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CEATECで見えてきた新製品・新技術の傾向
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■ COM JAPANとエレクトロニクスショーが一体化
10月3日から7日まで幕張メッセで開催されている『CEATEC JAPAN』。携帯電話やPHSの関連企業が多数出展する展示会としては、ビジネスシヨウと並んで注目されていた「COM JAPAN」があるが、今年からCOM JAPANとはエレクトロニクスショーが一体化し、新しい展示会としてスタートを切っている。
昨年まで秋に開催されていたCOM JAPANは、年末商戦から来春の新生活シーズンまでに登場する新製品などが数多く展示されることで知られていた。COM JAPANを見れば、今後のトレンドがつかめるようになっていたわけだ。今回のCEATEC JAPANも基本的にはその傾向を受け継いでおり、さまざまな新製品や参考出品の製品を見ることができた。筆者も2日間、会場を回ってみたが、その中で見つけた注目の製品について紹介しよう。
■ もはやカラーは当たり前、その次は?
まず、携帯電話やPHSの端末そのものについて見てみよう。昨年末にJ-フォンの「J-SH02」とNTTドコモの「F502i」が登場して以来、続々と増えてきたカラー液晶搭載端末だが、もはやCEATEC JAPANに出品される新製品や参考出品の製品は、カラー液晶が当たり前となり、モノクロ液晶を搭載した新端末を探すのが難しくなっている。このペースから考えると、来春には各社とも在庫分を除き、完全にカラー液晶搭載端末に入れ替わってしまうのではないかと見られる。ちなみに、筆者はテスト用の端末を含め、10数台の端末を保有しているが(とっても不経済)、今春以降「21世紀にモノクロ液晶端末は持っていかない」と言っていた。どうやら、その公約もラクに果たせることになりそうだ。
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DDIポケットのfeel H"対応端末「RZ-J90」と超小型デジタルカメラユニット「Treva」
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各社ともカラー液晶搭載端末をラインアップしてきたにより、製品の差別化が難しくなってきたが、CEATEC JAPANでは『ポスト“カラー液晶”』を狙うトレンドを垣間見ることができた。
たとえば、端末に接続するカメラもそのひとつだ。携帯電話・PHS用のカメラは、以前、ツーカーセルラー東京が製品化していたが、今回のトレンドはカメラが内蔵、もしくは軽量コンパクトな外付けタイプであること、カラー対応であることなどが挙げられる。たとえば、DDIポケットのfeel H"用の「Treva」、J-フォンの「J-SH04」、auの「PashaPa」などがこれに該当する。
いずれの製品も携帯電話やPHSのメール機能と連動しており、メールに添付して画像を送信できるようにしている。カラー液晶の特性を活かすことから考えても、今後は画像付きメールが一気にブレイクすることになりそうだ。ただ、異なる事業者の端末間で画像添付メールをやり取りした場合の互換性は、少し気になるところだ。また、端末からパソコンに画像付きメールは簡単に送信できるが、そのパソコンから端末に画像付きメールを送信する際、デジタルカメラで撮影した画像を適切なサイズに変換するツールなどが登場すると、さらに画像付きメールの普及が加速するかもしれない。
カメラによる画像利用と同じように、各社とも力を入れているのがサウンド関連の機能だ。サウンド関連の機能には、着信音もあれば、ポータブルCD/MDプレーヤーのような音楽再生機能もあるが、着信音は3~4和音から16和音と進化してきたものがPCM音源で声も再生できるようになってきたのに対し、音楽再生は音楽配信サービスなどと絡む新しい機能であることが異なる。PCM音源を利用した着信音については、すでに「J-D03」の「ケータイ新製品SHOW CASE」でも紹介しているように、今までの着信音とは明らかに異なった趣があり、著名なタレントや声優による着信『声』のダウンロードサービスなども流行りそうだ。音楽再生についてはパソコンを絡めるかどうかで切り口が異なってくるが、ダウンロードサービスの場合は利用料金が掛かることや手間もそれなり増えることなどから、まだ発展途上中という感が残る。
■ 新端末も続々登場
一方、新端末については、KDDIグループのauとツーカーが初公開の端末を数多く展示していた。もちろん、いずれもカラー液晶を搭載しているのだが、auについては新しいメールサービスである「@mail」に対応したものがずらりと並んでいた。
@mailはEZwebの従来のメール機能に代わるメールサービスで、使い勝手が改善されることが期待されている。今月末以降に発売されるC40xシリーズがその最初の対応機ということになるが、メールサービスそのものが変わってしまうため、メールアドレスやドメイン名も変更されることになる。
今回取材したところによれば、現在、旧IDOエリア内では「△△△△@ez△.ido.ne.jp」となっているのに対し、@mailでは全国統一で「△△△△@ezweb.ne.jp」になるそうで、機種変更をした場合でもメールアドレスは変更しなければならない。つまり、わかりやすいメールアドレスが欲しいのであれば、今月末に発売されるC40xシリーズをいち早く購入する必要があるわけだ。
ツーカーが参考出品していた新端末のうち、三菱電機製のものが唯一、@mail対応となっていたが、auと同じようになるのであれば、こちらも@mail対応端末を早めにゲットするのが得策ということになる。
また、C40xシリーズの発売を機に、外付けキーボードのイージーパレットが発売される。すでに、C309H用に販売されているが、今回展示されたイージーパレットはC40xシリーズ対応の汎用品となっている。
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DDIポケット「128kbpsパケット通信・AO/DI対応一体型カード」。来春にはお目見えか?
