イー・アクセス四半期決算、LTEは30万契約に


イー・アクセス代表取締役社長のエリック・ガン氏

 イー・アクセスは8日、2012年度第1四半期(2012年4月~6月)の決算を発表した。あわせてLTEサービスの進捗、さきごろ免許を獲得し2015年度頃のサービス開始を見込む700MHz帯についての説明も行われた。

 同社では、2015年に向けた中期計画を掲げており、2012年~2013年は「ステップ1」として、モバイルブロードバンドの強化を進め、2013年~2015年に「ステップ2」としてスマートフォン市場への再参入を果たし、契約数660万の達成を目指す。

ステップ1を進める業績

LTEサービスは30万契約、7月末には38万契約

 中期計画の第1段階として「モバイルブロードバンドの強化」を行うイー・アクセスにとって、3月に開始したLTEサービス「EMOBILE LTE」が今後の主力になる。ガン氏は、「EMOBILE LTE」は、ユーザーやメディアなどからの評価が高いとして、第1四半期時点で30万、そこから1カ月を経た7月末時点で38万契約に達していることを明らかにした。またモバイルWi-Fiルーターの販売シェアが、一時26.2%まで下がっていたところ、直近では42.2%にまで上昇したという。

LTEサービスのユーザー数の推移料金比較
ルーターの販売シェアも増加エリア拡充

 今後のサービス展開で重要な競争力の1つとなる「EMOBILE LTE」のエリア展開については、東名阪の主要都市における人口カバー率は6月末時点で99%に達したとする。今後は、全国政令指定都市や主要都市での人口カバー率99%を目指す。ただ、こうした限られたエリアだけではなく、全国での人口カバー率については、6月時点で40%台となり、2012年度末時点で約70%になる見込みとのこと。

 なお、従来より高速なデータ通信が可能になる「カテゴリー4」の導入について、同社代表取締役社長のエリック・ガン氏は「弊社の計画上は2012年度内。しかし、現状は国会などで法案の議論が始まっておらず、(カテゴリー4の導入に必要な新たな周波数の割当に)時間がかかるのではないか。現時点では不透明」とコメントした。

700MHz帯にかかる費用は

 今年6月下旬、NTTドコモ、KDDIおよび沖縄セルラー、そしてイー・モバイルに対して700MHz帯の免許が割り当てられた。現在、その帯域は、別の用途で利用されているため、基地局などの設備投資費用のほかに移行費用がかかることになる。今回の説明会では、そうした費用が今後、どの程度発生するのか、見通しが示された。

 同社の説明では、2015年度に予定する700MHz帯のサービス開始に向けて、既存利用者の移行費用は2013年度および2014年度に各180億円かかると見られている。設備投資額は、1.7GHz帯が、2012年度が450億円、13年度が300億円、14年度が250億円、15年度以降が200億円となり、700MHz帯は2015年度以降、毎年140億円となる。また、テレビへの干渉対策も通信事業者が負担する予定で、その必要は2015年度以降、毎年70億円かかる。

 こうした費用をまとめていくと、1.7GHz帯および700MHz帯には、年間400億円~500億円程度の費用がかかる見込みという。

700MHz帯に関する費用毎年400~500億円程度かかる見込み

契約数は413万件に

 同社の第1四半期の業績を見ると、売上高は544億2100万円(前年同期比14.3%増)、営業利益が41億5300万円(同36%減)と、増収減益となった。セグメント別に見ると、イー・モバイルの業績にあたる無線事業の売上高は447億9700万円(同26%増)、営業利益(セグメント利益)は12億7600万円(同48.9%減)となっている。

累計契約数は413万件7800件大口MVNOの新サービスへの提供がなくなり自社ブランドに

 第1四半期における累計契約数は413万7800件。純増数は12万1000件で、前年同期より45.7%減少した。これは、主に大口MVNOのソフトバンクモバイルを通じた提供が減少したため。ソフトバンクモバイルはAXGP方式による高速データ通信サービスを、イー・モバイルはLTEサービスを今春からスタートし、両社の補完関係が崩れた。この状況は、事前に想定されていたとのこと。また12万契約のうち、イー・モバイルブランド、つまり自社ブランドは73%を占める。会見では、これまでMVNOへの依存度が高かったが、ソフトバンクモバイルでの提供ではサポートコストを一部、イー・モバイルが負担していたという。MVNOを通じた顧客維持のためのコストは、第1四半期だけで50億円かかっており、ソフトバンクモバイルでのサービス提供がなくなることで、このコストの減少が見込まれており、営業利益改善に影響する見込み。

 今後、最も注力するポイントとして挙げられたARPU(ユーザー1人あたりの平均収入)については、2680円(前年同期比6.3%減)となった。過去1年間のARPUを見ると、1年前の2011年度第1四半期が2860円で、同年第2四半期と第3四半期が2期連続で2730円、第4四半期が2680円だった。今回は2期連続で2680円となり、イー・モバイルでは自社ブランドによるユーザー数の増加で安定したと評価。またARPU向上に繋がるオプションサービス(サポートやセキュリティ)は順調に増加しており、たとえばサポートとサービスの利用件数は前年同期から25万件増加し、今回は95万件になった。セキュリティサービスは前年同期から倍近くなり、28万件から55万件となった。こうした状況から、ガン氏は「ARPUのボトム(底)が見えてきた」として、減少傾向だったARPUに底打ち感が出てきたとする。また解約率は1.45%(前年同期は1.50%)となっている。

付加価値向上サービスもARPUと解約率の動向
LTEへの移行もショップ拡充も
顧客満足度も向上




(関口 聖)

2012/8/8 21:29