■ FOMA 901iシリーズ発表
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FOMA 901iシリーズ。左からD901i、F901iC、N901iC、P901i、SH901iC
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11月17日、いよいよFOMA 901iシリーズが発表された。従来の900iシリーズは昨年12月に発表され、2月から順次、販売が開始されているが、わずか1年足らずで次期モデルが登場ということになった。発表内容の詳細については発表会レポートの記事を読んでいただくとして、ここでは発表内容を見た筆者の感想などを中心に解説しよう。
【901iシリーズの特徴とファーストインプレッション】
- メールの添付サイズが最大500KBに
- デコメールはテンプレート標準装備
- 3Dグラフィック&3Dサウンド
- 5機種中3機種がおサイフケータイ
- Gガイド番組表と音楽再生機能
- ファーストインプレッション
■ 実用性を重視した改善
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「少々、小粒ではないか」という記者からの質問に対し、「技術的なステップアップとユーザーが魅力的と感じる要素は違う」とコメントする夏野氏
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まず、今回のFOMA 901iシリーズ全体についてだが、20xx/21xxシリーズから900iシリーズへ移行したときに比べ、一見、あまり大きなインパクトはないように見える。現に、発表会の席上でも記者から「少々、小粒ではないか」という質問が飛んだくらいだ。これに対し、夏野氏は「技術的なステップアップとユーザーが魅力的と感じる要素は違う」とコメントし、901iシリーズの優位性をアピールしていた。
確かに、901iシリーズのスペックを見てみると、デバイス(電子部品)などのハードウェア面は全機種が2メガピクセルカメラ(一部モデルは有効200万画素)を搭載したくらいで、あまり大きな向上は見られない。しかし、実際に利用するシーンを考えてみると、役立ちそうな改善が図られている。たとえば、メールへの添付ファイルのサイズやiアプリ、着信メロディなどの容量制限の緩和、デコメールのテンプレート標準提供、Gガイド番組表リモコンなどだ。個々の項目について、解説してみよう。
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メールでは添付できるファイルサイズを最大500KBまで拡大し、2メガピクセルカメラで撮影した静止画も添付できるようになった
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●メールで大容量静止画を送信しやすくなったが……
メールでは添付できるファイルサイズを最大500KBまで拡大し、2メガピクセルカメラで撮影した静止画も添付できるようにしている。従来の環境ではメールに添付できるサイズに合わせるため、端末上でファイルサイズや解像度(表示サイズ)を編集する必要があったが、制限が緩和されたことで、こうした面倒な編集をせずに送信することができるわけだ。iモーションも動画ファイルの時間が長くなるため、一発芸ではないムービーメッセージを送ることも可能になる。いずれも実用的なメリットは大きいと見ていいだろう。
その半面、ファイルサイズが大きくなったことで、送信に掛かる時間が長くなるというデメリットもある。発表会でスタッフが試した際も送信に失敗したことがあったが、最初から送信し直さなければならなかったという。実際に、大容量の添付ファイルを送信するときは、電波状態をよく確認するなどの工夫が必要だろう。
また、受信については、iモーションメールも含め、少し仕様が変更されている。10001Byte~500KBの静止画が送信されたときはiショットサーバに保存され、受信するユーザーにはURLが通知されるしくみとなっている。ただし、このとき、受信側がFOMAのときは最大20KB以下、ムーバのときは最大10KB以下に変換されてしまうため、最大500KBの静止画のクオリティを十分に活かすことはできない。つまり、最大500KBの静止画がメールに添付できる品質的なメリットは、基本的にパソコンに対して送信するときに限られるわけだ。
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最大500KBの画像を添付できるが、受信は静止画の場合、FOMAで最大20KB、ムーバで最大10KBとなる
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iモーションについてもiモーションメールサーバに保存され、受信するユーザーにはURLが通知される。URLを選んでサイトに接続したとき、FOMA 901iシリーズ以降のiモーションメール対応端末では送信されたサイズでiモーション、FOMA 900iシリーズやその他のiモーション対応端末の場合は、最大300KBに変換されたiモーションがダウンロードできるようになっている。ムーバを含むiモーションメール非対応端末のときは、最大100KBの連続静止画が表示される。受信側がパソコンの場合は901iシリーズと同じ動作になるようだ。つまり、最大500KBのiモーションを十分に活かす環境は、901iシリーズ、パソコンに送信する場合ということになる。
