「940SH」「941SH」開発者インタビュー
機能・スペックもUIも進化したWi-Fi対応ハイスペックモデル
シャープは今秋、ソフトバンク向けには、7モデルを発表している。そのうち1つはすでに発売中の「832SH s」で、4モデルは来年春向けのモデルとなる。残る2モデルは、カメラに重点を置いた「AQUOS SHOT 940SH」とハーフXGA液晶を搭載する「AQUOSケータイ FULLTOUCH 941SH」で今年中に発売される。
今回はこの940SHと941SHについて、シャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部の吉高泰浩氏と奥田計氏、中川伸久氏に話を聞いた。
――まずは今回のラインナップ全体についてご紹介をお願いします。
シャープの吉高氏 |
吉高氏
秋から春に向けて、ソフトバンク向けにはシャープから7モデルが登場します。年末までに登場するのは3モデルで、残りの4モデルは春にデビューします。
年末には、すでに発売中の「GENT 832SH s」に加え、夏モデル「AQUOS SHOT 933SH」の後継機種である「AQUOS SHOT 940SH」、昨年の冬モデル「AQUOSケータイ FULLTOUCH 931SH」の後継機種である「AQUOSケータイ FULLTOUCH 941SH」が登場します。
春には、サイクロイドのAQUOS「932SH」の後継「943SH」、薄型折りたたみデザインの「942SH」、ポップなカラーバリエーションを揃えた「840SH」の3機種が登場します。
今回はこれらのモデルから、940SHと941SHをご紹介します。
――940SHはどんなモデルになるのでしょうか。
シャープの奥田氏 |
940SH |
奥田氏
940SHは、AQUOS SHOTのブランドネームを冠するソフトバンクさん向け第2弾のモデルになります。夏モデル933SHの後継機種となりますが、液晶サイズは3.3インチから3.4インチに、カメラ解像度も1000万画素から1210万画素にスペックアップしました。液晶が3.4インチになったことで、タッチパネル操作もさらに使いやすくなっています。
ハイスペック化にあわせ、デザインもブラッシュアップしています。とくにこだわっているのがカメラのある面です。レンズ周りのリングにはスピン加工を施し、部品の配置を工夫することで、レンズが中央に来るようにデザインしています。フラッシュの窓についてもレンズ部から独立するようなデザインに仕上げました。
ケータイとしての顔であるディスプレイの背面は、一見すると何もないようにも見えますが、サブディスプレイとイルミネーション用に5つのLEDが内蔵されています。LEDの光を透過させるため、従来は印刷加工で穴を開けておりましたが、これだとLEDが点灯していないときもわずかに穴が見えてしまいます。940SHではレーザー加工技術を使い、8ミクロンの微細な穴をたくさん開けることで、一見なにもないように見えるところから、点灯したときのみ、イルミネーションが綺麗に透過されます。
――933SHに比べ、カメラはどのように進化したのでしょうか。
940SHは12メガのカメラを搭載 |
奥田氏
画素数が1210万画素に増えました。画素数は増えましたが画像処理エンジンのProPixをチューニングし、従来と同じ高感度ISO12800を実現しています。新たな機能としては、まず秒最大45枚で100枚までを撮影できるスピード連写機能を搭載しました。ゴルフのスイングにも十分に追従できます。
また、毎秒1枚の間隔ですが、12メガでも3枚を連写できるようになっています。1枚ごとに露出設定を変えるブラケット連写も可能です。
こうした連写性能のアップに加え、ぶれ補正機能も、従来からの補正に加え、ISO感度を上げてシャッターを速くする高感度ぶれ補正機能も搭載しました。複数の補正機能で相乗効果を狙っています。
――撮影以外の機能はどのようなものがあるのでしょうか。
奥田氏
最近のデジタルカメラのトレンドである、個人検出機能を搭載しました。最大10人まで登録できて、一度に5人までの顔を検出できます。親しい人の顔を登録しておいて、ファインダー画面で名前やメモを表示したり、その人に優先的にピントを合わせる、といったことができます。
さらに検出した人を撮るだけで、自動的にその人のアルバムが作成されます。自分の子どもや恋人、あるいは自分撮りをしたとき、その写真を自動でまとめることができます。
カメラ画面 |
