エコ活動にインセンティブ、ドコモが考える環境ビジネス


ドコモの高木氏

 NTTドコモは8日、同社の環境ビジネスへの取り組みに関する説明会を開催した。NTTドコモのフロンティアサービス部長の高木一裕氏より、ドコモのソーシャルサポートサービスの一端が語られた。

 12月7日、デンマークにおいてCOP15が開幕した。COP(Conference of Parties:締約国会議)は各国の環境担当大事が集まり、国連気候変動枠組条約の成果について話し合う代表者会議のこと。今回の説明会は、環境問題について注目の集まるこのタイミングに、ドコモの環境ビジネスについて紹介しようというものだ。

 ドコモでは、環境/医療/金融/教育/防犯の各分野をソーシャル事業の5本柱に据えて事業展開しており、高木氏によれば環境・エコロジー事業はまだ“弾込め”の段階という。現政権与党である民主党は、環境政策の1つとして、2020年までにCO2の排出量を25%削減(1990年比)するとしている。産業や運輸、業務などそれぞれの部門においてCO2の削減が必要となり、ドコモは家庭・個人でのCO2排出量の削減が“カギ”になると認識しているとのこと。

 また、政府はエコ関連の対策として、エコポイントやエコカー減税などを展開しており、産業界はエコ家電や太陽光発電、エコカーなどで環境ビジネスを進めている。こうした施策は一時的なもので社会的な導入コストも大きいが、ドコモでは「持続的で導入コストの小さいもの」を展開していく方針だ。

 高木氏は、5400万のエンド-ユーザーとの接点、資本提携、それらを繋げる力をドコモの資産と捉え、個人の環境・エコロジー活動を促進させる社会インフラを構築すると説明。エコロジー関連の情報配信や提携会社のエコ活動を紹介していくほか、環境・エコロジー活動を支援するような視覚化されたサービスの提供や、エコ活動によってポイントが貯まるような仕組みも用意していくという。「エコインセンティブを作り、最初はゲーム感覚で取り組めるようなものになるかもしれないが、将来的に個人のCO2排出権取引に繋げたい」と話した。



今後の取り組み

 ドコモでは、既存の基地局設備に搭載できる環境センサーの敷設を始めており、12月21日から関東と静岡県において試験運用を開始する。当初は300カ所の基地局などに花粉センサーが搭載され、2010年1月より商用サービスを展開するとしている。2010年度には全国2500カ所にエリアが拡大される予定で、将来的には全国9000カ所、5km四方をメッシュでカバーしていく計画だ。紫外線やCO2、雷雨などのセンサーを追加していく予定で、導入コストは花粉センサーのみで1台10万円程度、各センサーと合わせて場合に40万円程度になるとした。

 また、自転車をシェアして利用する「サイクルシェアリング」についても紹介し、2010年6月から札幌で実証実験を行うと語った。携帯電話で自転車を予約・決済し、おサイフケータイで自転車のロックを解除する。サイクルポートの監視や自転車の位置などにも通信を活用するというものだ。利用者はさらに、乗った距離に応じたカロリー計算などもできるという。

 ドコモでは今後、エコポータル事業、エコライフサポート事業、エコインセンティブ、リサイクル事業などの環境ビジネスを展開していく。エコポータル事業は、環境活動のポータルを作り、会員に対して環境に関する情報配信やエコ商品を紹介していくもので、2010年度早々にも提供される予定。

 エコライフサポート事業は、家庭内の電源タップなどの電力を可視化するというもの。対応する電源タップに接続すると携帯電話から消費電力が確認でき、省エネ効果に応じてインセンティブが貯まっていくというもの。ドコモでは現在、電源タップを開発中で、2010年度の実用化を目指すとしている。

 エコインセンティブは、前述のエコライフサポート事業と関連するもので、エコ活動によって貯まったインセンティブをマネタイズし、エコ関連商品などに充当できるというものだ。ポイントサービスとなるが、ドコモポイントなどとは連携しないという。

 高木氏は、銀行以外の事業者にも資金移動サービスを認める「資金決済法」にあわせて展開していく方針を示した。ちなみに、フロンティアサービス部は「ドコモ ケータイ送金」なども手がけている。このほか、携帯電話のリサイクルについても言及し、完全循環型のモデルを構築していくとした。

 ドコモでは、環境ビジネスにおいて、3年で100億円程度の収益をあげていきたい考え。ソーシャルサポート事業全体では1000億円程度となる。


花粉センサー花粉センサーの本体。空気を吸い込み花粉を検知するデータ蓄積部
電源タップの試作機複数電源対応モデル電気料金をチェック
消費電力データ開発部隊では実際に試験導入している。これは実際の利用データルーターなども携帯で制御
携帯電話のディスプレイをリユースしたデジタルフォトフレーム背面部USBで画像を転送

 



(津田 啓夢)

2009/12/8 14:28