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変化するニーズにあわせる――ドコモ加藤社長が語る新プランの狙い

 NTTドコモは10日、新料金プランを発表した。基本プランは通話定額対応の「カケホーダイ」で、データ専用プランやウェアラブルデバイスなどM2M機器向けプランも用意。パケット定額サービスは、1人でスマートフォンやタブレットを使うユーザーに向けたパックや、世帯単位でデータ通信量をシェアするプランとなっており、これまでにない内容に仕上げられた。

ドコモ加藤社長

 新プランの詳細は、別記事をご覧いただきたい。

3つの声に対応、コンセプトは「ライフステージにあわせる」

 記者会見で説明を行った代表取締役社長の加藤薫氏は、スマートフォンやタブレットの普及によりユーザーの利用スタイルが変化し、通信量が飛躍的に増加して安価な通話を求める声が高まっていると説明する。

加藤氏
 「MNP競争が激化するなかで、長くドコモを使っているメリットが欲しいという声。FOMAにあるような無料通話分を含む料金プランが欲しいという声。そして複数の端末を効率的に使いたいという声。この3つがある。利用形態の変化、そしてお客さまのこのようなお声を踏まえて、新しい料金プランを本日発表する」

 そう語る加藤氏は、今回の料金プランのコンセプトが「ライフステージにあわせて長くおトクにお使いいただける料金」とした。ユーザーがフィーチャーフォンからスマートフォンに乗り換え、世帯を構えて家族が増えて……と人生に訪れる変化に合わせて、使いやすいプランを目指したのだという。

ファミリー向け、マルチデバイス用途を重視したプラン

 3つの声に応えたという新プランは、家族間、あるいは1人で2回線分のスマートデバイスを使う、というユーザーに向けた仕上がりだ。

 加藤氏は「MNP(携帯電話番号ポータビリティ)でポートイン、ポートアウトされる方がキャッシュバックで優遇された。これは、長期利用者にとってのメリットという観点からすると(MNPで移行するユーザーが受けたメリットと)その差が大きい」と語り、契約期間に応じた割引を導入することで、長期利用のメリットを明確に出したとする。

 そこに、家族間でのシェア、最大2回線のマルチデバイスを1人で使う、といったニーズに対応しつつ、25歳以下を応援したいという概念を加えたものが今回のプランだという。

 フィーチャーフォンユーザーでも、スマートフォンへの移行をせずとも、データ専用でスマートフォンやタブレットを持つ、といったスタイルで利用しやすくなると加藤氏は指摘する。また、家族内で、子供が成長してスマートフォンを利用するようになっても、「通信量が増えてきたら1GB増やせるし、パック自体を10GBから15GBにしたり、20GBにしたりすることもできる。設計というと大げさだが、そういうプランになっている。全てのお客さまにピッタリではないかもしれないが、いろんな声を聞きながら絶え間なく検討していきたい」と自信をのぞかせた。

年末から検討開始

 料金プランの事業の中核の1つであり、さまざまな検討をしているという加藤氏は、今回の新プランは2014年になる少し前、2013年暮れごろから本格的な検討に入ったとする。

 検討開始から約4カ月で発表されたことになるが、既存プランとの整合性を踏まえて検討してきたこともあり、「本当はもうすこし早く発表したかった」(加藤氏)ものの、4月半ばでの発表になった。

複雑ではない?

 FOMA時代は、通話量に応じて、プランLLなど多岐に渡るプランが用意され、「わかりにくいと言われた」(加藤氏)ことを受けて、LTE方式の「Xi」ではシンプルな形にしたが、これも「選択肢がない」(同)と批判を受けた。

 今回のプランは「一見、複雑と見えるかもしれないが、よく考えると、カケホーダイとパケットパック定額料だけ。そこにU25割引、ずっとドコモ割が関わる形。その4つだけなので、それほど難しくないかと思う」と述べた加藤氏は、FOMA時代とこれまでのXiでの料金プランの中間にあたるようなプランになったのではないかと胸を張る。

