■J-スカイステーション対応第1弾
充実したカラー対応コンテンツが人気のJ-フォンでは、今年10月1日から『J-スカイステーション』というサービスを新たに開始する。このサービスにいち早く対応した端末が相次いで発表されたが、その第1弾となるKENWOOD製「J-K03」の出荷が開始された。実機を入手することができたので、早速レポートをお送りしよう。
■KENWOODというブランド
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J-フォン『J-K03』。サイズ:44(W)×122(H)×21(D)mm、86g。アクアマリン(写真)、インディゴブルーの2色をラインナップ。 |
ここのところ、iモード端末のレビューなどが続いてしまったが、J-フォンも相変わらず好調な伸びを示している。中でも充実したカラー対応コンテンツには定評があり、この部分では他の携帯電話事業者と一味違ったイメージで捉えられているようだ。
今回発表された端末は、KENWOOD製「J-K03」、三菱電機製「J-D03」、パイオニア製「J-PE03」の3機種だが、そのいずれもがカラー液晶と搭載しており、J-フォンのラインアップではすでに7機種(旧モデルを含む)がカラー液晶を搭載したことになる。このことからもJ-フォンがカラー対応に熱心であることがうかがえる。
今回発売されたJ-K03はKENWOOD製だが、読者のみなさんはKENWOODに対して、どんなイメージを持っているだろうか。デザインセンスの良いミニコンポやオーディオ機器を販売するメーカー? あるいはF1のマクラーレンをはじめとするモータースポーツのスポンサー? それとも……。筆者と同じ30代以上で、理工系に興味を持ってきた人にとって、KENWOODというブランドネームは、オーディオ関連以外でも馴染みがある。実は、KENWOODはその昔、「TRIO」というブランドネームを使っており、アマチュア無線や業務用無線など、無線通信機器のトップブランドとしても知られている。現在のKENWOODの携帯電話の技術のルーツは、こうした無線通信技術にあるわけだ。
また、KENWOODの携帯電話でもうひとつ印象的なのは、いわゆる「紀香ケータイ」だ。J-フォン東京が東京デジタルホンという名称だった当時、CMキャラクターに藤原紀香を起用したことにより、急速にシェアを拡大したが、このテレビCMで使われていたのがKENWOOD製端末だったため、店頭などで「藤原紀香のケータイください」という若い女性の指名買いが増えたことがあった。たしか、機種は「DP-134」だったような記憶があるが……。
そんな昔話はともかく、KENWOODは携帯電話やPHSのラインアップこそ多くないものの、いいブランドバリューと話題性を持ち合わせている。今回のJ-K03もJ-フォンが新たにサービスを開始する『J-スカイステーション』の対応1号機であり、同時にオフィシャルコンテンツも提供するなど、なかなか注目度が高い端末となっている。
■大画面のカラー液晶を搭載
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液晶ディスプレイは120×143ドット/256色表示が可能なカラー液晶を搭載。発色も良好で、視認性も問題ない。表示フォントにはシャープのLCフォントが採用されている。 |
細かいスペックについては、J-フォンの製品情報やケータイ新製品SHOW CASEを参考にしていただくとして、ここでは実機を触った印象を中心に紹介しよう。
まず、ボディ。前述のDP-134やその後に発売されたJ-K01などでは、ドルフィンデザインと呼ばれる流れるようなボディデザインがセールスポイントのひとつとなっていたが、J-K03はややずんぐりした感じのデザインだ。縦横比で見ると、やや横方向が広く見えてしまうようで、auのC309Hなどにも近い印象だ。
液晶ディスプレイは120×143ドット/256色表示が可能なカラー液晶を搭載している。表示エリアは28.8×34.3mmとなっており、先週紹介したNTTドコモのN502itやauのC309Hなどに次ぐ大画面となっている。カラー液晶の発色も良好で、視認性も問題ない。待受画面はグラフィック、壁紙、オリジナル文字などから選ぶことができ、最大100件までカスタマイズすることができる。表示フォントはシャープのLCフォントを採用している。
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中央に配されているのが方向キーと決定キーを一体化させた「5ファンクションキー」。その左上にあるのが、KENWOOD製端末ではおなじみの「なんでもチェッカーボタン」。 |
ボタン類で注目したいのは、KENWOOD製端末ではおなじみの「なんでもチェッカーボタン」だ。なんでもチェッカーボタンは従来モデルやH"のKENWOOD端末でも採用されてきたもので、メール着信などのイベント時に押すと、そのイベントに合わせた処理が表示される機能を持つ。J-K03の使いこなしは、このボタンに始まると言っても過言ではない。また、中央に配された「5ファンクションキー」はいわゆる方向キーと決定キーを一体化させたものだ。操作感は非常によく、NTTドコモのP502iやauのC308Pに似た感覚で操作することができる。奥方向で押し込む決定の動作も押し間違いは少ない。ちなみに、多くの携帯電話では[F]キー(J-K03で言えば、5ファンクションキー中央)の長押しでに誤動作防止が設定できるが、J-K03では[*]キーの長押しで設定することができる。5ファンクションキーの右に位置するのはJ-スカイサービスを呼び出すためのボタンで、このボタンを押した後、メール、J-スカイウェブ、新サービスのJ-スカイステーションなどを選ぶことができる。
