここでは筆者が会場で見つけた気になる動きをレポートしよう。


MNPを目前に控えた時期だが……

 CEATEC JAPANと言えば、例年のレポートでも触れているとおり、「春のビジネスシヨウ、秋のCEATEC JAPAN」と言われ、ケータイ業界にとっては重要な展示会だ。ただ、ビジネスシヨウはやや規模や方向性が変わってきてしまったため、最近は夏のWIRELESS JAPANが注目イベントとして定着しつつある。これに対し、CEATEC JAPANはコンシューマ向けのケータイやAV機器、PC関連製品、法人向けのビジネスソリューションなどに加え、メーカー向けの電子デバイスが多く出品されるため、翌年以降の方向性を探るイベントとしても注目される。

 特に、今回は10月24日に携帯電話番号ポータビリティ(MNP)を控えていることもあり、内容が非常に注目されていた。しかし、実際には製品の発表や発売のタイミングがずれてしまったためか、メディア的には今ひとつ新鮮味のない内容になってしまった。たとえば、auはすでに2006年秋冬モデルの出荷が開始されており、NTTドコモも902iSシリーズを中心としたFOMA new9シリーズが全機種、発売され、new7シリーズも一部を除いて、発売済みとなっている。ボーダフォン改めソフトバンクは9月28日に秋冬商戦向けにサービス&プロダクト説明会を催し、新サービスと新製品のお披露目をしたものの、今回のCEATEC JAPANには出展していない。展示会全体として見ても僚誌「AV Watch」が取り扱うBlu-rayやHD DVD、薄型テレビといったジャンルの製品群の方が豊富で、来場者の注目度も高いという印象だ。

 とは言うものの、来場する一般ユーザーにとっては、初めて触ることができる端末やサービスも数多く、ケータイと関連ジャンルもかなり見応えのある内容となっている。各社ブースの詳細な内容については、本紙記者の記事を参照していただきたいが、ここでは筆者が各社ブースで得た印象や情報、注目すべき動向などをピックアップして紹介しよう。





NTTドコモ

 NTTドコモは前述の通り、すでに主要モデルをほぼ全機種、発売済みとなっているため、今回、新たに公開された端末はあまり多くない。モトローラ製M702iSとM702iG、先般発表されたRIM社のBlackBerry対応端末くらいだろう。その他にはすでに販売が開始されている骨伝導レシーバマイク「Sound Leaf」なども試すことができた。

 新しいところでは、デジタルラジオ向けの試作機を公開し、簡易動画や5.1chの受信イメージの表現していたが、コンセプチュアルなイメージの端末で、今ひとつリアリティに欠ける感も残った。もっともデジタルラジオのサービスそのものの先行きが不透明と言われているため、あまり積極的に打ち出せないという背景があるのかもしれない。


903iシリーズが発表されていないものの、ナップスターなど、サービス面を積極的にアピールしているNTTドコモのブース ナップスターを対応端末のF902iSとともに紹介。今後、FOMAはナップスターを標準的にサポートするという話もあるが……

au

 8月に発表した端末が順次、発売されているauは、MNPへ向けた積極的なアピールが印象的なブースだった。事前調査でMNPの移行先として、もっとも人気を集めているだけに、展示内容も演出もかなり積極的な印象だ。


MNPを控え、積極的に乗り換えをアピールするauのブース。内容もかなり充実している DRAPEを利用し、東芝ブースとテレビ電話のデモンストレーション。CDMA2000 1xEV-DOのネットワークもバックエンドのサーバーも問題なく動いているようだ ビジネス向けのブースではカシオ計算機製「E03CA」を利用した法人向けソリューションを見ることができる。手に持っているBluetoothバーコードリーダーでバーコードを読み、端末に転送し、端末からBluetoothで伝票を印刷している

試作機でデジタルラジオをデモ。端末はダイヤルボタン下の特徴的なボタンからもシャープ製と推測される
 新端末については、8月に発表されたモデルの未発売分が展示されているほか、法人向け端末として、12月に登場する予定のE03CAも法人向けソリューションとともに出品されていた。未発売の端末ではW47TとDRAPEが東芝ブースとの間でテレビ電話の通話デモが行なわれているのが注目された。説明員によれば、特に切れることもなく、安定してデモができているという。E03CAについては既報の通り、法人向け販売のほか、auショップから注文することで一般ユーザーも購入できる見込みだが、関係者によれば、価格は2万円前後になるのではないかとのことだ。

