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【第5回 ケータイ国際フォーラム】
イー・アクセス千本氏、ケータイ事業参入の意図を語る

イー・アクセスCEOの千本氏
 3月15日と16日の2日間、京都のパルスプラザにおいてケータイ関連の展示会「第5回 ケータイ国際フォーラム」が開催された。同会場で行なわれたカンファレンスの中でイー・アクセス 代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏は「ケータイ大競争時代の幕開け」と題した講演を行なった。

 イー・アクセスの千本氏は冒頭で「13時からの講演なんて最悪ですね。昼飯を食べた直後で面倒くさい話をしたらみんな寝てしまう」と言って会場の笑いを取る。「だから皆さんが寝ないように、こんな話をしたらいいのではないかと新幹線の中で考えてきた」と講演の主題を提示した。


千本氏の講演の主題。それぞれの話題で1時間以上しゃべれるとも語る

「通信業界の最初の革命は京都で起きた」

 まず千本氏は「20年前、日本で最初の民間の競争通信会社、DDI(第二電電、現在のKDDI)ができ、DDIが日本の通信業界に変革をもたらした。DDIを作ろうという話は京都から起きている。通信の最初の革命は京都で起きた」と説明し、「このフォーラムが京都で行なわれているということには、因縁のようなものを感じる」と語る。さらに「新しい動きというのは、土俵は東京だけど、新しいことをやろうという動きは京都や関西の人がリーダーシップをとる。守る側は東京の人で、西が新しい仕組みを作ろうとする。京都の人は自身を持って革命をするべき」と語った。


「ホリエモン騒動はガバナンスの問題を示唆している」

 千本氏はキャッチーな話題としてホリエモンとフジテレビの問題についても触れる。「ホリエモンは1年前まで肩で風を切って歩いていたが、まさかこんな年を迎えるとは思わなかっただろう。ITベンチャーと放送の株式市場での戦いは顛末を含めて面白かった。フジテレビの日枝氏も株価が上がってたころは『これで何百億か儲けた』といっていたが、結局は損切りしないといけなくなった。これはコーポレート・ガバナンスなどの問題を示唆している」と述べた。

 ガバナンスの問題について千本氏は同社の役員構成を紹介する。イー・アクセスの10人の取締役のうち、社内取締役は3人だけで、残りの7人は各国・各業界の社外取締役で構成されている。「3:7で構成しているのは、3人が変なことをやったらすぐに追い出せるから。上層部だけで暴走できないようにしている。社外取締役が株主の代表として会社を監視する。こういった仕組みを持っていないと、日本の会社もうまくいかない」と持論を語った。


イー・アクセスの取締役会メンバー

「ソフトバンクの動きは孫さんらしい。やるからにはがんばって欲しい」

 ソフトバンクとボーダフォン買収に動いていることに関して千本氏は「ボーダフォン会長の津田さんは何もいえない立場で、ほとんどのことはボーダフォン本社で決めている」と語る。さらに「ソフトバンクが名乗りを上げたのは孫さんらしいこと」と感想を述べる。「私は1からネットワークを作るけど、孫さんは時間を買う。やるならがんばって欲しいと後ろから応援する」と買収の動きに肯定的な意見を語る。買収の動きについては「直感でいえば、あと2カ月くらいかかると思う。規模は1兆数億円といわれているけど、成立すれば日本で最大のM&A。そのファイナンスをするのは、孫さんでも大変だろう」と予想を述べる。一方で自社の展開については「われわれは新しい事業を始めると約束した。まったく新しいネットワークを作る方針を変えるつもりはなく、どこかを買うとか乗っかるというつもりはない」と説明した。


ケータイ業界の最新動向。ソフトバンクについては買収と新規参入の「二束のわらじ状態」とも語る 周波数帯の割り当て状況。千本氏は「新規参入に対しこれはあまりにアンフェア」と意見を述べる

「世界に視野をおけるかどうかが、ケータイ産業にとってクリティカル」

 千本氏は日本のケータイ産業について、先日スペインのバルセロナで開催された「3GSM World Congress 2006」を例に挙げる。「会場には何百というブースがあり、街が渋滞を起こすくらい注目を集めていた。しかし日本のブースは弱い。注目を集めていたのはノキア、モトローラ、エリクソンなどで、あとは韓国や中国のメーカー。数年前はヨーロッパでもNECやパナソニックは席巻していたが、いまは日本製ケータイはマイナー。国内には着メロなどさまざまなマーケットがあるけど、国外ではまったくプレゼンスがなくなってしまった。日本のケータイメーカーは世界シェアで10位以下で、あわせてもシェア10%以下」と語る。

 さらに「ケータイ産業はこれからのITの中心になるのに、NECや富士通などのケータイ事業は真っ赤っか。どこか戦略が間違っている」とし、「こういった日本のケータイ産業の衰退を招いたのは、NTTドコモのせいだと思う」と持論を述べる。「国際的な標準はGSM。海外のエグゼクティブが国内に来るとき、必ずBlackBerry(キーボード付きメッセージングデバイス)を持っている。BlackBerryは欧米や中国などほとんどの国で使えるのに日本では使えない」と日本がケータイ方式で国際的に孤立していることを説明。「日本固有のケータイスペックを作ってしまったのは、世界から国内産業を防御する意図があったのだろうけど、逆にGSMが世界のデファクトになってしまい、輸出もできなくなってしまった。日本は国家としての戦略ミスを犯した」と語る。今後の展望については「これから日本でケータイのちゃんとした競争をやらないと、韓国中国のメーカーに勝てない。これから1~2年の新規参入でケータイ産業を活性化できるか、そして世界に視野をおけるかどうかが、ケータイ産業にとってクリティカルになる」と述べた。

