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NTTドコモ『SH821i』。サイズ:39(W)×126(H)×20(D)mm、76g、74cc。写真のプレミアムホワイトの他、プレミアムシルバーもラインアップ。 |
■カラー液晶搭載で最強を目指す
約1カ月強の販売自粛期間を終え、ようやくNTTドコモのiモードの販売が通常ペースに戻った。その復活第1弾となるのがシャープ製のスーパードッチーモ「SH821i」だ。昨年、携帯電話にPHSを組み合わせた端末として発売されたドッチーモに、iモードを搭載し、さらにカラー液晶まで組み合わせるという超豪華な端末だ。NTTドコモの携帯電話のラインアップでは、現状で考えられる最強の組み合わせと言えそうだ。筆者も早速、機種変更で入手したので、レポートをお送りしよう。
■ ドッチーモに足りなかったもの
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スーパードッチーモ「SH821i」(左)とドッチーモ「SH811」(右)。デザインは一新され、ボディもコンパクトになっている。
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NTTドコモが旧NTTパーソナルからPHS事業を受け継いだとき、「携帯電話とPHSを組み合わせたデュアルモード端末を開発する」として、早くから開発意向が表明され、昨年4月に登場したのがドッチーモだ。携帯電話のエリアの広さとPHSの高速データ通信を組み合わせ、PHS普及のキラー端末として期待された。NTTドコモはシャープ製「SH811」、NEC製「N811」、松下通信工業製「P811」の3機種をラインアップし、販売促進にもかなり力が入ったが、実際には思ったほどの売れ行きを記録できず、やや苦戦を強いられていた。
ドッチーモ苦戦の原因としては、携帯電話とPHSを同時契約するため、基本料金が高くなること、デュアルモード機となるための端末の重さや大きさ、同時待受による消費電力の大きさなどが指摘されていた。しかし、筆者は別の要因として、iモードなどの「携帯電話を楽しむ機能」が足りなかったと見ている。
昨年4月以降の携帯電話市場を見ると、NTTドコモのiモードをはじめとするメール機能やブラウザ搭載端末が人気を集めている。これらの機能が搭載されなかったこと(実際には、PHS部分でパルディオEメールが使えたが)もドッチーモが奮わなかった理由と考えられる。実は、筆者の回りには筆者自身を含め、数人のドッチーモユーザーがいたのだが、結果的に彼らはiモード端末に買い換え、ドッチーモをPHS機能のみで利用したり、PHSを解約してしまった例もあった。
今回発売されたスーパードッチーモ「SH821i」は、iモードを搭載することにより、携帯電話を楽しむことを考慮して開発されているようだ。しかも、昨年末から急速に注目を集めているカラー液晶まで搭載するという高機能ぶり。通話、データ通信、メール、コンテンツ閲覧という現在の携帯電話で実現できる機能を1台ですべてカバーする『スーパーな端末』として仕上げられているというわけだ。
■ カラー液晶の真価は?
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SH821iとJ-SH03を並べてみた。似てはいるが、細かいボタンの配置などが異なる。液晶ディスプレイはJ-SH03の方がわずかに大きい。
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では、実際にSH821iがどのように進化したのかを従来のSH811と比較しながら見てみよう。
まず、外見だが、従来のSH811が角ばったデザインを採用していたのに対し、SH821iは丸みを帯びたやさしいフォルムに仕上げられている。従来モデルのデザインは賛否両論が聞かれたが、今回は幅広い層に受け入れられそうだ。ニュースリリースなどで写真を見る限りでは、J-フォンが先月末に発売したJ-SH03と似たデザインを採用しているように感じられたが、実際に手に取ってみると、細かいところがかなり異なり、ボディなどもまったく別物であることがわかる。ちなみに、シャープによれば、デザイナーはまったく別であり、開発チームも異なるそうだ。
ボタン類はボディ中央にメニュー操作などにも利用するマルチガイドボタン、右上にiモードボタン、左上に通信モードを切り替えるモードボタンが配される。旧NTTパーソナル時代のシャープ製PHSからSH811まで採用されていたPLAYシャトルはなくなっている。
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SH821iのカラー液晶ディスプレイはわずかに黄色みが残るものの、J-フォンのJ-SH02よりは明るくなっている。J-SH03には一歩及ばないか。
