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ドコモ2013年度決算、端末販売数が減り減益に

 NTTドコモは、2013年度決算発表会を開催した。前年度比で収益が横ばいになる一方、端末の総販売数の減少が影響し、営業利益は前年度比でマイナスの営業減益になった。iPhone導入効果で純増、MNPが改善する一方、スマートフォン全体の販売数は伸び悩み、新たな課題も表面化した。

NTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏

決算の概要

 発表会ではNTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏が登壇し、内容を解説した。ドコモの2013年度の営業収益は前年度比-0.2%の4兆4612億円。営業利益は前年度比2.1%減の8192億円。減収減益のポイントに挙げられた端末の総販売数は前年度比4.4%減の2251万台。スマートフォン販売数は前年度比3.7%増の1378万台にとどまった。一方、スマートフォンの契約数は前年度比30%増の2435万契約、LTE契約数は前年度比89.9%増の2197万契約になった。

 契約の純増数については、2013年度第4四半期にiPhone効果で大幅に改善した。下期でみると、前年同期比で約80%の増加になった。第4四半期では「月を追うごとに改善」し、新規の販売も春商戦を含む第4四半期で大きな伸びを示した。春商戦では若者向けの施策も功を奏し新規の増加につながったとしている。

 一方、解約率はMNP市場の過熱により上昇。2014年度は解約率の低下を図っていく考えを示している。

 MNPについては、最大シェアを持つドコモはMNPで常に劣勢だが、こちらもiPhone導入後に大きく改善したとした。

 端末の総販売数は前年同比で減少した。スマートフォン販売比率は前年度の56%から61%に増加、スマートフォンだけをみると販売数自体は増加した。

 ARPUは2013年度累計で5200円。音声ARPUは減少傾向にあるが、パケットARPU、スマートARPUが上昇したことで、前年度比で20円の増加になった。

 ドコモが注力する独自サービスは契約数が拡大し、dマーケットやdビデオといった主要サービスが全体で2200万契約になった。dマーケットはiPhoneに対応したことで伸びの鈍化から回復。個別課金や月額課金を含めて、コンテンツの利用も、2014年3月は一人あたり月額890円と、前年同月比で30%以上の増加になった。

 こうしたコマースやコンテンツ、金融系などの「新領域収入」は前年度比約20%増の6320億円で、1000億円規模の成長を達成したとアピールされた。

 ネットワーク投資については、2012年度末にLTE基地局が2万4400局だったことろが、2013年度は2.3倍の5万5300局にまで増加。加藤氏は「予定の数を超えたが、ネットワークは生き物。油断することなく進めていく」とした。

決算のまとめと課題

 加藤氏は2013年度決算のまとめとして、純増数、MNPの大幅改善、LTE基地局数の大幅増、dマーケットなど新領域収入の成長、経営体質強化によるコスト削減を挙げる。一方、端末の販売計画が未達であること、春商戦の費用増加などで減益になったことについて「まことに残念。株主に対しては大変申し訳なく感じている」とした。

 今後の課題については、タブレットなど複数端末の利用を促進し、パケット収入のさらなる拡大を図っていく構え。

 また、「キャッシュバックに頼った顧客獲得からは脱却したい」と語り、ネットワークとサービスで他社と差別化を図っていくことや、解約率の低下で基盤を回復させていくとした。加えて、「月々サポートのコントロールは重要な経営課題」との認識も示している。

2014年度の取り組み

 決算の内容が課題を受けて、今後の取り組みも解説された。4月10日に発表された「カケホーダイ&パケあえる」などの新料金プランについては、加藤氏は「新料金プランを強く訴求していきたい。iPhone導入時以来の、多くの声をいただいている。ポジティブな意見もiPhoneと同じくらいいただいている」と手応えを語る一方、フィーチャーフォンにも対応している点や、25歳以下の割引施策はアピールが行き渡っていないとも指摘し、訴求を強めていく構え。