通話しないユーザーには……

 これまで1000円以下の基本プランという形だったが、新プランは通話定額込みで3000円近い水準(スマホ向けの場合)になった。通話をあまり利用しないユーザーにとっては、デメリットではないのか、と質疑応答で問われた加藤氏は「基本はカケホーダイとパケあえる(データシェア)を一緒に使う形」としつつも、カケホーダイだけの契約、あるいはデータ通信専用プラン(スマホで月額1700円)での契約も可能と説明し、ニーズにあわせた利用が可能とする。

 またプランの根底には、利用した量に応じた支払いといった考え方があるとも語る。

加藤氏
 「音声の定額のところは、どの水準がいいか、ずいぶん検討させていただいた。データも利用状況を検証したところ、動画を中心に、パケット通信をたくさん使う形になってきており、負担いただく形を含めて(新プランでは)提案させていただいている」

スマホ向け電話サービスとの違いは?

 現在、LTE対応スマートフォンは30秒あたり20円(税別)と高止まりしている。一方、今回はスマートフォンで2700円(2年契約、税別)、フィーチャーフォンで2200円(同)で、他社回線も含めて、全ての国内通話がかけ放題となる。

 これまでの料金の高さから、「LINE電話」や「G-Call」「楽天でんわ」といったスマートフォン向け通話サービスに注目が集まっていたが、加藤氏は「キャリアの品質ということで、接続率の高さ、(110番など)緊急電話への対応といったあたりをもう一度、見直していただけることになればいい」とした。

ソフトバンクやMVNOとは「構造、思想が違う」

 キャリアの新たな料金プランとして、ソフトバンクモバイルからは、一定利用分が定額となる従量制プランが発表されている(※参考記事)。そうしたプランとの違いを問われた加藤氏は大きな違いがある、と解説する。

加藤氏
「ドコモのプランは、通話定額において通話時間や、利用の総時間といったところで制限がない。語弊があるかもしれないが、完全な定額です。パケットも個々の人にパックしているのではなく、あるパケットのサイズ(通信量)をグループでシェアいただける。根本的に構造が違うと思う」

 また通信量や通信速度を工夫しつつ、安価なプランを提供するMVNO各社との違いについても「速度や通信量といった水準面も異なり、設計思想が違う。それぞれお客さまが一番いいものを選べる形になっているかなと思う」と、ユーザーにとっては選択肢が増えるとの見方を示した。

Xiの既存プランは新規受付終了へ、FOMA向けは今後も提供

 今回の新しいプランにあわせて、これまで提供されてきたXi向けの各種プラン、割引サービスは8月末をもって、新規受付を終了する。もし新プランに変更した後、再び既存プランに戻りたくとも、9月以降は戻れなくなる。一方、FOMA向けのプランは、フィーチャーフォンユーザーが一定数存在することから、引き続き、新規契約できるようになっている。

 加藤氏は、こうした点も今後、ユーザーからの反響を踏まえて検討するとした。

料金水準も「これでいいんだろうと思っている」

 日本では、A社のユーザーがB社のユーザーへ電話をかけた場合、通話料は発信者であるA社のユーザーが負担する。そして事業者間でも「ネットワークを利用した料金」、すなわち接続料がA社からB社に対して支払われる。

 他社宛を含む通話定額は、こうした接続料をいかにまかなうか、といった点をカバーした上で提供されることになるが、加藤氏は「FOMAでは無料通話分を含み、Xiでは自網内(ドコモ内)定額を実現していたが、今回はそれを他社に広げ、ステップを踏んできた。価格のレベルもこれでいいんだろうと思っている」と説明する。

 料金水準は、これまでのユーザーの利用動向を踏まえて設定したものであり、通話定額によって短期的には減収になるものの、ユーザーの利用が広がることで「増収もあるだろうと思う」(加藤氏)とした。

2020年代を先取り

 総務省で2020年代を見据えて、現状の課題を洗い出そうという有識者会合がスタートした。

 今回の料金プランはそうした状況に対してどういった意義があるのか、加藤氏は「ユーザーの利用環境が変化して、モバイルICTサービスがずいぶん増えてきている。それに応えたいと思っていた。これからの時代を先取りしたというか、そういう料金プランに挑戦したということ」と位置付けた。

関口 聖