 固定回線のブロードバンドの歴史を引き合いに出し、「死に物狂いで競争してきたから強くなれた」と説明する。それに対してケータイ産業については「自動車産業に次ぐ産業なのに、3社しかいない。その過半数をドコモが占めていて、明らかに独占禁止法に抵触する状態。いずれは10兆円になるであろうマーケットを3社が寡占し、1社のシェアが50%を超えるのはおかしい」と語る。さらに収益についても「ARPUは日本は多く7,000円とか。これは事業者にとっていかる儲かる商売かを示している。一方で使われている時間は海外に比べると少ない。これは日本のケータイが高いことを示している。だから、うちのような新しいフレッシュな事業者が入らないとダメ」と語った。


海外とのADSL比較。料金が日本がもっとも安く、けた違いに速い 携帯電話コストの比較。こちらは諸外国に比べて高い

業者が多く市場を割拠するブロードバンドに対し、ケータイは業者が少なく寡占状態だと指摘する

「ITはモバイルに収斂する」

 千本氏は「世界のIT産業の収斂するところは、みんなモバイルにある」という持論を展開する。「世界の情報通信業界のトップと会ったり、バルセロナのカンファレンスなどを見ても、みんなモバイルに注目している。そういう意味でこのフォーラムがモバイルに集中しているのは、たいした慧眼だと思う」と語る。一方で「NTTが光ファイバーに金をかけているが、あれはビジネスとしてワークしない」とも述べる。「光ファイバーでしっかり儲かるビジネスなんて作れない。投資を回収するのに50カ月や60カ月かかる。もちろん都市部、ビルなどに光ファイバーを引くのはビジネスになるが、家庭まで引くのは間違っている。海外の事業者はやっていない。健全なビジネスが成り立つ場所があるとすれば、それはモバイル」と語る。

 千本氏は「わたしも光ファイバーは使っている」とも語る。「しかしたとえば光で100Mbpsでても、ADSLの30Mbpsと比べて大したメリットはない。それに対し、モバイル環境でブロードバンドが使えるかどうかは明らかに差別化サービスになる」と説明する。「日本の消費者は固定回線で世界に類のない良い環境にあるから、望む水準が高い。そのユーザーにモバイルブロードバンドを提供することが大きい。2000年にはISDNだった固定回線が、36カ月で光ファイバを数千円で提供できるようになった。いまモバイルが同じ状況にある。5年くらいで、世界に冠たるモバイルブロードバンドを作りたい。そのために新規事業者のイー・モバイルを作った」と、イー・アクセスがケータイ事業に参入した動機を説明した。


「イー・モバイルは完全ベンチャーで展開する」

 イー・アクセスが設立したケータイ新規参入事業者「イー・モバイル」について千本氏は、完全なベンチャーであることを強調する。「イー・モバイルは設立5年のイー・アクセスが作ったベンチャーで、すべてのリスクは自分で取る。すでに900億円くらいの資本金が集まったが、最終的には世界で例のない1,000億円のベンチャーを作ろうとしている」と現状を説明する。しかしこれでも十分ではなく「あと3,000億円くらいは主要銀行から借りる」とする。

 イー・モバイルの今後については「いまネットワークの建設にかかっている。データのサービスを来春開始し、期待にこたえる高速モバイルブロードバンドサービスを提供する。2年後には音声のサービスも開始したい。固定ブロードバンドでこれだけの発展と遂げた日本が、モバイルでも世界をリードできるようにしたい」と語る。「数千億の金を集め、数十人の会社がこれをやる。シリコンバレーに比べ日本のホリエモンなどは残念だがイノベーティブでない。われわれは消費者に新しいサービスを提供する」とイー・モバイルの革新性をアピール。さらに「イー・モバイルは(インフラ側の)プライムベンダーにエリクソンを選定した。われわれのネットワークは世界に対してオープンで世界共通仕様。本格的なグローバルベースなサービスを提供する。もうBlackBerryの悲劇は起こさない」と世界に視野をおいていることも強調。「このようなサービスを2~3年で実現するべく取り組んでいるので、京都の皆さんにも応援してもらいたい」と締めくくった。


イー・モバイルの資本関係など イー・アクセスの成長ストーリー

イー・アクセスの会社概要。WiMAXの事業化はイー・アクセス側で検討している オープンなネットワークを築き、ADSLのように他社にホールセールビジネスモデルを展開する


URL
  イー・アクセス
  http://www.eaccess.net/
  イー・モバイル
  http://www.emobile.jp/
  ケータイ国際フォーラム
  http://itbazaar-kyoto.com/forum/

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(白根 雅彦)
2006/03/17 11:51

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