■ 完成度を高めたDVDサイバーナビ
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AVIC-D9900V
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ボクらの生活にケータイが欠かせないように、クルマを運転する人間にとって、今やカーナビは必須アイテムとも言える存在。そんなカーナビの中でも最も人気の高いのがパイオニアのカロッツェリア「DVDサイバーナビ」シリーズだ。
ゴールデンウィーク気分がまだ抜けない5月10日。パイオニアからDVDサイバーナビの2000年モデルが発表された。1年おきに大幅なモデルチェンジを行なうパイオニアのカーナビのラインアップだが、今年はその順から考えると、マイナーチェンジの年に当たる。とは言え、ケータイとのマッチングも考慮され、従来製品よりもグッと使いやすくなっているという。早速、製品を試用するチャンスが得られたので、今回はケータイに関連する機能を中心にレポートをお送りしよう。
■ ボクがカーナビに選んだ理由
「クルマを運転する人間にとって、今やカーナビは必須アイテム」なんて書いておきながら、実は筆者は昨年はじめまで、「オレのカーナビは頭の中にあるからいらねえぜ」なんてうそぶく「カーナビ否定派」でもあった(笑)。
そんなある日、ひょんなことからクルマを買い換えなければならなくなり、カーナビの購入を真剣に検討し始めた。カーナビ導入を検討した理由はいくつかある。まず、都内を移動するときの駐車場探し。週に何度も訪ねるような出版社の周りなら、どこに駐車場があるのかくらいは覚えている。しかし、これがメーカーなどの企業を訪ねるとなると、ちょっと探すのが面倒。カーナビにすれば、少しはこれが改善されるのではないかと考えた。
第2の理由は、DVD搭載のナビが登場し始めたこと。従来のCD-ROM搭載ナビに対し、DVD搭載ナビは圧倒的に情報量が豊富であり、これからの主流になることは間違いない。どうせ買うなら、DVD搭載ナビが本格的に出てきてからのしようと、前々から考えていた。
そして、第3の理由が携帯電話だ。携帯電話は重要な連絡ツールだが、クルマでの移動が多い筆者にとって、クルマでの携帯電話の環境というのは非常に気になるところ。ハンズフリーで通話ができ、ついでにインターネット経由で情報なんかも引きだせると、楽しくなるかもしれないと考えていた。もちろん、運転中の通話は望ましくないのだが、ドライブモードにしておいて、留守番電話にメッセージが残されていたり、あとで電話が掛かってくるケースが少ないという実状を考えると、やはり、最低限の応答はできるようにしておきたい。
こんな理由を並べ立て、自分を納得させようとしていた頃、知り合いの編集者に「やっぱ、カーナビは面白いっすよ」「いい店紹介しますぜ」とそそのかされ、その筋ではちょっと知られたショップで、パイオニアのDVDサイバーナビ「AVIC-D9000」他一式を購入することになった。
以来、約10カ月近く、毎日のようにカーナビを酷使し、ちょっとしたドライブから取材まで、さまざまなシーンでカーナビが活躍している。つい最近も取材で、ほとんど土地勘のない地域に出かけたが、知らない内に目的地についてしまい、帰り道も渋滞を避け、スムーズに移動することができた。ただ、当初の目的のひとつでもあったハンズフリー通話については、筆者の通話用主力ケータイがcdmaOneになったため、結局、カーナビには接続せず、イヤホンマイクで使うことが多くなっている(でも、最近、cdmaOne調子悪すぎ)。
ちなみに、まったくの余談なんだけど、「ケータイ Watch」連載陣の内、スタパ齋藤氏、広野忠敏氏、そして筆者の3人がカロッツェリアのDVDナビを愛用中だ。もっと言ってしまえば、同じインプレスのDOS/VパワーレポートのT副編集長も愛車インプレッサに搭載している。別に、みんなで示し合わせたわけでもないんだけど、筆者の回りはなぜか「カロナビ」ユーザーが多いのだ(笑)。
■ 今度のDVDサイバーナビはどこが違う?
