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3Dモデルをリアルタイムで作成、触感を生み出すデバイス~最先端技術が集う「コンテンツ東京2017」

 6月28日~30日までの3日間、東京ビッグサイトにてコンテンツビジネスの総合展示会「コンテンツ東京2017」が開催されている。

 同展示会は、コンテンツの制作者や配信者を主な対象とした展示会で、「先端コンテンツテクノロジー展」「コンテンツマーケティングEXPO」「ライセンシングジャパン」「コンテンツ配信・管理ソリューション展」「クリエイターEXPO」「映像・CG制作展」「グラフィックデザインEXPO」から構成されている。モバイルに関係する展示は少ないが、最先端の技術を活用したユニークな展示をピックアップしてレポートをお届けする。

ドコモ発表会でも登場したリアルタイム3Dスキャンシステム

 クレッセントは3Dモデルをスキャニングする業務向けソリューションを展示している。専用スタジオで複数のカメラを並べて3Dモデルを作るというソリューションで、実際の人物を動きを込みで3Dモデル化できるのが特徴。

4D Viewsで3Dモデル化されたアイドル。これをVRゴーグルで視聴したりできる

 この3Dスキャンにはフランスの4D Viewsという技術を使っていて、クレッセントはこの4D Viewsのための撮影スタジオサービスおよび3Dモデルの調整サービスを提供している。展示では3DモデルのアイドルをVRゴーグルのHTC Viveで身近に見られるようになっていた。

 通常は3Dスキャン後、オフラインで細かい3Dモデルを調整するが、無調整で3Dモデルを生中継でストリーミングすることもできる。NTTドコモの2017年夏モデル発表会では、スタジオブースにいる吉澤社長をリアルタイムで3Dモデル化するというデモンストレーションも披露されていた(※関連記事)

 このシステムで作られる3Dモデルは、テクスチャーなどもアニメーション化するため、そのデータ量は通常の3Dモデルと比べて桁違いに多い。ストリーミング配信すると、4K動画も上回る数十Mbpsクラスの伝送容量が必要となる。そのため、NTTドコモでは次世代通信技術の応用例として、同システムのデモンストレーションを発表会などで紹介した形だ。

何もない空間に触感を生み出すUltrahapticsのデバイス

 コーンズ テクノロジーは同社が代理店となって販売している、超音波を使って疑似的な触覚を作り出すUltrahaptics(ウルトラハプティクス)社の製品を展示している。

 Ultrahaptics社のデバイスは、アレイ状に配置された小型の超音波スピーカーを使い、任意の点で合焦するように各音波の位相を制御している。やや強引な説明をすると、Massive MIMOの音波版とも言える技術だ。

Ultrahapticsのデバイス。小さなスピーカーが大量に並んでいる

 展示されていたのは開発キットで、手のひらを立体的に認識するデバイス「Leap Motion」と組み合わせ、手のひらの表面に触覚を生み出していた。実際に試してみると、小さなシャボン玉が当たったような、あるいは風でできた壁のような触感が得られた。なお同デバイスの消費電力は比較的大きく、モバイル機器への搭載には不向きとのこと。

「Insta360」のプロ向け機材や、放送グレードのノキア製全球カメラ「OZO」

Insta 360のNano(右)とAir(左)。いずれもスマホに直結できる(Nanoは単体撮影も可能)

 アスクは同社が販売代理店を務める全球撮影カメラの「Insta360」シリーズを展示している。Insta 360はiPhone向けの「Insta360 Nano」とAndroidスマホ向けの「Insta360 Air」がすでに発売中だが、より高機能なモデル「Insta360 Pro」が今後発売される。Insta360 Proは業務向けで、数十万円の価格帯となる見込み。

 アスクではさらに高性能な全球カメラとして、ノキアの「OZO」も展示していた。OZOは完全にプロ向けのモデルで、数百万円の価格帯となっている。大統領演説の撮影などに使われた実績があるという。

OZO。後部の出っ張りに交換式のバッテリ・ストレージユニットがあり、NOKIAロゴも入っている

解像感とビットレートを両立させる「パノラマ超エンジン」

 VRゴーグルなどで視聴する全球動画は、実際に再生するときは、その一部分のみが切り出されて表示される。表示されていない部分の映像も、視線を変えたときに遅延なく表示するために必要で、たとえば視聴時の解像感がフルHDクラスでも、動画自体は4Kクラスの解像度が必要となる。

 NTTテクノクロスは4Kクラスの全球動画と同時に、表示する部分のみの高解像度動画を配信して合成することで、解像感とビットレートを両立させる配信技術「パノラマ超エンジン」の展示を行っている。解像感としては8Kクラスに匹敵するが、8Kクラスに比べると数分の1のビットレートで済ませられる。

通常の動画をトリガーに全球動画を起動させる技術なども展示

 この技術では表示する部分の高解像度動画を、視線方向が変わるたびに取得し直すが、視線を変えてから数秒でシームレスに高解像度表示へと切り替わる。再生にはパノラマ超エンジンに対応したアプリが必要だが、すでにクロスデバイスの「idoga」などの商用アプリに実装されている。

 このほかにもNTTテクノクロスでは通常の動画を画像認識して全球動画にリンクさせる「透かし連携4Kライブ配信」など、全球動画関連の各種技術を展示している。

NTTドコモのオープンAIプラットフォーム

 コンテンツ東京の併設展示会として、「AI・人工知能EXPO」も同会場で開催されていた。AI・人工知能EXPOは今回が第1回となるが、注目度が高いジャンルだけに、多くの来場者が詰めかけていた。

 AIの活用例として多いのはチャットの自動応対、いわゆるチャットボットで、実際にユーザーサポート業務で使われていて、MVNOでの導入事例もあるという。

ドコモのAIプラットフォームのデモ。スマートスピーカーなどを使って家電の操作や別のAIエージェントの呼び出しなどを行っていた

 モバイル業界に関連するところでは、NTTドコモが対話型AIプラットフォームを出展。デモンストレーションやプレゼンテーションを行っている。NTTドコモ以外の開発者向けにもオープンに提供されるもので、サードパーティが対話型AIを作り、自社製品に組み込むことができる。

 NTTドコモにはスマートフォン向けの対話型AI「しゃべってコンシェル」があるが、ドコモのAIプラットフォームは基幹技術に共通部分があるものの、別のものとして開発されている。

Sebastienはオープンなプラットフォームとして展開する

 ユニークなのは、対話型AI同士で連携ができるというポイントだ。たとえばタクシー会社が対話型AIを作っていれば、「タクシーを呼びたいんだけど?」と質問すると、タクシー会社の対話型AIへシームレスに切り替える、といったことが可能となっている。

 開発者向け先行トライアル版は、「AI・人工知能EXPO」の初日となる6月28日より事前登録の受付を開始した。実用化は来春を目指しているという。