■ cdmaOne初のカラー液晶ケータイ
cdmaOne初のカラー液晶端末「C309H」は、すでに8月1日からauブランドで発売が開始されている。NTTドコモやJ-フォンに比べ、ややカラー化に出遅れた感はあるが、ようやくEZwebでもカラーコンテンツを楽しむ環境が整ったことになる。筆者も機種変更でようやく入手できたので、いつものようにレポートをお送りしよう。
■ cdmaOneトップブランドの地位を確立する日立
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au『C309H』。4万8500円、130(W)×(H)×19(D)mm、約89g。シルバー(写真)のみをラインアップ。
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次世代携帯電話の基本技術であるCDMAをいち早く採用し、世界標準規格のWAPに準拠したEZweb、4和音着信メロディ、最大64kbpsのパケット通信サービス「PacketOne」の提供など、どちらかと言えば、技術的なアドバンテージを訴えてきたauブランドのcdmaOne。しかし、コンテンツサービスをはじめとする「ケータイを楽しむ」という面については、やや遅れを取っている。そのひとつが液晶ディスプレイのカラー化だ。
カラー液晶ディスプレイを搭載した携帯電話は、昨年末にJ-フォンの「J-SH02」、NTTドコモの「F502i」が相次いで登場し、両社ともすでにラインアップの主力をカラー液晶搭載モデルに切り替えつつある。これに対し、auブランドのcdmaOneは、今回発売されたC309Hが初のカラー液晶搭載モデルであり、同じKDDIグループ内のツーカーにも若干、先行される形となっている(ツーカーはすでにカラー液晶搭載モデルを2機種発売中)。
今回発売されたC309Hだが、そのネーミングからもわかるように、日立製作所の製造によるものだ。EZwebにはじめて対応した「C201H」、PacketOneと4和音着信メロディにはじめて対応した「C302H」と、常にcdmaOne端末のトレンドをリードしてきた日立だが、今回のC309HでもcdmaOne初のカラー液晶搭載モデルとなり、またしても先陣を切ることになった。他のメーカーがこれをどう見ているのかは分からないが、少なくともcdmaOneに関しては日立がトップブランドの地位を確立しつつあると見て間違いないようだ。
■ 大きくなったボディ
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日立製cdmaOne端末3機種。C201H(左)やC302H(中央)に比べ、C309H(右)はひと回り大きい。
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詳しい仕様などについては、KDDIグループ各社のページや先日公開した「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、まずは外観から見てみよう。日立製端末はC201H、C302Hと、どちらかと言えば、スリムな印象のデザインだったが、今回のC309Hは大画面のカラー液晶を搭載したことにより、ボディがひと回り大きくなっている。3機種を並べてみると、C309Hはやや頭(液晶部分)が大きく見える。
液晶ディスプレイは120×143ドット、256色表示が可能なSTN液晶で、実測値では29×35mmとなっている。これはカラー液晶搭載モデルで最も大画面である「D502i」の27×34mmよりもわずかに大きく、現在発売されている国内のカラー液晶搭載モデルでは最大ということになる。液晶ディスプレイの発色はあまり違和感もなく、視認性もまずまずだ。ただ、他のカラー液晶携帯電話に比べると、D502iほどではないものの、やや色味が薄く、黄色っぽさが残る。また、省電力を徹底させるためか、バックライトの点灯時間が短く、外部電源のない状態では最大10秒しか点灯しない。
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メインの待受画面。発色は悪くないが、やや暗く薄めの印象の残る。
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機能のメニュー画面はすべてアイコン化されている。背景がやや黄色っぽい。
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ボタン類はデザインが変更された。十字方向に分かれたカーソルキーが印象的。
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日立製端末は毎回、ボタン回りにいろいろな工夫(苦心?)が見られるのだが、今回は4方向のカーソルキー、中央の[確定]キー、その上に画面によって機能が変わるソフトキーを配する構成となっている。ダイヤルキーの形状は従来モデルの丸形の小さなものが不評だったこともあり、少し大きめの楕円型のものが採用されている。また、メニューを戻るときの動作になどに多用する[クリア]キーは本体右下に移動(従来モデルは中央)していたため、この部分の操作は少し指の移動量が増えた印象だ。