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2004年12月からはムーバでのデコメールの受信が可能になる
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●デコメールはテンプレート標準装備
デコメールでは、N900iSでも採用されたテンプレートが標準で提供される。デコメールはパソコンのHTMLメールとほぼ同じものだが、パソコンですら作成が面倒と言われていることを考えれば、ケータイでの利用にテンプレートは必須条件だったとも言える。これに加え、2004年12月からはムーバでのデコメールの受信が可能になり、iショットなどと同じように、URL通知メールが送信される。デコメールの受信環境が拡がったことで、クリスマスや年賀メールなどのシチュエーションでは利用が増えそうだが、他事業者の端末に送信したときの環境があまり考慮されていないのはやや気になる点だ。
ただ、これとは別に、デコメールが今後、他の用途に利用される可能性も見えてきた。たとえば、パソコンでのHTMLメールはオンラインショップなどからのメールに利用されることが多いが、ムーバも受信に対応したことで、ケータイサイトからの告知メールなどにも利用されるかもしれない。もっともムーバではWebメールの形式になるので、元々、告知ページのみを通知した方が簡単という見方もある。
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901iシリーズ発表時、冒頭にアピールされたのが3Dグラフィックと3Dサウンド
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●3Dグラフィック&3Dサウンド
NTTドコモが今回の901iシリーズ発表時、冒頭にアピールしたのが3Dグラフィックと3Dサウンドの環境が提供されたことだ。特に、サウンドについては全機種がステレオツインスピーカーを搭載し、今までとは違ったサウンド環境を演出している。ただ、iアプリについてはすでに900iシリーズで仕様が拡張されたためか、大きな変更はない。3Dグラフィックに対応したことで表現力豊かなゲームなどが楽しめるとされているが、ゲームそのものについてはゲーム性などに左右される面もあるため、今後、どういった対応アプリが登場するのかを見極める必要があるだろう。
また、3Dサウンドは基本的にしくみが公開されておらず、ユーザー自身が作成する環境は提供されていない。今回、仕様が拡張されたFlashにも言えることだが、こうしたユーザーの作成できない仕様は、ややiモードらしくないアプローチという声もある。冷静に判断すると、この3Dグラフィック&3Dサウンドの環境は505iシリーズの仕様を継承したに過ぎないという見方もできる。
●5機種中3機種にiモードFeliCaを搭載
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今回発表されたFOMA 901iシリーズでは5機種中3機種がiモード FeliCaに対応している
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今夏からサービスが開始されているiモード FeliCaだが、今回発表されたFOMA 901iシリーズでは5機種中3機種がiモード FeliCa対応となった。P901iにiモード FeliCaが搭載されないことを残念がる声も聞こえている。ただ、FeliCa対応端末に搭載されるモバイルFeliCaのチップは生産量にも限りがあるようで、その関係もあってか、全機種搭載には至らなかったようだ。結果的に、NTTドコモ向け端末のメーカーで最大シェアを分け合うNECとパナソニックがムーバとFOMAでそれぞれ1機種ずつ、iモード FeliCa端末を供給する形になったが、そういったバランス取りの判断があったのかもしれない。
iモード FeliCaについては「今そこにある『おサイフケータイ』」でセキュリティに関する問題を指摘したが、今回のFOMA 901iシリーズのiモード FeliCa端末には「遠隔ロック」機能が標準でサポートされている。ただ、遠隔ロックをするには端末が通話エリア内に存在する必要があり、ムーバよりも通話エリアが狭いFOMAではいざというときに遠隔ロックを使えないことも考えられる。ちなみに、F900iCでサポートされている「ICカードロック」機能は、今回もF901iCのみに搭載され、その他の端末ではサポートされていない。やはり、金銭のやり取りを伴うサービスを提供するのだから、ICカードロック機能は標準でサポートするべきではないだろうか。ちなみに、NTTドコモでは今後、発売される次期FOMA端末で、iモード FeliCaを全機種に標準搭載するとしている。
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iアプリと赤外線通信機能を組み合わせた機能として、「Gガイド番組表リモコン」が全機種にプリインストールされる