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モバイルに適したデータ通信カード一体型端末にも参考出品のものがいくつか見受けられた。DDIポケットのブースには、128kbpsパケット通信とAO/DIに対応した一体型カードが展示されていたが、来春のサービス開始時期には登場させたいとしている。ちなみに、AO/DIは「Always On/Dynamic ISDN」の略で、簡単に言ってしまえば、パケット通信と回線交換による通信を動的に切り替える方式のことだ。たとえば、テキスト中心のコンテンツを見ているときはコストの安いパケット通信でデータをやり取りし、画像や音楽などの大容量のデータを転送するときは回線交換で短時間でダウンロードするといった使い方ができるわけだ。AO/DIはモバイルの利用形態を大きく変える可能性を秘めているため、今後の注目キーワードと言えそうだ。
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シャープの新ザウルスコーナーに展示されていた「DDIポケット向けCF TypeII対応PHSカード」。隣りにあるP-in Comp@ctとはアンテナ回りの形状が異なる。
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後述するシャープの新ザウルスのコーナーには、DDIポケット向けのCF Type2対応のデータ通信カード一体型PHSが展示されていた。NTTドコモの「P-in Comp@ct」のライバルということになるが、メーカー名や発売時期などについては明らかにされていない。DDIポケットのPHSを利用したいユーザーには、非常に気になる存在だ。
■ 見えてきたBluetoothだが……
今回のCEATEC JAPANで、いろいろなメーカーがデモンストレーションを行なっていたのがBluetooth対応製品だ。「もうすぐ」「間もなく」と言われながら、なかなか製品に近いものが見られなかったが、ようやくここに来て、Bluetoothも現実感を帯びてきたという印象だ。
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ツーカーのブースに展示されていた「Bluetooth対応ヘッドセット」。汎用性の高い4芯イヤホンジャックを利用している点が優れている。
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今回出品されたBluetooth対応製品の中で、実用性があると感じられたのがツーカーのブースに展示されていたヘッドセットだ。端末の背面に取り付けるユニットから延びるケーブルを4芯のイヤホンマイクの端子に挿し、ヘッドセットとワイヤレスで通信を行なうというもので、電源は双方のユニットに内蔵するボタン型の空気電池を利用する。Bluetoothのユニットは消費電力の少ない半導体を選んでおり、通常の利用で2~3週間程度ならば、十分使えるそうだ。
また、先日のレポートにもあったように、Panasonicのブースでは32kbpsながらもPHSに装着できるタイプのBluetoothのユニットが実演デモで公開されていた。国内のPHSや携帯電話に接続するBluetoothユニットとしては、おそらくはじめて実働品でのデータ通信のデモを行なったということになりそうだ。ちなみに、端末側の電源はPHS本体から供給される仕組みになっている。
この他にも数多くのBluetooth関連製品の出品があり、産業ゾーンにはBluetooth向けの半導体なども数多く展示されていたため、いよいよ今冬から来春に掛けてはBluetooth製品のラッシュということになるかもしれない。
ただ、筆者が各社のデモを見ていて、非常に気になったのは、異なるメーカーの製品間の接続についてのデモが見られなかったことだ。本来、Bluetoothは各社の製品間で互換性があり、ユーザーは対応製品を購入すれば、相互の機器でワイヤレス接続ができるようになるはずだ。しかし、それをどのような手順でやるのか、他社製品についてはどのように対応していくのかといった部分が見えてこない。こうしたユーザーインターフェイスの出来がBluetooth普及の足かせにならなければいいのだが……。筆者の杞憂であることを祈りたい。
■ 期待できそうな新ザウルス
CEATEC JAPANではさまざまな製品が参考出品されたが、なかでも関係者の注目を集めたのは、シャープの「新ザウルス」だろう。国内では圧倒的な強さを誇ったザウルスもここ数年はPalm OS搭載PDAやWindows CEマシン、簡易メール端末などに押されているが、ここに来て、ようやく本格的な巻き返しを図ってきたという印象だ。
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キーボードを内部に格納した新ザウルス。手書き入力とキーボードをバランスさせたスタイルはPDAの新トレンドになるか?
