インタビュー

モバイル&ソーシャルマーケティング事情

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湖池屋に聞く、モバイル・SNS時代のキャラクターとは

 「ボンジュール! わたくし、「ムッシュ・コイケヤ」であーる。ポテトチップスが大好きで、いつかコイケヤポテトチップスのパッケージ【表】に載りたいのであーる♪」(Twitterの自己紹介より)

看板商品「コイケヤポテトチップス のり塩」
ムッシュ・コイケヤ

 「コイケヤポテトチップス のり塩」を誕生させてから52年、「ポテチ」の登録商標も持つという総合スナックメーカーが、湖池屋だ。その看板商品である「のり塩」のパッケージに載りたいと意気込むキャラクター、「ムッシュ・コイケヤ」の活動とは?

 フィーチャーフォン向けコンテンツはこれまでも提供してきた湖池屋だが、スマートフォンやSNSが全盛の時代を迎え、消費者との距離感も変化する中で、どういったアピールを考えているのだろうか。新製品「頑固あげポテト」のアピールも行われた某イベントの会場にて、湖池屋 マーケティング部 広報課の田島陽介氏、同課 課長の山口直哉氏に話を伺った。

湖池屋 マーケティング部 広報課の田島陽介氏(左)、広報課 課長の山口直哉氏

看板商品「のり塩」の表面に載りたい

 Twitterの湖池屋公式アカウントとして2013年に登場した「ムッシュ・コイケヤ」とは、定番的なキャラクターが不在だった「コイケヤポテトチップス のり塩」をアピールするため、公募を経て選ばれたキャラクターだ。ブランディングにおいてはキャラクターの活用も重要になるとのことで、「のり塩」の50周年を記念して公募された。社内につぶやきの担当者がいるとのことだが、「彼(ムッシュ・コイケヤ)は生きているという設定ですから」(山口氏)と、あくまでムッシュ・コイケヤのつぶやきというスタンス。すでにFacebookでは湖池屋のファンページも提供されているが、ムッシュ・コイケヤは「のり塩」専門。これは、ポリンキーやカラムーチョなど、ほかの湖池屋のお菓子にはキャラクターがすでにいるためだ。

 山口氏が「キャラクターを育てていきたいという考えがあった」という、ムッシュ・コイケヤの目標だが、「『のり塩』は看板商品で、そのパッケージに載ることは、数の面でもすごいこと。そこで、まずはパッケージに載ることを目標にした」という。その実現については、当初は山口氏自身も懐疑的だったものの、「『のり塩』の裏面には載った。まさか載るとは思っていなかった。そこから、Twitterのフォロワーも増えてきている」と、手応えを感じている様子。田島氏は、「今後は表面に載って、将来はテレビCMにも出たい。どうせなら夢は大きく(笑)」と、さらなる飛躍も考えているようだ。また、“ゆるキャラ”としての活動も検討されているという。なお、LINEのスタンプについては、配信にあたって初期投資もそれなりに必要なことなどから、現在は地道にアピールを続けていく方針とのことだった。

新商品「頑固あげポテト」ではWebオリジナル動画を制作

 SNSに限らず、今後のマーケティングやPR戦略で新しい展開はあるのだろうか? 田島氏によると、新商品の「頑固あげポテト」では、テレビCM風の動画を制作してYouTubeで公開しており、認知度の向上に努めているという。まるでテレビCMを見ているかのような構成だが、Webオリジナルということで、すでに自己紹介編として7本を掲載。「(モバイル端末向けの)アプリだと、湖池屋らしさは出にくい」と田島氏が言うように、アイデアやネタ系のユニークなキャンペーンで攻めるのが基本のようだ。

頑固あげポテト 香ばし塩味
頑固あげポテト 甘辛おこげ醤油味
頑固あげポテトのシュールなプロモーション動画

 「2014年は、私達にとってWebプロモーションの元年」(田島氏)と、同社は今後も展開を加速させていく方針。お菓子や食品系のほかの企業でも、SNSを活用したユニークな展開は話題を集めているが、山口氏は「ライバルはあまり意識していない。美味しさやユニークさにこだわってきた。オリジナリティが湖池屋」と、独自の路線を突き進んでいくようだ。

日清「ラ王」の技術でノンフライポテトを開発

 湖池屋といえば、日清食品とのコラボ商品も話題だが、これは両社が2011年5月に資本業務提携を締結し、「日清食品×湖池屋 ユニークプロジェクト」をスタートさせたことによるもの。技術を持ち寄り、新しい商品をつくりあげるというもので、技術だけでなくブランドを含めて共同開発を行っている。第4弾では湖池屋から「コイケヤポテトチップス 日清焼そばU.F.O. 濃厚ソース焼そば味」が、日清からは「日清焼そばU.F.O. カラムーチョ ホットチリ味」が発売されるなどしており、すでに第7弾まで展開されている。

 こうしたブランドや味以外にも提携の効果は拡大している。“もうガマンしないっ! これが本気のノンフライ!”“ついに完成! おいしいノンフライ”などとして売り出している湖池屋の「ポテのん」は、日清の技術を組み合わせて実現できた商品だという。

 湖池屋にとってノンフライ商品は、「健康志向でも、美味しくないと売れない。粉ではなく、生のじゃがいもから作るノンフライは、これまでどうしてもできなかった」(山口氏)と、技術的にも難しい商品であったと振り返るが、日清との提携により、「ラ王」に関連したの最先端の技術を使って共同開発することで、「ポテのん」のノンフライを実現したという。ただし、特許なども絡むため、“最先端の技術”の詳細は外部に公開されていない。

ポテのん リッチコンソメ
ポテのん うま塩

「カラムーチョ」はアジア展開も拡大。“美味しさ”は各国仕様で

 2020年に決まった東京オリンピックに関連して、国内の商品やサービスを海外にアピールしていく施策にも注目が集まる。湖池屋はアジアを中心に海外展開を行っており、特に台湾に注力している状況。アジア地域では「カラムーチョ」が人気とのことで、パッケージにはあえて日本語で「カラムーチョ」と入れるなど、日本のパッケージも意識したつくりになっているという。

タイのカラムーチョ
台湾のカラムーチョ

 一方で、味は現地の好みに合わせるのが基本になっているようで、辛さではタイ向けが一番辛いとか。「カラムーチョは、辛くて“美味しい”ポテトチップスがポイント。そこが30年ご愛好されてきた点です。美味しいと感じる基準は各国で異なるので、各国に合わせています」(山口氏)とのことだった。

太田 亮三