こだわりカメラのメニュー |
――機能が多そうですが、カメラのメニューはシンプルですね。
奥田氏
カメラはたくさんの機能を搭載していますが、メニューを開いて機能を使ってもらう、というのは簡単ではありません。そこで、「用途に合わせてカメラを選ぶ」というUIデザインをしています。
標準で起動すると、「おまかせオートカメラ」として、表示されるメニューも少なく、簡単に撮れるようになっています。しかし、もっとこだわって撮りたいときには、「こだわりカメラ」から選ぶことができます。
こだわりカメラの他に、オークション出品向け写真を撮るガイダンス付きのオークションカメラや、撮影後にすぐ手書きができる手書きメモカメラ、振り向かせるキャッチ音と振り向きシャッターを組み合わせた振り向きカメラ、パンフォーカスで撮るすぐ撮りカメラなど、全部で49種類を用意しています。好みの設定を覚えた自分のカメラを作ることも可能です。このメニューは、よく使うカメラメニューが使いやすくなるように、自動で並び順が変わるようになっています。
こだわりカメラの中には、新機能の「プリティアレンジカメラ」も搭載しています。こちらは顔検出機能を利用し、自動で美肌や小顔、目の拡大などのレタッチを行ってくれるものです。
中川氏
941SHはカメラの画素数が800万画素で、940SHとは画角や連写性能が異なりますが、そのほかのおまかせオートカメラやこだわりカメラなどの機能は一緒です。
――カメラ以外に940SHの特徴機能はどのあたりにあるのでしょうか。
奥田氏
Wi-Fiやスピンぐるメニューなどの新機能を搭載していますが、これらは941SHでも搭載していますので、後ほどあわせてご紹介いたします。
――では、941SHはどのようなモデルになるのでしょうか。
シャープの中川氏 |
941SH |
中川氏
「いつでもどこでも動画やインターネットを快適に」をコンセプトとして、4インチのハーフXGA(1024×480ドット)の液晶を搭載しています。
ハーフXGA液晶は、横スクロールなしでウェブページを見られるのが大きなアドバンテージになっています。さらに今回は、Wi-Fiを搭載したことにより、ウェブブラウジングがさらに快適になっています。
Wi-Fi機能はIEEE802.11b/gに対応しており、ソフトバンクさんの新しいサービスである「ケータイWi-Fi」に対応しています。このWi-Fi機能は940SHと共通になります。
――Wi-Fiを使うと何が変わるのでしょうか。
中川氏
「ケータイWi-Fiチャンネル」というソフトバンクさんの新サービスでさまざまなコンテンツをお楽しみいただけます。
このほか、Wi-Fi接続時は従来のPCサイトブラウザよりも仕様が拡張された「ダイレクトブラウザ」を利用できます。見た目はほとんど同じで、ブックマークなども共有していますが、ダイレクトブラウザでは扱えるファイルの容量がPCサイトブラウザより増えています。
Wi-Fiの利用設定は、パソコンに詳しくない方にも使っていただけるよう、ワンタッチ設定機能のWPSとバッファローのAOSSにも対応しています。
――サイクロイドではなくフルスライドデザインですが、941SHもAQUOSケータイなのですね。
中川氏
液晶の美しさには力を入れています。たとえば、今回新たに色温度コントロール機能を搭載しました。これまでのモデルはワンセグに合わせ、液晶の画質をチューニングしていましたが、今回はアプリごとに色温度の設定が変わります。この色温度コントロールは、940SHも搭載しています。また、液晶は外でも見やすいリフレクトバリアコートになりました。
――940SHと941SHはともにタッチパネル液晶を搭載していますが、UIなどは一緒なのでしょうか。
941SHのメニュー。画面下のアイコン行が増えている |
中川氏
941SHは閉じた状態でタッチ操作ができる事が重要なので、画面の縦横比も縦に長くしその分、タッチ操作に使う画面下のアイコンなどの表示行が増えています。
奥田氏
940SHも941SHも、開いた状態でキー操作をしながらタッチ操作ができるUIを搭載しています。
――941SHはフルスライド形状ですが、キーが立体形状になっているなど押しやすくデザインされていますね。
中川氏
スライド幅も931SHの60mmから63mmへと増え、カーソルキーを大きくするなど、操作性も改良しました。スライド幅が増えると上筐体が重たく感じられてしまいますが、今回は液晶をガラスではなくアクリルにすることで軽量化し、持ったときに上筐体が重たくなる印象を払拭しました。
