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パネリストの3人。右からドコモの尾上氏、KDDIの渡辺氏、イー・アクセスの諸橋氏
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3月15日と16日の2日間、京都のパルスプラザにおいてケータイ関連の展示会「第5回 ケータイ国際フォーラム」が開催された。同会場の中で技術セミナー「次世代移動通信の技術動向を探る~super 3Gかultra 3Gか、それとも…~」と題したパネルセッションが開催された。パネリストはNTTドコモのIP無線ネットワーク開発部長 尾上 誠蔵氏、KDDIの技術統括本部 技術開発本部長 渡辺 文夫氏、イー・アクセスのWiMAX推進室 CTO 諸橋 知雄氏。コーディネーターは京都大学 情報学研究科の吉田 進教授。
■ ドコモが目指す、3Gの完成系としてのスーパー3G
最初にドコモの尾上氏がスーパー3Gについて説明した。まずドコモの3Gの状況として、3Gユーザーが順調に増えていることを紹介。2Gからの移行も順調に進んでいることを示し、近い将来ドコモユーザーの半分が3Gになるであろう見込みも示した。また世界各国の事業者が同じW-CDMA方式のサービスを開始していることもアピールした。
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FOMAのユーザ数とエリアカーバー率
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ドコモの世代別ユーザー数
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直近の取り組みとしては「HSDPA」を紹介する。HSDPAについて尾上氏は「ビットあたりのコストを下げるような仕組み」と説明。「装置自体は一部ハードの取り替えで基地局を対応させられる。最新のハードを使用している基地局ではソフト取り替えのみで対応できる」と語り、サービス展開が容易なことも紹介。通信速度については「スペック上は11Mbpsなどとなっているが、当初展開するカテゴリ6のHSDPAでは3Mbpsがピーク。最近では商用に近い端末で実験ができていて、1~3Mbps程度の速度が出ている。セルの変わり目でも1Mbpsくらい出ている」と語った。
演題にもなっているスーパー3Gについては「現在の3Gを進化させたもので、3Gの競争力を長期にわたって維持し、4Gへのスムースな移行のためのもの」と説明する。スーパー3Gでは周波数効率が向上するので、限りある周波数帯を有効利用できる。そのためトラフィックの増加や利用者数の増加にも対応でき、結果として3Gを延命させることができるわけだ。周波数効率以外の面でも、データ速度が速く、通信の遅延も減らせるという。尾上氏は「効率を考えると最終的には3Gになるだろう」と説明した。
スーパー3Gの仕様は無線部分だけでなく、インターフェイスやインフラ部分も含まれている。またスーパー3Gはあくまで3Gの範疇にあるので、標準化団体3GPPで議論して仕様を策定しているという。尾上氏は「3G自身をスーパー3Gとして長期的に発達させていくことについては、多くの賛同を得られた」と語り、スーパー3Gが国際的にも支持されていることをアピールした。
一方の4Gは3Gとはまったく別のものとなっている。4Gはまったく新しい周波数帯を想定した無線通信方式というわけだ。しかしスーパー3GのIP化されたインフラにより、4Gをスムーズにネットワークへと追加導入できるようにするのも、スーパー3Gの役割だという。
ウルトラ3Gとの違いについて尾上氏は「スーパー3Gは3Gの周波数を効率的に長く使うためのもの。名前が似ているがKDDIが言うウルトラ3Gはネットワーク側のインフラを広く含めているので、まったくの別次元のもの」と説明する。
スーパー3Gの導入時期に関しては、2010年ごろを想定し、スペックの完成は2007年ごろを設定しているという。
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スーパー3Gの概要。3Gの最終バージョン、3.9Gとも呼んでいる
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スーパー3Gネットワーク構成と導入シナリオ例
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3G、スーパー3G、4Gのシステム展開シナリオ
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3G、スーパー3G、4Gのまとめ
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■ KDDIが提唱する、アクセス非依存のネットワーク=ウルトラ3G
渡辺氏はウルトラ3Gについて「アクセス非依存のネットワーク」と述べる。ユーザーが利用する端末には、ケータイやパソコン、家庭用電話機などさまざまなものがあり、それらが3GやCDMA2000、無線LANやFTTHなどさまざまなアクセス手段でネットワークに接続している。渡辺氏は「それらが個別に組み立てられてしまっていて利用できるサービスや料金が異なる。それは良くないから、パケットベースでネットワークを作ってしまって、アクセス方法に依存せずにサービスを利用できるようにしよう、というのがウルトラ3G」と説明する。
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ウルトラ3Gへの流れ
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ウルトラ3Gの基本イメージ
