■ Panasonicらしさで勝負
6月に発表されたNTTドコモの209シリーズ。iモードを搭載したことで、502iシリーズと市場でどのように区別されていくのかが興味深いところだが、松下通信工業が開発したP209iはP502iのデザインを踏襲しながら、Panasonicらしさを見せているのが特長だ。筆者も機種変更で端末を入手したので、レポートをお送りしよう。
■Panasonicというブランド
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NTTドコモ『デジタルムーバ P209i HYPER』。サイズ:39(W)×123(H)×15(D)mm、60g。ビンテージレッド(写真)、クリスタルホワイト、クリスタルメタルの3色をラインアップ。 |
NTTドコモのムーバシリーズにおいて、松下通信工業、いや「Panasonic」というブランドは非常に強い。最近でこそ、ベストセラーの地位を折りたたみ式のN502iに奪われているが、デジタル・ムーバの名称で販売された端末の累計台数から言えば、「P」の名前が冠された端末は常にトップを快走し続けてきた。
Panasonicが支持された理由には、いろいろなものがある。たとえば、世界最小最軽量の携帯電話を次々と発売し、小型化競争のトップを走ってきたこともそのひとつだ。数値的に表わせるような確固たるものが示されているわけではないが、通話品質の面でも支持する声は多く、「Panasonicは音がいい」「切れない」と力説する人も多い。
また、ブランドとして価値を高めることも怠っていない。たとえば、「デジタルムーバ P2 HYPER」や「デジタルムーバP101 HYPER」は、シャンパンゴールドの限定モデルを発売し、いわゆるプレミア端末の先駆け的な存在になった。iモードでも501iシリーズでは若干、出遅れたものの、サントリーの『ボス電』に採用されるなど、他製品とは少し違った受け入れられ方をしていた。
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「P」の歴史の一部。左から「デジタルムーバP101 HYPER」(シャンパンゴールド)、「同P501i HYPER」(ハニープラチナ)、「同P502i HYPER」(プレシャスブルー)、「同P209i HYPER」(ビンテージレッド)。
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こうした実績とイメージの積み重ねが「Panasonic」というブランドのイメージを生み出している。端末のバリエーションが増えてきた最近でも「ボクはPしか買わないんですよ」と話す『こだわり派』を見かけることもある。日本には同社以外にも数多くの携帯電話・PHSメーカーがあるが、ここまでのブランドイメージを確立したメーカーは少ないのではないだろうか。
今回発売されたP209iは、他の209iシリーズ同様、iモードに対応しているが、iモード端末としては最小最軽量を達成している。重量ではP502iが達成した最軽量(発表当時)の69gをクリアし、60gを実現。薄さは最薄部こそP502iと同じ11mmだが、最厚部はP502iよりも1mm薄い15mmを実現している。P502iをはじめて見たとき、「随分、薄くなったねぇ」などと話していたのだが、P209iではボディサイズがひと回り小さいこともあって、さらに軽量コンパクトに見える。この他にも、数々のPanasonicらしいこだわりも見られ、なかなかユーザーの心を引きつける製品に仕上げられている。
■ ボディカラーに注目
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P209iのビンテージレッド(右)とP502iのプレシャスブルー(左)。ペアで持ってたりするといいかもね。
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P209iの詳細なスペックなどはNTTドコモや松下通信工業の製品紹介ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」などを参照していただくとして、P209iの注目すべき機能などを紹介しよう。
P209iで、まず最初に注目したいのがボディカラーだ。前述のシャンパンゴールドもそうだが、Panasonicはボディカラーの選択が非常にうまい。最近ではP502iのプレシャスブルーがつや消しっぽいカラーリングで、最近の携帯電話にはないテイストを醸し出していた。筆者はプレシャスブルーのP502iも持っているが、購入直後にスタッフや仕事の仲間に見せたとき、「あー、これっていい色ですねぇ」「カタログで見るのと、随分印象が違うなぁ」と、かなりいい反応が得られたのを記憶している。男性に人気があるのは分かるのだが、意外に女性にもウケが良かったのには驚かされた。今回のP209iでは、同様のつや消し調に仕上げた「ビンテージレッド」というボディカラーをラインアップしている。さすがに、2回目ともなれば、反応は鈍るものだが、それでもP502iを他の人に買われてしまった人たち(自分の回りの人と同じ端末は持ちたくないからね)を中心に、「やっぱり、こっちにしようかなぁ」といった声が聞かれた。
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中央のコマンドナビゲーションボタンはP20xシリーズで採用されてきた平べったいタイプ。奥に押し込む動作がやや操作しづらい。
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たかが携帯電話のカラーリングかもしれないが、カラーリングひとつでちょっとした話題を作ってしまえるところは、さすがPanasonicといったところだろうか。P502iのプレシャスブルーとP209iのビンテージレッドをペアで持つなんていうのもなかなかシャレてるかもしれない。