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液晶ディスプレイはシャープのお家芸ということもあり、カラー液晶を採用している。カラー液晶を採用したiモード端末は、今のところ、F502iとD502iの2機種(F502itもカウントすれば3機種)しかないが、シャープとしてはJ-フォン向けのJ-SH02、J-SH03に続く、3台目のカラー液晶端末ということになる。J-SH02はやや黄色み掛かった印象があったが、SH821iはこれがかなり軽減され、全体的な明るさも向上している。ただ、J-SH03と並べてみると、白さで一歩譲る感があり、SH821iはJ-SH03よりも前に開発されたのではないかという印象も得られた。とは言うものの、現時点のカラー液晶端末としては十分な視認性を確保しており、カラーのコンテンツもごく自然に楽しむことができる。
■ 使い勝手と機能は大きく向上
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モードボタンを押すと、現在の待受モードの電波状態が表示される。最も右の「OS1」は事業所コードレスモードに登録すると表示される。
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ドッチーモは携帯電話とPHSのデュアルモード機だが、従来の811シリーズの世代では待受方法と事業所コードレスモード(OSモード)の対応などに違いが見られた。たとえば、SH811は携帯電話とPHSを同時待受が可能な上、OSモードも利用できたが、P811は携帯電話とPHSのいずれかを優先する待受しか設定できず、N811はOSモードに対応していなかった。
iモードのパケット通信をサポートし、トリプルモード機となったSH821iだが、基本的にはSH811の仕様を受け継いでおり、携帯電話とPHSの同時待受が可能で、OSモードにも対応している。ただし、PHS部分は先般発売された「パルディオ623N」に搭載されているクイックリンク機能(高速ハンドオーバー)には対応していない。
従来のSH811はNECのワイヤレス対応ISDN TA「AtermIW50シリーズ」の子機として収容でき、ISDN回線からの64kbpsのワイヤレス通信ができたが、SH821iもまったく同様の手順で子機として登録でき、同じようにワイヤレス通信を利用することが可能だ。ちなみに、モードボタンを押すと、現在の待受状態とともにそれぞれの電波状態が表示される。
SH811では同時待受が可能だったが、メモリダイヤルとの連携はあまり考慮されていなかった。たとえば、同一エリア内のNTTドコモの携帯電話に発信する場合、最も安いのは同じNTTドコモの携帯電話だが、PHSに発信する場合に最も安いのはPHSからになる。こうした事実を考慮しないで、発信するときにPHSで発信してしまうと、結果的に通話料が高くついてしまうケースが考えられる。
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マルチガイドボタンの右長押しでメール機能を集めたメニューが表示される。送信時にiモードメールか、パルディオEメールかを選択可能。
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そこで、SH821iではメモリダイヤルに登録した電話番号に、携帯電話とPHSのどちらのモードを優先して発信するのかを設定できる『電話帳発信モード指定』という機能を搭載し、相手先別にあらかじめ設定されたモードで発信できるようにしている。もちろん、発信直前の電話番号が表示された状態で、一時的に切り替えることも可能だ。さすがに、料金計算までできるわけではないが、これはなかなか賢い機能と言えそうだ。
また、着信音は3和音のハーモニーメロディを採用しているが、自作メロディでは1曲あたり300音×3旋律まで入力でき、最大10曲まで登録することが可能だ。標準搭載の着信メロディもYMOの「BEHIND THE MASK」や海外テレビドラマ「X-FILES」の主題歌など、今までとは一味違ったセンスで選ばれている。
SH811からSH821iで、最も大きく変わったのが機能設定などを行なうためのメニューの操作体系だ。SH811はNTTドコモのシャープ製PHSなどのメニューを受け継いでいたが、今回はJ-SH02をはじめとする他の携帯電話と同様のメニューを採用している。しかも表示フォントが小さくなったため、設定項目が見通しやすく、クリアボタンで前のメニューに戻るといった一般的な操作も可能になっている。SH811のメニューも悪くはないのだが、やはり機能が豊富になった現状を考えれば、こちらの方がわかりやすいだろう。
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データ通信カードのモードは自動判別の他、固定化することもできる。ポケットボストペっとは「携帯固定」で動作する。
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次に、iモードが搭載されたことで強化されたメール機能だが、メール画面をiモードメールとパルディオEメールをまとめる形で実現している。マルチガイドボタンの右を長押しするとメール画面が表示され、そこから必要なメニューを呼び出すことができる。メールの作成も本文を入力し、送信する段階でiモードメールか、パルディオEメールかを選択できるようにしている。メールもドッチーモなユーザーには便利な機能だろう。
