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「ID交換掲示板」の悪用防止にはまずフィルタリング、EMAが報告書公開
(2014/5/30 19:28)
一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)は30日、いわゆる「ID交換掲示板」に起因する犯罪被害が青少年に増加している問題を受け、同掲示板に対する保護者対応策などをとりまとめ、報告書として公開した。同日には都内で記者会見を開催。携帯電話キャリアのフィルタリングサービスや、iOSの「機能制限」を適切に使用することの重要性を訴えた。
アプリベースの「ID交換掲示板」も登場、ただし、現状でも対策は可能
ID交換掲示板とは、おもにスマートフォン向けの無料メッセージ・通話アプリで個人識別に使われるIDを、不特定多数に公開することを目的としたサービスのこと。ウェブサイトの掲示板として運用されるケースに加え、同等の機能を備えたアプリとして、OS標準のオンラインアプリストア経由で提供されることも多い。数も非常に多く、検索で簡単にヒットするのが実情だ。
ID交換掲示板は、結果として出会い目的に悪用されるケースが多い。警察庁が2月に発表した統計では、コミュニティサイトに起因する犯罪被害児童数が2012年の1076人から2013年の1293人へと、20.3%増加した要因の1つとして指摘されている。
ただし、ID交換掲示板については、フィルタリングを適切に使用することにより、未成年者がむやみにアクセスすることをほぼ防ぐことができる。EMAの報告書ではこの詳細を解説している。
Android端末については、携帯電話キャリア各社が提供しているフィルタリング設定を端末に適用することで、ウェブサイトおよびアプリいずれの方法であっても、アクセスを制限できる。また、Wi-Fi専用のAndroid端末については、デジタルアーツ株式会社が提供するフィルタリングサービスが利用できる。
一方、iOSについては状況が異なる。ウェブサイト版のID交換掲示版については、携帯電話キャリア各社が提供するフィルタリング対応のウェブブラウザーアプリを使い、iOS標準ブラウザー(Safari)の使用をOS側の「機能制限」設定で禁止することにより、同等の効果がある。Wi-Fi接続のiPod touchやiPadについては、同じくデジタルアーツ株式会社のフィルタリングサービスが利用できる。
iOS環境におけるアプリの動作制限については、同じく「機能制限」を用いる。ここではレーティングに基づいた利用制限を行える。EMAでは、アプリやコンテンツの動作制限を「12+以下(4+~12+)」とすることが望ましいとしている。
なお、ウェブ版のID交換掲示版については、ごく短期間だけ運用されるケースもあり、これらにはフィルタリングが適用されない可能性もある。ただし、大多数のID交換掲示版に対してはフィルタリングが機能するとしている。
ストアのレーティング設定に課題も、EMAからAppleに情報提供
EMAが30日に発表した報告書では、これらフィルタリングおよび機能制限設定の適切な使用に加え、「ID等の個人情報を安易に公開してはならない」という大原則を改めて指摘している。ID交換掲示板経由で児童を誘い出そうとしている側にとっては、IDを知る方がむしろ電話番号やメールアドレスより都合がいいケースもある。この状況を踏まえ、子供達自身はもちろん、保護者も心構えが必要という。
EMAでは報告書をとりまとめるにあたって、ID交換掲示板に関する調査を実施した。ウェブおよびAndroidアプリについてはフィルタリングが適用できることから、今回はiOSアプリの状況把握を主眼に実施したという。2013年11月から2014年1月にかけて1次調査を行い、まず100本のアプリを選出。その中から、アプリストアのランキング上位に入るなど、児童の目にも触れやすい30本をさらに絞り込み、機能の詳細を調べた。
実際の調査を担当したEMAの藤川由彦氏(審査・運用監視室主任)は各アプリについて、「有害情報の状況」(犯罪やわいせつ描写に関する情報が実際に掲載されているか)、「有害情報、および出会いに関する情報へのアクセシビリティ」(有害情報や個人情報へ容易にアクセスするための仕様があるか)、「青少年利用を前提とした利用環境の整備状況」(禁止行為の告知や問い合わせ窓口などの有無)の3点を調査したことが説明された。
調査結果からは、児童の誘引に繋がる仕様などが実際に確認された。居住地域、年齢、性別などの情報を公開し、これらの情報をもとにユーザー検索できるアプリは非常に多く、藤川氏は調査の手法上、実数こそ明らかにしなかったが「(30本中)8、9割で確認された」としている。
このほか、異性との出会い目的での利用を規約で禁止しているにもかかわらず、実際には出会い目的のコメントが書き込まれていたり、違反行為に該当するコメントが削除されないまま放置されるなど、禁止事項が形骸化している傾向もあったという。
同様に、年齢制限に矛盾があるものも確認された。アプリ内では18歳以上のサービスと告知しながらも、アプリの配信を行うマーケット(ストア)のレーティング情報が全年齢対応になっている場合などがあった。
マーケットのレーティング設定改善には、マーケットを運営する事業者の協力が前提となる。EMAでは、青少年の利用に不適切なアプリについての情報提供をiOSの「App Store」を運営するAppleに対しても行う予定としている。
藤川氏は「ID交換掲示版のほとんどは、フィルタリングの対象となっている。フィルタリングを適切に導入してさえいれば、青少年は利用できない。ぜひ、フィルタリングの重要性を再認識していただきたい」と強調した。
EMAの事務局長である吉岡良平氏は「誤解のないように補足させていただくが、(IDを用いる)無料通話・メッセージアプリのリスクか高いというわけではない。ID交換掲示版を通じて(未成年が無関係な人物との)出会いに繋がってしまい、被害が増えている」とし、問題の混同がないようにしてほしいとも指摘した。
質疑応答では、「LINE」アプリで導入された「18歳以下のユーザーにおけるID関連機能の利用制限」が、ID交換掲示版の動向に影響を与えたかどうかが質問された。藤川氏は「顕著な影響は確認できなかった。ただ、今回の調査はLINE以外の無料通話アプリも対象としているため、全体としての影響が少なかったと考えられる」と答えた。また、全般的な傾向として、英数字の羅列であるIDの代わりに、QRコードや、ユーザー検索結果ページのURLを掲載するなどの事例も確認されたという。
また、吉岡氏は「LINEのID検索には年齢制限があるが、携帯電話契約者の利用者が未成年であると保護者(成人)が申告していなければ、(機能制限の判断にあたって)保護者の情報がいくだけ(で有効に機能しない)」と説明。必ずしも万能な対策ではなく、保護者が一定のアクションを起こす必要があるとした。