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「この1年半で急速にワイヤレスオーディオが浸透した」、スマートスピーカー時代の覇権を狙うクアルコム

クアルコム シニアバイスプレジデント兼 Voice & Musicビジネスユニットゼネラルマネージャー Anthony Murray氏

 20日、米クアルコムでオーディオ製品を担当するシニアバイスプレジデント Anthony Murray(アンソニー・マレー)氏が来日し、報道関係者向けに今後のオーディオ市場での展望を紹介した。

 クアルコムはスマートフォン向けのチップセットなどを設計開発し、デバイスメーカーへ供給する半導体メーカー。2014年に同業の英CSRを買収し、オーディオ製品分野への取り組みも強化している。

 マレー氏は、オーディオ市場のトレンドの変化を「この1年半で急速にワイヤレスオーディオが浸透した」と紹介。有線ヘッドホンに匹敵する音質を実現するオーディオ技術の登場などにより、ワイヤレスヘッドホンやスピーカーが普及している状況という。

 もう1つの大きな動きが、AIを搭載したスマートスピーカーの普及だ。米国ではAmazonの「Alexa(アレクサ)」や、グーグルの「Google Home」、アップルの「HomePod」などの製品が相次いで発表され、徐々に浸透しつつある。こうしたスマートスピーカーは、ユーザーが話しかけた内容を認識する「ボイスコントロール」や、音声で反応を返す「ボイスUI」が、ネットワークへの接続性が重要になる。

 クアルコムはこうした技術に対応した「スマートオーディオプラットフォーム」を用意し、デバイスメーカーやOEMベンダーが短期間・低コストで開発する環境を整えた、とマレー氏は説明した。

 さらに今後は、身につけるデバイスにさまざまなセンサーが取り付けられた「ヒアラブル」と呼ばれる分野が発展していく見通しだ。この分野ではスマートスピーカーと同様の技術が必要とされるのに加え、さらなる小型化や低出力化も求められる。クアルコムはBluetoothオーディオ製品を強化していくことで、こういった市場の変化に対応する方針だ。

 クアルコムは「スマートオーディオプラットフォーム」をはじめとした、オーディオ分野の新製品を6月15日に発表している(※関連記事)。5つの製品カテゴリーに沿って、それぞれの新製品が紹介された。

 「スマートオーディオプラットフォーム」は、ボイスUI、ボイスコントロール、ネットワーク接続など、スマートスピーカーやヒアラブル製品に必須とされる機能をまとめたプラットフォーム。離れた場所からの音声検知や、発話中のキーワード検知、複数のスピーカーで音楽を同期再生する「AllPlay」などが組み込まれている。Snapdragonシリーズのアプリケーションプロセッサー「APQ8009」(Snapdragon 212)と「APQ8017」がサポートする。

 Bluetoothオーディオ向けのチップセット製品分野では、プレミアムセグメントとミドル・ロー向けの新製品を発表。買収したCSRから引き継いだ高い市場シェアを誇る同分野では、「総合的な製品ポートフォリオが強み」(マレー氏)という。

 ハイエンドのヘッドホンなどに搭載されるプレミアム帯のチップセットでは、CPUとDSPを2基ずつ搭載した「CSRA68100」を発表。CPUのうち1つはデバイスメーカーが組み込んだ独自のアプリケーションを実行するために確保されており、柔軟な製品開発に対応するという。

 ワイヤレス製品への移行と並んで、市場トレンドとなっているのがUSB Type-Cのサポートだ。「HTC U11」など、3.5mmジャックを非搭載にした製品も登場している。クアルコムではこうした状況を踏まえ、USB Type-Cコネクター搭載のヘッドホン、スピーカーを開発しやすくするチップセットを発表している。

 音質への取り組みではデジタルアンプ技術「DDFA」(Direct Digital Feedback Amplifer)を提供する。これまでの製品では2チップ構成となっていたが、次世代製品は1チップにすべての機能を搭載。よりシンプルで低コストな設計を可能とした。マレー氏は「限られたハイエンド分野から、より幅広い用途にDDFAソリューションを提供できるようになった」と語った。