ドコモとNTT Com、8月13日の国際ローミング障害の原因を発表


 NTTドコモとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、8月13日に発生した、ドコモの国際ローミングサービス「WORLD WING」の通信障害について、原因を発表した。日本国内にある、NTT Comの設備(国際共通線信号網)が原因だった。

 「WORLD WING」は、海外滞在中のドコモユーザーが、日本で使っている携帯電話を現地で利用できるようにする国際ローミングサービス。今回の通信障害は、8月13日18時24分~8月15日2時13分にかけて、WORLD WING対応エリア(世界220の国と地域)にいるユーザー約8万人が、現地で通話やパケット通信が利用しづらい状況に陥った。

 原因は、NTT Comの設備(国際共通線信号網)だった。国際共通線信号網は、通話やパケット通信とは別の“共通信号”をやり取りする装置。この信号は、いわゆる認証情報のことで、海外に渡航したユーザーが海外の携帯電話事業者へ接続した際、「この携帯電話はドコモのユーザー」「現在この国にいる」といった契約者情報、位置情報となる。そのためフィーチャーフォン、スマートフォンに関わらず発生する信号で、昨今のスマートフォンの急激な普及は今回の障害と関係はないとのこと。

原因の詳細

 国際共通線信号網内では、ドコモ側の設備(IP共通線信号中継装置、SGW、Signaling GateWay)と繋がるIP-STP(IP Signal Transfer Point)と、海外中継事業者に繋がる国際交換機が存在する。IP-STPと国際交換機は、8つのルートで繋がり、1つのルートには4つの線(リンク)が用意されている。通常は、8つのルートのうち国別に適切なルートを選択することになるが、今回の障害では、特定のルートに偏って信号をやり取りする設定になっていた。これが発生原因の1つとなる。また発生原因の2つ目として、4つのリンクのうち、2つのリンクにばかり信号が集中する設定になっていた。

 2つの原因により、4つのリンクが8本用意されたルートのうち、2本のリンクにトラフィックが集中することになった。この誤った設定は、今年3月、NTT Comが国際共通線信号網の装置を刷新したときから反映されており、過去数カ月に渡って続いてきたが、8月13日はお盆シーズンで海外渡航者が増加。通常、「WORLD WING」のユーザーは約7万人程度だが、特定リンクに集中して帯域が半減している中で、渡航者が約1万人増加したため、通信が滞ってしまった。

 こうした設定になっていたのは、NTT Com側のミスとのこと。装置の仕様に問題はなく、トラフィック平準化を実現するための設計が不十分だったという。

 8月14日には、発生原因の2つ目である特定のリンクに偏る問題が解消されたほか、8月16日には、発生原因の1つ目である国別のルート選択について、その一部が解消されており、9月上旬に再度、見直しが図られる。NTT Comでは今後、一部の国際通信事業者向け中継経路は、IP-STPから海外中継事業者へ直接接続する形に変更し、新型の国際交換機に移行させてネットワーク内の信号処理能力強化も図る。ドコモでは、NTT Comに収容している海外事業者の一部を、別の中継事業者へ変更する。両社では連携体制などの強化、ユーザーへの通知の迅速化もあわせて進める。




(関口 聖)

2012/8/29 12:25