 また、auもNTTドコモ同様、デジタルラジオ向けの試作機を公開していた。端末を見る限り、おそらくシャープ製と思われるが、今回は安定した状態でデモを行なうため、試験電波を受信するのではなく、内部にデータを保存して、受信状態と同じ環境を再現したデモとなっていた。NTTドコモの試作機に比べ、製品版に近い印象を受けたが、関係者によれば、「このままの状態で発売されるかどうかはわからない」とのことだ。いずれにせよ、デジタルラジオはサービスそのものの展開が見えてこなければ、なかなか話が先に進めにくいようだ。


シャープ

発表されたばかりで注目度の高い910SH。まだケース内での展示のみ シャープブースでもっとも人気を集めていた「ポケット通訳機」。通訳機に日本語で話しかければ、翻訳して、英語を話してくれるというもの

 国内の3事業者(ウイルコムを含めれば4事業者)に端末を供給するシャープは、各事業者向けの新端末を展示している。au向けW41SH、ソフトバンク向け810SH/811SH/910SHは一般向けに初公開となる。その他にも端末ではないものの、同社の複合機「見楽る」などでIrSimpleのデモを行なっている。IrSimpleについては、すでにエプソンが対応プリンタを発売するなど、徐々に周辺機器も充実している。シャープ以外の端末メーカーからも対応したいというコメントが得られており、来年以降、ケータイの赤外線通信はIrSimpleが中心的な存在になるかもしれない。


NEC

独特の雰囲気を持つN902iX HIGH-SPEED。新色のメテオレッドもさらに独特の存在感を増した印象
 N702iSやN902iX HIGH-SPEEDなど、Nらしからぬ(?)端末が増えてきているNEC。今回もこの2機種を前面にアピールしていたが、初お目見えとなったのはN902iX HIGH-SPEEDの追加色「メテオレッド」だ。関係者によれば、現物は直前に出来上がったばかりのもので、当日の朝に設置したばかりだという。同カラーの製品はNTTドコモのブースにも展示されている。N902iX HIGH-SPEEDの独特のデザインとも相まって、アニメに登場するロボットなどを彷彿とさせる個性的なカラーリングに仕上がった印象だが、そういう路線が好きなユーザーにはかなりグッと来る端末と言えそうだ。


パナソニック

ワンプッシュオープンを採用した705Pは、久しぶりのソフトバンク向け端末ということもあり、来場者からも高い注目を集めていた
 J-フォン時代のJ-P51以来、4年ぶりにソフトバンク(旧ボーダフォン)への端末の供給を開始したパナソニック。NTTドコモ向けはすでに発売されているものが中心だが、ソフトバンク向け705Pは一般向けに初公開となる。説明員によれば、来場者の関心も高く、手に取る人や発売時期などを質問する人が多いという。ワンプッシュオープンとスリムボディというパナソニックの王道を行く端末だが、カラーバリエーションも豊富で、市場で反響が楽しみな一台だ。


東芝

端末のバリエーションを急速に増やしている東芝は、ソフトバンク向け811Tを始め、au向けのDRAPEやW47Tなどの新機種、海外向け端末なども出品
 シャープ、NEC、Panasonicに続けとばかり、ここのところ、急速に機種数を増やしているのが東芝だ。今回はau向けのW45TやW47T、DRAPE、ソフトバンク向けの705T/810T/811T/910Tに加え、海外で販売している3Gケータイなども展示していた。東芝ブースからもKDDIブースへW47T及びDRAPEを利用したテレビ電話のデモが行なわれていた。


ルネサス テクノロジ

ルネサス テクノロジのブースではSH-Mobileを利用したワンセグ向けソリューションを展示。欧州など、他エリア向けのソリューションも同時に展示している
 今年のケータイ業界において、技術的なトピックといえば、ワンセグをおいて、他にないが、そのワンセグを影で支えているのがルネサス テクノロジの「SH-Mobile」だ。ワンセグはアナログテレビ放送を受信していたときに比べ、長時間の連続視聴でもバッテリー消費が少ないとされているが、ケータイのCPUに相当するベースバンドチップだけでは受信した電波の動画処理や画質調整など、ワンセグに必要とされる処理が重くなってしまう。また、ワイドQVGAや来年以降に普及が期待されているVGAディスプレイにワンセグ放送を写し出す場合、QVGAサイズで放送されるワンセグの画像の画質を落とさないように、伸張しなければならない。そこで、SH-Mobileのようなアプリケーションプロセッサがワンセグに必要な処理を担当し、必要に応じて、ベースバンドチップを休ませることで、連続視聴時間の延長を実現しているという。ユーザーには直接、見えにくいデバイスだが、ワンセグなどの新しいサービスが登場する中で、アプリケーションプロセッサが再び重要な役割を担うことになりそうだ。