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●実用的なGガイド番組表と音楽再生機能
FOMA 901iシリーズではiアプリと赤外線通信機能を組み合わせた機能として、「Gガイド番組表リモコン」を全機種にプリインストールして出荷する。iモード情報料も無料で提供するという。Gガイド番組表リモコンはアプリ上に番組表(EPG)を表示し、見たい番組を選んで予約リストに登録。帰宅後に赤外線通信でビデオやHDD/DVDレコーダー、テレビなどに転送するというしくみだ。
HDD/DVDレコーダーなどが普及し、地上デジタル放送など、多チャンネル時代を迎える現状を考えると、かなり実用的な機能と言えるだろう。一部の機種は出荷後にバージョンアップの必要があるようだが、年末年始の特番の予約録画などにも活躍しそうだ。不満点があるとすれば、パソコンやテレビの画面に比べ、ケータイの画面は大きくないため、今ひとつ視認性が良くないことだ。
一方の音楽再生機能は、パソコンなどで音楽CDから生成した音楽データをメモリカードに保存し、端末上で再生できる機能だ。FOMA 900iシリーズでも一部機種が対応していたが、今回は全機種対応となっている。データ形式はiTunesでも採用されているAAC形式とのことだが、端末によってはファイル名などが制限されるという指摘もある。
■ 年内はおそらく2~3機種を発売
さて、端末の方はどうだろうか。詳細は発表会での記事でも触れられているが、ここでは筆者とスタッフが短時間ながら試用した印象を紹介しよう。
●SH901iC
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SH901iC
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2軸回転式ボディを採用したシャープ製SH901iCは、従来のSH900iからデザインの方向性を変更し、SH506iCに近い印象に仕上げている。デザイン的に注目されるのは受話部に装備された方向キーで、液晶ディスプレイを反転したときにもメニュー操作などをできるようにしている。液晶ディスプレイが反転した状態で通話をすることもできる。ちなみに、ヒンジ部にはムーバ端末のように、アンテナが装備されている。
機能的にはSH900iを発展させたもので、好評を得たドキュメントビューアやAF機能搭載2メガピクセルカメラなどが継承されている。シャープ製端末ではAQUOSなどで録画したASF形式のデータをminiSDカードに保存し、再生できるようにしていたが、SH901iCでは新たにAV機器と接続し、端末で録画できるようにしている。AV出力にも対応し、テレビ電話の画面を映し出せるようにしている。
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F901iC
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●F901iC
FOMA 900iシリーズではもっとも多く製品を開発した富士通のF901iCは、指紋センサーやUSBクレードル付き充電台、ICカードロック付きiモード FeliCaなど、F900iCやF900iTなどで好評を得た機能を継承している。ボディデザインはカジュアル&スポーツをコンセプトにデザインされているそうだが、方向キー周りの処理などはかなり独特な印象で、ユーザーによって好みが分かれそうだ。従来モデルから好評を得ているプライバシーモードは適用範囲を拡げており、着信履歴やスケジュール、静止画及び動画データにまでロックを掛けられるようにしている。F901iCもSH901iCと同じように、ヒンジ部にムーバ端末のようなアンテナが装備されている。
●N901iC
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N901iC
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今回発表された端末の中でも従来のFOMA 900iシリーズにもっとも近いデザインを採用していたのがNEC製端末のN901iCだ。一見すると、N900i/N900iSとあまり変わらないようだが、背面側には手触りが異なる材質を張り付けるなど、細かい部分で違いを出そうとしている。
今までのケータイにはないアプローチとしては、ボディの抗菌対応が挙げられる。効果のほどは今ひとつわからないが、清潔感を大切にしたいユーザーには支持されるかもしれない。ただ、端末を開いたときの印象も含め、あまりにもN900i/N900iSとの差が感じにくいので、これらの機種からの買い換えはかなり微妙だ。
テレビ電話機能の新たな試みとして、デコレーションテレビ電話という機能が搭載されている。テレビ電話の画面に、自分に合わせて動くフレームやスタンプを追加できる機能だが、キャラ電と並ぶテレビ電話のお遊び機能として注目される。
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P901i
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●P901i