 新料金プランについては、パケット収入の増加に加えて、「音声収入の減少に歯止めをかけたい」ともしており、成長戦略の中核に据えられている。

 2014年度の設備投資は6900億円を予想しており、2013年度より減少する見込み。一方で、LTE投資額は4650億円を予想しており、2013年度のLTE投資額である3878億円より増加。LTE基地局は2013年度末で5万5300局のところを4万局追加し、1.7倍の9万5300局にまで拡大させる。このうち、100Mbps以上に対応する基地局も、2013年度末の3500局から4万局にまで増加させる。

 加藤氏は設備投資について、「LTEにさらに軸を移す。投資の3分の2がLTEになる。100Mbps以上の基地局も前倒しで追加する。LTEのクワッドバンドの拡充は言うまでもないこと」と、大幅な増加の意気込みを語る。

 LTEネットワークでの取り組みについては、今夏開始予定としている「VoLTE」に関連し、対応スマートフォンを2014年夏モデルとしてラインナップすることを明示。LTEの通信速度についても、LTE-Advancedの技術を導入して、下り最大225Mbpsのサービスを2014年度中に提供する見込みとした。さらに、「5Gも見据えながら、10Gbpsに目線をおきながら、技術、数、エリアでダントツになるよう取り組んでいく」とさらなる発展にも自信を見せた。

 発表会ではドコモのグループ再編についても触れられ、7月1日から現在26社のグループ各社を13社に再編すると発表された。新会社の「ドコモCS」を全国に9社体制で立ち上げ、地域密着体制や支社のスリム化を図るとしている。

 加藤氏からこのほか、営業利益が未達だったこと、同日発表されたインド事業からの撤退する方針であることに触れられ、「経営責任として、取締役、執行役員の賞与を減額する。代表取締役と取締役相談役(前社長)の4人はさらに減額も行う」と発表された。関連した経営体制の刷新についても、後日発表するとしている。

 インド事業の撤退については、3Gの進展が遅れたこと、競争の激化でARPUが下がり経営が厳しかったことを挙げたほか、汚職などに絡んで通信行政が混乱し、取得していた周波数帯が取り上げられたこと、周波数オークションの実施や、周波数利用料の高騰などを挙げ、「想定外で、これらが効いていた。当初想定したものではなかった」と振り返り、「苦渋の決断」とした。

質疑応答

 質疑応答の時間には、オペレーション指標として、2014年度通期の純増数が370万契約と、2013年度の2倍以上になっている点について「強気すぎるのではないか」と疑問が投げかけられた。加藤氏は「チャレンジングなものだ」とした上で、「純増数の改善はiPhoneの効果が大きい。4月も良い結果になっている。チャレンジングだが努力していきたい」と、挑戦する姿勢を強調。

 「新料金プランは、他社がどのようなものを出すか、注視している。対抗策が出れば有効な手立てを打つ」と、成長戦略の中心に据える新料金プランにも触れ、他社の対抗策にさらに応じていく姿勢を示している。

 LTEの人口カバー率について目標を問われると、「2014年度で、FOMAと同程度にしていきたい。99%近くにいくのが2014年度の目標。広さだけでなくスピードも兼ね備え、150Mbpsも拡大する。2014年度は仕上げの年」と語り、基本的なLTEネットワークの構築が最終局面に入っていることを窺わせた。

 グループ再編で法人向けを強化していくという方針については、「新料金プランのカケホーダイやシェアは、中小の企業には響いているのではないか。(法人市場で)遅れている部分を回復させていきたい。保守まで含めたトータルで強めていきたい」との方針を示した。

 販売計画が未達の理由について問われた加藤氏は、「一言で言うと、総販売数が未達。特にスマートフォンが伸びなかった。スマートフォンの販売自体は伸びているが、4%弱(3.7%)で、これがすべて(の理由)。スマートフォンの販売は1378万台だったが、1620万台を目指していた。ここのところ、スマートフォンの伸びは鈍化しており、その影響を受けている。これらが純増数にも響き、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行にも響いたのが要因。(スマートフォン拡大などを)推し進めるためにどうするか。その答えのひとつが、新料金プラン」と答え、新料金プランが今後の成長戦略のカギになっているとした。

太田 亮三