C309Hのキーで特徴的なのは本体右側面に配された2つのダイレクトキーだ。これはプログラマブルになっていて、標準でEZメニューとCメールメニューが表示される。EZweb対応端末に装備されているEZボタンとメールボタンを側面に装備したことになるが、これは好みが分かれそうだ。筆者の感覚から言うと、端末を手のひらに載せて握るように持ち、親指でダイレクトキーを操作するわけだが、握ったままの状態では中央の確定キーを押しにくいため、今ひとつ操作性が良くない。筆者よりも手の小さな人(おそらく大多数だろう)は端末を持ち替えるか、両手で操作することになるだろう。プログラマブルであることは一見、便利そうだが、EZメニューやCメールメニュー以外の機能を割り当てたとき、これらの機能はメインの機能画面からアクセスしなければならなくなる。EZサービス対応端末として、これはあまり賢明な使い方とは言えない。つまり、ダイレクトキーがプログラマブル機能を持っていたとしても実質的にはあまり使い道がないというのが偽らざる感想だ。
この他に、本体左側面には従来モデルから採用されている気くばりスイッチが備えられている。気くばりスイッチはスライド式スイッチでマナーモードなどに切り替えられるもので、筆者も非常に重宝している。また、端末本体ではないが、底面の外部接続端子に繋ぐ外付けキーボード「イージーパレット」も発売される。ただし、発表日に注文した筆者の手元にはまだ届いていない(笑)。
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プログラマブルなダイレクトキーを本体右側面に装備。あまり操作しやすい位置とは言えない。
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ワンタッチでマナーモードなどに切り替えられる気くばりスイッチ。非常に使いやすい。
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■ 16和音着信メロディとカラー対応コンテンツ
C309Hのもうひとつのトピックは、着信メロディの16和音対応だろう。EZwebの「Nメロディタウン」でダウンロードサービスも始まっており、原稿執筆時点ですでに74曲が登録されている。4和音着信メロディ対応モデルの登場からわずか半年程度しか経っていないが、この点はすでに他の携帯電話を確実にリードしていると言えそうだ。
また、C309Hでは曲風や音色、テンポをアレンジできる「サウンドミキサー機能」も搭載されている。ダウンロードした着信メロディを「ボサノバ風」「ヒップホップ風」「演歌風」「沖縄民謡風」などにアレンジし、音色やテンポを変更すれば、他人の着信メロディと重なることも少なくなりそうだ。
16和音の着信メロディを聴いた感想だが、正直に言ってしまうと、あまりインパクトがない。確かに、「携帯電話でこれだけ鳴るかぁ」という気もするのだが、はじめて4和音を聴いたときほどの感動がないのだ。慣れもあるのだろうが、コンテンツ側でもう少し16和音を活かすようなものを提供して欲しいところだ。ちなみに、現在、Nメロディタウンに登録されている16和音着信メロディの74曲中64曲がJ-POPとなっている。このアンバランスさも早く解消して欲しいところだ。
一方、カラー液晶を活かす機能として、C309Hではアトラスのゲーム「ハムスターパラダイス」の画面モードを用意している。画面にハムスターが登場するだけでなく、おやつを与えたり、手に乗せたりするゲームも用意されているのだが、これは好みが分かれるところだ。女性にはウケが良さそうだが、筆者やスタパ齋藤氏のような「いかついヤツ」が携帯電話でハムスターを飼うのは、ちょっと不釣り合いな印象もなくはない(笑)。
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16和音着信メロディのダウンロードサービスを提供している「Nメロディタウン」。
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「ハムスターパラダイス」では会話をしたり、おやつをあげたりできる。
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そこで、C309Hではハムスターモードと別に、空をイメージした通常モードを用意しているのだが、これがあまりにもシンプルすぎて、今ひとつ面白みがない。カラー液晶を活かした携帯電話の機能としては、NTTドコモの「F209i」に搭載されている「きゃらいふ」があるが、せっかくカラー液晶のための機能を用意するのであれば、これに匹敵するレベルのものを用意して欲しかった。
この他にも、ダウンロードしたデータを保存できるデータフォルダや日本語入力に欠かせない単語登録、位置情報サービスへの対応など、便利な機能も数多く搭載されている。誌面の都合上、省略するが、全体的に使い勝手や機能は大幅に向上していると言えるだろう。
余談になるが、今回の機種変更にあたり、auプラザでメモリダイヤルのコピーを依頼したが、メールアドレスのコピーはされなかった。そこで、携帯電話メモリソフトでメモリダイヤルの移し替えをしたが、筆者の持つ携帯電話メモリソフトの内、「携快電話3」(ソースネクスト)と「ケータイ・リンクIII」(ビレッジセンター)がC309Hに対応しており、名前、ふりがな、電話番号、メールアドレスを書き込むことができた。
また、もうひとつの余談だが、以前、このコラムでパイオニアのカーナビ「DVDサイバーナビ」を紹介したが、筆者が持つ1999年モデル(「CNDV-2200」でバージョンアップ済み)にcdmaOne用接続アダプターをつないだ環境でもC309Hは無事に動作している。
■ C309Hは買いか?