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無線部分、KDDI(au)のケータイが採用しているCDMA2000システムの進化については「96%ほどのユーザーが3Gに移行済み。2003年10月にはEV-DO(WIN)も導入できた。効率を上げ、パケットのコストを下げられたので、音楽ダウンロードが可能になった。今後も順調に発展して行き、今年中には次世代EV-DOのRev.Aを導入する」と語る。Rev.Aについては「速度を上げるのではなく、VoIPなどリアルタイムのサービスがきれいに動くことを主眼に入れたサービス」と説明する。さらに次世代の進化については「次のリビジョン(Rev.B)の導入は決めていないが、簡単にソフトアップグレードでいけるようにデザインしている。さらに次のものとして昨年から次世代のCDMA2000を議論しているが、こちらは100Mbps級になる見込み」と語った。
一方で「こうした進化はスムースに導入しないといけない」と強調する。「カバーエリアを広げるには手間暇がかかる。エリアが完成したときには次の技術が到来している。しかしエリアが狭いとどんなにすごい技術でも使い物にならない。こうした問題を解決するためには、マルチのシステムをシームレスにするしかない。いろんな方式をシームレスに見せる技術が重要。たとえばCDMA2000 1xとEV-DOはまったくの別物。しかしいま端末を使っていて、どっちの方式で通信しているかすぐに区別できる人はいないだろう。既存のエリアをうまく利用する。こうしたオーバーレイの手法をこれからの新方式を導入する際にもやる」と語る。
また新しい方式についても「ビットあたりのコストを下げたい。下げられなかったら意味がなく、100倍速になってもビットあたりのコストが上がるようなら使う気にならない」とも説明する。
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CDMA2000システムの進化スケジュールとその速度
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シームレスに移行することで、稠密なエリアを常に確保する
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WiMAXについては「候補の一つ。使えるかどうか検証している段階。こうした技術はどんどん発展するので、どれが良いとかはない。時期によって有利・不利がある。いま試験して数年先導入としてはリーズナブルな技術だろう」と語る。
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WiMAXについて
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次世代のケータイ、WiMAXなどの話題のあとに渡辺氏は「こうしたさまざまなアクセス方法でも、ウルトラ3Gではサービス部分はMMDというサービスコントローラーが標準的に扱う」と語る。研究中のイメージを示し、WiMAXとEV-DOのシームレスハンドオーバーという実験を行なっているとも説明した。この実験ではWiMAXのエリアからEV-DOのエリアに移動し、セッションを維持したまま通信手段をハンドオフさせるというもの。ストリーミング音声を流しているが、VoIPに必要な条件、すなわちバッファを使わず、システム側で遅延を受け止められるようにハンドオフできるようにしているという。
最後に渡辺氏は「KDDIは固定通信と移動通信を持つ事業者。いろいろなサービスを提供していきたいが、道具(端末)やアクセス方法を意識することなく、サービスを提供できるようにしたい。これをもってウルトラ3Gと呼んでいる。こういった世界は一気に作れるものではないけど、順次進めている。オールIP化が2007年度。MMDが2008年か2009年とかになる。すべてのアクセス手段を内包できるようにするので、いまある端末が消えるのではなく、いまある端末が共存するようになる」と語った。
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サービスコントローラーとなるMMDを中心としたウルトラ3Gの構成
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ウルトラ3Gではアクセス・サービスをどんどん追加できるように設計される
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モバイル WiMAXとEV-DOをシームレスにハンドオーバーさせる実験
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ネットワークの発展についてのまとめ
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■ 関連記事
・ KDDIがモバイルWiMAX実用化に目処、ウルトラ3Gに向け前進
■ 固定ブロードバンド大手としてモバイルに乗り込むイー・アクセス
諸橋氏はまず、通信のトレンドについて「音声はモバイルにシフト、ネットワークはIP化、データはブロードバンド化が進んでいる」と解説する。「イー・アクセスについていろんな国の人に説明すると、ゼヒうちの国でもサービスしてくれという意見をもらう状況。高速かつ低料金というのが客の心を捉え、ブロードバンドユーザーを拡大させた」とし、さらに「無線の世界では周波数資源が限られているが、ブロードバンド同様にどれだけ高速化できるか、安く、できれば定額で提供できるかが求められている。技術的にはハードルがあるものの、目指すところが無線と有線では違わない。限られた周波数資源の中でできる限り高速低料金を求めるのがこれからの方向性」と固定ブロードバンドの大手であるイー・アクセスらしいコメントを述べた。
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通信業界の構成とトレンド
