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「Android N」は第3四半期に正式リリース、その特徴は

 Androidの次期バージョンはバッテリーをより節約し、通知機能を改善した――20日、グーグルはスマートフォン向けゲーム開発者向けのイベント「Google for Mobile - Game Bootcamp」を開催、基調講演のなかでは今後登場予定の「Android N」についても紹介された。

安定性向上目指す「Android N」

松田氏

 「Android N」そのものは、パフォーマンスの向上、安定性の向上、バグフィックス(不具合修正)を主体としたリリースになる、と語るのは、グーグルで開発者との関係作りを担当する松田白朗氏。今回はゲーム開発者向けイベントとあって、ゲーム開発に関わる「Android N」の機能が紹介された。

Android Nの概要
Dozeモード

 新機能のひとつは「Dozeモード」(省電力モード)の進化だ。Android 6 Marshmallowでは、ディープスリープモードが用意され、通常時から切り替わるとネットワーク接続やGPS測位、Wi-Fiのスキャンなどを一切行わないようになっていた。そのディープスリープモードは継承しつつ、「Android N」では通常モードとディープスリープモードの間に位置するモードが追加される。この“中間モード”とでも呼べる状態では、ネットワークへのアクセスは行わないものの、データの同期(Sync)などはジョブスケジューラー(Job scheduler)というAPIを利用しなければ、アプリからは何もできなくなる。Android Nは二段階のDozeモードにすることで、状況に適した省電力性を備えることになるという。

 続いて紹介されたのが通知機能(Notification)。通知機能では、あらたにノーティフィケーションバンドルと呼ばれる機能が搭載される。これは、アプリから数多くの通知が届いたとしても、通知バーの上ではひとつにまとめて表示されるというもの。松田氏は「ゲームから1000でも2000でも通知を送れる」と冗談めかして説明しつつ、ゲームに沿った新機能であり、数多くの通知になってもユーザーへの負担を減らせると解説する。

 また通知にアクションを設定できるようになる。たとえばメッセージアプリの通知であれば、そこに返信メニューを用意するというもの。一部アプリでは既に導入されているが、OSとしてどのアプリでも利用できる機能としてサポートされることになる。その操作画面のデザインをカスタマイズすることもでき、通知バーのすぐ下にテキスト入力の場所を用意することもできるようだ。

 また設定メニュー(セッティング)から「データセーバー」が選べるようになり、アプリの通信量を減らせるようになる。松田氏は「たとえばモバイル通信が従量課金の場合、できるだけデータを節約したい、というユーザーが設定できるようになる」と解説。アプリ側としては、コネクティビティマネージャーの設定を参照して、ユーザーが設定したデータセーバーの挙動にマッチすることが求められる。たとえばアプリがバックグラウンドに移行すると一切データ通信を行わず、操作中になってもできるだけデータ通信を自粛する、といった機能を備える、ということになる。またDozeモードの影響を回避するには、アプリ側ではジョブスケジューラーAPIを利用する、あるいはクラウド経由の「Google Cloud Message」を利用する、といった手法が紹介された。

 このほかゲーム開発者向けのリクエストとして、松田氏は512MB以下のメモリしか搭載しないデバイスへの配慮を案内。これはAndroid 4.4 Kitkatの開発時に進められた「Project Svelte」という取り組みによるもので、低容量かどうかチェックするAPIを利用してアプリ側で判定できるのだという。もし512MB以下のメモリであれば、ゲーム内のオブジェクトについてテクスチャの解像度を減らす、といった手法が効果的だという。

 松田氏によれば、そうしたAndroid Nの新機能は、バッテリーの持ちが向上したりパフォーマンスが向上したりするなど、「嬉しい副作用がある」とアピールする。

次期高速グラフィックスAPI「Vulkan」

 Android Nでは、従来より高速にグラフィックを描画できるAPI「Vulkan」(バルカン)がサポートされる。松田氏の講演では、Vulkanに関する説明に相応の時間が費やされ、ゲーム開発において重要なポイントになることが示される。

Vulkanのデモ映像。10万匹の魚が泳ぐ様を表現

 Vulkanの特徴について松田氏は「コンソールゲーム機に近い(性能で)APIが動く。現在のハイエンドスマートフォンは、ハードウェアのスペックはPlayStation 3の倍くらいのパフォーマンスがある。しかしOpen GLでは真の力を発揮できない。VulkanによりGPUをフルに使った、よりリッチなゲームを開発できる」と語る。

 この特徴はハードウェアの力を無駄に消費しなくなる、ということから、より低い負荷でより良い表現ができることでもある、と松田氏は指摘し、「高いパフォーマンスが不要になり、従来よりバッテリーの使用量を減らせる。どんなアプリでもVulkanに対応することで一定の効果がある」とした。

 Vulkanに対応するにはハードウェアだけではなく、ドライバーソフトが組み込まれている必要がある。現時点で対応しているハードウェアはNexus 6P/5X、Galaxy S7、nVIDIA Shiled TV/Tablet。今後はNexus Player、Nexus 9でもサポートされる予定だ。

開発者プレビュー、今後のスケジュール

 例年、Androidの最新バージョンは、5月頃に米国で開始される「Google I/O」で発表され、その年の秋頃に正式バージョンが登場する、という流れだった。ところが「Android N」は、3月に発表された。これはスケジュールに余裕を持たせて進めるためで、不具合の洗い出しとその修正を念入りに行いたいようだ。

 3月に最初の開発者向けバージョン(Developer Preview。DP)がリリースされ、先週13日には2番目のバージョンとなる「Developer Preview2(DP2)」が登場した。松田氏は、今後、おおよそ5週間ごとに開発者向けバージョンをリリースする予定を明らかにし、正式リリースは2016年第3四半期になるとした。

 正式リリースまで開発者向けバージョンは5回、登場することになる。松田氏は聴衆である開発者に向けて「DPをぜひインストールして使ってみて欲しい。そしてみなさんのアプリがきっちり動作するか確認してください」と呼び掛けた。

 このほか米グーグル Global Head of Games BDディレクターのボブ・ミース氏からは、Google Play Storeに用意された開発者向け機能によりアイコンやスクリーンショット、説明文などのA/Bテストが可能であり、その具体例として、米国展開におけるミクシィの「モンスターストライク」の事例が紹介された。

Project Tangoのタブレットを使ったゲーム
ミース氏はGoogle Play StoreにおけるA/Bテスト機能などを紹介

関口 聖