SDアソシエーション

ワンセグ対応端末で録画した番組をパソコン上で管理できる「SD-MobileImpact(仮称)」。来年以降のワンセグ対応端末向けにリリースされる予定
 ワンセグ対応端末が各社から発売されているが、W43Hや905SHなど、録画に対応した端末も登場している。ただ、現状ではワンセグで録画した番組は端末で再生するのみで、パソコンなどにバックアップすることができない。そこで、Panasonicでは「SD-MobileImpact」というアプリケーションを開発し、SDアソシエーションのブースで公開していた。まだ開発途中のバージョンだが、SD-Audio対応の統合音楽管理ソフト「SD-Jukebox」を包含する形(画面上で切り替えが可能)で開発されている。録画したワンセグの番組は移動する形でパソコンにバックアップすることができ、パソコン上で再生することができるという。来年以降、各社のワンセグケータイ向けにバンドル、もしくは販売することを目指しているという。


その他

 昨年のレポートでは音楽再生機能の再生支援チップの話を紹介したが、今年のCEATEC JAPANでもいくつかのメーカーから同様の機能を持つ半導体が出品されていた。クラス的にも国内で販売されるようなハイエンド端末だけでなく、海外のローエンド端末にも搭載できるコストパフォーマンスの高い製品も出品されていた。おそらく、再生支援機能を利用した音楽再生は、ケータイの機能において、より標準的なものになっていくのだろう。

 その他にはBluetooth関連の開発メーカー向け製品を多く見ることができた。Bluetoothを搭載するケータイが増え、クルマでもカーナビなどがサポートし始めたこともあり、活用例もいろいろな形が増えてきている。ただ、ケータイに絡む関係で言えば、電源のこと(Bluetooth機器側の充電)が意識された活用例の提案が少ないことが少し気になる。

 また例年、CEATEC JAPANでは半導体に加え、液晶ディスプレイや有機ELなども数多く出品されるが、今年は10月18日~20日に「FPD International 2006」(於:パシフィコ横浜)の開催が予定されていることもあり、あまり多くの製品を見ることができなかった。


デジタルコンバージェンスにケータイは加われるのか?

シャープブースでデモが行なわれていたIrSimple。同社の複合機をはじめ、プリンターやテレビなどにもデータが転送できるようになれば、幅広いユーザー層の活用が期待できる
 駆け足でCEATEC JAPAN 2006で見かけた製品や動向を紹介してみた。今回のCEATEC JAPAN 2006では「デジタルコンバージェンス」がひとつのキーワードとして、掲げられている。コンバージェンスとは元々、「集合」や「収束」といった意味を持つが、デジタルコンバージェンスは放送と通信の融合をはじめ、さまざまなデジタル機器やサービスが連携することで、新しいスタイルのビジネスや活用を生み出すことを表わしている。

 確かに、これからのデジタルな世界にとって、それはひとつの正しい方向を指し示しているのかもしれない。ただ、今回のCEATEC JAPAN 2006を見る限り、ケータイはその「デジタルコンバージェンスな世界」に生き残り、成長に寄与していけるのかどうかが少し疑問に感じられた。

 というのも他のデジタル機器のデモでケータイが使われている例があるものの、それは単に手軽な通信手段として使われている例(「○○に外出先からアクセスできて……」といった具合いに)が多く、あまりケータイの機能を活用しているようには見えなかったからだ。機能的に高度なことを求めるわけではないが、もっと身近にケータイと他の機器をつなぐためのキーワードはあるのではないだろうか。たとえば、シャープのブースではIrSimpleを使い、ケータイで撮影した画像をテレビに転送して写し出すテレビ用受信機を参考出品していた。一見、地味な活用例ではあるものの、逆に幅広いユーザー層に受け入れられる可能性があり、将来的にテレビやデジタル機器の標準的な機能になることも十分に考えられる。こうした着実かつ誰もが使える活用を積み重ねなければ、本当に意味のユビキタス、デジタルコンバージェンスな世界は見えてこないのではないだろうか。「次なるケータイ」へのヒントはもっと意外なところに隠されているのかもしれない。



URL
  CEATEC JAPAN 2006
  http://www.ceatec.com/

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(法林岳之)
2006/10/05 12:08

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