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固定ブロードバンドに学ぶモバイルの方向性
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イー・アクセスの新規事業、イー・モバイルによるモバイル通信事業については「全国で3つの周波数帯をもらった。総務省は1MHzあたり50万ユーザーを超えないと新しい周波数を与えないという条件を課したが、5MHzという周波数帯についてわれわれは満足していない。われわれとしてはモバイルでブロードバンドを提供する、というのが原点」と語る。またソフトバンクの動きについては「いまなにやら動いているが、もしかしたらソフトバンクが取得した周波数が総務省に返上されるかもしれない。そうなれば1.7GHzを全部使えていいなぁ、と思う」とコメントした。
端末については「いまのケータイはみんな機能が統合されたオールインワンタイプになっている。そのニーズもあるのでわれわれも提供するが、使う機能だけが入った端末を買いたいというニーズもあるだろう。目的別・機能別端末によりニッチマーケットにいけるのではないかというのがわれわれの考えで、この展示会のブースでもコンセプトモデルを展示している」と語る。また「カード型のコアモジュールも提供し、いろいろな人にジャケットを開発してもらうということも考えている」とも語った。
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周波数の割り当てについて
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端末について。セカンダリ端末の市場開拓も目指す
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イー・モバイルが採用を決めている通信方式はW-CDMAとHSDPAだが、それ以外の通信方式についても言及する。「無線技術には携帯電話由来と無線LAN由来の2種類がある。無線LAN由来のMobile WiMAXが無線LANと携帯電話の橋渡しをするのではないか、と考え、昨年導入を研究する専門チームを発足させた」と語る。似たポジションの無線技術としてIEEE802.20(京セラのiBurstなど)との比較については「802.20は賛同するメーカーが少ないので、勢いはWiMAXにあると考えている。ここ2~3年で有力な技術であることは紛れもない技術」と述べた。
最後に諸橋氏は「3Gで事業免許をもらった。しかしWiMAXも並行して発展していくと予想される。これら2つをどのように使い分け、組み合わせるかが今後の戦略を考える上でキーになるだろう。モバイルの補完という位置づけも考えられるが、若干携帯電話会社とは異なるスタンスを取っていると思う」と語った。
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携帯電話系と無線LAN系の2種類の無線通信方式、それらを融合させる
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WiMAXの事業推進について。3Gと平行して推進していく
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■ 各社のWiMAXへのスタンスが語られた質疑応答
続いての質疑応答でWiMAXについて「WiMAXは携帯電話と比べると特性が異なるが、WiMAXを導入した場合、位置づけはどうなり、何ができるのか」という質問がなされた。
これに対してKDDIの渡辺氏は「いろいろな側面があるが、まず前提としてビット単価が現状より大幅に低下しなければ導入できない。あとはシステムをシンプルにするなどで携帯電話と差別化をして、コストを下げたりする。またCDMAではとくにそうだが、遅延を減らすこともWiMAXで先取りできる。ネットワークの遅延は人間対人間ならば現状でも十分だが、それが半分になれば、それ以外の通信にも広げられる」とコメントした。
ドコモの尾上氏は「ドコモはそもそも2.5GHz帯でモバイルブロードバンドをやるとは言っていないのでコメントは難しいが」としつつも、「2.5GHzではWiMAXが一番有効な技術。WiMAXがあってもスーパー3Gはいらなくならない。WiMAXは新しいチャンスとして興味があるが、いまの周波数を有効に使うためにスーパー3Gは必要」とコメントした。
イー・アクセスの諸橋氏は「携帯電話由来の通信方法と無線LAN由来の通信方法では開発コンセプトというか土俵が違う。そういう意味で両者は同居できる」とコメントした。
さらに通信と放送の融合についての質問に対してKDDIの渡辺氏は「ワンセグをいまやっている。次はデジタルラジオの3セグ。それが放送屋との連携。しかしKDDIでやっていることとしては、CDMA2000の枠組みの中で近々、同報機能が追加される。すでにEZチャンネルというサービスがあるが、それはいまユニキャスト(1対1の普通の通信)でやっているがマルチキャスト(1対多の通信)になる。それとは別に、米国で立ち上がったMediaFLOがある。周波数帯の割り当てがどうなるかわからないが、そこを狙って企画会社を作っている段階」と積極的かつ多方面から取り組んでいることをアピールした。
■ URL
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
KDDI
http://www.kddi.com/
イー・アクセス
http://www.eaccess.net/
ケータイ国際フォーラム
http://itbazaar-kyoto.com/forum/
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(白根 雅彦)
2006/03/17 21:54
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