MCFのモバイル市場調査、スマホの急成長とソーシャル依存


 モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)は、2011年1月~12月のモバイル関連市場の調査結果を公表した。

 MCFでは、着信音やゲームなどのデジタルコンテンツの有料配信市場を「モバイルコンテンツ市場」、物販(通販)やサービス系(各種興行、交通系チケット販売)、トランザクション系(証券取引、オークション、公営ギャンブルなどの手数料)の「モバイルコマース市場」とし、この2つの市場を「モバイルコンテンツ関連市場」と呼んでいる。

2011年のモバイル関連市場は1.9兆円市場

 モバイルコンテンツ関連市場は2011年、対前年比115%の1兆9061億円となった。このうち、モバイルコンテンツ市場は対前年比114%の7345億円、モバイルコマース市場は対前年比116%の1兆1716億円だった。


モバイルコンテンツ市場の推移

スマートフォンはAndroidが前年比5.3倍に拡大

 携帯電話契約数は2012年6月末時点で1億2577万契約で、ネットにアクセスできるモデルは1億345万契約となっている。スマートフォンのプラットフォーム別データでは、2010年12月時点でiPhoneが378万ユーザー、Androidが217万ユーザーだったが、翌年の2011年12月には、Androidが1146万ユーザー、iPhoneが674万ユーザーとなった。

フィーチャーフォン市場が9割、スマホは急成長

 前述した通り、デジタルコンテンツの有料配信市場となる「モバイルコンテンツ市場」は2011年、7345億円規模だった。このうち、フィーチャーフォン向けの市場は対前年比101%の6539億円と、前年並みの市場規模となったが、参考値として公開されたスマートフォン向けの市場は、前年比655%の806億円と市場規模こそフィーチャーフォンに及ばないが、成長著しい結果となった。

 フィーチャーフォン向け市場のうち、着信音やモバイルゲーム、装飾/きせかえなどの市場はいずれも前年を下回る市場規模となった。その一方で、ソーシャルゲーム市場のアバターやアイテム課金は前年比150%の2078億円市場となった。このほか、天気/ニュースが110%の140億円、動画市場が109%の176億円となっている。


フィーチャーフォン向けモバイルコンテンツ市場の推移

スマホでコンテンツ市場のソーシャルゲーム依存度深まる

 また、スマートフォン向けコンテンツ市場の課金方法において、ソーシャルゲームの追加課金方式の構成比が58.3%と最も高く、806億円市場の470億円を占めた。次いで月額課金が25.6%の206億円、ダウンロード課金が16.1%の130億円となった。

 コンテンツ別では、スマートフォン向けコンテンツの実に59.7%あたる481億円がソーシャルゲームによるもので、MCFではスマートフォンへの移行で、ソーシャルゲームへの依存度が高まっていると分析している。

 なお、モバイルコンテンツ市場におけるソーシャルゲーム市場は2559億円、対前年比で184%と伸びている。


モバイルコンテンツ市場におけるソーシャルゲームの推移

スマホの大画面がモバイル通販を活性化

 物販やサービス系、トランザクション系の「モバイルコマース市場」は2011年、1兆1716億円規模となった。各市場の内訳は、物販系が対前年比133%の5839億円、サービス系が対前年比103%の4249億円、トランザクション系は対前年比103%の1628億円となった。

 物販系は、スマートフォンやタブレットへの移行によって、大画面ディスプレイが通販市場の活性化を促す結果となった。サービス系は成長が鈍化しているが、今後NFCなどの非接触IC搭載のスマートフォンが増加することで、市場拡大が予想される。


モバイルコマース市場の推移

フィーチャーフォン市場の減少に歯止め

 MCFでは、モバイルコンテンツ市場においてフィーチャーフォン向け市場が減少傾向にある要因を、フィーチャーフォン向けの月額課金モデルがスマートフォンへの移行で引き継がれず、自動解約されたためと説明する。ただし、2011年後半より、Android端末へコンテンツを引き継げる措置が講じられ、市場の縮小に歯止めがかかると見ている。

 また、スマートフォンはパソコンのような利用環境となるため、無料コンテンツが多数存在しており、ユーザーもコンテンツを無料で利用する感覚を持っている。無料を前提としていわゆるフリーミアムのビジネスモデルがスマートフォンに相性が良く、売上げ増に繋がるとしている。

スマートフォンの阻害要因、その中で伸びるソーシャルサービス

 このほか、フィーチャーフォンではキャリアのポータルからコンテンツへ誘導する導線があったが、スマートフォンには多数のプレイヤーが存在し、コンテンツへの導線が多い一方で複雑化している。MCFでは、リテラシーの低いユーザーにとって、コンテンツ利用の阻害要因になっているとしている。

 また、Android端末では端末間に差異が大きく、端末毎の対応がアプリ配信事業者の開発負担になっているとし、ひいてはそれがユーザーのクレーム増となり、市場拡大の阻害要因になるとしている。さらに、著作権保護の観点でも未整備な部分があり、キャラクターコンテンツが十分に提供できないとしている。

 こうした中で、スマートフォン向けのソーシャルゲーム市場はフリーミアムモデルによって伸びており、MCFでは「新たなモデルが直面する日本社会特有の軋轢も発生しているが、社会的な環境整備が進むことで、データマイニング等のマーケティング手法や効率製と多様性を実現するゲーム配信技術が成長要因となる」としている。

 

(津田 啓夢)

2012/7/20 19:22