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KDDI、兵庫県豊岡市と地域活性化で包括協定締結

観光活性化にビッグデータを活用

豊岡市長の中貝宗治氏(右)とKDDI 代表取締役 執行役員 副社長の高橋誠氏(左)

 KDDIと兵庫県豊岡市は、地域活性化を目的とした包括協定を締結した。

 両者では、国内観光客と訪日外国人観光客に対してビッグデータを活用した観光動態分析を行い、豊岡市の観光資源を有効に活用して観光の活性化を図る。加えて、KDDIが運営するショッピングサービス「au WALLET Market」で「豊岡鞄」や「コウノトリ育むお米」など、豊岡市の特産品の取り扱いを開始する。

au WALLET Marketでは豊岡鞄などの特産品が取り扱う

 観光の活性化のほかにも、仕事や市民生活を向上させたり、ICTを活用した農業・漁業支援といった産業振興など、同地域の課題解決を図るための包括的な取り組みについても検討を進めて行く。例えば、KDDIが資本業務提携しているランサーズによるクラウドソーシング事業を活用し、豊岡市に居住したまま都市部の企業での仕事に従事できる仕組みの提案などが検討されている。

豊岡市とKDDIが組んだ背景

豊岡市長の中貝宗治氏

 豊岡市長の中貝宗治氏は、「豊岡を含め、地方の最大の課題は人口減少対策。高校卒業時に80%が豊岡を離れ、20代では転入超過になるが、10代で失われた人口の35%しか復活しない。なぜこんなにも帰ってこないのか。ここに手を付けようというのが豊岡市の地方創生の基本的なターゲット」と語る。

 帰ってこない理由について、「地方は貧しくつまらないと思っている」ことが背景にあり、ここをどう打ち破っていくかがカギとする中貝氏。「豊岡には大都市とは別の価値観に基づく豊かさがあり、楽しさがあり、やりがいのある仕事がある。このことをちゃんと伝えていかないといけないし、その実を強めていかなければならない。こういう文脈の中で今回のKDDIとの包括協定がある」(中貝氏)という。

 「宿泊と鞄を豊岡の基幹産業と位置付けて、ここを大きくして若い人たちの魅力的な雇用を作っていこうというのが、豊岡の仕事に関する作戦」とする中貝氏だが、宿泊業には閑散期があるため、城崎温泉では繁忙期に派遣労働に頼っていたという。この閑散期の客を増やすことによって、通年雇用につなげていこうというのが、豊岡市の地方創生戦略とされる。

 そこで目を付けたのが外国人観光客だった。「インバウンドなので、昔のように酔っ払いを相手にお酒をつぐようなそういうイメージではなく、この地の文化をちゃんと英語で伝えるなど、やりがいのある仕事になるのではないか」と語る中貝氏。同氏はまた、「グローバル化の進展によって世界は急速に同じ顔になっている。ローカルであることをベースにして、グローバルで勝負をするチャンスが小さな町にも出てきた」とも言う。

 こうした施策が功を奏し、城崎温泉を中心に外国人観光客が増え、日本人観光客も増えているが、中貝氏は「私どもは次に行きたいと思っている」と先を見る。同氏は、「そのためにはデータを収集して、分析して、その結果に基づいて戦略を立てなければいけない。データに基づいて、より効果的、効率的なマーケティング戦略を立てて実施すれば、もっとたくさんのお客さんに来てもらえて、雇用につながって、若い人たちを増やすことにつながるのではないかと考えている」と、今回KDDIと包括協定を結んだ背景を説明する。

KDDI 代表取締役 執行役員 副社長の高橋誠氏

 一方、KDDI 代表取締役 執行役員 副社長の高橋誠氏は、「我々はスマートフォンだけでなくライフデザインというものをお客様に届けていきたい。もっと身近にさまざまな生活接点を通じてお客様と繋がっていきたい。お客様をもっと知って、もっと近づいて、もっと使っていただくというのが、これからの大きなテーマと思っていると述べ、その一環として豊岡市との提携が非常に意味があることだと説明する。

 KDDIでは、これまでにもさまざまな分野で地方との連携を推進しているが、自治体と包括協定を結ぶのは初めてのことになる。「我々にはデータはあるが現地の体感がない」と語る高橋氏。同氏は、「これを豊岡市に教えていただいて、このデータをこんな風に使えば一番いい観光パイプラインが回るんじゃないかということをやっていただくことで、他の地域でも使っていける。これが日本の地方創生に繋がっていくのではないか」と期待感を示した。