着信メロディは4音源4和音に対応しており、ボタン確認音やメール着信音なども同じようにカスタマイズすることができる。ダウンロードしたメロディなどは最大100件、200KBまでファイルボックスに保存することができる。
■メール派に適した入力文字予測
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通話時に最適な音声モードに切り替えられる「NEWベストボイス」機能。背面に装備されたベストボイスボタンを操作することにより、音声通話モードを切り替えることができる。 |
一方、機能面はどうだろうか。J-K03には通話時に最適な音声モードに切り替えられる「NEWベストボイス」機能が搭載されている。同様の機能は従来モデルのJ-K02でも採用されていた機能だが、J-K03ではさらにその機能が強化されている。背面に装備されたベストボイスボタンを操作することにより、音声通話モードを「オリジナル」「シャープネス」「ワイド」に切り替えたり、オートラウドネスモードにすることで受話の明瞭度を向上させることが可能だ。実際に室内外で試してみたが、ハッキリとその効果がわかるほど音質が変わっており、非常に実用的だと感じられた。また、メモリダイヤルに登録された相手ごとに前回の通話モードを記憶していたり、ハーフレート、フルレート、EFR(エンハンスト・フルレート)に対して最適なベストフィルタも装備するなど、通話部分に対するこだわりは他の機種に見られないほどだ。このあたりは無線機メーカーとしての面目躍如といったところだろうか。
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メールまわりでは漢字学習履歴機能や入力文字予測機能などを搭載。3文字入力すると、過去に入力した4文字以上8文字以内の文字を呼び出すことにより、文字入力の省力化を図ることができる。 |
メールまわりでは漢字学習履歴機能や入力文字予測機能などが搭載されている。学習機能は他の携帯電話などでも搭載され始めたおなじみのものだが、面白いのは入力文字予測機能だ。3文字入力すると、過去に入力した4文字以上8文字以内の文字を呼び出すことにより、文字入力の省力化を図ろうという機能だ。たとえば、過去に「いんぷれす」を「インプレス」と変換したことがあれば、次回からは「いんふ」まで入力した時点で、画面左下に「[▲]予測」と表示され、5ファンクションキーの上方向を押すことで、「インプレス」という変換候補が表示される仕組みだ。使い込めば、使い込むほど、効果が出てくるはずだが、ヘンな学習をしないようにするために、最初の内は誤変換をできるだけ少なくする必要があるかもしれない。
また、KENWOODではJ-K03の発売に伴い、同社が提供する「Sky Room」というコンテンツをスタートさせている。Sky Roomはプライベートルームを作ることにより、伝言板でコミュニケーションをしたり、仲間やグループでのスケジュール管理ができるというものだ。Sky Roomは登録制となっているため、今回は試さなかったが、メーカーがこうしたコミュニケーションの場を提供するのは、なかなか意義のあることと言えそうだ。この他にも、KENWOODから情報を発信するJ-フォンのオフィシャルコンテンツの「LINKME」も提供されており、F1をはじめとするモータースポーツの最新情報なども見ることができる。
■J-SH03などの強力なライバル
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今年10月1日から始まる位置情報サービス『J-スカイステーション』のメニュー。 |
J-フォン端末としては、5機種目のカラー液晶搭載端末として登場した「J-K03」だが、最後に「買い」の診断をしてみよう。
まず、J-K03を一番おすすめしたいのは、音声通話を重視するユーザーだ。音声通話については好みもあるため、なかなかベストチョイスは決めにくいのだが、J-K03に搭載されているNEWベストボイス機能は複数の音声通話モードが切り替えられるため、シチュエーション別にいろいろな使い方を試すことができる。選択肢が多い分、それだけ自分の好みに近い音声モードを選ぶことができるわけだ。この点は高く評価できるだろう。
次に、既存のモノクロ液晶を搭載したJ-フォン端末を持つユーザーに対してだが、これは少し様子を見たい。理由としては間もなく発売される予定の「J-D03」「J-PE03」の存在が挙げられる。今回発表された3機種は、いずれもJ-フォンが新たに開始する『J-スカイステーション』に対応しているのが特長だ。『J-スカイステーション』がどれだけ使えるのかは未知数だが、あと数週間で選択肢が増えるのであれば、それを待ってから判断しても遅くはないはずだ。
いずれにせよ、J-K03が現時点のJ-フォン端末で最も注目度の高い製品であることは間違いない。惜しむらくは端末のみで遊ぶことができるゲーム機能などがないことだが、音声通話に対するこだわりはさすが無線機メーカーと言いたくなる(という考えが古いという見方もあるが……)。最近の携帯電話は、着信メロディや待受画面といった派手な機能ばかりが注目されがちだが、携帯電話は音声通話も重要な使い道であり、この点をしっかりと強化しているところはJ-K03で最も高く評価できる点だろう。
■ URL
J-K03ニュースリリース(J-フォン)
http://www.j-phone-tokyo.com/company/n/000823_b.htm
J-K03商品情報(J-フォン)
http://www.j-phone-tokyo.com/p_and_s/products/be/htmllib/index.htm?d=KENWOOD&f=J-K03
(法林岳之)
2000/09/12 00:00
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