ボディは前述のように、非常にコンパクトに仕上げられており、ボディ中央にはメニュー操作などに利用するコマンドナビゲーションボタンが配されている。P502iのコマンドナビゲーションボタンはP501iから改良され、操作性が向上したが、P209iは従来の20xシリーズの流れを受け、平べったいコマンドナビゲーションボタンを採用している。特徴的なのはカラーで、左右のソフトキーと合わせ、透明のものが採用され、デザイン上のアクセントになっている。コマンドナビゲーションボタンの動作は、上下左右の他に、奥へ押し込む動作があり、確定や決定操作に割り当てられている。ただ、この奥に押し込む動作が今ひとつ使いにくく、上を押してしまうケースが何度かあった。
コマンドナビゲーションボタンはP502i同様、右方向がメール、左方向がスクリーン設定、下方向がアクセサリー、奥の方向がメニューという割り当てになっている。上方向はショートカット機能が用意されており、全部で12種類の機能の中から1つを選んでショートカットが設定できる。標準ではiモードが割り当てられているが、着信パターンや留守再生、サービス問い合わせなどの機能を割り当てることもできる。
その他のボタン類は基本的にP502iなどと同じスタイルだが、P502iに搭載されていた「iワープボタン」の位置にはメールボタンが割り当てられている。ワンタッチでメール機能が呼び出せ、長押しをすれば、新規メールの作成画面が表示される。
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液晶ディスプレイは4階調表示が可能。メニューなどの構造は基本的にP502iと同じスタイルと踏襲している。
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液晶ディスプレイはモノクロ4階調のものが採用されており、バックライトはオレンジ、ライム、ナチュラル、レモン、ブルーベリー、グレープ、ミントの7種類が設定できる。はたして、ここまでバックライトの種類が必要なのかどうかは少々疑問が残るが(笑)、ユーザーがその日の気分で変えられるのはうれしい。ただ、どうせここまでやるなら、ランダムという選択肢も欲しい気がするのだが……。
機能面はP502iを踏襲しているが、強力なのは着信メロディだ。標準でブザーが7件、3和音の固定曲が10曲、自作曲エリアが20曲、ダウンロード用のiメロディのエリアが30曲分も用意されている。合計67パターンの着信音ということになるのだが、標準で用意されている曲に今ひとつインパクトを感じないのは筆者だけだろうか……。
また、音声コマンドの機能も強化されている。P501i/502iでは音声コマンドで機能設定の変更などができたが、P209iでは定型文を入力することができる。たとえば、音声コマンドで「遅くなる」と発声すれば、帰りが遅くなることを書いた定型文を入力できるわけだ。ただ、現実的に考えた場合、音声コマンドは声を出さなければならないわけで、実際に使うにはちょっと恥ずかしいような気もする(笑)。
■ デザインは買いだが、機能は……
さて、最後に、いつもの「買い」診断をしてみよう。今回は携帯電話に何を求めるのかがひとつの選択基準だ。まず、デザインを重視したいというのであれば、P209iは確実に候補のひとつに挙げられるだろう。彼氏や彼女のP502iとペアで持ち歩くなんていうのはなかなかシャレている気がする。ただ、それをやるなら、ぜひともP209iのビンテージレッドとP502iのプレシャスブルーという組み合わせにして欲しい。あくまでも筆者のセンスでしかないが(笑)、ホワイト系やシルバー系はペアで持っても今ひとつインパクトが感じられない。
次に、着信メロディ重視派にもP209iは気になるところだ。3和音は今や当たり前のレベル(ミニマムのレベル?)でしかないが、自作曲が20曲、ダウンロード用のiメロディが30曲も登録できるというのは強力だ。着信メロディでいろいろ遊んでみたい、いろんな着信メロディをダウンロードしたいというユーザーなら、要チェックだろう。
一方、機能面を重視したいユーザーだが、正直に言って、判断に苦しむ。確かに、Panasonicのブランドに恥じない豊富な機能を搭載しているのだが、どうも今ひとつ「コレ!」というインパクトのある機能がないのだ。音声コマンドや7色のバックライトをも友だちにデモ(自慢)をしている内は楽しいが、実用性という点では若干、疑問が残る。ゲームも搭載されているが、1種類しかないため、意外に早く飽きてしまいそうだ。それだったら、画面も大きく、ゲームも3種類用意されているP502iを購入する方が楽しいような気がするのだが……。
P209iは20xシリーズで常にトップの売れ行きを記録していた「P」の正統派の後継モデルだ。デザイン面やボディカラーなどは、確実にPanasonicらしさを発揮しているのだが、機能面を含め、もうひとつ何かを欲しいと感じてしまうのは厳しすぎるだろうか。
■スペック表
■URL
・P209iニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/00/whatnew0613.html
・P209i商品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/i/lineup/p209i/p209i.html
・P209i商品情報(松下通信工業)
http://www.mci.panasonic.co.jp/topics/P209i/index.html
(法林岳之)
2000/07/12 00:00
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