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【WIRELESS JAPAN 2006】
ウィルコム八剱社長、ウィルコムとPHSの現状と将来を語る

ウィルコムの代表取締役社長 八剱洋一郎氏
 WIRELESS JAPAN 2006の基調講演で、ウィルコムの代表取締役社長 八剱洋一郎氏は、「日本の移動体通信市場に新時代を拓くPHS ~スマートフォンモデルがもたらすビジネスインパクト~」と題した講演を行なった。

 八剱氏はまず冒頭で、日本のケータイ普及率のグラフを示し、2005年度末に9,648万加入、人口普及率75.6%という数字を引用して「飽和状態にあるといわれるが、そうではない」と語り、続いて海外のケータイ普及率のグラフを示した。イタリアやスウェーデンなどではケータイの普及率が100%を越えていることを紹介し、「人口普及率を見ると、まだ日本は低い。80%が限界ではなく、90%や100%に行く可能性もある」と持論を述べた。

 さらに八剱氏は、日本のケータイの加入者数の純増数のグラフを紹介する。グラフでは、2003年から2004年にかけて、純増数が減っているが、2005年には純増数が増えている。ここで八剱氏は「手前味噌な話ではあるが」と前置きしつつ、2005年の純増数、500万加入者のうち80万加入がウィルコムであったと紹介する。ウィルコム分を差し引くと、純増数は2005年にも減少しつつあることをグラフで示して、ウィルコムがとくに好調であることをアピールした。


日本のケータイ加入者と普及率 世界のケータイ普及率

PHSの加入者数推移 日本のケータイ加入者数純増数

「マイクロセル」の強みを生かした「ウィルコム定額」

PHS開始当初のコンセプト
 八剱氏はPHSのコンセプトについて説明する。PHSは元々、家庭用コードレス電話の子機として使えて、家の外ではケータイとして使えるように、というコンセプトで作られた。そのコンセプト図を示しながら八剱氏は、「開業から11年たってからこの図を見ると、いま、ケータイ業界で話題となっているFMCであることがわかる」と語り、FMCがPHSの元々のコンセプトと似ていることを紹介した。

 続いて八剱氏は、PHSの技術的特徴である、マイクロセルについて紹介する。1つの基地局が数kmをカバーする携帯電話が「マクロセル」と呼ばれるのに対し、1つの基地局が数百mをカバーするPHSは、「マイクロセル」と呼ばれる。

 まず八剱氏は、PHSは家庭用コードレス電話の延長にある技術なので、基地局設置の柔軟さがあると語る。たとえばPHSの場合、基地局となるコードレス電話の親機は、個人が家庭に設置する可能性があるので、基地局には周波数の調整を自動で行なう仕組みを持っているという。それに対して携帯電話の場合、基地局の設置時には厳密に周波数や無線出力を調整する必要がある。八剱氏は、こうした基地局設置の容易さもPHSの特徴だとアピールした。

 一方で八剱氏は、マイクロセルの欠点として、エリアの拡充が困難であることを挙げる。マイクロセルは、マクロセルに比べて1つの基地局でカバーできる範囲が狭いため、より多くの基地局が必要となる。ウィルコムの人口カバー率のグラフを挙げ、2005年度にようやく99%に達したことを紹介した。


マイクロセルとマクロセル 人口カバー率

 しかし、マイクロセルは基地局が多いため、大量のデータ通信や輻輳(通話の量が基地局の容量を超え、電話がつながらなくなること)に強いこともPHSの特徴だとし、「かなり多くのユーザーが狭い範囲に集まっても、空いているアンテナを探し出せる。このためデータ速度が落ちにくく、話し中にもなりにくい」と語る。

 八剱氏は、この特徴を生かしたサービスとして、昨年5月より開始した音声定額についても紹介した。音声定額について八剱氏は、他社のサービスと比較して紹介する。八剱氏は、「マクロセルの携帯電話では、音声通話が多すぎると輻輳してしまう。そのため、プッシュトゥートーク型サービスや決まった相手にしか定額が適用されないといった制限が必要になる」と語り、同じウィルコムの回線同士であれば定額というウィルコム定額の優位点をアピールした。

 さらに八剱氏は、ウィルコム定額の通話実績も紹介する。月平均の通話時間として、サービス開始前は、通常の携帯電話の倍程度の1カ月4時間程度を想定していたが、実際には5倍の10時間以上の通話があるという。しかし八剱氏は、「通話時間が長くなったが、それによる電波の悪化はほとんど見られない」と語り、PHSのネットワークの強みを強調した。


