■ 実売価格5000円を切る低価格メール端末

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IDO「メルパレット」。オープン価格、サイズ:154(W)×97(D)×21(H)mm、224g(単4乾電池2本含む)。
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全国サービス展開以来、cdmaOneが注目されている日本移動通信(IDO)からPDCデジタル携帯電話に対応したメール端末「メルパレット」が登場した。多くのメール端末がcdmaOne向けの「ウェブパレット」「フォトパレット」のように、高機能・高付加価値に進むなか、シンプルな機能で低価格を実現しているのが特徴だ。製品を入手することができたので、早速レポートをお送りしよう。
■ 着せ替えカバーが楽しいシンプルデザイン
ここ半年ほどのメール端末を見てみると、「Webブラウザの搭載」「高解像度の液晶ディスプレイ採用」「C-MOSカメラ内蔵」「無線機内蔵一体型」「着信メロディ編集機能」「ポストペット搭載」と、機能面の充実が目を引く。本来、メールをするためだけに作られたメール端末だったが、今や手軽にいろいろな機能を楽しめる携帯情報端末として進化している。特に、C-MOSカメラとポストペットのようなキラーアプリケーションの搭載は、今後の注目株と言える。
今回紹介するIDOのメルパレットには、こうした派手な特徴がなく、非常にシンプルに機能をまとめ上げている。ちなみに、メルパレットはcdmaOneでIDOと連携するDDI-セルラーのエリアでは販売されていない。開発はシークスが担当している。

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メルパレットのカバーは着脱式。ブルー、ピンク、オレンジの3色が添付されている。
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まず、ボディはキーボードと液晶ディスプレイのある本体に、スケルトンのカバーをかぶせるようなデザインになっている。液晶ディスプレイがキーボード上部に配されるデザインは、ちょうど一昔前のワープロ専用機のような印象だ(もっと昔か?)。カバー部分は写真のブルーのほか、オレンジとピンクのものが標準で添付されており、自分の好みに応じて着せ替えることが可能だ。

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携帯電話との接続コネクターは本体左下のコネクターポケットに格納されている。
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ボディサイズは、メール端末としてはやや大きめの部類に入る。特に、ボディの厚みは他社製品を閉じた状態とほぼ同じと言えそうだ。液晶ディスプレイをキーボード側に配していることも影響しているようだ。

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キーボードは標準的なQWERTY配列を採用。数字や記号キーもほぼ所定の位置にあり、使いやすい。キートップが柔らかいゴム製のためか、キータッチは悪い。
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液晶ディスプレイは320×80ドットのモノクロ液晶を採用し、全角26文字×6行の表示が可能だ。ただし、メールの画面ではファンクションキーの内容を表示するシステム行とステータス表示に各1行ずつ使われるため、実質的には26文字×4行までの表示となる。一見、かなり画面が狭いのではないかという印象も受けるが、実際に使ってみると、それほど不満はない。もちろん、より多くの文字を表示できるに越したことはないが、メルパレットの4行表示は何とか使えるレベルを保っていると言えそうだ。
携帯電話との接続ケーブルは、本体左側面にあるコネクタポケットに格納されている。メール端末の接続ケーブルの格納方法としては、コミュニケーションパルのように底面に格納するタイプが多いが、メルパレットのコネクターポケットという方法もなかなかスマートで使いやすい。ただ、前述のボディの厚みはこのコネクターポケットも影響しているように見受けられる。
キーボードは標準的なQWERTY配列を採用し、数字キーや記号キーもほぼ所定の位置に配されている。右上にある[メール/中断]と書かれたボタンは、いわゆるワンタッチメールキーで、設定されていれば、このキーを押すだけでメールを送受信することができる。気になる点があるとすれば、[後退]キーと[削除]キーの位置が不自然なこと、[戻る]キーと[ON/OFF]キーが逆の方が望ましいことくらいで、キー配列は及第点に達していると言えそうだ。ただ、今回試用した製品はキータッチが非常に悪く、文字が思い通りに入力されなかったり、余分に押してしまうこともあった。もう少し、クオリティの高いキーが欲しいところだ。
■ IDOのDA・RE・DE・MOインターネットに対応
通信機能はIDOのPDC方式デジタル携帯電話に対応し、最大9.6kbpsのデータ通信が可能だ。cdmaOneのユーザーは利用できない。
メールは一般的なPOP/SMTP方式によるインターネットメールに対応するほか、IDOのPDCデジタル携帯電話で提供されている「プチメール」やcdmaOneの「Cメール」にもメールを送信することが可能だ。ただし、複数のプロバイダーに接続する設定を登録しておくことはできない。基本的に1台あたり1プロバイダーという使い方になる。

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起動時にメニュー画面。キャラクターはラッコを起用。カーソルを移動すると、ラッコのイラストも変化する。
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メルパレット同士でのメール送受信に限られるが、メロディやアニメーションイラストを添付したメールを送受信することが可能だ。いずれもパソコンに送信した場合は正しく表示されないので注意が必要だ。