スピンぐるメニュー |
――スピンぐるメニューというのはどのような機能なのでしょうか。
奥田氏
940SHと941SHが共通で搭載する、まったく新しいメニューです。
いままでのUIは、ユーザーが機能を「探す」という形式でした。しかしケータイが多機能化してメニューから機能を探すのが大変になりました。
そこで、ゲームソフト制作会社のキャメロットさんと共同で、ケータイがユーザーの利用スタイルに合わせ機能をおすすめしてくれる、というアプローチを考えました。このUIにはゲームソフトに利用されている人工知能システムが応用されていて、ユーザーの利用履歴や購入したときからの日数、曜日や季節など、たくさんの条件をもとに、ユーザーに最適な機能をおすすめしてくれます。
940SHと941SHのカーソルキーは、なぞるような押し方でも反応するベクターパッドになっていて、これをなぞるように回すことで操作できます。
――人工知能システムがおすすめしてくれるのは面白いですね。
奥田氏
我々単独では、思いつかなかった発想ですが、使い方にあわせてケータイが機能をおすすめしてくれるのはとても面白いと思います。
例えば、ケータイを買った直後は使い方を覚えたいでしょうし、新機能に興味がある。だから買った直後は新機能を中心におすすめする。誕生日のお祝いメールは、テンプレートや絵文字を使ってかわいいメールを早く送りたい。だから、電話帳やスケジュールに誕生日を登録しておくと数日前に「送信予約メール」をおすすめする。カレンダーに飲み会の予定を入れておけばその時間帯は、電話帳交換用の赤外線通信や、盛り上がれるカメラのプリティアレンジカメラおすすめするなど、共同でさまざまなパターンを想定して考えました。
他にもあります、通学、通勤途中にイヤホンマイクを挿すとミュージックプレーヤーやワンセグなど良く使うAV機能がおすすめされたりもします。これ以外にもたくさんの機能をケータイがおすすめしてくれますので、是非使ってみてください。
また、自分で機能を探す場合ときに便利な、全部の機能をあいうえお順に探せる索引検索もできます。
吉高氏
ケータイのUIを今後、どう進化させていくかは、大きな課題として取り組んでいます。エフェクトなど直感的で気持ちよい操作という部分への取り組みは、今後も各社ともに進化していくと思いますし、当社も目指していくところです。
しかしそれだけではありません。最近では同じケータイを2年間とか長く使っていただかなければいけないので、シャープとして「使えば使うほど自分にカスタマイズされて使いやすくなるUI」が必要だと考えました。
ケータイはどんどん多機能化しています。その機能をいかにピックアップしてユーザーに提示できるか、というところに取り組んで、今回はスピンぐるメニューにたどり着きました。触っていると新しい発見のある喜びや楽しさ、そういったところを含め飽きのこないUIです。
この人工知能システムはいろいろな要素を追加すればどんどん賢くなります。今回のバージョンでもたくさんの要素を盛り込んでいますが、今後も改良を積み重ねていけば、ユーザーが使いたいときに使いたい機能が、あるいは気がつかなかった便利な機能がお薦めできるのでは、と考えています。
――このスピンぐるメニューも、先ほどのこだわりカメラも、アイコンのデザインが凝っていますね。
奥田氏
スピンぐるメニューのアイコンのデザインはキャメロットさん側がデザインを担当しています。一つ一つのアイコンに対し、どういうデザインにしたら使いたくなるかを考えて、絵コンテから制作し、2~3の案からコンペをして決めた、こだわりのデザインです。
ケータイ係長の待受画面 |
――そういえば先ほどから待受画面に変なおじさんが登場しているのですが。
中川氏
「ケータイ係長」ですね。Flash壁紙のコンテンツでして、かわいらしい四角い頭の係長がケータイに住み込んでいる、というコンセプトで、このおじさんの動きを見て楽しむ、というものです。端末の情報を引き抜き、電話帳の登録や着信履歴などを反映させた発言をしたりします。
奥田氏
これは「キャラタイム」というサービスのコンテンツですが、ケータイ係長はそのプリインストール版ということでシャープオリジナルとして作り込んでいまして、実はダウンロード版とは桁違いの容量になっています。2年間は楽しめます。このケータイ係長も、940SH、941SHの両方にプリインストールされています。
――本日はお忙しいところありがとうございました。
2009/11/20 10:00