HONEY BEEシリーズ開発者に聞く

シリーズ200万台出荷の裏側


歴代のHONEY BEEシリーズ

 京セラがウィルコム向けに供給しているPHS端末「HONEY BEE」シリーズの累計出荷台数が200万台を突破した。同シリーズの誕生の背景や開発の裏側について、京セラ 通信機器関連本部 通信機器統括営業部 マーケティング部長の能原隆氏、同本部 マーケティング部 デザインセンター デザイン4課 責任者の漆畑睦氏、同本部 マーケティング部 デザインセンター デザイン4課 デザイン係の西本圭太氏に伺った。

――HONEY BEEシリーズというと、若い女性向けの端末という印象がありますが、これは当初からのコンセプトなのでしょうか?

能原氏
 はい、HONEY BEEシリーズは、女子高校生、女子大学生をメインターゲットにしています。これは当初から一貫していることです。

 ストレート型というスタイルにも、こだわりを持っていますね。ウィルコムさんのサービスの特徴は音声定額だということもあり、音声をコンテンツとして楽しんでいただこうということで、これを実現する上ではストレート型である必要がありました。HONEY BEE BOXという折りたたみ型端末もありましたが、これはシリーズが定着してきた中でバリエーションを持たせるという意図で開発しました。

――同シリーズはポップなデザインで、機能的にはシンプルな作りですが、これも狙いですか?

能原氏
 携帯電話が機能を追求していく中、実際に使うにあたって、サービスと端末が一体になったものを提供できないかと考えました。当時、女子高生をターゲットにするような端末があまり無かったということもあります。

初代HONEY BEE

 1号機は、メールと通話のみという本当にシンプルな機能でした。市場に出してみたところ、カメラへの要望が多かったので2号機ではカメラを搭載しました。さらに、カメラの使い方をリサーチすると、女子高生・女子大生では自分撮りをするユーザーが多かったので、3号機ではインカメラを搭載し、また、ゲームもしたいという声もあったのでJava対応としました。4号機では、Flashやムービーの撮影、京セラ独自の機能のすぐ文字にも対応しました。

 いろんな評価はあると思いますが、企画サイドとしては、液晶のサイズやカメラの画素数は追っかけていません。それよりも、「楽しそうだな」というものを追求してきました。

漆畑氏
 デザインとしては、サイズにもこだわりがありますね。ここも初代モデルからぶれていません。

――若い女性をターゲットにする上で難しいところはありませんでしたか?

能原氏
 2008年の1号機からこれまで4年間やってきましたが、こちらとしてはターゲットをぶらさずにやってきていますが、流行というのは微妙に変化しています。とりわけ、女子高生、女子大生のトレンドの変化は激しいものがあり、そこでHONEY BEE 3ではデザインを大きく変えました。ポップでかわいい世界観やカラーのテイストは同じですが、その時その時によってデザインのテイストを少しずつ変化させています。

HONEY BEE 2HONEY BEE 3
HONEY BEE 4HONEY BEE BOX

漆畑氏
 そういう意味では、HONEY BEE 3は大きなチャレンジだったかもしれません。キートップでさえデザイン化した数字を採用しているので、大人の方であれば、読めないでしょう(笑)。一般的な端末ではあり得ないですよね。

能原氏
 ちなみに歴代で一番台数が出ているのはHONEY BEE 3です。

(左から)西本氏、漆畑氏、能原氏

――ユーザーからの要望はいかがですか?

能原氏
 「おしゃべり」というところでは、防水対応のニーズが高いですね。それから、音楽を聴きたいというニーズもあります。一方で、おサイフケータイやワンセグへのニーズはあまりないですね。

――他キャリアや海外向けの展開はどうでしょう?

能原氏
 せっかく作ったブランドなので、何らかの展開ができればいいですが。海外についても、一度調査したことはあるのですが、デザインが子供っぽいという評価で、まだちょっと難しいのかな、という感触です。

――しかし、京セラの硬いイメージからすると、どうして御社からHONEY BEEのような端末が生まれたのか不思議ですらあります(笑)。

漆畑氏
 本当に不思議ですよね。ただ、多くの方に認めていただき、ここまでブランドとしてシリーズ化を重ねると、今はちょっとでも地味になると、「HONEY BEEなのに、それでいいのか」と社内から言われるようになっています(笑)。

能原氏
 初代を出した当時、HONEY BEEのコンセプトが社内に理解されていたかというと、そうでもなかったと思います。ただ、こういう端末を初めて市場に出すわけで、判断する基準もないような状況でしたので、社内の各方面に説明してまわるのが本当に大変でした。

 その後もメーカー側がこうだということで提案するというよりも、その時ユーザーが欲しいものを確実に形にしてきたつもりです。構えることなくユーザーが使えるのが理想ですから。

西本氏
 スマートフォンを買うときには、いろんなことを吟味すると思うのですが、HONEY BEEの場合、その心理とは少し違います。カラフルなので友達と違う色を選んだり、機器を買うというより、コミュニケーションのツールとして買うのだと。値段的にもターゲットの年代のおこづかいで買えますし。

――皆さん男性ですが、苦労はありませんか?

能原氏
 渋谷のファッションビルに視察に行ったりするのですが、いたたまれなくなって2分で帰ってくるとかありましたね(笑)。

西本氏
 それでも楽しんで作れるというところはありますね。何しろ、他の端末では実現できないようなことをやっていますから。

――HONEY BEE 5は登場しますか?

能原氏
 ウィルコム400万ユーザーの中の200万台ですし、4までやってきて5をやらないという選択肢はないですよね(笑)。具体的なものはまだありませんが、リサーチは続けています。今後もHONEY BEEは「こうあるべき」と構えるのではなく、若者のトレンド感をうまく捉えた良い意味での「ノリ」の部分を大切にしながら作っていきたいですね。

――ありがとうございました。




(湯野 康隆)

2011/8/25 16:31