パナソニックはP900iでたいへんなブームを巻き起こしたカスタムジャケットのコンセプトを継承し、P901iでもカスタムジャケットを採用している。残念ながら、P900iとはカスタムジャケットの形状が異なるが、今回はカスタムジャケットを装備しない「ノンジャケスタイル」も実現している。おそらく今回もプレミア性のあるモノも含め、いろいろなカスタムジャケットが市場をにぎわせてくれるだろう。
スペック的にはFOMA最軽量となる約104g、薄さ22mmを実現している。実際に持った印象もかなりスリムで軽く、ムーバ端末からも素直に置き換えができそうな印象だ。ただ、端末としての面白みがカスタムジャケットに集中してしまったようで、ノンジャケスタイルはやや平凡なデザインになってしまった感も残る。
●D901i
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D901i
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FOMA 900iシリーズに比べ、もっとも大きくデザインを変更したのがスライド式ボディを採用した三菱電機製端末のD901iだ。スライド式ボディはすでにD253iで採用されているが、D253iのものに比べ、動きもスムーズで使いやすい印象だ。もう1つ大きな変更点となるのがメモリカードだ。D251i以来、搭載し続けてきたメモリースティックDuoをやめ、miniSDカードに変更している。NTTドコモによれば、市場の流れを考慮して、変更したそうだ。
また、OSが富士通製端末と同じSymbian OSに変更されているのも注目点だ。メニュー画面などの基本デザインは従来のDシリーズに似せているので、同シリーズからの移行も意外にスムーズかもしれない。全体的に見て(外見もそうだが)、D900iとはまったく別物の端末と見た方がいいだろう。
以上はいずれも発表会の段階で試用した印象であり、実際に製品が出荷されるときは仕様が変更されていることもある。詳細は、発売後に掲載される新製品SHOW CASEやレビューなどを参照していただきたい。
これら5機種の内、SH901iCは11月26日に発売が予定されており、年内にもう2~3機種が発売される見込みだ。また、FOMA 900iシリーズではP900iVやF900iTなどのバリエーションモデルが登場したが、今回のFOMA 901iシリーズにもバリエーションモデルが追加されるかどうかは、今のところ、明らかになっていない。ただ、過去の例から考えれば、いくつかの追加モデルが登場する可能性は十分に考えられるだろう。
■ FOMA 901iシリーズのアドバンテージを活かせるか
冒頭でも触れたように、FOMA 901iシリーズは20xx/21xxシリーズから900iシリーズへ移行したときに比べ、あまりインパクトがないように見える。社長会見などではW-CDMA方式の800MHz帯への展開も示唆されていたが、残念ながら、これも見送られたようで、正式には何もアナウンスされていない。その影響なのか、一部の901iシリーズの端末には、ムーバ端末のようなアンテナが装備されている。細かい点を言えば、Bluetooth搭載モデルがないこと、全機種がiモード FeliCa対応ではなく、セキュリティ面にもまだ課題を残していること、従来モデルとデザイン的な変化が少ないモデルがあることなど、いくつかの不満は残る。
とは言うものの、FOMA 901iシリーズにはここでも解説してきたように、従来モデルにはないアドバンテージが存在する。従来のFOMA 900iシリーズは当初、ムーバの50xシリーズに搭載されている機能やサービスをほぼカバーし、同等以上の環境を実現することを目指して開発されてきた。しかし、今回の発表会で夏野氏がコメントしたように、実際にはいくつかの積み残しがあり、今回のFOMA 901iシリーズではそれらをフォローし直した格好になっている。その他についても今後のFOMAサービスが展開しやすくなるように、あるいはユーザーが使いやすくなるように、さまざまな改善を進められている。つまり、こうした改善や熟成により、今回の901iシリーズはほぼ完全にムーバ端末を凌駕したことになる。NTTドコモはそのことをもってして、「今回のFOMA 901iシリーズは3Gケータイの完成形」とアピールしているようだ。
正式な商用サービス開始から約3年。エリアや端末価格など、まだまだ課題は残されているが、ムーバ端末をほぼ完全に超えたFOMA 901iシリーズをリリースしたことで、FOMAはいよいよその真価を問われる時期を迎えることになる。
■ URL
ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/04/whatnew1117.html
製品情報(NTTドコモ)
http://901i.nttdocomo.co.jp/
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・ ドコモ、新型FOMA端末「901i」シリーズ発表
(法林岳之)
2004/11/24 14:04
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