グリー、GREE Platformの現況とゲーム課題解決事例を紹介


グリーの田中氏
司会は福澤朗

 10億人が利用するサービスを作る。――グリーは今年5月、10億ユーザー獲得に向けた布石となるソーシャルゲーム基盤「GREE Platform」を発表した。8月3日、SNS「GREE」にゲームを提供する開発会社や、関連会社を招いたカンファレンスイベント「GREE Platform Summer Conference 2012」を開催し、現在の状況やグローバル展開などが語られた。

 「GREE Platform」は、「GREE」のグローバル展開に向け、アプリのデザインやユーザーインターフェイス(UI)などを海外と統一して展開するソーシャルゲーム基盤。AndroidやiOSをサポートする。海外展開を強めるグリーは、世界10カ所に拠点を設け、業務・資本提携などを含め、各国で「GREE」の“国際化”を図っている。

コンプガチャ問題から利用環境整備へ

 グリーの代表取締役社長である田中良和氏は講演の冒頭、いわゆるコンプガチャ問題に端を発するソーシャルゲームの利用環境整備の状況について言及した。

 同氏は「ソーシャルゲームが多くのユーザーに使ってもらえるようになったのは良いことだが、サービスの大きさによって社会的な要請が変わってくる。社会の要請に応えるサービスにしていなければ世界で戦えない。ソーシャルゲーム業界として、プラットフォームとして考えていかなければならない」などと語り、自社の取り組みとSNS各社が設立準備を進めるソーシャルゲーム利用環境整備協議会(仮称)についてあらためて説明した。協議会は2~3カ月後には設立される見込みで、状況は適宜公表していくという。



事業面での進捗状況

 次いで、4~8月までの事業面での取り組みについて説明した。

 グリーは、今年5月に米国でiPhone向けゲームなどを提供するFunzioを買収し、北米エリアのゲームビジネスのノウハウを吸収、コンテンツ力の強化を図った。田中氏はFunzioについて、「いわゆるカードゲームの会社ではない」と語り、ソーシャルゲームが型通りのカードコレクション系ゲームばかりではないことをアピールしていた。FunzioはシミュレーションRPGに強く、北米では一定の市場を築いているiPad向けゲームなども展開しているという。

 田中氏の説明によると、「GREE Platform」は現在169カ国に配信可能な状態にあり、現在、地域ごとに異なる収益モデルの検討を行っている。GREEで提供している内製ゲームタイトルなどは、ローカライズ版が海外で配信されており、インドで釣りゲームが人気などと紹介された。



有力IPとの提携、自社IPを使った新たなビジネスへ

 またグリーは、バンダイナムコゲームズなどゲーム開発会社、およびアニメやゲームといったキャラクターの版権を保有する企業と組んだ事業展開を行っているほか、7月には、人気ソーシャルゲーム「探検ドリランド」をモチーフとしたアニメ放送を開始している。有力なIP(知的財産)企業と手を組みつつ、自社コンテンツのIPビジネス化も展開する方針で、田中氏は「成功事例を作っていきたい」などと述べた。



 なお、海外拠点としては、11カ所目となるバンクーバーオフィスの設立に向け、現在準備中。グリーは、国内の「東京ゲームショウ」だけでなく、米国の「E3」、欧州の「Gamescom」、中国の「ChinaJoy」といった主要なゲーム見本市に出展することで、モバイルゲームのプレーヤーとしての存在感を強めていきたい考えだ。



 さらに田中氏は、グローバルでサービスを提供することについて触れて、利用者を性別や年齢、OSなどの視点で比較検討していたが、国という視点が加わったことを紹介。意思決定の方法も含めて作り変えているとした。

 このほか、グリーは子会社のグリーアドバタイジングを通じて、広告出稿の効果測定を一元化できるスマートフォン向けソリューション「GREE Ads Tracking」の提供を開始する。

ゲームジャンル毎の課題、解決事例

グリーの小竹氏

 次いで、グリーの執行役員でマーケティング事業本部長の小竹讃久氏が講演した。同氏は「GREE Platform」で提供している各ゲームジャンル毎の特徴や課題を挙げ、提供から1年程度が経過したゲームタイトルのリテンション成功事例を紹介した。

 「GREE Platform」の主要ゲームジャンルは「カードバトル」「シミュレーション」「恋愛ゲーム」の3つ。それを「継続率」「消費率」「ARPU」といったKPI(主要な評価軸、指標)に照らし合わせた表を示した。

 主な課題はそれぞれ、「カードバトル」は消費率やARPUが良いが、継続率が課題、「シミュレーション」は継続率やARPUは良い反面、消費率が課題、「恋愛ゲーム」は継続率や消費率が良いものの、ARPUが弱いとされた。講演では、それぞれの解決事例が紹介され、投入したゲームコンテンツを適宜改善していくことが市場を拡大していく上で重要とした。

 小竹氏は、「提供から1年たっているアプリでも、改善するとちゃんと数字に跳ね上がることが実証されている。既存のコンテンツもより大きくできる。どれだけ細かく分析していくかが海外展開していく上でも重要」と話した。なお、ゲームジャンル毎の解決事例は以下の通り。



解決事例

【カードバトル】
 リリースから1年弱のファンタジー系カードバトルゲーム。コイン消費は月間1億コイン程度。調査の結果、1日後の継続率が低いと判明し、問題は、登録時やチュートリアルでの報酬が魅力的でない点、ゲームバランスやUIなどと仮定された。



 これに対して、上位タイトルや自社タイトルと比較検討し、ユーザーのログイン後のトラッキング、ゲーム内のレベル別の離脱率、クエストの進行率やバトル参加率といった詳細も分析し、最終的な改善ポイントをログイン後の離脱と少ないインセンティブ、UIの悪さと決定した。

 対策として、ログイン毎に体力回復プレゼントを用意し、レベル20までは経験値が約2倍得られるといったゲームバランスを調整、利用者の離脱ポイントについてはページ遷移を変更し、カーソル位置なども変えたところ、改善率は180%となった。

【シミュレーションゲーム】
 リリースから1年弱のファッション系シミュレーションゲーム。コイン消費は月間1000万程度。調査の結果、課金率が低いと判明した。



 クエストの進行率やユーザーが仲間を巻き込むといったソーシャルアクションの実行率、多人数で倒すRAIDボスの撃破率などの詳細を分析した結果、RAIDボスに勝てない点が改善ポイントとされた。

 ゲームでは難易度が見直され、仲間を集めた方が有利になるよう仕様を変更、ボス撃破後のインセンティブを強化した結果、改善率は200%となった。

【恋愛アプリ】
 リリースから1年弱の恋愛アプリ。コイン消費は月間8000万程度。調査の結果、ARPUが課題とされた。

 課金額別、年齢別のユーザー分析、アイテムの消費状況やイベント消費状況を分析した結果、改善ポイントはプラチナユーザーの離脱とされた。ゲームでは、チケット販売量と価格バランスを見直し、デコレーション用度といったアイテム課金型コンテンツを用意し、さらにオンライン対戦要素を加えた。対策後の改善率は150%となった。


 




(津田 啓夢)

2012/8/3 15:20