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スマホ時代にあわせて変化、ドコモが進める顧客接点の進化
(2013/7/19 19:42)
2年でスタッフは5500人増、オンラインサービスも強化、タブレットを活用して“待たせない接客”を実現する――NTTドコモが現在進める、接客サービス強化に向けた取り組みだ。
同社では19日、スマートフォン時代を迎え、さらに“スマートライフのパートナー”を目指す同社の方針にあわせて実施されている、店舗での取り組みやオンラインサービスなどについて説明会を開催した。プレゼンテーションを行ったNTTドコモ販売部長の鳥塚滋人氏は、「対応力、接点はドコモの強み。そこに磨きをかけたい」と意気込んだ。
6100万のユーザーと対する窓口
国内最大の携帯電話事業者であるNTTドコモでは、ユーザーとの接点も豊富に用意する。その規模(5月末時点)は、店舗が全国で2399店、スタッフが約3万8000人、電話窓口のオペレーターが約1800人というものだ。さらには会員向けWebサイト「My docomo」なども展開している。
こうした中でいくつかの課題がある、と鳥塚氏は指摘する。たとえばスマートフォンの普及拡大で、スタッフに以前よりも幅広い知識やスキルが求められるようになった。また店頭での説明の時間が長引く傾向にある。さらには「スマートライフのパートナー」という事業方針を掲げたことで、食材通販サービスの案内など商材が多様化している。
そこでドコモでは、店舗での取り組みを強化。またWebサービスも改善を図る方針だ。
刷新を続ける店舗
ドコモの店舗は、2011年に2393店舗で、今年5月には2399店舗と、わずか6店舗しか増えていない。しかし、既存店舗には大きく手が加わっている。2012年度には全体の1/4にあたる606店舗が改装、移転を実施。より広い場所へ引っ越したり、店舗を増床したりして、店内でユーザーとやり取りする場所であるカウンターの数は、2011年から1500カ所、増加し、2013年5月末には約1万6500カ所となった。店舗の増加数と比べれば、大幅にカウンター数が増えたことがわかる。
店内には、カウンターだけではなく、展示スペースも工夫がこらされ、テーブルのような什器の導入を促進。鳥塚氏は、この背景について「フィーチャーフォンでは並べてあるものを見比べる展示だったが、スマートフォンでは実際に操作して試せる、ということが重要。そこで机のような平台にして、ゆっくりとお試しいただけるようにした。あわせて店舗も大型化している」と語る。
スタッフの増員も図られた。2011年度末時点では約3万2500人だったが、この2年で5500人も増えて、約3万8000人になった。スタッフ向けには、以前よりドコモ内の資格試験を設けられ、スキルアップを促進する制度が整っているが、2013年度中には、「ご提案スキルアップ」を目的として、研修や資格制度の内容を見直す。
「30分以上待たせる」を3割削減へ
鳥塚氏は、店頭を訪れるユーザーにとって、30分以上待たされると満足度が大きく下がる、というアンケート結果を示す。2012年度では、店頭で30分以上待たされた割合は、来店客の16%程度だったが、これを今年度は30%削減することを目指していく。
そのために実施される施策が「タブレットアラジン」の導入だ。既に270店舗で試験的に導入された、このAndroidタブレットは、7月末までに全国1800店舗へ順次運用が開始されており、8月1日からは1800店舗全てで用いられる。「タブレットアラジン」は、ドコモが毎月発行するカタログ代わりとなるだけではなく、複数の端末を選んで性能を見比べたり、ユーザー情報へアクセスしてオプションサービスの契約・解約などが可能だ。
ドコモの顧客情報管理システム「ALADIN」と連携するタブレットだが、カウンター内のパソコンからアクセスする「ALADIN」と比べて、たとえば機種変更手続きは途中までしか進められないなど、一部の制約はある。それでも、「カウンターではなくフロア側で接客することで、店全体の回転を良くするという考え方」(鳥塚氏)に基づいた取り組みで、ちょっとした契約変更などは、スピーディに対応できるという。オペレーションの効率化だけではなく、ユーザー1人1人とフロアでコミュニケーションする、という狙いもある。
来店予約がスタート、11月にはコーポレートサイトを刷新
「30分以上の待ち時間」を減らす、もう1つの取り組みが、Webサービスの強化だ。
既存サービス「スマホお悩みサポートメニュー」は、スマートフォンの使い方を案内するサービス。2013年第1四半期には、月間724万人がアクセスし、1990万ページが閲覧された。2012年3月から提供されている「スマートフォンあんしん遠隔サポート」は、6月末時点で契約数が370万件、応対数は月間12万1000件に達している。
今回、新たなサービス「オンライン修理受付サービス」が発表された。これまで修理受付はドコモショップで対応していたが、7月24日から開始されるこのサービスでは、Webサイトを通じて24時間、365日、いつでも修理の受付が可能になる。
Webを通じた取り組みとしては、11月にもドコモのコーポレートサイトがリニューアルする予定も明らかにされた。docomo IDでログインすると、ポイントや料金プランなどが表示されるほか、ユーザーに適したキャンペーン情報などが案内されるのだという。
また、最寄り店舗の会員になる「マイショップ」のWebサイトでは、7月よりスマートフォンサイトがオープンし、来店予約機能が追加された。ショップを訪問する前に予約しておくと、来店後、最初に開いたカウンターへ優先的に案内されるという。このほか、端末の使い方を紹介する電話教室を予約することもできる。
今後は「マイショップサイト」でも商品の予約が可能になるほか、「My docomo」への導線が用意され、各種手続きへアクセスしやすくする。
新領域での取り組み
「スマートライフのパートナー」を目指すドコモは、通信とは異なる新領域にも進出しているが、店舗は新領域でもユーザーとの重要な接点となる。女性向け体調管理サービス「カラダのキモチ」は、全国の女性スタッフに一度体験してもらい、実感をもってユーザーへ案内できるようにした。食材通販のらでぃっしゅぼーやも紹介しており、店舗によっては数十件、獲得しているケースもあるという。
ツートップ販売数は150万に
鳥塚氏によれば、今夏、ドコモが進める“ツートップ戦略”により、Xperia Aは100万台、GALAXY S4は50万台、あわせて150万台の販売を達成した。この状況については、iモードから乗り換えたユーザーが一定数いた、と評価。一方で、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)は6月も転出超過となり、「一時、転出数は下がりかけたが、他社の関係もあって増えた。一定の効果はあったが、他の要素で打ち消されたと理解している」と分析し、ツートップ戦略の効果が限定的になったとした。
スマートフォンでは、多種多様なアプリが登場しているが、なかでも“ドコモ以外”が提供するアプリについて、ドコモショップに助けを求めるユーザーが来店するとどう対応するのか。鳥塚氏は「気持ちとしては、ショップでもそうしたニーズに対応したいが、スキルを育てるのが難しい」と述懐。他社のサービスまで調べ尽くすのは現実的に厳しいとの見方を示す。一方で、ドコモが5月からスタートしたサービスの1つ「スゴ得コンテンツ」に収録されるコンテンツについては、スタッフがサポートできるとして、最低限のレベルは維持したい、とした。パソコンなどに慣れていない人にとっては難しさもあるGoogleアカウントの取得も「どこまでやるか明確な基準はないが、スタッフの経験に基づいて応対できることもある」と述べた。
このほか鳥塚氏は、ドコモ直営ショップは現在約70店舗あり、新商材のテスト、人材育成などの場として活用していることは示しつつ、直営の旗艦店は現状展開する考えがないと説明。ショールームのような要素は、現状、6カ所あるというスマートフォンラウンジが担っている、とした。