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地下駐車場マップ
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さて、今回発表された2000年モデルは、1999年モデルとどのあたりが違うのだろうか。まず、位置測位精度の向上。パイオニアのDVDナビは元々、ジャイロセンサーやGセンサーを搭載しているため、運転席からの見た目のマップを表示できるドライバーズビューを実現するなど、高い精度を誇っていたが、2000年モデルではさらにその精度を高め、『地下駐車場マップ』を実現している。今のところ、東京、名古屋、大阪の16カ所に限られているが、GPS信号の届かないところでも確実にマップが表示できるというのは、正直に言って驚かされる。
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ドライバーズビュー
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次に挙げられるのがマップのクオリティ向上だ。パイオニアのDVDナビではドライバーズビューで、コンビニやガソリンスタンド、グルメスポットなどを看板で表示していたが、2000年モデルではこれらの一部が建物として表示されるようになっている。ビジュアルシティマップも25mスケールや10mスケールで建物に窓が表示されるようになり、よりリアルな街並みを実現している。ちなみに、従来モデルのビジュアルシティマップでは主要都市圏を外れると、ややマップが寂しくなる印象があったが、今回は全国約750都市にまで拡大し、ビルなどの名称も表示できるようになっている。
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ビジュアルシティマップ
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運転に関わる部分では、走行中の画面に実際の道路に掛かっている方向案内板と同様の情報を表示できるようにしたり、前方の交差点のレーン情報を自動的に表示することも可能だ。レーン情報はルート設定時に進むべきレーンが色塗りされ、右左折時には音声による案内も行なわれる。土地勘のないエリアに出かけたときなどには、有効な機能と言えそうだ。
また、意外に面白いのがテーマ別の検索メニューだ。たとえば、心霊スポットに出かけたい、夜景のきれいなところに出かけたいといったテーマを選ぶことで、そのテーマにあった場所を探し出してくれる。ちなみに、心霊スポットでは、なぜそこが心霊スポットと言われるのかといった詳細な説明も表示される。夏のドライブにはおすすめかも!?
このほかにも、ルート探索の高速化、電話番号による目的地検索(ハローページ掲載の個人宅にも対応)、営業時間を考慮した周辺検索など、さまざまな面でブラッシュアップされている。
■ 気になるケータイ対応機能
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デモ車内にて
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では、携帯電話に関連する機能はどうなっているのだろうか。パイオニアのDVDナビは従来モデルからPDC方式を採用した携帯電話と接続するインターフェイスを備え、ハンズフリー通話や天気予報の取得、ホームページの閲覧などができた。ただ、ホームページの閲覧は、通信速度が9600bpsの上、接続方式も回線交換(モデムと同じ)になるため、今ひとつ実用性に欠ける面もあった。もっとも、この部分は現在の携帯電話が力不足なのであり、カーナビ本体の責任というわけではない。
今回の新製品では、cdmaOneへの対応が特長として挙げられる。筆者も従来モデルから望んでいたことだが、ようやくcdmaOne端末でのハンズフリー通話などが実現することになった。cdmaOne端末を利用するにはオプションで販売される「CD-H1」(標準価格:1万8000円)というcdmaOne用接続アダプターを追加する。cdmaOne接続アダプターは従来モデルにも接続が可能だ。
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ネット接続中
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また、cdmaOneのパケット通信サービス「PacketOne」にも対応しているため、インターネット接続などもパケット通信で使うことができる。パケット通信なら、接続までの時間も短く、接続時間も気にすることなく使えるので、ホームページ閲覧や後述するNEWウェザーライブなども有効に活用できる。ちなみに、筆者は従来モデルで天気予報の取得を頻繁に利用していたが、通信環境が刻々と変化する都心などでは、データをダウンロードし終わる前に回線が切れてしまうこともあった。PacketOneを利用すれば、こうしたリスクも最小限に抑えることができそうだ。
