今週のケータイ Watchの読み方 (2012年7月13日)


KDDIのベンチャー支援が次のステージに


 

 KDDIは、ベンチャー支援の取り組み「KDDI ∞ Labo」(KDDIムゲンラボ)の第3期の参加メンバーの募集を開始した。新たに学生を対象とした枠も追加されている。

 田中社長が現時点で「ビジネス効果は無い」と語るように、ベンチャー支援の取り組みは比較的長期に渡る取り組みだ。一般的なベンチャーキャピタルは、支援したベンチャー企業が成功し、株式を公開した際などにリターンを得る。一方、KDDIは通信事業者であり、モバイル市場でプラットフォームを展開している。そうしたプラットフォームの上で、ベンチャー企業がきっかけとなってサービスやコンテンツが新たに発展すれば、KDDIにとってのリターンということになるだろう。折しもKDDIはマルチデバイス戦略などを進めており、参加するベンチャーにとってもアイデアを実現するための手段や選択肢は幅広い。

 スマートフォンの普及により、従来よりもオープン化された市場に参加しやすくなっているという環境の変化も、こうした大企業によるベンチャー支援の動きと無関係ではないだろう。“サービス・コンテンツが生まれるきっかけ”という意味でも、スマートフォンの普及は大きな潮流を生み出しているのだ。また、起業しやすい環境、失敗した人が再スタートしやすい環境は、優秀な人材を活躍しやすくするという意味でも重要だ。

 本誌では、携帯電話キャリアが手がけているということでKDDIの取り組みを紹介する機会が多いが、比較的規模の大きい取り組みとしては、NTTグループが支援する形でNTTレゾナントが「Challengers」を開催している。当初はNTTレゾナントの社内ベンチャーを対象にしていたが、最近では社外からも募集している。ベンチャーの開発したサービスの一部は「gooラボ」で公開され、試すことができる。

 「KDDI ∞ Labo」のような取り組みに参加したり、選ばれたりしたベンチャー企業にとっては、サービスやコンテンツが形になってからが本当のスタートだ。そこでは他者より優れていること、そして何よりも“知ってもらう”ことといった、これまでとは別軸の取り組みも求められる。「KDDI ∞ Labo」の参加者からは、今後のPR活動に対する不安や、支援を求める声もあるようだ。

 北米では、ベンチャーキャピタルとテック系メディアが連携した例もあり、メディア側のジャーナリズムに対して疑問が投げかけられるといったことも一部で起こっているが、いずれにしてもスタートアップ企業の認知度向上という課題は日本に限った話ではない。PR体制の面でも、初期段階で支援するような取り組みがあれば、参加者にとってより心強いものになるだろう。

 


起業支援プログラム「KDDI ∞ Labo」の第2期終了、次は学生枠も

 

(太田 亮三)

2012/7/13 21:25