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メール作成画面。全角26文字×4行の表示が可能。決して広くはないが、視認性は良好で、十分実用になるレベルだ。
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メールの作成は宛先とタイトルを入力後、本文を入力する。「To」「CC」「BCC」にも対応し、顔文字なども簡単に入力でき、あらかじめ設定しておいた署名も自動的に挿入することができる。作成したメールを下書きとして保存したり、後でまとめて送信したり、すぐに送信することも可能だ。送信したメールを参照し、新たなメールを作成することもできる。
本体には送受信合わせて、最大600件(1通あたり1KB)のメールを保存することができる。メールボックスは標準の受信メールBOXの他に、ハートマークとスペードマークのメールBOXが用意されており、受信したメールを整理して保存しておくことが可能だ。
また、プロバイダーと未契約のユーザーのために、IDOが提供する「DA・RE・DE・MOインターネット」に登録するためのメニューも用意されている。DA・RE・DE・MOインターネットはIDOのデジタル携帯電話で利用できるサービスで、運営はインターネットプロバイダのインターキューが行なっている。入会金や入会手続き、月額基本料金などをいっさい必要としない完全従量制となっており、通信料はPDCデジタルの場合、1分10~15円と割安に設定されている。メールアカウントも無料で発行されるため、IDOユーザーがメルパレットを購入すれば、その日のうちに自分専用のメールアドレスを取得し、メールの送受信が可能になるわけだ。
このほかにも、メルパレットにはキーボードを鍵盤代わりに演奏できる「弾きメロ」、ワリカン計算ができる「せいさん君」、携帯電話の電話帳メモリをメルパレットに保存しておくことができる「電話帳転送」、ムーンフェイズ機能もついた「カレンダー」などが搭載されている。ちなみに、ワリカン計算ができる電卓と言えば、NTTドコモのポケットポストペットが記憶に新しいが、メルパレットの「せいさん君」はもう一歩進んでおり、多く払う人と少なく払う人、普通に払う人の3種類でワリカンをしたり、10円や1円単位といった細かい支払いをなくすための「ピッタリ機能」も搭載されている。電話帳転送については、IDOの「510G」以降と「508G」が対象となっており、バックアップした電話帳メモリの内容を携帯電話に書き込むことができる。ただし、基本的にメルパレットと携帯電話の間でやり取りができるのは電話番号と名前、ふりがなに限られている。
■ エントリー用としては意外にお買得かも?

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「メルパレット」にIDOの534Gを組み合わせてみた。もう少しかわいいデザインのケータイと組み合わせたい。初心者にとって、5000円以下の実売価格は魅力的だろう。
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IDOのエリア内のみで販売されるメルパレットは、販売価格がオープン価格となっている。原稿執筆時点では家電量販店などに並んでいないため、実売価格は不明だが、インターネット上のオンラインショッピングモール「楽天市場」内の「イドウ DE 楽天」では他のメール端末と並んで、メルパレットが販売されている。価格は3800円と強烈に安い。他の製品との比較から考えれば、おそらく家電量販店などでも5000円以下の価格が設定されるのはほぼ間違いないと見ていいだろう。5000円以下という実売価格は、現在、各社のメール端末の中でも最安値の部類に入る。
最近のIDOの販売戦略やテレビCMを見ていると、cdmaOneはビジネスマンを中心とした層、PDCデジタルは若年層という住み分けを狙っているように感じられる。このことを考慮すると、今回発売されたメルパレットは「インターネットメールを使っていない」「パソコンを持っていない」というエントリー層に対して販売する製品と位置付けられていることになる。NTTドコモには「ポケットボード ピュア」というエントリー向けのメール端末があるが、これに対抗する製品というわけだ。機能的にもメールに絞り込み、シンプルながらも使いやすい環境を目指している点はポケットボード ピュアと共通だ。
さて、最後にメルパレットの「買い」診断をしてみよう。メルパレットで強力なのは、5000円を切ると予想される価格設定だ。販売を開始して間もない商品に、この価格がついてしまうと、「安かろう、悪かろう」と想像してしまいがちだが、実際に使ってみると使い勝手もそれほど悪くない。最大の難点と予想された液晶ディスプレイも短いメールのやり取りであれば、十分実用になる(欲を言えば、もう2~3行欲しいが)。インターネットとメールのやり取りをするための最低限の機能はきっちり押さえられており、「せいさん君」のような遊び心のある機能、ラッコを使ったメニュー画面など、若年層の女性にウケそうな機能も盛り込まれている。
こうした低価格のメール端末は、機能の絞り込みの失敗から根本的な部分を見失ってしまいがちだが、メルパレットはバランス良く機能を絞り込んでおり、意外に素性のいいメール端末だと感じられた。ビジネスで使うには無理があるが、プライベートの遊びのメールのやり取りなら、機能的にも価格的にも及第点がつけられる。
これらのことから考えれば、メルパレットはエントリー層向けのお手軽メール端末としては「買い」と言えそうだ。ただし、ボディサイズやキータッチなどにも若干の不満が残されており、これらの点は今後の改善を期待したい。特に、キータッチは早急に何とかしてもらいたいところだ。また、同様に、メルパレットでメールの楽しさを知った層が次に楽しむための携帯情報端末のラインアップも検討して欲しいところだ。
■URL
・「メルパレット」ニュースリリース(IDO)
http://www.ido.co.jp/release/news/20000403.html
・「メルパレット」製品情報(IDO)
http://www1.ido.co.jp/digital/mobile/palette/index.html#3
・「メルパレット」製品情報(シークス)
http://w3f.siix.co.jp/Japanese/WhatsNewJ/MelpaletteJ.htm
・「DA・RE・DE・MOインターネット」(IDO)
http://www1.ido.co.jp/digital/mobile/daredemo.html
(法林岳之)
2000/05/02 00:00
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