ウィルコム定額は話せる相手が多いので、口コミでユーザーが広がったとも解説 ウィルコム定額プランのユーザーの通話実績。桁違いに多い

「W-SIMにより、企業とのタイアップの幅が広がった」

 八剱氏は次に、W-SIMコアモジュールについても紹介する。W-SIMとは、PHSの電波の送受信や電話帳記憶、音声信号の変換機能など、PHSの基本機能を詰め込んだ、切手大の小型モジュールだ。W-SIMにより八剱氏は「企業とのタイアップの幅が広がった。先方も開発力を通信以外の部分に集中でき、開発期間が短くなるというメリットもある」と紹介する。

 またW-SIMにより、1機種あたりの発注台数を少なくできるとも語る。「W-SIMではない端末だと、1機種あたり数十万オーダーで生産する必要があったが、W-SIMだと数千台でも十分に量産効果が取れることがわかってきた」と説明する。さらに「開発期間も、これまでは1年半くらいだったものが、半年くらいで開発できるようになった。かなり開発ペースもあがっている」とW-SIM導入の効果を紹介する。


W-SIMのコンセプト W-SIMによる変化

 続いて、ウィルコムの商品ラインナップを紹介する。もっとも音声通話よりの端末として「nico.」を位置づけると、その対極のデータ通信よりの端末としてはデータカード型端末が位置づけられる。音声から少しデータよりには、フルブラウザ端末が位置づけられ、データ端末から少し音声よりには、W-ZERO3が位置づけられる。このようにラインナップを並べ、八剱氏は「ボイスとデータの間が少し空いているが、そこに入るのがW-ZERO3[es]」と紹介した。

 八剱氏は、W-ZERO3[es]の特徴として、いろいろな周辺機器が接続できることを紹介。さらにプロジェクターと接続してプレゼンテーションに使えるとも説明し、講演の後半はW-ZERO3[es]でプレゼンテーションを行なった。


W-SIMで実現した商品「nico.」と「papipo」 発売から人気を博しているW-ZERO3の初代モデル

音声とデータのあいだを埋めるモデルとしての「W-ZERO3[es]」 W-ZERO3[es]の特徴

PHSの今後の進化

 八剱氏はPHSの将来についても説明した。PHSの将来というと、次世代PHSがあるが、その前に八剱氏は、現状のPHSを改良する高度化PHSについて説明する。

 現在のPHSは、QPSKという変調方式を使っている。この方式では、1回線で32kbpsの通信ができる。八剱氏はこれを高度化したものとして、今年2月に8PSKという方式を開始したことを紹介する。8PSKでは8X(8つの回線を束ねる)で最大408kbpsの通信が可能だという。さらに八剱氏は、さらに高度化させたものとして、16QAMというものがあり、すでに実証実験が終わっていることも紹介した。

 こうした高度化したPHSの変調方式を、W-OAMという仕組みで導入するとも説明する。W-OAMでは、電波状況が安定しているところでは、より高速な変調方式を用い、そうでない場所では安定する変調方式に自動で切り替える。さらに変調方式に着いても、QPSKより高速通信に向いたものだけでなく、半分の速度のBPSKという変調方式の導入も予定していることを紹介。BPSKは現在のQPSKよりもより広い範囲で安定する変調方式で、八剱氏は「BPSKが実現すれば音声通話のエリアが広がる」と語った。


PHSの変調方式の種類と通信速度 変調方式をダイナミックに切り替える「W-OAM」

 さらに次世代のPHSについても説明する。次世代のPHSでは、現在と同じマイクロセルネットワークを使いつつ、OFDMやMIMOといった技術を利用するという。これまで実験してきたものは、実行速度が3~5Mbpsというバージョンだったが、次に実験を行なうバージョンでは、少なくとも上下ともに20Mbps程度になるという。この次のバージョンの実験については、すでに免許を取得していて、8月中には電波を使い始めるとし、次世代PHSの実験が順調であることをアピールした。

 最後に八剱氏は、世界におけるPHSの現状について説明する。PHSは現在、20カ国で使われていて、とくに中国では9,000万加入を突破するなど、圧倒的にユーザー数が多いことを紹介する。現在のところ、日本以外の地域では、PHSは音声でしか使われていないが、今後はデータ通信の基盤としても、次世代PHSが注目されているという。八剱氏はこうしたPHSの国際展開について「ウィルコムとして関与することはないが、市場が広がり価格が下がれば競争力が高められる。ウィルコムはPHSが世界で普及することを支援する」と語った。


次世代PHSの概要 世界で見ると、中国のPHSユーザーが圧倒的に多い


URL
  ウィルコム
  http://www.willcom-inc.com/

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(白根 雅彦)
2006/07/19 21:16

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