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メモリダイヤルの一括転送
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次に注目したいのがメモリダイヤルの一括転送だ。従来モデルではハンズフリー機能を搭載していたため、カーナビ上に電話番号が登録でき、登録した電話番号に音声コマンドでダイヤルしたり、着信時も発信者番号を参照して、誰から電話が掛かってきたのかがわかるようになっていた。しかし、登録作業がカーナビのリモコンでしかできなかったため、今ひとつ使いにくい面があった。2000年モデルでは携帯電話のメモリダイヤルを一括転送できるようになったたため、登録の手間がグンと省け、この機能が活用しやすくなっている。
今回、実際に転送を試してみたのだが、予想以上に高速に転送でき、かなり使えるという印象が得られた。ただし、携帯電話のメモリダイヤルのうち、メールアドレスなどの項目には対応していないため、実際の利用では携帯電話側のメモリダイヤルをカーナビに転送し、メモリダイヤルが更新されたら、カーナビ上のデータを全消去して再転送という使い方が確実だろう。また、デジタルカメラなどで登録した画像データをメモリダイヤルに割り当てておけば、掛かってきた相手に合わせた画像(顔写真など)を表示することも可能だ。
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NEWウェザーライブ
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3つ目は「NEWウェザーライブ」だ。従来モデルではインターネット経由でウェザーラインから天気予報を取得できたが、2000年モデルではアメダス情報による降水量、気温、風向、風速などをダウンロードできるようになり、さらに詳細な気象情報を表示できるようにしている。特に、ロングドライブなどをするときには便利な機能と言えそうだ。
■実楽主義の目指すもの
パイオニアのカーナビには「実楽主義」という開発コンセプトがある。実楽主義とは「抜群の実用性とエンタイテインメントの両立」という意味だそうだ。2000年モデルは1999年モデルに比べ、この両面において着実な進歩を遂げていると言えそうだ。たとえば、ビジュアルシティマップのクオリティ向上や携帯電話のメモリダイヤル一括転送などがその例だ。派手さこそないものの、昨年のモデルで不満だった点や機能不足が見られた点を着実にカバーし、より使いやすい製品へと完成度を高めている。
また、同社のカーナビはバージョンアップDVD-ROMを利用することにより、最新機種に近い環境が得られるのも魅力だ。ちなみに、1999年モデルにバージョンアップDVD-ROM「CNDV-2200」を組み合わせた場合、フォントなどに違いが出る程度で、2000年モデルとほとんど変わらない環境が得られる。もちろん、筆者もcdmaOne用接続アダプターといっしょにバージョンアップDVD-ROMを購入する予定だ。
ところで、カーナビの世界では今回紹介した「DVDサイバーナビ」だけでなく、パナソニックのiモード対応カーナビなど、携帯電話との親和性を高めた製品が次々と登場している。たしかに、iモードのコンテンツをカーナビ上で見られることはひとつの魅力かもしれないが、実用性という部分を考えた場合、今以上に複雑な操作をカーナビのリモコン上でしたくないという見方もある。やはり、現時点で最も早急に対応が望まれるのは、ハンズフリーやメモリダイヤルの活用であり、DVDサイバーナビはその点をしっかりサポートしてきた点が評価できる。
将来的には、カーナビ上のデータをデータ通信で更新したり、iモードのようなコンテンツサービスを閲覧できるようになるのだろうが、まだまだ解決しなければならない点は多い。データ通信で大量のデータを送受信するには高速化をしなければならないが、高速化すれば、通信コストが高くなり、ユーザーの負担は増えてしまう。コンテンツサービスも操作性を考えれば、リモコンよりは音声コマンドが有力であり、当然、コンテンツの内容も音声で読み上げてもらいたい。もちろん、コンテンツサービスだけでなく、メールも音声での入力や読み上げが必須となってくるだろう。
しかし、これらのニーズをすべてクリアした製品が登場するには、まだ数年を要するだろうというのが筆者の見方だ。そういう意味で考えれば、今年の「DVDサイバーナビ」は実楽主義をベースにしながら、ケータイとのいい関係をバランス良く実現していると言えるのではないだろうか。
■URL
・カロッツェリア「DVDサイバーナビ」ニュースリリース(パイオニア)
http://www.pioneer.co.jp/press/release178-j.html
・カロッツェリア・ホームページ(パイオニア)
http://www.pioneer.co.jp/carrozzeria/
(法林岳之)
2000/05/23 00:00
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