総務省、情報通信白書を発表


 総務省は、「情報通信に関する現状報告」としていわゆる情報通信白書を公表した。Webサイトで公開されるほか、政府刊行物として書店などでも販売される。

 情報通信白書は、情報通信関連の現状や、情報通信政策の動向などを総務省がまとめた報告書。1973年より作成されており、今回で40回目を迎える。今回は特集テーマに「ICTが導く震災復興・日本再生の道筋」を据えて、震災復興と日本再生への道筋をICTを軸にまとめている。

 Webサイトでの公開や紙書籍での販売のほか、7月末を目途に、スマートフォン・タブレット端末向けにEPUB版電子書籍を無料配信(昨年までは有料)するほか、動画版を電子書籍に添付する。

 さらに、Facebookやmixiなどを活用し、SNS上で意見募集して投稿をまとめて白書の読者参加コラムとして掲載する。

スマートフォン普及でユビキタスネット環境完成

 情報通信白書では、スマートフォンなどの普及によってユビキタスネット環境が完成し、膨大な情報の流通や蓄積されたデータの活用といった、ビッグデータ関連についてまとめらている。また、ユビキタスネット環境が整った一方で、サイバー攻撃の脅威が顕在化したとし、97%の企業が何らかの情報セキュリティ対策を講じている状況とされた。

 スマートフォンは2009年から2011年にかけて、世界で2.7倍、アジア太平洋地域で4.2倍に市場が拡大した。市場を牽引したのは、アップルとAndroid勢の中国、韓国、台湾系企業だ。日本の通信キャリアもスマートフォンにシフトし、異業種連携など付加価値領域を推し進めたとされた。

 なお、国内のICT産業のうちネットワーク関連の比率は5割を超え、とくにモバイルネット関連の市場規模が突出している。白書では、スマートフォンの登場でモバイル産業はプラットフォームを確保し、アプリベンダーを取り込んで利用者を誘導するエコシステムの競争になったとしている。とくに、検索や音楽/動画配信の分野でグーグルとアップルの比重が高まったという。

 このほか、スマートフォンの普及などで商取引も活発になり、サービスや広告、端末市場の消費が拡大。経済波及効果は年間で約7.2兆円、雇用創出効果は33.8万人と見積もられた。

災害時における携帯電話への期待

 震災関連では、ネットの先進ユーザーの間でソーシャルメディアを介した即時性、地域性の高い情報収集がなされた。携帯電話は評価が高く多くの人が所持して避難したが、停電や基地局の倒壊などで長時間使えなかったことへの影響に関する指摘が多い。

 なお、地震のニュースに最初に接触したメディアはテレビが53.4%と最多で、SNSなどは0.9%とソーシャルメディアの比率は低かった。災害関連情報を得るのに役立った情報源はテレビは63.1%と他を引き離したが、欲しい情報が得られた情報源については、テレビ(88.2%)に次いでニュースサイト(87.3%)が高かった。

 総務省では、災害時には放送や携帯電話、ネットやソーシャルメディアなど、多様な情報伝送手段でエアポケットが生じないよう、迅速かつ確実な情報提供が求められるとする。また、身近な情報ツールである携帯電話は、ネットワークの耐災害性の強化、端末の機能強化の両面が求められるとしている。

 

(津田 啓夢)

2012/7/18 14:41