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今回の新ザウルスは、ザウルスのアイデンティティのひとつでもあった「手書き入力」に対する固執をやめ、スライド式のキーボードを本体に格納するという新しいスタイルを生み出している。つまり、文字入力などはキーボード、操作はペン、キーボードは使うときだけ引き出すという考え方なのだろう。もしかすると、こうしたスタイルは、今後のPDAのトレンドになるかもしれない。
拡張性の面については、本体上にCF Type2スロット、側面にSDメモリカードスロットを備え、現行モデルで携帯電話・PHSケーブル接続用に提供されている「オプションポート16」も底面に備えている。たとえば、CF Type2にデータ通信カード一体型PHS、SDメモリカードをストレージとして使ったり、データ通信はオプションポート16に任せ、CF Type2スロットにはBluetoothカードを装着するといった使い方が考えられる。通信環境については他のPDAに比べ、かなり優位性があると言えそうだ。
新ザウルスで気になるのは、縦型となった液晶ディスプレイに合わせたアプリケーションがどれだけ作り込まれているかという点だ。ザウルスは現行モデルでも縦型表示を可能にしているが、横型表示のメニューもかなり残されており、そのバランスの悪さが問題視されていた。また、PCとのリンクについてもまだ不十分な面が残されており、新ザウルスのアプリケーションでは、これらの問題をどのようにクリアしてくるかが気になるところだ。発売時期は明らかにされていないが、時期的に考えて、年末商戦から新生活シーズンにぶつけてくる可能性は高い。
この他にも、三洋電機のブースでEPOC OS日本語版が搭載されたPDAが参考出品されていた。EPOC OS日本語版は以前から何度も話が出ていたが、試作品レベルとは言え、実働する製品が公開されたのははじめて。もし、発売されれば、Palm OS搭載PDAやPocketPC、ザウルスの強力なライバルになることは間違いないだろう。
■ これから注目したいデバイス
冒頭でも触れたように、CEATAC JAPANは昨年まで開催されていたCOM JAPANとエレクトロニクスショーが一体化して生まれたイベントだ。そのため、ここで紹介してきたような製品だけでなく、携帯電話やPHS、モバイル機器などに関連する半導体やパーツなどが産業ステージに出品されている。日頃、あまり見ることができない携帯電話のパーツなどを見てみるのも面白いだろう。
産業ステージにはさまざまな部品が展示されていたが、今回は液晶などのディスプレイ関連、前述のBluetooth関連、そして来年からサービスが開始されるIMT-2000関連などの出品が目に付いた。なかには「IMT-2000端末用内蔵アンテナ」などもあり、本当に次世代携帯電話のサービスが開始されるんだなという実感がわいてくる(笑)。
数ある展示の中で、筆者が個人的に興味を持ったのは、三洋電機と東北パイオニアが出品していた「有機ELパネル」だ。有機ELはガラス基板で挟み込んだ有機化合物に電気を加えることで発光するというものだ。現在の携帯電話などのディスプレイには液晶ディスプレイが採用されているが、有機ELパネルはバックライトが不要で、高い輝度とコントラストが得られることなどを特長としている。残念ながら発色数がまだ少なく、コストも高いなどの問題点はあるが、将来的に携帯電話の液晶ディスプレイなどから置き換えられる可能性もある。もしかすると、次世代携帯電話がある程度、普及し始めた2~3年後には、有機ELパネル搭載の携帯電話が使われているかもしれない。
(法林岳之)
2000/10/06 00:00
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