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EZwebはメニュー回りもカラー化されたが、カラーを十分に活かしたコンテンツはこれから。
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cdmaOne初のカラー液晶搭載モデルとして登場したC309H。下にある本誌に掲載されたニュースのリンクの数を見てもわかるように、機能、サービス、話題性のどの面を取ってもこの夏一番の注目機種のひとつであったことは間違いない。KDDIグループとして合流する3社が最も力を注いで開発した端末と言ってもいいだろう。
では、いつものように「買い」の診断をしてみよう。まず、すでにcdmaOneを利用しているユーザーだが、これは非常に判断が難しい。コンテンツを重視するユーザーなら、すでにカラー対応のコンテンツも用意されており、これらをいち早く体験できるメリットは大きい。位置情報サービスなども面白いコンテンツになりそうだ。ただ、カラー液晶を十分に活かしたコンテンツはまだそれほど多くないため、予算が厳しいようであれば、もう少し様子を見るのも手だろう。
次に、メール重視のユーザーだが、できれば「待ち」を検討したいところだ。詳しくは説明しないが、auがEZサービスのメール機能の仕様を大きく変更すると報じられており、現時点ではその成行きをしばらく見極めたいというのが本音だ。
全体的に見れば、C309HはcdmOne端末としての完成度も高く、これから購入しようと考えているユーザーなら、間違いなく候補の筆頭にあげられる製品だ。
最後に、ひとつだけ事業者と取扱代理店に対する苦言を書き加えておきたい。すでに、本誌の価格調査などでも明らかになっているが、今回のC309Hの発売にあたり、IDOが管轄するエリアでは新規契約用端末のみを先行して発売し、機種変更用の端末については8月中旬~下旬まで出荷しないという措置が取られた。
筆者はあまり特殊な手段を使わず、できるだけ読者のみなさんと同じように購入して評価したいと考えているため、このような時期にレビューをすることになったが、ユーザーの視点から見ても今回の措置はあまり気持ちのいいものではない。わずか半月程度とは言え、既存ユーザーにしてみれば、「今までcdmaOneを使ってきた自分がなんで待たされなきゃいけないの?」という気になるはずだ。
こうした措置はひとつ間違えば、他の事業者への乗り換えにもつながり兼ねない。新規購入と機種変更の話については、いずれ改めて記事にするつもりだが、5000万人を超える人が携帯電話を持つ現在の日本の携帯電話市場において、このようなつまらない小細工が正しい手法なのかどうかをもう一度、よく考えてもらいたい。どんなにいい端末、いいサービスを提供してもユーザー利用者がいなければ、継続して使わなければ、ビジネスは成立しないのだ。
■URL
・C309H製品情報(DDI-セルラー)
http://www.ddi.co.jp/cellular/kisyu/c309h.html
・C309H製品情報(IDO)
http://www.ido.co.jp/cdmaone/keitai/309.html
・C309H製品情報(日立製作所)
http://www.hitachi.co.jp/Prod/vims/mobilephone/c309h/index.html
・C309Hニュースリリース(KDDI)
http://www.kddi.com/release/000622.html
・C309Hニュースリリース(DDI-セルラー)
http://www.ddi.co.jp/cellular/release/2000/000622a/index.html
・C309Hニュースリリース(IDO)
http://www.ido.co.jp/release/news/20000622_1.html
(法林岳之)
2000/08/22 00:00
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