データ通信は携帯電話の9.6kbps(回線交換)、PHSのPIAFS2.0/64kbpsに対応している。SH811ではモード切替をしなければ、通信ができないメール端末やデータ通信カードがあったが、今回はデータ通信カードの設定のみを変更できるように仕様が変更されている。たとえば、通話は携帯/PHSの順で利用するが、データ通信はPHSモードで利用するといった現実的な設定が可能というわけだ。ちなみに、NTTドコモの最も新しいメール端末であるポケットポストペットでは、データカード設定を「携帯固定」に設定すると、問題なく利用することができた。
■ 機能はスーパーだが、フォローも欲しい
ドッチーモをさらに進化させ、iモードとカラー液晶まで搭載したスーパードッチーモ「SH821i」だが、機能的にはとてもここですべてを紹介しきれないほど豊富だ。筆者もまだ1週間弱しか触っていないが、正直に言ってしまうと、なかなか全貌を把握できないでいる。かなり使いごたえのある端末と言えそうだ。
ただ、細かい点に不満も残されている。たとえば、SH811ではデータ通信カードのDC-6Sと組み合わせ、NTTドコモがPHS向けに提供している「パルディオ電話帳エディタ」でメモリダイヤルの編集ができた。しかし、SH821iではマニュアルを参照する限り、パルディオ電話帳エディタでのメモリダイヤル編集ができないようだ。PHSのトランシーバーモードでの電話帳データのやり取りはできるので、おそらくパルディオ電話帳エディタのバージョンアップで済むのだろうが、SO502iを除くすべてのiモード端末がデータリンクソフトを提供していることを考慮すれば、SH821iでも同様のことができるようにすべきだ。
待受画像についてはiアニメなどのダウンロード画像を壁紙に設定できるが、F502iなどで実現されているメモリダイヤルとの連携機能も欲しい。せっかくカラー液晶なのだから、発信者番号を元に指定した画像が表示できるようになってもらいたい。筆者個人の勝手な予測だが、このメモリダイヤルと画像の連携機能はカラー液晶の必須機能であり、今後のトレンドになると見ている。
そして、最も疑問に感じるのは、販売方法だ。NTTドコモ中央のエリアでは、一定期間以上の利用があると、機種変更の価格が安くなるが、基本的に旧端末の回収が条件となっている。そのため、SH811ユーザーが最も安く機種変更をするには、手持ちの端末を手放さなければならなくなる。前述のように、SH811はOSモードを搭載しており、事業所コードレスシステムやワイヤレス対応TAの子機としても活用できるのだが、不用意に機種変更をしてしまうと、これを失うことになってしまうのだ。
また、今回のSH821i購入には直接、関係ないが、ドッチーモユーザーがSH821i以外のiモード端末に機種変更するとき、PHSの番号をドッチーモに残すように依頼すると、旧端末の回収がなくなるため、結果的に機種変更が割高になるという問題が指摘されていた。携帯電話とPHSをいっしょにする機種を作り、それを支える料金プランなどを提供しておきながら、ドッチーモで1つになった携帯電話とPHSの回線をバラす方法論を用意していないわけだ。おそらく、NTTドコモと代理店の方針なのだろうが、ドッチーモについてはPHSと同じように、旧端末を回収しないことを条件に販売できないだろうか。端末の機能、料金プランなどでドッチーモを支援してきたのだから、ぜひとも販売方法についても見直していただきたい。
さて、最後にSH821iの『買い』診断を考えてみよう。まず、既存のドッチーモを利用するユーザーなら、これはもう文句なしに買い換えをおすすめしたい。iモードが使える上、液晶ディスプレイがカラーになるのだから、使う楽しさもグンと増すはずだ。NTTドコモの携帯電話とPHSを1台ずつ所有するユーザーも検討する価値は十分あるだろう。
逆に、通常の携帯電話を利用するユーザーは少し判断が分かれる。PHSの64kbpsデータ通信に魅力を感じるなら買いだが、iモード中心で考えるなら、他のカラーiモード端末と見比べ、料金プランなども十分に考慮してから選ぶことをおすすめしたい。一方、NTTドコモのPHSユーザーは基本料金が増えてしまうが、iモードが使え、通話できるエリアも広がるのだから、魅力は十分あるだろう。ただ、NTTドコモがPHSにもiモードを搭載するという報道も一部にあり、もう少し動向を見極めてから判断するのも手だ。
■URL
・SH821iニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/00/whatnew0524d.html
・SH821i商品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/products/doccimo/lineup/sh821i/
・SH821i商品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/sc/eihon/sh821i/text/
(法林岳之)
2000/06/06 00:00
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